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3Dプリンターを使った治療法が進歩!(※イメージ)
3Dプリンター活用で進歩! ひざ痛手術の今〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jparticle?a=20160329-00000002-sasahi-hlth
週刊朝日 2016年4月1日号より抜粋
加齢にともない増加するひざの痛み。その多くは変形性膝関節症といわれ、約2530万人の患者がいると推計されている。その治療法である人工膝関節置換術では3Dプリンターを使った手法が近年進歩している。
埼玉県在住の入江佑子さん(仮名・72歳)は、2年前からひざに痛みを感じるようになり、自宅近くの整形外科を受診。変形性膝関節症と診断され、痛みを和らげるヒアルロン酸注射の治療を受けていた。以前は、ヒアルロン酸注射をすると、ひざの痛みは軽減したのだが、徐々に効かなくなってきた。
かかりつけ医は「手術をしたほうがいい」と勧めたが、「手術をしてもひざの痛みがとれない」という知人の話を聞いた入江さんは、手術には消極的だった。しかし徐々にひざに繰り返し水がたまるようになり、痛みで階段の上り下りもつらい。そこで、かかりつけ医の紹介で苑田会人工関節センター病院病院長の杉本和隆医師のもとを訪れた。
「変形性膝関節症も初期であれば、マッサージや鍼灸、運動療法で症状が改善することがあります。しかし進行期から末期になると薬物治療や手術を加える必要があります。入江さんはすでに薬物療法を受けているけれど効かないとのこと。画像診断でひざの軟骨がすり減っていたので、人工膝関節置換術の適応だと判断しました」(杉本医師)
膝関節は、太ももの骨(大腿骨)、すねの骨(脛骨/けいこつ)、ひざの皿(膝蓋骨/しつがいこつ)の三つで構成されている。これらの骨の表面は、衝撃を和らげるクッションの役目をする軟骨で覆われている。
この軟骨がすり減ることで発症するのが、変形性膝関節症だ。軟骨がすり減って関節が変形すると、太ももの骨とすねの骨が直接ぶつかり、痛みが生じる。
「変形性膝関節症は初期、進行期、末期の3段階に分類できます。初期は動き始めるときに痛みを感じます。長時間椅子に座った姿勢でいて、立ち上がるときにひざに痛みを感じたりするのです。階段を下りるときに痛みを感じたり、正座ができなくなったりしたら進行期。末期になると、ひざを真っすぐ伸ばせなくなり、О脚になります」(同)
人工膝関節置換術は、すり減った軟骨や傷んだ骨の表面を切除して、金属やプラスチックでできた人工関節を埋め込む手術だ。ひざの片側半分のみにおこなう部分置換型と、ひざ全体を人工物に置き換える全置換型がある。入江さんの場合、ほとんどの軟骨がすり減っているため、全置換型の手術となった。
「術後、痛みもなく、ちゃんと歩けるようになるためには、正確に骨を切り、適切な位置に人工関節を設置する必要があります。入江さんの知人のように、『手術を受けたのに、ひざの痛みがとれない』『手術をしたのに、歩きにくい』などと訴える人の多くは、適切な位置に人工関節が入っていないからなのです」
と杉本医師は説明する。
これまで人工膝関節置換術では、太ももの骨に開けた穴から金属の棒を入れて、埋め込む人工関節の角度を決めていた。しかし骨を数ミリ単位で正確に削り、人工関節を正しい角度で埋め込むには、術者に豊富な経験や技量が求められる。
「そうした術者の技量をカバーするのが3Dプリンターを使った手術。患者さん個々の骨モデルを作成し、手術をアシストするのです」(同)
この方法では、まずCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)などで股関節から足首までの骨の画像を撮る。そして画像データをもとに、3Dプリンターで関節部分の骨を立体的に作成する。さらにその骨モデルをベースにして、一人ひとりの関節に合った特注の器具「骨切りガイド」を製造する。実際の手術では、そのガイドを患者の骨や関節に固定して、骨を切除する。
「ガイドを使うことで手術の精度が上がり、手術時間も短縮できます。使用する手術器具も少なくできるので、からだへの負担や合併症のリスクも減らせます」(同)
入江さんの手術は約1時間で終了。入院期間は2〜4週間と個人差があるが、入江さんは手術の翌日から歩行訓練を開始。術後2週間で、自分の足で歩いて退院できた。
「3Dプリンターを使うこのやり方は、医師にとっても患者にとっても、安心サポートシステムのようなもの。これがなければ手術ができないというわけではありませんが、失敗のリスクが大幅に減らせます。このシステムを導入する病院は全国で少しずつ増えてきています」(同)
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