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患者、まず診療所に 大病院集中を初診負担増で抑止
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC10H04_Q6A210C1EA2000/?dg=1
2016/2/11 1:18 日経新聞
保険医療の価格である診療報酬が4月から変わる。紹介状なしで病院に来る外来患者から初診時に5000円以上の追加負担を徴収する一方で、小児科などで地域のかかりつけ医(主治医)機能を高め、初診や慢性疾患の患者は身近な診療所で診るよう役割分担を強める。入院患者の在宅復帰も促す。重複受診や入院を減らして医療の効率化を進めるのが狙いだ。
■薬局もかかりつけ
厚生労働省の中央社会保険医療協議会が10日、16年度の改定内容を塩崎恭久厚労相に答申した。
改定の大きな狙いは重症患者を受け入れる病院と、クリニックや医院など住民に身近な診療所の役割分担をもっと進めることだ。軽症の人が大病院に殺到すると、医師や看護師などのマンパワーが外来にさかれ、入院患者らが手厚い治療を受けられなくなるためだ。
このため診療所などの紹介状なしで大病院を受診した患者からは初診時に5000円以上の追加負担を徴収する。高額負担で患者が初診でいきなり大病院に来る動きを抑え、「まずは地域の診療所に」と誘導する。
在宅医療の充実を狙い診療報酬を増額する(東京都世田谷区)
患者にとって最初の相談相手となる診療所の機能を高めるため、「かかりつけ医」を普及させる。これは患者の同意を得て継続的に診察すれば、手厚い報酬を支払う仕組み。新たに小児や歯科、認知症でも設定した。
薬局でも同じ患者に一人の薬剤師が対応すれば報酬を増やす「かかりつけ薬剤師」制度を始める。事実上、対応してくれる薬剤師を患者が「指名」する制度だ。患者にとって危険な飲み合わせや過剰な投薬を防ぐ。
試算では高血圧や整形外科など複数疾患を抱え、診療所に通う80歳男性の負担は通院1回あたり364円と今より24円増える。ただ「かかりつけ薬剤師」は重複投薬を防ぐ役割も担い、成果が出れば薬代が減り、負担の総額も減るという。
「なじみの薬剤師に毎回対応してもらえるなら安心だ」。埼玉県蓮田市の薬局オリーブファーマシーに通う60歳男性は改定をこう受け止める。男性の神経性の難病や薬歴を把握しており、相談しやすいという。
■在宅医療充実、入院短く
改定のもう一つの狙いは入院患者をなるべく早く退院させることだ。政府は2025年までに入院ベッドを最大20万床減らす計画で、在宅療養の態勢づくりを急ぐ。
東京・世田谷に住む篠沢美智子さん(80)は重い腰の病気を抱えるが、自宅で過ごす。月に2回、在宅医療を手がける桜新町アーバンクリニック(東京)の医師が訪問。体調の変化などを確かめる。篠沢さんは「着替えて車いすに乗って病院に行くと家族に負担がかかる。住み慣れた自宅で生活もしやすい」と話す。
今回の改定ではこうした患者の意向も踏まえ、在宅医療を報酬増で後押しする。末期がんや難病、休日対応に取り組む医療機関の報酬を増額。訪問診療専門の診療所も解禁する。有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅でも、きめ細かい訪問診療・訪問看護サービスが受けやすくなる。
厚労省の試算では在宅医療への報酬を厚くする結果、有料老人ホームに入居し、糖尿病で療養する82歳女性の自己負担は月額2056円となり、今より750円増える。
病院には患者を早く退院させるよう促す。退院を支援する職員を配置し、患者の自宅近くの診療所や介護専門支援員と連携して在宅療養の態勢をつくる病院は入院基本料に加算する。一方で比較的軽症の入院患者が多い病院の報酬は減らす。
「長い目で見ると医療費の減少につながる良い内容だ」。今回の改定について健康保険組合連合会の幸野庄司理事はこう評価する。中長期的に医療の効率化につながりそうな取り組みを後押しする内容だからだ。
ただ診療報酬のうち医師らの診察料が増額になったこともあり、報酬減という「ムチ」よりも、報酬増で医療機関の取り組みを促す「アメ」が目立つ。患者が大病院に向かうのは診療所の診察に不安を感じていることの裏返しでもある。「かかりつけ医」の質が高まらなければ、改定の狙いは絵に描いたモチに終わりかねない。
▼診療報酬 公的保険が適用される医療サービスや薬の価格のこと。厚生労働相が2年に1度見直す。政府は昨年末の2016年度予算案の編成過程で診療報酬の改定率を1.03%引き下げることを決めた。内訳は薬価部分が1.52%分のマイナス、医師の技術料など診察料が0.49%分のプラスだ。今回は改定率の枠内で、診断や手術、検査といった診療行為ごとの単価を決めた。
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