01. 2014年10月20日 07:52:16
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ベネズエラ、原油安でデフォルト懸念に拍車 2014年10月20日(Mon) Financial Times (2014年10月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)ベネズエラ大統領選、マドゥロ氏が勝利 ニコラス・マドゥロ大統領は対外債務の返済のために輸入削減を強いられている〔AFPBB News〕 10月初旬、ベネズエラがエネルギー価格の下落を食い止めようとして石油輸出国機構(OPEC)の緊急会合開催を要請した時、注意を払ったのはOPEC加盟国ではなく、一段と懸念を深める、ベネズエラ債券を保有するウォール街の投資家たちだった。 「私が絶えず聞かれるのは、一体どのくらいの石油価格でベネズエラは(債務の)返済ができなくなるのかという質問だ」。バンクオブアメリカ・メリルリンチのシニアエコノミスト、フランシスコ・ロドリゲス氏はこう話す。 ベネズエラは世界最大のエネルギー埋蔵量を誇るが、悪化の一途をたどる経済は、深刻なハードカレンシー不足の中で対外債務の支払いを賄うためにニコラス・マドゥロ大統領に輸入の削減を余儀なくさせている。 ベネズエラではすでに、トイレットペーパーから医療用品に至るまで、ほとんどすべてのものが不足している シリア以上に深刻な物資不足、デフォルト懸念で債券利回りが急騰 「信じがたいことだが、ベネズエラはシリアよりも深刻な物資不足に陥っている」とワシントンのカーネギー国際平和基金のシニアアソシエイト、モイセス・ナイム氏は言う。 だが、10月半ばの石油価格の下落はデフォルト(債務不履行)の可能性に対する懸念を一段と強め、ベネズエラの債券利回りは18%強まで急騰、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は22.3%まで跳ね上がった。石油はベネズエラの輸出収入の約95%を占めている。 「我々は、石油価格の下落を食い止めるためにOPECが協調行動を取らなければならないと考えている」。ベネズエラの外相でベネズエラ国営石油公社(PDVSA)元総裁のラファエル・ラミレス氏はこう語った。「価格の下落が市場のファンダメンタルズではなく、主要産油国の間に経済問題を引き起こそうとする価格操作によるものだと我々が確信している時は、なおさらだ」 世界的な石油価格の下落は、エネルギー需要の鈍化と米国のシェールガスの生産増加の組み合わせが、世界のエネルギー生産とそれに伴う地政学的な勢力のバランスをいかに変化させているかを浮き彫りにした。 OPEC、08年の世界原油需要の増加予測を上方修正 オーストリアのウィーンにある石油輸出国機構(OPEC)本部〔AFPBB News〕 だが、これまでのところ、11月27日に会合を開く予定のOPECは、緊急会合の開催を求めるベネズエラの要請に応じていない。 実際、OPECの産油量の半分を占めるサウジアラビア、イラン、イラクは、市場シェアを維持するために割引価格でアジアの買い手に原油を販売している。 基準となるブレント原油は10月16日、1バレル83ドルを一時的に割り込み、2010年以来の安値をつけた。 ベネズエラは4年前、510億ドルのドル建て債券を発行して、石油価格の下落によるハードカレンシー不足に対処した。中国からも500億ドルを借り入れ、日量45万バレルの原油輸出で中国に債務を返済している。 減り続ける外貨準備、デフォルトの確率は「ほぼ100%」 現在の問題は、ベネズエラの債券利回り上昇により、国際市場での借り入れが再び法外な高さになっていることだ。高リスク資産に対する投資家の需要も、全般的な市場の急落で打撃を受けている。 ベネズエラはほかにも、減少する外貨準備から資金を支払う必要性に直面している。7年前に政府がエクソンモービルのベネズエラ事業を国有化したことを受け、同社に対する16億ドルの支払いも控えている。 ベネズエラは、外貨準備が11年ぶりの低水準である200億ドルまで減少しているにもかかわらず、国際的な債券返済の義務を果たすと主張し続けてきた。10月8日には、満期を迎えた15億ドルの債務も返済した。だが、ベネズエラの対国内総生産(GDP)債務比率は低いものの、それでもデフォルトの不安を鎮められずにいる。 ハーバード大学の経済学者、カーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏は先日、ベネズエラが対外債務でデフォルトする確率はほぼ「100%」あると述べた。ハーバード大学の同僚のリカルド・ハウスマン教授が先月、同じようにデフォルトの可能性が高いと述べた際には、マドゥロ大統領は同教授を「金融の殺し屋」と呼んだ。 ベネズエラにとって、デフォルトの代償は極めて大きい。石油の積み荷など、差し押さえられる資産が海外に多くあるためだ。