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【 誰も入る事の出来ないメルトダウンした原子炉の内部 – 福島第一原発の現在の本当の状況を明らかにできるか? 】〈前篇〉
http://kobajun.chips.jp/?p=18774
2014年6月21日 星の金貨プロジェクト
福島第一原発の原子炉の解体廃炉を進めるためには、専用の道具を独自に開発する必要がある
素粒子・ミューオン画像解析技術により、今、メルトダウンした3基の原子炉の詳細を3次元映像化
新たな画像解析技術は、メルトダウンした原子炉内部の真の姿を明らかにできるのか?
マシュー・L・ワルド / ニューヨークタイムズ 6月17日
物理学の教科書の脚注部分でわずかに触れられることがある、それ程に普段なら私たちの生活に関わることはない特殊な物質が、福島第一原子力発電所の事故収束・廃炉作業における重要なカギとして浮上してくる可能性があります。
福島第一原発の中にあるもの、それはメルトダウンを起こした破壊された3基の原子炉の炉心、放射性物質まみれの数百トンに上るがれき、そして折れ曲がりねじれた金属フレーム、プルトニウム、セシウム、ストロンチウムです。
2011年に発生した巨大地震と巨大津波によって発生したメルトダウンの後、原子炉内にあった核物質のうちのほとんどは再び個体の状態に戻ったと考えられます。
しかしその周囲は破壊された原子炉の部品や崩れ落ちた原子炉建屋の建材で埋め尽くされ、これらの核物質はきわめて狭隘な空間の中に閉じ込められています。
しかしそれとて現実に中をのぞくことが出来た人間などは存在せず、技術者がそのように想像しているに過ぎません。
破壊された原子炉の重要な部品がどうなっているかを検証することが出来ない以上、誰も本当のことは知らないのです。
事故発生からすでに3年3カ月が過ぎましたが、実況見分のため原子炉内に入ることは危険過ぎる行為であり、カメラを入れるためどこかに穴を開けるなどすれば、そこから放射性物質が漏れ出す危険性があります。
原子炉の状態を監視するシステムが事故後の数日間全く稼働できなかったため、原子炉のどの部分が無傷であり、どの部分が溶け落ちてしまったのか、事故収束・廃炉作業にあたる技術者の手元にはコンピュータで解析を行うために必要なデータがありません。
そして原子炉建屋の亀裂などから放射性物質が漏れ出していることが予想されますが、分厚いコンクリートと鋼鉄などを組み合わせた構造のため、エックス線などの従来技術では、安全のため十分に離れた場所から建物全体の検証を行うことは不可能です。
米国のロスアラモス国立原子力研究所の最高技術責任者のダンカン・W・マクブランチ氏によれば、福島第一原発の原子炉の解体廃炉を行うためには、専用の道具を独自に開発する必要があります。
「原子炉内にある者が何であるか把握できれば、専用の道具の開発もそれだけやりやすくなります。」
マクブランチ氏がこう語りました。
「しかし実際には中がどうなっているのか、把握している人間は一人もいません。」
「その中に人間を送り込むことなどは考えられません。」
しかしミュー粒子(ミューオン)ならすでにその場に入り込んでいます。
数日中に福島第一原発の事故収束・廃炉作業の元請である東芝が厚さ3メートルのコンクリートや鋼鉄越しであっても、破壊された原子炉内部の3次元イメージを生成した上、ウランとプルトニウムを他の物質と判別・特定できる技術を持つ研究所と、技術提携に関する正式契約に署名するものと見られています。
米国エネルギー省は長い間この技術開発に取り組んできました。
限定された分野で、それ程革新的ではない技術ではありますがライセンスも付与しています。
アメリカ、ヴァージニア州にある会社が兵器級のウランまたはプルトニウムの密輸を防ぐため、その輸送容器をスキャニングするための装置にこの技術を実用化しています。
同研究所は精力的に研究を続けており、現在開発中の技術は検出ではなくマッピング技術、すなわちどの場所に何がどれだけあるのかを突き止める技術の開発に力がそそがれています。
