03. 2014年9月09日 13:34:07
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本格的に、反グローバル化が進み、世界の紛争激化と貧困化が始まるかなhttp://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0H400H20140909 コラム:英国分割に現実味、ポンド急落は「前兆」か 2014年 09月 9日 09:15 JST [4日 ロイター] - アナトール・カレツキー 過去268年間にわたり侵略や革命、内戦に縁のなかった唯一の大国であり、欧州で最も安定している国である英国──。その地図が、まもなく塗り替えられる可能性について、今週までスコットランド以外の人はほとんど誰も真剣に考えていなかっただろう。 だが、9月18日に実施されるスコットランド独立の是非を問う住民投票後、英国が今の姿とは変わる可能性は、かなり現実味を帯びてきたように見える。 調査会社ユーゴブ(YouGov)が2日公表した世論調査の結果で、スコットランド独立をめぐる風向きは急変した。同調査では、態度保留などを除くと、独立賛成派が47%、反対派が53%となり、これまでの調査と比べ、その差が大きく縮小した。 こうした結果について、ユーゴブのプレジデント、ピーター・ケルナー氏は「今や賛成派の勝利は現実に起こり得るところまで来た」と指摘。住民投票は接戦になると予想した。同氏はまた、独立賛成派が1人の票を失うごとに4人の票を獲得する一方、反対派は1人を獲得するごとに2人の支持を失っていると分析した。支持政党別のデータ分析からも同様の結果が得られ、世論の変化は本物だと言える。 また、こうした統計的な分析を超えて、英国の分割が本当に起こり得ると信じる理由がいくつか存在する。 第一に、世論の変化には明らかなカタリスト(触媒)が作用している。8月25日のテレビ討論会後の世論調査では、独立に賛成するスコットランド国民党(SNP)のサモンド党首が明らかに勝利した。 さらに根本的な問題として、大きな争点は経済問題だとされ、リスク回避の現状維持に票が集まるとみられていたが、それも間違っていたことが証明された。現在、多くの有権者は独立の政治的側面に主に焦点を合わせているように見える。 スコットランド人の多くは、自国がスカンジナビア型社会民主主義国家となり、特に1979年にマーガレット・サッチャー氏が政権の座に就いて以降、英国の保守主義に抑圧されてきた集産主義的な国民精神を取り戻すチャンスとして独立投票を捉えている。また、先の英総選挙でスコットランドの保守党がわずか1議席の獲得にとどまったことは、こうしたイデオロギー的な相違を示す確かな証拠と言える。 独立機運の高まりの背景が何であれ、金融市場は急に注目し始めた。2日のユーゴブ世論調査は英ポンドの急落を招き、1カ月物インプライドボラティリティは急上昇、1日としては2011年のユーロ危機以降で最大の上げとなった。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS) 株も急落した。こうしたパニック的なリアクションも当然だろう。 たとえスコットランド独立の可能性がかなり低いままだったとしても、住民投票がもたらす結果は計り知れないものとなるだろう。金融市場や世界のビジネスリーダーたちがまだ完全に理解していない他のあらゆるリスクの引き金となりかねない。 金融分析やビジネス分析の大半は、当然のことだが、通貨政策や金融機関の政府保証、北海油田からの収入といった経済問題に集中している。こうしたことと同様に厄介なのが、独立による政治的な結果だが、こちらの方がもっと混乱をもたらす可能性がある。 スコットランド住民投票後には恐らく、保守党の右派メンバーはキャメロン英首相に反旗を翻し、さまざまな問題が起こり始めるだろう。反乱が起こり得るもう1つの理由は、英国議会からスコットランドの労働党が去った後、皮肉にも今後は英国の選挙で保守党が勝利しやすくなるであろうことだ。こうした自信が、今度は保守党内で穏健派のキャメロン氏よりも、ユーロに懐疑的で右派的な考えを持ったリーダーを望む声が高まることにつながる可能性が出てくる。 キャメロン首相が独立投票の敗北を乗り越えられようと、られまいと、英国で総選挙が実施される2015年5月には憲法上の大きな課題が立ちはだかる。スコットランドの独立は、この総選挙の結果を経て成立する政府の民主的な正当性を打ち砕くことになる。 もし総選挙で労働党が過半数を獲得するならば、その勝利を左右するのはスコットランドの議員だが、彼らは2016年もしくは17年の独立交渉後に英国議会から除籍されることになる。つまり、たとえ来年の総選挙で労働党が主導する政府が誕生したとしても、それは民主的な負託を持たないことを意味する。 一方、保守党が来年の総選挙で勝利すれば、スコットランドがたとえ独立したとしても、支持獲得の拡大に極めて大きな自信を持つことになるだろう。もしキャメロン首相が、スコットランド独立後に欧州連合(EU)からの離脱を強硬に訴える首相に取って代わられるなら、英国の有権者が国民投票でEU離脱を支持することはほぼ間違いない。 最後に、スコットランド独立投票で、反対派が辛勝した場合の影響も検討する必要がある。最新の世論調査で示されているように接戦だった場合、ナショナリストたちがそれを最終結果として受け入れることはまずないだろう。キャメロン氏の首相としての、そして保守党党首としての権威は失墜し、すでに「接戦で勝敗の予想がつかない」来年の総選挙も労働党へと優位に傾くだろう。たとえ保守党が権力の座に居座り続けたとしても、2017年末までに予定されているEU離脱の是非を問う国民投票の結果は不透明さを増すばかりとなろう。 要するに、スコットランド独立投票で反対派が大勝しない限り、政治不安は英国で恒常化するように見える。そのような明確な勝利がもはや望めない現在、今週起きたような英ポンドや他の英国資産のボラティリティ急上昇は今後起こり得ることの「前兆」なのかもしれない。 *筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 *アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。 |