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(回答先: 雑感。原油安でメリットがあるか?(在野のアナリスト) 投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 11 日 23:15:06)
青色LEDは「ベンチャー」から生まれた[日経新聞]
中村修二氏 ロングインタビュー(上)
2014/12/4 7:00
2014年12月10日、スウェーデン・ストックホルムで2014年のノーベル賞授与式が開催される。1979年に徳島の日亜化学工業で技術者としての第一歩を踏み出した中村修二氏(現・米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)は、青色発光ダイオード(LED)の開発で、ノーベル物理学賞の共同受賞という栄誉に輝いた。今、中村氏は何を思うのか。現在、過去、未来について同氏がその思いを吐露した受賞決定直後のインタビュー(2014年10月下旬実施)を、2回にわたって紹介する。
――ノーベル賞の受賞、おめでとうございます。今年(2014年)、受賞しそうだという感触はあったのですか。
中村 過去のノーベル物理学賞は、分野ごとに順番で受賞しているんです。発光ダイオード(LED)のような固体物性分野は、4年置きに受賞しています。その順番からいえば、今年は固体物性が受賞する年。「ひょっとしたら」という感じはありました。周囲の様子からも、何となく兆候を感じていました。だから、ノーベル賞発表の日はなかなか眠れなくて。明け方に電話がかかってきて、「ああ来たか」と。
――ある程度、受賞する予感があったということですね。
中村 今年受賞できなければ、もう青色LEDでは難しいのかなと思っていました。青色LEDの製品を発表したのが1993年で、もう21年もたっていますから。
■世の中に役立ったことが認められた
――ノーベル物理学賞は、基礎理論を対象にすることが多いですね。青色LEDの実用化という「ものづくり」が受賞したことについて、どう思いましたか。
中村 今年もらえなかったらダメかなと考えたのは、「やはり、ものづくりではもらえないんだ」という思いもあったからです。例えば、4年前に固体物性分野で受賞したのは「グラフェン」でした。グラフェンの本格的な応用はまだ先で、基礎理論を固めて「将来、あんなことやこんなことに使える」と言っている段階です。つまり、応用ではなく理論で受賞というのが、これまでのノーベル賞の傾向ですよね。実際に製品まで作った「ものづくり」に対する授与は、ゼロではないですけれど珍しい。
――青色LEDを基にした白色LEDが、世の中に大きなインパクトを与えたと認められたわけですね。
中村 そうです。省エネルギーに大きく貢献したことが認められたのでしょう。世の中にいかに役に立ったかが重要だったのだと思います。
――中村さんはベンチャー企業を立ち上げていますが、ベンチャーキャピタルの見方に変化はありますか。
中村 やはりノーベル賞をもらった人間がいるというので、変化はありました。実際、あるベンチャーキャピタルなどは、私がノーベル賞をもらうことが発表されたその日に入金してくれました(笑)。
――ほかの企業から誘われたりはしないですか。
中村 ありますね。もうメールで何件か来ていますよ。
■半導体レーザーで革新再び
――現在のお仕事について教えてください。どこの企業など仕事をしていますか。
中村 例えば、韓国のソウル半導体の技術コンサルタントをやっています。あと、米ソラ(Soraa)というベンチャー企業のファウンダー(創業者)の一人です。これとは別のベンチャー企業にもファウンダーとして関わっています。
――「別のベンチャー企業」というのは、何を手掛ける会社でしょう。
中村 レーザーダイオード(半導体レーザー)です。まずはレーザープロジェクターへの応用を想定しています。このプロジェクターを使えば、床や天井などあらゆる場所に、映像を投影できるようになります。しかも、安価に大画面を実現できる。100インチが30万〜50万円です。同等の液晶テレビであれば、200万〜300万円はするでしょう。
高出力のレーザーを光源にすることで、明るい場所でも液晶ディスプレーと遜色なく表示できます。現在、青色半導体レーザーの出力は製品レベルで3ワットほどですが、これから出力はどんどんと上がりますよ。
――そもそも、なぜレーザーのベンチャーを立ち上げたのですか。
中村 企業秘密になるのであまり詳しく言えませんが、青色LEDの発光効率向上には限界があります。発光強度を高めるために駆動電流の密度を上げすぎると、発光効率が低下してくる「ドループ」という現象があるからです。これは物性に由来するものなので、今のところ解決の方法はありません。一方、開発しているレーザーにはこの現象がありません。
理論的には効率が100%になります。最近は、ドイツBMWなどが自動車のヘッドランプにレーザー照明を利用しています。従来のランプだと100mだった照射距離がLEDで300m、レーザーにすると700mまで延びます。ただし、目にレーザー光が直接当たると危険なので、レーザー光を散乱させるなどの手段で各種の規制をクリアする必要はあります。
――その会社で中村さんはどういった役割を担っているのですか。
中村 共同創業者として、大きな方向性を指示することです。細かいことは、すべてほかの人がやります。CTO(最高技術責任者)の役割ですね。
――ソラでは何を作っているのでしょうか。
中村 紫色LEDを開発し、それを使って白色LEDを作っています。この方法がたぶんLED照明の本命になる。というのは、例えば色です。白いワイシャツには蛍光物質が入っています。電球や太陽光に含まれる紫外線でその蛍光物質が反応し、白く見えるようにするためです。
ところが、青色LEDを基にした従来型の白色LEDには、紫外線が含まれていない。蛍光物質を励起できないので、ワイシャツが黄色っぽく見えてしまう。色が変わってしまうんです。蛍光物質はいろいろな衣服などに入っています。ですから、従来型の白色LEDは照明に使いにくいのです。最近、それが分かってきました。