これは地球上のすべての物体に電子の約200倍の質量を持つミュー粒子(ミューオン)が絶えず衝突しているという事実を利用するものです。
ミュー粒子(ミューオン)は大気中における分子と宇宙線の高エネルギー衝突によって生まれます。
ほぼ光速に近いスピードを持ち、雨のように地球上に降りそそぎ、数百フィートの深さまで地球内部に到達しています。
この際、偶然にミュー粒子(ミューオン)が原子核に衝突して方向が転じることがあり、その瞬間をとらえることによりその物質の形状と密度を知る手掛かりが得られます。
原子核と衝突して方向を変えたミュー粒子を捕捉し、そこにある物質が何であるかを判断する技術はミュー粒子断層撮影と呼ばれています。
「X線写真を撮影するのと似ていますが、物理的特性はまったく異なるものです。」
マクブランチ博士がこう語りました。
ヴァージニア州のこの会社の名は『ディシジョン・サイエンス・インターナショナル』、12メートルの長さの貨物輸送車両を外部からスキャニングし、45秒で中にウランやプルトニウムが隠されていないかどうか、ミュー粒子断層撮影を行う技術を持っています。
しかし短時間の解析では、それ以上詳しい情報は入手できないと言います。
ロスアラモスの科学者たちが指摘するように、福島第一原子力発電所内での作業ではもっと長時間の照射・解析が必要になります。
場合によっては数週間の単位で。
〈後篇に続く〉
http://www.nytimes.com/2014/06/18/world/asia/measuring-damage-at-fukushima-without-eyes-on-the-inside.html?_r=0
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お気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが、この記事は編集中のものを手違いで20日(金)に12時間ほどアップしてしまいましたが、あらためて編集を完了した上でご紹介いたします。
これまでどうにも実態の確認が出来なかったメルトダウンした原子炉の中の状態を、来年2015年には明らかにすることが出来そうだという記事です。
事故後実に4年という月日を要することになります。
今願う事は実態を把握することで、事故収束・廃炉作業の具体的手順が見えてくることです。
溶け落ちた核燃料を回収することは、可能なのでしょうか?
この事実を見ても、福島第一原発の状況は「コントロールされている」などと言う『見解』が、以下に誤ったものであるかが痛感されます。
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【 誰も入る事の出来ないメルトダウンした原子炉の内部 – 福島第一原発の現在の本当の状況を明らかにできるか? 】〈後篇〉
http://kobajun.chips.jp/?p=18789
星の金貨プロジェクト 2014年6月22日
原子炉内部のコンクリート片、鋼材、水などをウラン、プルトニウム、その他の重金属と明確に区別
海外の優れた技術の導入に、やっと前向きに取り組み始めた東京電力
マシュー・L・ワルド / ニューヨークタイムズ 6月17日
ミュー粒子画像解析技術により解析結果を3次元の画像イメージとして表現することが可能になり、福島第一原発の事故を起こした原子炉内部にもあるはずのコンクリート片、鋼材、水などをウラン、プルトニウム、その他の重金属と明確に区別することが可能になります。
「福島第一原発の場合は密輸を取り締まるための貨物検査のように、その場で結果を出す必要はありません。福島第一原発で必要なのは詳細で正確なデータであり、検証に必要な時間は充分に確保することが出来ます。」
今回東京電力にミュー粒子画像解析技術の技術を提供する、『ディシジョン・サイエンス・インターナショナル』の最高責任者であるスタントンD.スローン氏がこう語りました。
実証実験は今年後半に予定されており、来年には決定画像データが入手できる予定になっています。
「設計製造された段階と比較して、メルトダウンの後何がどのように破壊され、何がどの部分に存在しているか、それがかなり早い段階で明らかになるものと考えています。」
