01. 2014年8月01日 11:14:48
: nJF6kGWndY
中国不安定化予想が増えてきそうだなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41388 JBpress>海外>中国 [中国] 周永康立件は単なる権力闘争にあらず 中国株式会社の研究(252):中国共産党激震? 2014年08月01日(Fri) 宮家 邦彦 7月29日、ついに中国共産党は周永康・元政治局常務委員に対する「調査」が始まったと正式に発表した。本邦マスコミは、この事件を党内権力闘争の一環と捉え、習近平総書記の権力基盤の行方にばかり関心が向いている。 もちろん、元来天邪鬼の筆者の見立てはちょっと違う。例によって、今週も筆者の独断と偏見にしばらくの間、お付き合い願いたい。(文中敬称略) なぜ今、周永康なのか 中国共産党、周永康氏を調査 「重大な規律違反」の疑い 全国人民代表大会(全人代)に出席する周永康・政治局常務委員(当時、2012年3月5日)〔AFPBB News〕 新華社の報道は素っ気ないものだった。中央規律検査委員会が周永康の「重大な規律違反」について「調査を開始した」と報じた以外、詳しい論評はなかった。 しかし、専門家が「重大な規律違反」と聞けば、それは汚職事件を意味する。これで周永康の政治生命はほぼ絶たれた、と考えてよいだろう。 本邦主要日刊紙の関連記事はなぜか似たり寄ったり。ここは失礼を省みず申し上げる。 各社で共産党内部事情を丹念に追ってきた優秀な中国専門記者たちは習近平、薄熙来、周永康、江沢民など実名を織り交ぜながら、党内権力闘争について、ここぞとばかり、書きまくっているような気がする。 具体的には次の通りだ。 ●習主席、権力基盤固め(朝日) ●「反腐敗」で政敵排除、習氏に権力集中(読売) ●周永康氏の立件決定 習主席、権力固め(毎日) ●「危険分子」前例なき追及、習主席、台頭許さず(日経) ●【周永康氏失脚】 習氏、政敵“粛清”で崩れる党内バランス(産経) ●習氏、肥大する権力 周永康氏を汚職で取り調べ(東京) ここで詳細をご紹介するスペースはない。周永康失脚が党内権力闘争の一環であることを否定するつもりもない。唯一、筆者が気になるのは、本件を権力闘争という視点のみから分析することが、「木を見て森」どころか、「枝を見て、森を見ない」分析の典型例にならないか、ということだけだ。 バランスの取れたワシントンポスト記事 この点、ワシントンポスト関連記事の方がはるかに面白かった。書いた記者はニューヨーク生まれの中国系米国人だと思う。周失脚を以前ならあり得ない汚職摘発と見る点は日本マスコミと変わらないが、事件の政治的背景を決めつけず、様々な見方をバランスよく紹介している点を筆者は特に評価している。 例えば以下のような書きぶりだ。読者の皆さんはこの日米の違いをどう思われるだろうか。 ●ある米国人実業家は、今回の周永康に対する措置は習近平が反腐敗運動にいかに固執しているかだけでなく(the move reflects the tenacity of President Xi Jinping’s anti-corruption drive)、2012年の総書記就任以来習近平が権力を完全に確立したことを示していると見ている(The announcement revealed how thoroughly Xi has consolidated his power since taking over the party in 2012)。 ●一方、党関係者の中には、こうした措置は党内各派閥の有力者や既に引退した有力指導者までが将来同様の調査対象となる可能性を高めるものであり(raises the possibility of future investigations into their own patrons and former top leaders)、習近平政権が依存するこれら党内諸派閥から強い反発が出るリスクがあると見る向きもある(the move risks generating a backlash from various party factions on whose support he depends to rule)。 習近平の権力は本当に確立したのか 中国の習主席が韓国を公式訪問、北朝鮮を冷遇 今年7月、ソウルを訪問した習近平国家主席と夫人の彭麗媛氏〔AFPBB News〕 繰り返すが、本邦主要日刊紙記事の見出しにある「習近平権力確立説」は本当に正しいのだろうか。 習近平は中国共産党のトップ、総書記だ。この人物が一度、何某の「重大な規律違反」につき調査すべしと本気で言い出したら、これに長期間抵抗できる共産党員はごく限られた有力者のみだろう。 短期的に見れば、周永康に対する「調査」の開始は習近平の権力確立を暗示するものかもしれない。しかし、中長期的には、潜在的反対派から逆襲されることも十分あり得るだろう。少なくとも現時点で、習近平の権力基盤が固まった、などと断定的に分析するのはやや時期尚早ではないか。 筆者の疑問はこうだ。 習近平の政治的権威が本当に確立していれば、周永康に対しあれほど手の込んだキャンペーンを張る必要などなかっただろう。習近平が敵対者からの挑戦に対し脆弱であったからこそ、逆に、強敵に対し異例とも思える強権を発動したのではないのか。 疑問はそれだけではない。 そもそも、今回の周永康失脚は本当に党内権力闘争の結果なのか。習近平が権力を確立するか否かに関係なく、今回の措置は中国共産党全体にとり、その政治的指導と統治の正統性を維持するために、必要に迫られた、やむを得ない異例の選択ではなかったのか。 トカゲの尻尾切り 最後に筆者の相変わらずの独断と偏見をご紹介したい。まずは、今回の周永康失脚劇を、中国共産党内部の権力闘争の一環と捉えるだけではなく、共産党全体の将来に関わるより大きな問題として考えることから始めよう。 そもそも周永康という男、悪い噂しか聞こえてこない。ついた渾名は百鶏王(百人の妾を持つ好色王)、それ以外にも金の亡者とか、権力の犬とか言われてきたそうだ。さすが中国の庶民は本質を見抜くのが得意である。 さらに、共産党にとって困ったことは、問題が周永康個人やその一族・関係者に限らないことだ。これまでも中国全土に不正・腐敗事件はあったが、最近の高級幹部の醜悪さは特に目に余る。不正があまりにも蔓延し、中国共産党の文化全体を蝕んでいるのではないか。当然、庶民はそれを冷ややかに見ている。 このままでは共産党の指導・統治の正統性そのものが危機に瀕する。中国庶民の共産党に対する反感は限界に達しつつあるのではないか。そうであれば、従来のように大臣レベルなどの準高級幹部の首を切ってお茶を濁すことでは済まなくなり、政治局常務委員にも手をつけざるを得なくなったのではないか。 以上を前提として、最後に筆者の見立てをご披露しよう。 (1)共産党内の不正・腐敗がこのまま是正されなければ、国民の不満は制御不能となる可能性すらある。 (2)周永康の失脚は、党内権力闘争の結果と言うより、必要に迫られた「トカゲの尻尾切り」にすぎない。 (3)今回の事件により習近平の権力基盤が強化されたと判断するのはあまりに時期尚早であろう。 (4)習近平に身内の「既得権者」を厳しく罰する意志がなければ、政敵の逆襲は時間の問題となろう。 (5)腐敗撲滅には強権が必要だが、習近平が選択的強権発動を続ければ、いずれ権威を失墜しかねない。 要するに、周永康失脚は習近平の権威確立の最終段階ではなく、むしろ、中国共産党の「統治の正統性」に対する中国国民の挑戦の前兆と見るべきなのだ。 その兆候は昨年秋あたりから新疆ウイグル自治区を中心に既に始まっている。今や「共産主義」という名の「漢族による他民族支配」の是非が問われ始めているのかもしれない。 |