■資金調達でアピールする3つのポイント
――今までベンチャー企業をいくつか立ち上げてきて、とてもうまくいったことと、失敗していい糧になったことを教えていただけますか。
中村 ソラでは、前CEO(最高経営責任者)が売り上げを見込めないうちから従業員を増やし、投資も増やしました。それが失敗の原因になった。この経験から、人数はなるべく少なくして、小さく保つことが重要だと痛感しました。
人数を増やしたら固定費が高くなりすぎる。ベンチャー企業は小さい方がいい。20〜30人がベストでしょう。だから、レーザー開発のベンチャーでは、小さな所帯の方が絶対いいと言っています。
――ソラは100億円ほどをベンチャーキャピタルから調達しています。資金調達には苦労なさっているのでは。
中村 そりゃ、もう大変です。最も苦労するところです。私が一番力を入れているところで、資金調達はメインの仕事と言ってもいいほどです。
――資金調達で、投資家を説得するポイントは何ですか。
中村 まずアピールするのは、「これは世の中にない製品である」こと。そして「大きな市場がある」こと、さらに「優秀な人材がいる」ことです。これら3点が重要です。投資家が納得すれば、プレゼンをしたその場で出資が決まる。わずか1時間ほどです。
■電話1本で人材が集まる
――米国でベンチャー企業を立ち上げた方がお金も集まるし、優秀な人材も集まりますよね。
中村 そうですね。人材については全然違います。ベンチャーを立ち上げると言うと、米国ではどんな人材もすぐに来ます。
例えば、「LEDを通信に応用する研究開発を手掛けたい」と考えたら、通信の専門家をどこかの会社から連れてくるわけです。「おまえ、来ないか」と言ったら、電話1本ですぐに来ます。大手の通信会社に勤めている人物でも誘えば喜んでベンチャーに入る。IPO(新規株式公開)などのチャンスがあるからでしょう。
そういう人材の流動性は、日本と大きく違う。何かをやろうとしたら、電話1本で人が集まる。資金はベンチャーキャピタルがポンと出す。その仕組みがうまく回っているのです。
日本で同じことをやろうと思っても、人は集まりません。仮に2、3人でベンチャー企業を起こすとします。そのときに例えば、大手メーカーの中央研究所の所長に、「ウチの会社に来ませんか」と誘うと、きっと逆に叱られるでしょう。「ばかにしているのか。私は、〇〇社の研究所長だぞ。なんで、そんな潰れそうな会社に行かなきゃならないんだ」と。
それが海外だと、むしろ研究所の所長クラスが、頭を下げて「入れてくれ」と向こうから来る。優秀な人材はみんな、新しいことを始めたいのです。人材の流動性が乏しいことは日本の大きな問題だと思います。
――10年以上前の対談だったでしょうか。産業として残るのは自動車ぐらいじゃないかとはっきりおっしゃっていました。そうしたら案の定、日本の大手電機メーカーは相当苦戦している。
中村 そうです。私も一緒に仕事をしたことがあるので分かりますが、日本の大手企業の研究者や、有名大学のドクターはすごく優秀です。特に化学分野はすごい。でも、優秀な研究者に、「研究所や大学を辞めてベンチャーでも立ち上げたらどうですか」と水を向けると、「いやいや、とんでもない」と言うのです。本当に優秀なのに、すごくもったいない。
最近、定年で辞めた知り合いの研究者にどうしているかと尋ねたら、「家庭菜園をやっている」と。これまでの専門性が生かされていないのです。やはりベンチャーの良いシステムがないことが、問題の要因だと思います。
■投資家と起業家は「フィフティー・フィフティー」
――日本では「失敗したら、自宅や貯金などの財産をすべて失う」という心配があるのかもしれませんね。
中村 そうですね。あまり知られていないかもしれませんが、米国でベンチャー企業を立ち上げた研究者は1円も自己資金を出しません。ベンチャーキャピタルが全部出す。例えば、1人の投資家が10億円を出すとしたら、その投資家は「50%の株は私のものだが、残りの50%はあなたたち従業員のもの」とします。従業員は資金を1円も出していないのにですよ。
「私は資金を出し、あなたたちは頭を使ってアイデアを出す。お互いに持っているものを出し合うわけだからフィフティー・フィフティー、株式も半分ずつ」というわけです。研究者は頭脳を提供するわけですから、お金を1円も出さなくても株をもらう権利があるのです。
日本にはそういう雰囲気がないように思う。うがった見方をすれば、日本の投資家は研究者の頭脳を一切認めていないことになる。米国では研究者が会社にお金を1円も出していないので、潰れても損をすることはない。借金もない。だから、潰れたらまた次に行く。ベンチャーを始めてもいいし、大手企業に行ってもいい。同僚の教授でも、失敗する人は多いですよ。ある教授は会社を3つつくり、全部潰した。でも、失敗するたびに豪邸を建てました。
――それは、どういう理屈なのですか。
中村 失敗したら会社の資産、例えば製造装置などをどこかに売ります。例えば10億円で。そのとき、創業者である教授が10%の株を持っていたとする。そうなると、1億円が手に入ります。つまり、失敗しても資産を売ってお金が入る。損をするのはベンチャーキャピタルです。例えば100億円投資して、それが10億円になるわけだから、90億円以上の損ですよ。
でも、研究者は1円も出していない。米国の研究者や技術者にとっていいところはここです。失敗しても金銭的なマイナスはない。だから、次に挑戦できる。(続く)
[注]中村氏へのインタビュー完全版は、こちらで無料で読めます。URLはhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/NED/20141028/385404/
(日経BP社特別取材班)
(書籍『中村修二劇場』の記事を基に再構成)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80151350W4A121C1000000/
- LED照明などの普及で暴露量が増えたブルーライトが人体に及ぼす影響 あっしら 2014/12/13 17:53:10
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