04. 2014年4月19日 12:29:23
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〔クロスマーケットアイ〕「真水の株価対策」待つ日本市場、海外まだら模様で慎重さも 2014年 04月 18日 18:14 JST [東京 18日 ロイター] - 東京株式市場は一段と薄商いだが、政府による新たな株価対策に期待が高まり、強含みの展開だ。政府側からの相次ぐ「口先介入」が株価を下支えている。ただ、消費増税の影響など内外に多くの懸念要因があり、海外の経済指標や企業業績もまだら模様が続く。株価対策の「真水部分」が明らかになるまでは、リスクオンにも限界がありそうだ。 <アベノミクスの要諦>日銀緩和期待が後退した今、市場で一番ホットな話題は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だ。麻生太郎財務相が18日、閣議後の会見で、「GPIFの動きが6月以降出てくる」とした自身の16日の発言の趣旨について、6月の成長戦略改定で、GPIFの運用の在り方が議論されることになっていると説明すると、日経平均 は上げ幅を拡大させた。 発言自体は目新しい内容ではなかったが、「GPIF関連の材料はどんなものでも短期筋が飛びつきやすい」(国内投信)のが現状だ。同財務相は、自身の発言で日経平均が420円高となったことに「迷惑した」と語ったそうだが、市場はそうは見ていない。「1万4000円を割り込みそうになったことを意識して、あの発言が出た」(国内証券)との見方がもっぱらだ。 「アベノミクスの要諦は株価にある」(T&Dアセットマネジメント、チーフエコノミストの神谷尚志氏)との声は多い。期待感をベースにするアベノミクスへの評価を端的に示す「指標」が株価であるためだ。国債市場の流動性を犠牲にする金融緩和や、政府債務を増やす財政政策など政策には副作用も小さくないが、株価が上昇していれば、トータルでみて効果が出ていると抗弁できる。 安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁が15日に会談したことや、首相が17日に都内で講演し、海外勢の注目度が高い法人税について「改革に取り組まないといけない」と語ったことも、市場では「株価対策」の一環とみる声は多い。使い勝手が悪いとされるNISA(少額投資非課税制度)の改革を求める声も、開始3カ月半で早くも出てきている。矢継ぎ早の材料に、市場では「1万4000円はアベノミクスの岩盤ライン」(国内証券)との声も聞かれてきた。 <「口先介入」だけでは限界> ただ、18日の東証1部売買代金は1兆1502億円と今年最低。出来高も12億株と今年最少となった。今週は15日も今年3番目に少ない商いだった。米国など主要市場が「聖金曜日」で休場とはいえ、政策期待で日本株を買っているのは短期筋などごく一部。やはり海外勢が復帰するまでは、日本株の盛り上がりは期待しにくい。
その海外投資家は、経済指標や企業業績がまちまちで方向感を失っているとみられている。米経済は4─6月期以降、成長が加速するとの見方は多いものの、住宅関連指標など弱い指標もある。インテル やゼネラル・エレクトリック(GE) は堅調な業績として評価されたが 、グーグル やIBM は市場予想を下回ったとして株価は軟調だ。いわゆるモメンタム株の調整が止まったのかはまだわからない。 一方、中国も景気減速への懸念が解けない。第1・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前年比7.4%(年率)となった。市場予想の7.3%は上回ったことで、マーケットでは好感する動きもあったが、前年比ではなく、日本などでよく使う前期比でみれば、過去3四半期は2.2%、1.8%、1.4%と徐々に減速している。 しかし、政府の成長率目標は依然として7.5%。 大和総研シニアエコノミストの斉藤尚登氏は「問題先送りになりかねない。成長率目標を維持するために景気対策が打たれたとしても、それは潜在的な不良債権を増やすことになり、結果的に構造改革を遅らせることになる」と警戒する。 昨年まではアベノミクスという日本独自の材料があったが、現在ではやや色褪せ気味だ。海外材料の変化でヘッジファンドなどによるリスクオンとリスクオフが日本株市場でも繰り返されている。現物と先物を合計した海外投資家の売買動向は、前々週が約8400億円の買い越しだったが、前週は一転約6600億円の売り越しになった。日経平均で約550円上昇した今週は再び買い越しに転じているとみられている。
