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2013年11月5日
特定秘密保護法案を担当する礒崎陽輔首相補佐官が機密保護の対象となる「特定秘密」が約40万件になるとの見通しを示した。
現時点で機密扱いされているのは、約80分野の40万件。現在の機密は、防衛省と内閣情報調査室にしかない。法制化後は外務省、警察庁、公安調査庁の情報も加わり、指定解除される機密を差し引いて約40万件になるという。
「40万」の数字の大きさに驚く半面、現行法で秘密保護は十分可能とも分析できる。近年の漏えい事件で公務員が実刑になったのが1件という現実があるからだ。
一方、防衛省が2002年から現在まで「防衛秘密」の指定を解除したのは1件のみ。これに対し、11年から5年間に秘密指定文書が約3万4千件も廃棄されている。
秘密指定と廃棄が政府の意のままという状態は、決して健全ではない。新法ができれば、さらに拍車が掛かるだろう。国会や裁判所が政府をまともにチェックできないとすれば、三権分立の根幹にもかかわる大問題だ。秘密指定という行為そのものが、不正を隠(いん)蔽(ぺい)する温床にならないか危惧する。
情報公開が民主主義を強化すると期待される時代に、秘密指定と廃棄の是非に国民が口出しできないなら国民主権の国とは言えまい。
特定秘密保護法案は11年に政府の有識者会議がまとめた報告書が基本になっている。この会議は議事録を作成していない。職員もメモを廃棄したという。これでは立法過程について説明責任を果たせまい。これが法治国家か。
政府が9月に実施した法案概要に対する意見公募(パブリックコメント)に約9万件の意見が寄せられ、「反対」が77%を占めた。
「特定秘密の範囲が広範かつ不明確で、指定が恣意(しい)的になされる」などの意見があったが、国会に提出された法案は骨格部分に変化がなく、国民の意見を反映させた形跡はない。これでは国民の声を参考にするふりをした、アリバイ作りだと言われても仕方がない。
秘密保護法案は、考えれば考えるほど、国民の「知る権利」やこれを支える「取材・報道の自由」を侵害する危険性が大きいと指摘せざるを得ない。先月末の全国電話世論調査では過半数が法案に反対と答えていた。政府与党は数々の問題点の指摘、反対の民意を踏まえ、法案の成立を断念すべきだ。
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