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投稿者 スットン教 日時 2014 年 4 月 17 日 11:44:27: CmuKS.2SNuq/E
 




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小林秀雄 (批評家) - Wikipedia


ラスコーリニコフの悪夢


ツアーの秘密警察が跳梁する帝政ロシアにおいて、ドストエフスキーは人道主義的作品によって新進作家として華々しいデビューを飾った。間もなく社会主義サークル活動のかどで流刑の憂き目にあったドストエフスキーが、ペテルスブルクに帰還したのは1858年である。翌年、ダーウィンが「種の起源」を発表し、西洋キリスト教世界の伝統的世界観が合理主義の号令と共に激変を始める。日本では幕末に相当し、アメリカを先頭とする西洋列強と江戸幕府との間で通商条約の締結が行われている。この時期、ドストエフスキーは西欧へ視察良好へ出かけ、帰国後『地下室の手記』を皮切りに『カラマーゾフの兄弟』に至る一連の問題作の著作を開始する。『罪と罰』はその二作目に当たり、発表された1866年は日本では明治維新の二年前に当たる。


『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフは選良主義的超人思想にとりつかれたノイローゼ気味の青年である[27]。ラスコーリニコフは運命の歯車に引きずられて哲学的殺人を起こし、自らの挑戦に敗北して自首し、流刑地に送られる。この作品の終わり際に、主人公が病にうなされて黙示録的な悪夢を見るという、一見するとストーリーとは直接関わりのない不思議な場面が唐突に挿し挟められている。「アジアの奥地」で発生した意志と知性を持つ魔性の微生物がヨーロッパに蔓延し、人類は傲慢と孤独の狂気に取り憑かれて世界は崩壊してしまうというのが悪夢の内容である。


敗戦間もない1948年に発表された「『罪と罰』についてU」で、小林は以下のような言葉を残している。


誰に、新しい旋毛虫が笑へようか。理性がこの世に発生したのが、偶然アジアの奥地であつたとしても、誰に文句の附けようがあらう。


『罪と罰』で主人公はキリスト教的に救済されるが、この悪夢について作者ドストエフスキーはそれ以上、何の解説もせずに物語を終える。ドストエフスキー作品では唯一終末論が取り扱われ、冒頭で日本人の風習が話題になる次作『白痴』が発表されたのは、日本では明治維新の年に当たる1868年である。




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