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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140219-00000000-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 2月19日(水)13時29分配信
ソニーのセグメント別の業績 (C)BBT総合研究所
ソニーは2月6日、テレビ事業の分社化とパソコン事業の売却などを柱とするエレクトロニクス事業の再建策を発表した。リストラにより国内外で約5000人の人員を削減する。スマートフォンやゲームなどに経営資源を集中し、エレクトロニクス事業の再生を急ぐという。
■ソニーの柱は金融事業、モバイルは売上増だが赤字
まず、ソニーの事業構造を見てみたい。「ソニーのセグメント別の業績」をご覧いただこう。
売上高で見ると、モバイル事業が2011年度の6230億円から2012年度には1兆2580億円と大きく伸びている。だからこそ、平井一夫社長もスマホなどに経営資源を集中していく方針を打ち出したのだろう。
ただし、モバイル事業の営業利益は2012年度にマイナス972億円となっているので、そこに注力する路線が正しいかどうかは不透明な状況だ。
いまスマホの世界ではトップ企業といえども価格低下に悩んでいる。デジタル機器すべてが経験してきた普及期以降の急激な価格低下である。すでにインドでは7000円スマホが出回っているし、いずれは5000円(50ドル)くらいになると予想されている。もちろん「Xperia」に代表されるような高機能の機種を好むセグメントもあるだろうが、ソニーの屋台骨を支えるだけの量が確保できるとは思えない。
実はソニーの中で最もピカピカな事業は金融事業である。2011年度には8720億円、2012年度には1兆80億円と売上高も堅調。営業利益はセグメント別に見て断トツで、2011年度には1314億円、2012年度には1458億円となっている。しかしこの事業の大半は国内で、旧態依然とした業界に挑戦した商品や販売手法が奏功して好調を維持している。好業績だが、「世界のソニー」の看板事業にはなりにくいと思われる。
また、「その他」事業も利益を上げている。営業利益は2012年度に910億円となった。これはインターネットサービスプロバイダー事業の「So-net」、メディカル、ネットワークといった雑多な事業が比較的調子が良いからだ。
■テレビ事業をなぜ、いま「売らない」のか
モバイル事業、金融事業以外はあまりパッとしないなか、ソニーはテレビ事業を分社化することにしたわけだが、テレビ事業は売りには出さないという。わざわざ分社しておいて売らないというのは珍しいケースで、ではどうして分社したのか理解に苦しむ。
ただ実際問題として、ソニーのテレビ事業を欲しがるところは少ないだろう。なぜなら、ソニーのテレビは「SONY」がブランド名になっているからだ。アナログ時代の「トリニトロン」などと違ってデジタルテレビは差別化がほとんど効かない。アメリカでは新参者の台湾系VIZIOがシェアトップに躍り出るなど、ブランド信仰よりも価格で選択されている。「It’s a Sony」も博物館で見る時代、ということになった。
かつてパナソニック(当時は松下電器産業)が米モトローラのテレビ部門を買った時、売却のために「Quasar」という名前を急遽付けていた。松下の人の話では、「モトローラという老舗ブランドでテレビが売れるならと思っていたが叶わなかった」という。IBMのPC部門を売却する時には、「IBM」を5年間語り、「ThinkPad」というブランドは永久に使うことができる、という条件となっていた。パナソニックの苦い経験がこの業界では生きている、と考えて良いだろう。ソニーもテレビを売却する時には(今は使ってない失敗作の)「QUALIA」などのブランドにして、ブランドと一体で売却という動きを見せるだろう。
その点で、ソニーのパソコンは「VAIO」をブランド名にしているので、欲しがるところは多い。売却先が早々に投資ファンドの日本産業パートナーズへ決定したのも、「VAIO」という独立した名称が買い手にとって扱いやすかったという点も大きいだろう。
結局、ソニーにしてみれば、テレビ事業を「売らない」のではなく、このままでは「売るに売れない」というのが正直なところだろう。となると、分社化してテレビ事業の不採算性を強調したのは、あくまでも対内的なメッセージなのかもしれない。リストラを進めるために「テレビは本当に儲かっていないんだ」ということを目に見える形にした可能性はある。
■ブランド価値があるからVAIOの売却が成立した
パソコン事業については、世界的にパソコンで儲けることが難しくなっているという状況下で、VAIOを売ることになったのはしょうがないと言える。
パソコン業界の現勢力については「世界のPCシェア」をご覧いただきたい。
2006年には、米デルと米ヒューレット・パッカード(HP、ともにシェア15.9%)がトップで、以下、中国レノボ(7.0%)、台湾エイサー(5.8%)、東芝(3.8%)と続いていた。
それが2013年には、レノボ(16.9%)がトップとなり、以下、HP(16.2%)、デル(11.6%)、エイサー(8.1%)、台湾エイスース(6.3%)となっている。HPやデルといったトップクラスの会社でも、収益が出ないというのが現実だ。
幸いだったのは、VAIOは一部の人に人気があるということだ。軽いし小さいし、デザインも良くて、プロフェッショナルな感じもする。そういうブランドが売られてしまうのはもったいない気もするが、ブランド価値があるからこそ売却が成立したとも言える。
■思い切った「ソフト化路線」も中核事業には育たず
テレビやパソコンを切り捨て、モバイルやゲームに注力するとした今回の再建策で、ソニーは浮上することができるのだろうか。
近年のソニーの停滞ぶりを概観するために、ここで「ソニーの連結業績の推移」をご覧いただきたい。
このグラフを見てもわかるように、売上高、営業損益ともに緩やかな右肩下がりとなっている。2013年度は300億円の黒字と予想されていたが、今回の再建策で一転して1100億円の赤字になる見込みで、市場では失望売りが出ている。
出井、ストリンガーと続いた経営陣の時に思い切った「ソフト化路線」が採られ、デジタル家電の最も大切な時に“戦場”から目をそらしてしまった。しかし、冒頭の事業別売り上げと採算のグラフでも分かるとおり、映像も音楽も安定した中核事業には育っていない。
同じ頃、デジタル家電と携帯に傾斜していったサムスン電子がいま売り上げ22兆円を超え、収益も3兆6000億円を超えていることを考えると、仮にソニーが先駆者であるデジタル・エレクトロニクスの領域で踏みとどまっていたらこんな事にはなってなかったのではないか、と悔やまれる。
■株式市場が平井社長の発表に失望売り
ストリンガーの指名した平井社長は、株式市場との対話という点で非常に弱いと言わざるを得ない。
モバイルやゲームへの集中も冷静に考えれば決定打とは言えないし、先行きも不透明だ。なぜならモバイルは前述のように今でも収益を出していない上に、今後はさらに大きな価格戦争の波に飲み込まれる可能性が高い。
一方、ソニーのゲームは任天堂と同じくコンソール・ソフト一体型の戦略である。ソニーは任天堂ほど「スマホ拒否症」には陥っていないが、それでも「PlayStation 2」の栄光が戻ってくることは期待薄である。
PC事業とテレビ事業を切り離して、スマホとゲームに賭ける、という平井社長の打ち出した再建策では、「ソニーは迷走している」と思われても仕方がない。株式市場が平井社長の発表に失望売りしたのは、まさに「ソニーは大丈夫か?」と思わせるような(当然の)失望感が広がったからだろう。
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