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2月27日、マレーシア領のボルネオ島サラワク州から沖に約80キロ離れた場所にある暗礁。容易に見過ごされるかもしれないほどのものだが、中国海軍は同暗礁の近海で1年以内に2度「主権宣誓活動」を行い、マレーシア政府に衝撃が走った。写真は中国海軍兵士。1月撮影。資料写真(2014年 ロイター/Andreas Manolis)
焦点:南シナ海で狭まる「中国包囲網」、友好国マレーシアも態度硬化
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2000020140301
2014年 03月 1日 09:11 JST
[クアラルンプール 27日 ロイター] -マレーシア領のボルネオ島サラワク州から沖に約80キロ離れた場所にある暗礁。容易に見過ごされるかもしれないほどのものだが、中国海軍は同暗礁の近海で1年以内に2度「主権宣誓活動」を行い、マレーシア政府に衝撃が走った。
問題の暗礁はジェームズ礁(中国名・曽母暗沙)で、マレーシア領海の外に位置しているが、同国の排他的経済水域(EEZ)内にある。
南シナ海の9割の海域で領有権を主張する中国。複数の上級外交官らはロイターに対し、中国軍の行動によって、マレーシアは中国の主張に対する姿勢を大きく変えたと指摘する。
外交官らによると、マレーシアは今年1月の中国軍による主権宣誓活動をきっかけに、中国の主張に最も積極的に反発するフィリピンとベトナムとの連携を強化。南シナ海における行動規範によって、中国の動きを抑えたい考えを明確にした。
また、中国の海洋進出強化の動きは、マレーシアが米国との結びつきを強めることにもつながり、東南アジア諸国と中国との溝は深まるばかりだ。
中国はマレーシアにとって最大の貿易相手国。そのため、マレーシアはこれまで、経済関係を優先し、安全保障問題については懸念を示してこなかった。
ジェームズ礁は中国本土から約1800キロの位置にあり、マレーシア、フィリピン、ベトナムなどほぼすべての東南アジア諸国からの方が距離的に近い。
それでも、中国は同暗礁を最南端の領土だと譲らない。中国は南シナ海の権益を主張するため、9本の境界線「九段線」を地図上に引いているが、同暗礁はその内側に含まれている。
中国国営メディアが配信した1月26日の写真では、数百人の中国海軍兵士が艦船の甲板に集まっているのが確認できる。この艦船のほか、駆逐艦2隻とヘリコプター1機が、ジェームズ礁付近で共に行動したと報じられた。
一方、マレーシアの海軍トップはこの報道を否定。ベルナマ通信に対し、中国艦船はマレーシア領海から遠く離れた位置にいたとコメント。ただ、軍事アナリストらによると、マレーシア軍が監視していなかったか、中国艦船を確認できなかったことから、報道を否定した可能性があるという。
また関係筋からは、中国艦船3隻がジェームズ礁近海で、中国の領有権を主張する「主権宣誓式」などを行ったことはほぼ確実だとの見方が示されている。
マレーシア戦略国際問題研究所の専門家Tang SiewMun氏は、中国艦船の最近の動きについて、「われわれにも鐘が鳴らされた」と指摘。「(両国間には)特別な友好関係があるため、ジェームズ礁については、中国の主権と国益を守る行動とは無関係だと思っていた」と述べた。
<行動規範>
1月の中国艦船の動きに対するマレーシア国民の反応は薄い。しかし、東南アジア諸国の外交官らは、マレーシアの外交官が、南シナ海における行動規範の策定に向けた中国との協議に対し、以前よりはるかに積極的になったと話す。
ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国と中国の代表からなる作業部会は、3月18日にシンガポールで行動規範の策定に向けた協議を再開する予定だ。ASEANと中国は昨年、協議を加速させることで合意したが、協議はさほど進展していない。