それでも、アナリストらは、スプレッドシートのほこりを払って、どのくらいのエネルギー価格になれば、ベネズエラのデフォルトが避けられなくなるかを確かめようとしている。 バンクオブアメリカのロドリゲス氏は、石油価格が1バレル60ドル程度まで下がってもベネズエラは債務の返済を続けられると考えている。ただし、それはベネズエラ政府が国内のガソリン補助金やキューバに対する補助金付き石油プログラムの大幅削減など政治的に難しい対策を取った場合に限られるという。 1バレル60ドルでも債務返済は可能? それとも・・・ 「政府はまだやっていないが、1バレル60ドルの石油を持続可能するためにやれることがある」とロドリゲス氏は言う。 一方で、それより高い石油価格でも危機が発生する可能性があると考える人もいる。カラカス・キャピタル・マーケッツのラス・ダレン氏は、PDVSAの生産コストが重油混合物で1バレル66ドル前後だと試算しており、同原油は世界の石油価格の基準より7ドル安い価格で取引されている。 「サウジアラビアは1バレル75ドルを妥当な目標価格と見なしていると述べている・・・だとすると、すぐにPDVSAの損益分岐点コストに達する可能性がある」とダレン氏は言う。 だが同氏は、単に石油生産だけでなく、輸入資金を賄うためにベネズエラが必要とする追加の収入も考慮すると、ベネズエラの「国家としての石油の採算価格」は1バレル100ルを超えると試算している。これは現在の石油価格よりはるかに高い水準だ。 By John Paul Rathbone, Vivianne Rodrigues in New York and Andres Schipani in La Paz http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41999 ブラジル大統領選:ブラジルに変化が必要な理由 2014年10月20日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2014年10月18日号) ブラジルの有権者は、ジルマ・ルセフ大統領を見限り、アエシオ・ネベス氏を選ぶべきだ。 ブラジル大統領選、現職ルセフ氏とネベス氏の決選投票へ ブラジル大統領選で決選投票に臨む現職のジルマ・ルセフ大統領(右)とブラジル社会民主党(PSDB)のアエシオ・ネベス党首〔AFPBB News〕 ジルマ・ルセフ氏が大統領に選ばれた2010年、ブラジルはついにその巨大な潜在能力を開花しつつあるかに見えた。 その年、ブラジル経済は7.5%成長し、ルセフ氏の政治の師で中道左派・労働党(PT)指導者のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領が進めてきた8年にわたる急速な成長と貧困率の低下は、もはや間違いのないものとなっていた。 だが、それから4年経った今、明るい見通しは消えてしまった。ルセフ政権の下で、経済が行き詰まり、社会の発展は減速した。新興経済大国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国の中でも、経済制裁に見舞われているロシアを除けば、ブラジルは群を抜いて低迷している。 2013年6月には、100万人ものブラジル国民が街頭に繰り出し、お粗末な公共サービスと政治腐敗に抗議した。 その抗議活動以降の世論調査では、回答者の3分の2が、次期大統領にはルセフ氏以外をと望んでいた。そのため、10月5日に行われたブラジル大統領選挙の第1回投票で、ルセフ氏の敗北が予想されてもおかしくなかった。だが、その投票でルセフ氏は41.6%の票を集め、10月26日に行われる決選投票でも、僅差ながら、なお本命視されている。 こうした事態に至った最大の理由は、ブラジル国民の大半が、まだ日々の暮らしの中で経済の冷え込みを実感していないことにある――もっとも、まもなく実感することになるだろうが。 また、中道右派のブラジル社会民主党(PSDB)党首で、第1回投票で33.6%の票を獲得した対立候補のアエシオ・ネベス氏が貧困層の説得に苦労し、自身の訴える改革が彼らの害ではなく利になるものだと伝えきれていないのも一因だ。ブラジルは、ネベス氏が主張する改革を切実に必要としている。ブラジルがさらに4年間、漂流を続けることを避けるためには、ネベス氏がその説得を成功させることが不可欠だ。 運命に翻弄された選挙戦 ネベス氏に課せられたその仕事を困難なものにしているのが、悲劇により傷つけられ、運命に翻弄された選挙戦だ。それはブラジルのテレビのメロドラマに劣らずドラマチックだった。 2カ月前、3番手につけていた候補者エドゥアルド・カンポス氏が、選挙運動に向かう途中の飛行機事故で死亡。副大統領候補だったマリナ・シルバ氏がカンポス氏に代わって大統領候補となり、世論調査でトップに躍り出た。環境保護論者であるシルバ氏は、「新たな政治」のシンボルとして、反体制派の支持を集めている。 だが、シルバ氏が政治的組織を持たないことは、同氏の魅力的な面だと思われたものの、実際にはそれが障害となった。