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裁判所の暗さ(高橋清隆の文書館)
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投稿者 たまゆら 日時 2016 年 4 月 08 日 20:41:38: vmH0DdCtNuFw6 gr2C3ILkguc
 

元記事http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/1898328.html

 裁判所に行った後は大抵、嫌な気持ちになる。不当な判決を聞かされるだけでなく、理不尽な扱いに甘んじなければならないからである。白く明るい外観の建物と裏腹に、そこに流れる波動は暗い。

 昨日は「TPP交渉差止・違憲訴訟」の記者席申請のため、東京地裁を訪ねた。昨年五月に提訴されたこの裁判は、四月十一日に四回目の口頭弁論を迎える。これまでは全て抽選で傍聴券を引き当ててきたが、久しぶりに申請しようと思った。申請が通った試しはないが、マスコミは同訴訟を無視している。誰のための記者席かと思ったからである。

 建物内をたらい回しにされた後、総務課広報係にたどり着く。「はい」と出てきた非常勤と思われる女性に用件を告げ、名刺を渡すと、推定四十歳くらいの短髪の男性が出てきた。事件名を聞くので、私が「第何部か分かりませんが」と事件名と事件番号、裁判長名、原告代表者名を答えると、「事件番号が分からないんじゃ」と顔をしかめる。事件番号は伝えたのに。

 「まず、申請書を出してください。どんな活動されている方なのか、調べる必要があるので」

 私は思わず口を開く。

 「えっ、それによるんですか」
 「そういうわけではありませんが」

 では何なのか。しかも、傍聴券を交付する裁判は、十四日前までに申請が必要だという。もう間に合わない。

 「じゃあ、今後の参考にさせていただきます」ととぼとぼ去る私を、男は勝ち誇ったように眺めていた。

 門を出ると、一人の老人がマイクを手にしゃがんでいた。映画『裁判所前の男』の主人公、大高正二さん(75)である。植草事件の公判が開かれていた〇七年頃、司法不信になって裁判所を出ると、「ここは裁判所ではありません。不当判決発行所です」と連呼していた男性である。〇八年上梓の拙著『偽装報道を見抜け』でも紹介させてもらった。

 思わず大高さんに話し掛ける。

 「ずっと、正しいと思っていました。まだ、映画見ていないんです」

 大高さんは優しくうなずいて、通用門の方を指差した。

 「公安が見ているよ」

 振り返ると、マスクを着けた黒背広の男が五人ほど、こちらをけん制している。正論を貫く人は、監視対象になるのが世の常である。『裁判所前の男』は本物の反権力の映画だけあって、上映もままならない。植草事件の裁判に通った頃を思い出した。

 当時、支援者の一人が見知らぬ女性から「一緒に傍聴したい」とメールをもらった。公判が終わって一緒に歩いていると、彼女は時折メールしている。後ろを振り返ると、背広を着た屈強な男たちが付いて来ていた。コーヒーショップでは、見知らぬ集団が、われわれの会話に聞き耳を立てていた。

 大高さんに「応援しています。どうか、お元気で」と声援を送り、その場を去る。地下鉄に乗ると、マスクをした黒背広が駆け込んできた。どの人も公安に見えて、落ち着かない。今頃、広報係の担当者は、私の名前を検索に掛けたり、所内のファイリングに当たっているに違いない。

 〈やっぱり、申請に行かなければよかった〉

 今回も、嫌な気持ちになった。しかし、それも戦略に入っているに違いない。マスメディアでうそを流布し、民衆に真実を伝えないための。私は気を取り直し、背筋を伸ばしてバイトに向かった。

■関連記事
傍聴券が教えてくれたhttp://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/1894591.html
 

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