行動規範は、中国とASEAN加盟国の海上行動を詳細な規則で縛ることで、緊張関係の高まりを受けた衝突の発生を防ぐのが狙い。行動規範の策定について中国政府は、真剣に取り組んでいるとしている。
マレーシアのアマン外相は、中国艦船の動きを受け、フィリピンのマニラを予告なしに訪問し、フィリピン外相と会談。軍の報道官によると、議題は南シナ海に関することだった。
2月18日にはフィリピン、マレーシア、ベトナムの当局者が会合を開き、対中国政策を協議。事情に詳しい外交筋は「これまでは、フィリピンとベトナムのみが協議を進めていた。それが今ではマレーシアも加わった」と、マレーシアの態度の変化を説明した。
会合で3カ国の当局者は、中国の「九段線」を認めない方針で一致し、行動規範の策定に向けた交渉の早期再開を迫ることで合意。その上で、3月にクアラルンプールで開く会合への参加をブルネイにも要請することを決めたという。
マレーシアだけでなく米当局者もこのところ、中国に対する態度を硬化させている。ジョナサン・グリーナート米海軍作戦部長は、フィリピンが南シナ海の領有権をめぐって中国と衝突すれば、米国はフィリピンを支援すると発言した。
中国南海研究院のHongNong氏は、このような発言について「ASEANに影響を与える。これまで、米国が誰の味方になるかを明確に伝えたことはなかった」と語った。
<海軍基地>
2013年3月、中国艦船はジェームズ礁周辺で今年1月と同じような行動を取った。この行動に対し、マレーシアは中国政府に珍しく抗議を行った。
シンガポールの東南アジア研究所(ISAS)の上級フェロー、イアン・ストーリー氏は、「これら二つの事案は、マレーシアの国家安全保障体制にとって、とても憂慮すべきことだ」と分析。
その上で「将来同様の事案が発生することが予測される。中国人民解放軍はマレーシア領海に中国国旗を掲げるだろう。そうなれば、マレーシアは政策の転換を迫られるはずだ」と強調した。
マレーシアの政策転換はすでに進められているようだ。
昨年10月、マレーシアはジェームズ礁から最も近い主要な町、サラワク州ビントゥルに海軍基地を建設する計画を発表。米海兵隊をモデルにした部隊が駐留するという。中国には直接言及しなかったが、国防相は基地建設の目的は同海域の石油・天然ガス資源を守ることだとした。
マレーシアの軍事アナリストによると、米国はマレーシア版海兵隊の設立を支援するため、助言や訓練を行うとみられている。前出のTang氏は「この計画はとても重要だ」とし、米国とマレーシアの軍事関係を強化することになると付け加えた。
<経済関係>
マレーシアは中国に対する態度を硬化させているものの、マレーシア政府筋によると、中国との領有権問題をめぐってフィリピンと合同で国際裁判所に提訴する考えはない。
フィリピン政府は、国連海洋法条約に基づき国際裁判所に提訴。これに対し、中国側は裁判の手続きを拒否している。フィリピン側の弁護士は、この裁判には他国の参加も認められるとしている。
政府寄りのマレーシア紙ニュー・ストレーツ・タイムズは昨年10月、中国の習近平国家主席のマレーシア訪問を前に、同国は「地域紛争の解決には、より慎重で極めて繊細な対応を取る」と表明した。
マレーシアのナジブ首相は習主席との会談で、2017年までに相互貿易額を1600億ドルにする目標を設定。両国の経済関係はますます強化されている。
西側の外交官の1人は、対中・対米関係のバランスを保つというマレーシアの総合的な政策には大きな変化はみられないだろうと語る。
また、この外交官は「原則的にマレーシアは、ASEANの立場を取っている。しかし、それと同時に中国の反応を心配している」と指摘。「彼ら(マレーシア)は取引できると考えている。ただ中国は取引しないだろう。見ての通り、中国は少しずつその攻撃的な姿勢を強めている」と述べた。
(Stuart Grudgings記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)
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