スローン氏はこう語りました。
ロスアラモス原子力研究施設を運営する米国エネルギー省は、必要な解析機器を製作するための正式な契約をディシジョン・サイエンス・インターナショナル社と締結してはいませんが、同社は近々契約が成立するものとみています。
スローン氏は必要な機器の開発費用がいくらになるのか明らかにしていませんが、通常の原子力発電所設備に比べれば、それ程高額なものにはならないはずです。
開発に係った費用については東芝がロスアラモス研究所に弁済する形になりますが、関係者が明らかにしたところでは50万ドル(約5,000万円)を下回る見通しです。
ロスアラモス研究所は、この技術の開発に400万ドル(約4億円)を費やしました。
ディシジョン・サイエンス・インターナショナル社はその製品化にさらなる投資を行なっていますが、金額については明らかにしませんでした。
福島第一原発の事故現場において、ロスアラモス研究所はこれまでほとんどソフトウェアの分野において貢献をしてきました。
またミュー粒子断層撮影を行う際に使われる、掲示板サイズの探知装置を2基取り付けた検測装置が損傷を受けていない小型の原子炉の原子炉建屋の両側に設置され、すでに実験が行われました。
この装置は見た目が教会内のパイプオルガンのような形をしています。
それぞれのパイプにはアルゴンを含む不活性ガスが充填され、ミュー粒子が衝突した瞬間に表示装置に結果が現れます。
一本一本のパイプ状の計測装置はミュー粒子の入射経路、出射経路、およびその角度を正確に記録して行きます。
(一個一個のミュー粒子を識別することはできませんが、補足したタイミングによって技術者はミュー粒子の行き来について判断が可能になります。)
ミュー粒子の計測装置は原子炉建屋内に設置する必要はありません。
破壊された原子炉付近に計測装置を設置すると、メルトダウンにより溶け落ちた核燃料が放射するガンマ線が正確な計測を邪魔することになるからです。
計測装置は原子炉建屋の外壁から1メートルほどの場所に設置され、厚さ約10センチの鋼鉄で覆われます。
この鋼鉄はガンマ線が入り込むのを防ぎますが、ミュー粒子の計測には影響ありません
ミュー粒子は海抜ゼロメートルの地点で、1平方メートル当たり毎分10,000個計測することが出来ます。
このうち計測器でとらえることが出来るのは数個というレベルであり、このため福島第一原発の原子力発電の内部について明確な画像を描くためには少なくとも数週間の間計測を続ける必要があります。
ミュー粒子断層撮影は、全く新しい技術という訳ではありません。
エジプトのギザのグーレート・ピラミッドの内部探査に、すでに1960年代に使われたことがあります。
マクブランチ博士によれば、現在の技術は当時とは比較にならない程精度が高くなっています。
日本は福島第一原発の事故収束・廃炉作業を進めるため、海外の技術を取り入れることに一層積極的になっています。
今月にはカリフォルニア州アーヴィンに本社を置くクリオン社との契約を公表しました。
同社は340,000トンに上る汚染水から放射性ストロンチウムを取り除く移動式のシステムの技術を提供することになっています。
東京電力の顧問を務めるレイク・H.バレット氏は、ミュー粒子断層撮影についてそれほど多くを期待している訳ではありませんが、試してみる価値はあると語っています。
バレット氏はペンシルヴェニア州ハリスバーグで起きたスリーマイル島事故の際、米国原子力規制委員会の現地の責任者を務めた経験を持ち、現在は東京電力社長の特別顧問を務めています。
福島第一原発の事故現場でミュー粒子断層撮影の技術が使われることについて、次のように語りました。
「拡散防止のためにアメリカ政府が数百億円をかけた開発した技術が、福島第一原発の事故現場で応用されるのを見ることは喜ばしい限りです。」
「各分野の優れた技術を取り入ることにより、事故収束・廃炉作業が一層進む効果が期待できます。成り行きを静かに見守りましょう。」
「結果については、私たち全員が楽観的に考えています。」
< 完 >
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