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どうして男と女がいるのでしょうか?(写真:maimu / PIXTA)
新しい年が始まりました。今回はお正月用に、保険そのものではなく、人類の存続リスク、といった壮大なテーマを選んでみました。「どうしてこの世界には、男と女がいるのか」という大きな謎について考えてみましょう。
ダーウィンで有名な進化論は、この世界にあふれる生物の多様性を説明しようする学説です。クジラのように巨大なものからバクテリアのように目に見えない小さなものまで、世界は多種多様な生物であふれかえっています。その数がどれだけのものか、いまだわかっていません。その昔、すべての生物は神によって創造され、そのままずっと変わることはない、と信じられていました。しかし現在では、進化論の誕生により、生物は長い時間とともに変化して、多様性はその変化の過程のなかで生まれてきている、と考えられています。
進化論はひとつの理論体系があるわけではありません。進化のメカニズムに関するさまざまな仮説の集合体です。これほど社会に大きな影響を与えた理論であるにもかかわらず、進化論は確立された科学とは見なされていません。生物が何万年以上もかけて変化するプロセスを、実験や観察などで実証することが難しいためです。だから、ノーベル賞の対象にはなりにくいのです。
男は何のために存在するのだろうか?
この連載の過去記事はこちら
進化を巡る多くの議論のなかで、「なぜ生物にはオスとメスが存在するのか」という大きなテーマがあります。生物のほとんどは性を持っています。
しかし、もともとはバクテリアのように、ただ分裂して増えていく、という無性状態でした。性は、そこから二次的に進化してきたものです。これだけ多くの生物に性が見られるという事実から、有性生物には無性生物にない何らかのメリットがあるに違いない、と考えられて当然です。
→次ページ子供を残すことが性の目的
https://toyokeizai.net/articles/-/98841
性とは、学問的には「子孫を残すために、ほかの個体の遺伝子の一部を取り込む行為」と定義されています。子供を残すことが性の目的ですから、子供を産むことのできるメスの存在意義は明らかです。
わからないのはオスの存在です。カタツムリやミミズのように、ひとつの個体にオスとメスが混在していれば生殖はいたって簡単です。ところが、オスとメスが分離していると、生殖のためにわざわざパートナーを見つける必要が出てきます。なぜこのような非効率なメカニズムになっているのでしょう。オスは何のために存在しているのでしょう。オスの役割とはいったい何なのでしょうか。
休みなく走り続ける「赤の女王」とは?
この疑問に答えているのが「赤の女王」と呼ばれている仮説です。赤の女王とは「不思議な国のアリス」の続編「鏡の国のアリス」に登場する女王のことです。彼女が支配する国では、誰もが全速力で走り続けています。
全力で走っていないと、同じ場所にとどまることができず、たちまち置いていかれてしまうからです。「赤の女王」仮説は、このアリスの物語のように、「生き残るために、生物は絶えず進化し続けなければならない」と考えます。
たとえば、捕食者であるキツネはより早く走ることで、より多くの獲物を獲得できます。一方で獲物であるウサギはより敏感な耳を持つことでキツネから逃れ、生き残りやすくなります。このように、キツネとウサギは互いに進化の競争を続けることで、生存競争を生き抜き共存していくことができる、と考えるのです。
このような生き残るための、果てしない軍拡競争のような戦いが生物の進化を促している、と考えられています。そして、この仮説が有性動物にはなぜオスとメスがいるのか、という謎をうまく説明してくれるのです。
遺伝子の研究が進むにつれ、ウサギやキツネの進化にも遺伝子レベルの説明が加えられるようになってきています。それは「生存環境は変動するので、子孫の遺伝子に多様性を持たせる方が、さまざまな環境を生き延びさせることに有利である」というものです。
いろいろな遺伝子を持ったウサギがいれば、それぞれの耳の機能もさまざまですから、キツネに食い尽くされて絶滅することなく、一定数のウサギは生き残ることができる、と考えるのです。
→次ページ子供を産むことは女の特権
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https://toyokeizai.net/articles/-/98841?page=2
地球上の食物連鎖の頂点に立つ人間を捕らえて食べる捕食者などどこにもいない、と考えるのは早計です。人間の生存に大きな環境変化をもたらす捕食者はいくらでも考えられます。
その中でも大きな存在は、細菌、ウイルス、寄生虫のような「寄生生物」です。ウイルスのような寄生生物は宿主である人間の遺伝子に致命的なダメージを与え、人類を絶滅させるだけの劇的な環境変化をもたらします。この時に、もし人間の遺伝子構造が単一でなく多様であれば、人間すべてがウイルスに感染して全滅してしまうことを避けることができるわけです。
この多様な遺伝子構造にこそ、オスの存在理由があります。つまり生殖により遺伝子を混ぜ合わせることがオスの使命なのです。メスの子供だけが生まれるメスだけの社会の方が効率的に子供の数を増やすことができます。短期的にはメスだけの社会の方が子孫を多く残せるのです。
一方で、オスとメスが半々の社会では、子供を産むメスの数が半分になりますから、子供の増産スピードは半分に落ちます。しかしオスとメスがいることで子供の遺伝子は多様化しますから、ウイルスの攻撃による環境変化にも生き残る確率が高くなります。
長期的に見ると、メスだけの社会はいずれウイルスの攻撃により全滅の危機に瀕する時が訪れるでしょう。しかしオスが存在することで、長期的な生存率を確保することができるのです。「いかに多く子孫を増やすか」よりも「いかに滅びないか」の視点で生物の進化を考えると、そこにオスが誕生した必然性を理解することができるというわけです。
何事も起こらなければ必要ないのが保険
何事もない平穏な生活が続いている時には、何の役にも立っていないと思われるのが保険です。しかし、予期せぬ事態が起こった場合にこそ、保険はその存在価値を発揮します。
オスも同様です。大きな環境変化が起こらなければ、メスだけで十分に子孫繁栄させることができます。しかし、何万年、何十万年という超長期な進化論的視点に立てば、生存環境を脅かす事態は必ず起こります。そこにオスの存在理由があります。
つまり、男は女にとって「滅びないための」保険なのです。
https://toyokeizai.net/articles/-/98841?page=3
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