ときに陰険なルセフ氏の攻撃を受け、シルバ氏の足元はぐらついた。 また、今でもカトリックが多数派を占めるこの国で、福音派プロテスタントであるという点もマイナスだった。結局、第1回投票でのシルバ氏の得票率は21%で、2010年の大統領選で自身が得た票をわずかに上回るにとどまった。 決選投票では、「新たな政治」ではなく、1994年以降、ブラジル大統領選の定型となってきたPTとPSDBの戦いが繰り返されることになる。 ルセフ大統領の功罪 この争いにおけるルセフ氏の最大の強みは、国民の間に、完全雇用や賃金引き上げ、一群の効果的な社会事業に対する感謝の念があることだ。生活扶助制度の「ボルサ・ファミリア」だけでなく、低価格住宅、奨学金、貧しい北東部の僻地で電力供給や水道の敷設を実施したことが評価されている。それらは確かに功績と言える。 だが同時に、それほど目に見える形ではないものの、経済と政治の両面で功績より大きな失敗も犯している。 ブラジルを苦しめているのは、停滞する世界経済と、コモディティー(商品)市場の大好況の終焉だ。だが、ブラジルの低迷は、ほかの中南米諸国よりもひどい。ルセフ氏はマクロ経済政策に干渉し続け、民間セクターを細かく管理しようと試みてきたが、それが投資の減少につながった。 また、お粗末なインフラ、高いコスト、重すぎる税制、山ほどある官僚主義的慣習、ムッソリーニを真似た厳格な労働法といったブラジルの構造的な問題には、ほとんど取り組もうとしてこなかった。 その代わり、ルセフ氏はブラジルの協調組合主義を復活させ、内部関係者に、減税や肥大化した国営銀行による補助付き融資などで便宜を図ってきた。自身の緩い財政政策によるインフレの影響を和らげるために石油価格を抑制し、国営石油会社のペトロブラスとエタノール業界の両方にダメージを与えた。 ペトロブラスの贈収賄スキャンダルは、かつて国の宝であったこの石油会社を任せられないのは、ルセフ氏が主張するように野党ではなく、PTの方であることを浮き彫りにしている。 怒るブラジル国民、サッカー大会費用や政治腐敗に「イエローカード」 昨年はブラジル各地で大規模デモが行われた〔AFPBB News〕 貪欲な内部関係者からなる協調組合主義国家を象徴しているのが、ルセフ氏のばかばかしいほど大規模な連立体制と、39人からなる内閣だ。 そうした体制のせいで、ブラジルのGDP(国内総生産)に占める税収の比率は約36%となっている。この数字は、同程度の発展段階にあるほかの国よりはるかに大きい。 デモ参加者たちが求めた医療や交通のための財源を、ブラジル政府が捻出できないのも無理はない。 さらに悪いことに、ルラ前大統領のような政治的才覚を持たないルセフ氏は、過ちから学ぶ様子を見せない。 また同じではもうダメ ルセフ氏の強みになっているのが、対立候補としてのネベス氏の欠点だ。左派が根拠なくほのめかしている「(ネベス氏は)ボルサ・ファミリアに大なたを振るうのではないか」という批判は、実際に有効だった。そうした印象を持たれるのは、ネベス氏がブラジルの既成政治勢力の一員――祖父は大統領就任を目前にした1985年に死亡している――であり、古い政治の香りをまとっているからだ。 ミナスジェライス州知事時代には、公的資金を費やして小さな町に飛行場を造ったが、それは偶然にも同氏の所有する農場の近くだった。今でも貧困層の人気が高いルラ前大統領は過去12年にわたって、PSDBを「薄情な金持ちの党」と揶揄してきた。 だが、ネベス氏の政策は、富裕層だけではなく、貧困層にも恩恵をもたらすはずだ。ネベス氏は、ブラジルを経済成長の軌道に戻すと約束している。ネベス氏やPSDBの実績を考えれば、その主張には信憑性がある。 PSDBはフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ政権下の1990年代に、インフレを克服し、近年のブラジルの発展の基礎を築いた。そして、ネベス氏は2期にわたる州知事時代に、ブラジル第2の人口を擁するミナスジェライス州を財政的な機能不全から救い出し、国内有数の学校を持つ優れた政治の見本へと変えた。その主な原動力になったのは、官僚主義の削減だった。 また、ネベス氏には、投資家の尊敬を集める元中央銀行総裁アルミニオ・フラガ氏を筆頭に、有能な顧問チームもついている。ネベス氏のチームは、健全なマクロ経済政策への回帰だけでなく、閣僚数の削減、有権者に対する議会の説明責任の拡大、税制の簡素化、民間インフラ投資の促進も公約に掲げる。 勝利にふさわしいのはネベス氏だ。ネベス氏は粘り強く選挙戦を戦い、経済政策を機能させる能力があることを証明してきた。社会福祉にとって最大の脅威は、PTの誤った経済政策だ。運が良ければ、貧困層出身の元PT党員であるマリナ・シルバ氏の支持を得て、ネベス氏の主張の説得力が強まるはずだ。 ブラジルに必要なのは、成長とより良い政権だ。それを実現できる可能性は、ルセフ氏よりもネベス氏の方が大きい。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41993 |