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どうなる! 日本の医療 米国で話題の「臓器別診療」の否定 日本で広がるのか?
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2016年3月31日 日刊ゲンダイ 文字お越し
「専門家が自身の効率化のために作り上げた高度専門化社会は実は非効率で、物の本質を見失ってしまうのではないか」――。英国フィナンシャル・タイムズ紙アメリカ版編集長ジリアン・テット女史の「サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠」(文芸春秋)での警告が話題だ。
その最たるもののひとつがいまの医療システムだ。心臓外科、循環器内科など臓器別に細かく分類されていることで、患者は同じ検査を何度も受けさせられ、医療費が増え、治療日数も長くなる。
これに異を唱えたのが米国オハイオ州にある世界トップクラスの医療施設「クリーブランド・クリニック」だ。専門部署ごとに分かれていた医療の垣根を取り払い、患者中心のシステムを構築したことで世界の医療界に大きな衝撃を与えている。オバマ大統領も絶賛するその医療システムは、例えばリウマチ科と整形外科医が連携して骨粗しょう症の治療を手掛けるなど、病気ごとに複数の専門科医が結集し治療するやり方だ。
日本でもこうした医療は行えるのか? 外科医でNPO法人医療制度研究会副理事長の本田宏医師が言う。
「すぐには無理でしょう。『クリーブランド・クリニック』は世界トップクラスの医療機関で、4万2000人のスタッフが働いていて、医師も看護師も十分な数がそろっています。だからこそひとりの患者さんの治療に複数のスタッフが携わる、本格的なチーム医療が日常診療のなかでもできるのです。しかし、日本ではそもそも医師の数が足りていません」
■新たな医療格差の始まり
本田医師が再三指摘してきたことだが、日本の医師の数は先進国のなかで格段に少ない。2012年統計で日本の医師は28万8850人。人口1000人あたりの医師数に換算すると2.3人だ。これはOECD加盟34カ国の中で下から6番目。トップのギリシャの6.2人の半分にも満たない。それでいて、日本は世界有数の超高齢社会が進行しているのだ。
仮にがんで入院した患者が糖尿病の持病があったとしても、まずはより深刻な病気を治療することが優先され、内科疾患に十分な治療をする余裕も人手もない。
「最初から複数の専門医が患者さんの全身状態を診て、根治療法を探る。むろん、その後に起こるであろう合併症を予測して対処する。結果的に患者負担は軽減され、医療費も安くなる。しかし、それをすぐできるのは世界一医療費が高い米国においてであって、日本では難しいのです」(本田医師)
そもそも日本の医療は研究、論文、実験に重点を置くドイツ医療を模範として発展し、臨床中心の米国とは成り立ちが違う。そのため、日本の医療従事者は自分が専門医として勝ち取ってきた医療システムを捨て去れない。
「それでも患者のための医療は世界の大勢。日本ではお金持ちからクリーブランド方式の治療が行われるのではないか」(首都圏の内科医)
日本の医療格差はさらに広がるということか。
村吉健フリージャーナリスト
地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。
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