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元記事http://blog.livedoor.jp/burait/archives/766484.html
クリスマスイブは異性と過ごしたいもの。彼女のいない私は一週間前から駅前でナンパを試みたが、一人も引っ掛からない。イブ二日前、図書館でのナンパをひらめいた。繁華街よりも上質な女がいそうだからである。
二十一時の閉館時に出口で声を掛ける場面を頭にイメージした。当日、職安で仕事を探した後、近隣で一番大きな図書館に向かう。館内を巡回すると、女性が何人かいた。しかし、だぼだぼのロングスカートや汚いズボンを履いたふやけた顔の女ばかり。英文解釈の本を忘れた私は、手持ちぶさたになった。閉館まで、まだ三時間もある。
仕方なく、喫茶室で缶ジュースを飲む。あきらめて出たところ、入って来る長身女性とすれ違った。ジーパンに真っ赤なセーターを合わせ、マスクをしている。私の鼓動は一気に高まった。エレベーターの前でチラシを見るふりをして女の出て来るのを待つが、五分しても女は現れない。私はしびれを切らし、喫茶室に突入した。
すでに人は引けていて、窓口も閉まっている。カウンターで女が一人、パンを食べていた。千載一遇の好機である。私は無人のゴールに蹴り込む心境で、堂々と声を発した。
「こんにちは。何勉強してたの」
女はハッとしてこちらを向く。白目をむきながら、のけぞった。
驚いたのは、こちらも同じ。マスクを外した女は、推定四十代のドブスだった。そのくせ、怖がっている様子である。私は犯罪者にされたような気がして、その場を速やかに離れた。部屋を出るが、エレベーターがなかなか来ない。たまりかねた私は、階段を降りる。通報される不安がよぎり、自然と急ぎ足になっていた。
地下鉄の扉が閉まったとき、命拾いしたと思った。女の過剰反応は、イブに一人で居る原因にもみえた。私は夢から完全に覚め、生活のため履歴書を書いた。
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