日経平均は心理的節目の1万4500円を回復。4月前半の下落に対し、半値戻しをほぼ達成した。ここからは戻り売りも出てくるほか、テクニカル的な節目も多く、売買ボリュームが少ないままでは上値を追うのは難しくなる。「口先介入」だけでは限界は近い。国内の長期投資家を呼び戻すような、短期的な需給対策ではない日本経済の持続的な成長力を上げるための政策が求められている。 (伊賀大記 編集:北松克朗) <東京市場 18日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日経平均 国債先物6月限 国債333回債 ドル/円(15:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 14516.27円 145.06円 0.600% 102.39/41円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +98.74円 +0.01円 変わらず 102.39/41円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けの値。 下段は前営業日終値比。為替はNY午後5時。 コラム:増税悲観論に誤り、デフレ脱却は前倒しも=嶋津洋樹氏 2014年 04月 18日 15:32 JST 嶋津洋樹 SMBC日興証券 シニアマーケットエコノミスト
[東京 18日] -アベノミクスと黒田日銀によるデフレ脱却の可能性に懐疑的で、その手法に異を唱えてきた人々にとって、今年4月の消費増税は溜飲を下げるには絶好のタイミングだろう。 たとえば、筆者の周囲でも最近、こんな声をよく聞く。「消費者物価が所得に先んじて上昇すれば、実質所得が低下し、個人消費は失速が避けられない。そこに消費増税が加われば、景気回復の腰折れも時間の問題だ」。 確かに、身の回りの財・サービスを中心に、5%から8%への消費増税分(3%)以上値上がりしたものも少なくない。一方で、一部の企業でベースアップ(ベア)が実施されたとはいえ、すべての人の給料が消費増税分増えたわけではないだろう。財布のひもは固くならざるを得ず、当分の間、日本経済に逆風が吹くことは容易に想像がつく。しかし、果たしてそれはアベノミクスと黒田日銀によるデフレ脱却の失敗を意味するのだろうか。 実はここにきて勢いを増してきた悲観論には、大きな誤謬(ごびゅう)がある。というのも、実質所得の減少はデフレ下でも起き得るし、一方でたとえインフレ下で実質所得が減少しても、個人消費が底堅さを維持する可能性はあるからだ。 <黒田総裁が見せた自信の根拠は> ここで基本に立ち返って考えてみよう。まず、実質所得とは名目所得を物価で除したものだ。実質所得の減少は名目所得の伸び率を物価の伸び率が上回ることを意味するだけで、物価の伸び率がプラスかマイナスかは関係ない。 つまり、デフレ下でも物価が名目所得の落ち込みほど低下しない場合、実質所得は減少することになる(反対にデフレで名目所得が減少しても、物価がもっと低下する場合は実質所得が増加する)。 では、インフレ下とデフレ下で起きる実質所得の減少に違いはあるのだろうか。両者にそれほど違いがないならば、デフレ脱却にも意味がない。しかし、実際は持続性という点で大きな違いがある。それは収益を確保するため、財やサービスの価格が常にコストである賃金(所得)と同じかそれを上回る必要があることから説明できる。 つまり、財やサービスの価格が下落し続けるデフレ下では保有する現金の価値が高まるため、財やサービスの消費意欲が損なわれ、需要は失われていく。企業にとって、実質所得(実質賃金)の減少は利益率や価格競争力の向上を意味するが、デフレ下では需要そのものが失われるため、行き詰まる。 一方、インフレ下で起きる実質所得の減少は少なくとも理論的に無限だ。実際、デフレ下で起こったこととは反対に、財やサービスの価格が上昇。現金をそのまま保有し続けることは購買力を失うことにつながるため、財やサービスの消費意欲が刺激される。それは新たな財やサービスの誕生につながるだろう。インフレ下では一般的にデフレよりも借り入れの返済が楽で、新たな財やサービスのための投資も決断しやすい。 また、実質所得の減少は企業にとって利益率や価格競争力の向上と言え、収益力を高める。いずれはその一部が株主や従業員にも還元されるはずだ。もちろん、ハイパーインフレのような極端なインフレの場合、需要は金など一部の現物資産だけに集中する可能性が高い。極端なインフレはデフレと同様、持続的とは言えない。しかし、マイルドなインフレはマイルドなデフレと異なり、持続的だと考えられる。 日本ではデフレが約20年間続いたこともあり、インフレの世界を具体的にイメージすることは難しい。デフレ下の常識では価格の引き上げは需要の落ち込みを招く。だが、期待インフレが高まれば、次の値上げの前に買うという選択肢も検討される。その分だけ需要の落ち込みは限られるはずだ。それを「需要の先食い」と批判するのは簡単だが、デフレで「需要の先送り」が起こることには問題はないのだろうか。両者を比べれば、マイルドなインフレで需要が刺激されることの方が健全だろう。 なお、一部の企業が今回の消費増税にあわせて実施した価格転嫁の結果に筆者は注目している。消費者がそれを受け入れるならば、デフレ脱却はほぼ達成されたと言えるだろう。 黒田総裁は8日の金融政策決定会合後の記者会見で、物価目標の達成について、「従来同様、確信を持っている」と語った。「従来同様」と前置きしたものの、「確信」という言葉に強気の姿勢がにじむ。根拠の一つに需給ギャップの縮小をあげていたが、本当は消費増税後の企業へのヒアリングなどを通じて価格転嫁が浸透しつつある手応えをつかんだのではないか。デフレ脱却のタイミングは一般に考えられているよりも早い可能性がある。 *嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here) |