01. 2013年7月16日 00:25:19
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JBpress>ニュース・経営>政治 [政治] アベノミクスを批判しない腰砕けの野党勢 もはや参院選の先を見据えているのか? 2013年07月16日(Tue) 筆坂 秀世 7月21日の参議院選挙に向けて選挙戦の真っただなかである。事前の世論調査によって選挙の帰趨はおよそ見えてきているが、結果は投開票日を待つしかない。 今回は、選挙の帰趨はともかく、この選挙戦で感じていることについて書いてみようと思う。 アベノミクス批判を欠落させた民主党マニフェスト 自民党、公明党の与党側は、アベノミクスを柱にして経済再生を前面に押し出している。不思議なのは、民主党の選挙公約だ。アベノミクスへの批判がまったくない。ただ「暮らしを守る力になる」「中間層を厚く、豊かにして日本経済を蘇らせます」などと述べているだけだ。 衆議院選挙で惨敗した民主党が、政権に復帰できる可能性は相当長期にわたって皆無だ。今後、民主党が政党として存続するかどうかさえ危ぶまれている。ましてや今回は、政権獲得とは本来無関係の参議院選挙だ。民主党は、野党に徹するしかない立場なのだ。 その民主党が、自民党最大の売りであるアベノミクスを正面から批判できないようでは、戦う前から白旗を掲げているようなものだ。これは与党ボケではないか。 維新の会もアベノミクスに触れず これは日本維新の会も同様だ。選挙公約にアベノミクスという言葉すら出てこない。憲法改正で自民党からの誘いを期待しているのだと思うが、選挙で自民党とも争う以上、アベノミクスに賛同なら賛同する、批判的なのなら批判する、という態度を明確に打ち出すべきであろう。 なぜなら選挙公約(マニフェスト)は、例外があるとは言え、基本的には与党だからこそ実現できることであって、野党の選挙公約は、おおむね実現不可能なのである。 であるならば、与党の政策を鋭く批判してこそ、選挙の争点を国民の前に提示することができる。野党が与党の批判を避けているようでは、早々と戦線離脱していると思われても仕方がなかろう。 誤解なきように言っておくが、アベノミクスを批判すべしと言っているのではない。少なくとも野党である以上、与党の最大の売りに対して評価を明確にすべきだと言っているのである。 明確にアベノミクスを批判しているみんなの党と共産党 この点では、同じ野党でもみんなの党と共産党は違っている。 みんなの党は、「アジェンダ2013」で「アベノミクスのアキレス腱、それは既得権益者たちとのしがらみです。お金をばらまくターゲティングポリシーや官民ファンドは無駄の温床にしかなりません」と厳しく批判している。「ターゲティングポリシー」とは、政府が特定の産業分野を戦略的に育成することだが、これには「政府がターゲット産業を見つけることなどできない」という批判がある。 共産党は、「アベノミクスの暴走許さず」として、「アベノミクスの『3本の矢』には、国民の所得を増やす『矢』は1本もありません」と批判している。 これらの批判が的を射ているかどうかは別にして、少なくとも野党の責任は果たしていると評価したい。 経済政策の本当の評価は、そう短時日の結果だけでは行うことはできない。アベノミクスについて言えば、少なくとも株価は大きく上昇した、円安も進み輸出産業に好影響を与えている。これから先、どうなるかは正直言って不明である。私自身は、分配政策がないことが気がかりではある。 しかし、いまのところ最大野党の民主党が政権批判にひるんでいるようでは、情けないとしか言いようがない。奮起を期待したいものだ。 維新か共産党かで迷う人 先日、ゴルフ仲間と談笑している時に、1人が「今度の参議院選挙はどこに投票するか迷っているが、維新の会か共産党に投票しようと思っている」と言うのである。 維新の会と共産党と言えば、日本の政界で両極と言ってもよい。憲法ひとつとっても、維新の会の石原慎太郎共同代表は、「現行憲法を破棄せよ」と主張している。共産党は「護憲」を主張している。まさに水と油である。だがこの人にとっては、何の矛盾もなく、この2つの党を受け入れ、どちらかを選択しようとしているのである。 理由を聞いてみると、「アベノミクスで喜んでいるのは、株を持っている金持ちや大企業だけだ。俺たちにとっては関係がない。維新の会の橋下徹は何かやってくれそうな気がする。共産党は、ともかく一貫して自民党を批判し続けている。だからどっちかにしようと思う」と言うのである。 これが一般的な人々の平均的な考え方なのかもしれない。実は、政策など関係ないのである。 それはそうなのだ。おそらく政治部の記者であっても、各党の選挙公約をすべて読んで頭に入っている人などいまい。ましてや一般の有権者が各党の公約を子細に分析するということも、まずない。 政党へのイメージ、何らかの期待感で選択しているということだ。一見無責任な選択であるかのように見えるが、実は政党イメージ、政党への期待感、これこそが現実の選挙では重要な判断材料になっているということだ。 政策より大事な政党イメージと期待感 そう言えば、2005年8月、小泉純一郎首相による「郵政民営化は是か非か」というシングルイシューでの解散総選挙も、結局、争われたのは民営化の是非ではなかった。そもそも民営化すれば、何がどう良くなるのかを理解していた国民など、ほとんどいなかった。逆に、民営化すれば何が駄目になるのか、説得力を持って語れる人もほとんどいなかった。 要するに「改革なくして成長なし。その原点が郵政民営化だ。反対する自民党議員は公認しない」という小泉首相の政治姿勢に期待するか否かが問われた選挙だった。 結果は、「自民党をぶっ壊す」とまで公言して、改革者イメージを作り上げた小泉首相への期待感が自民党を圧勝させた。 2009年の総選挙もそうであった。民主党ができもしないマニフェストを掲げたが、最大の勝因は、「政権交代」であった。この期待感が民主党を圧勝させ、自民党からの政権交代を実現した。 アベノミクスは、先行きの不透明感はあったとしても、日銀が7月11日の金融政策決定会合で2年数カ月ぶりに、日本経済の現状を「緩やかな回復」と規定したように、先行きへの期待感を持たせることに成功している。期待感という点でこれまでのところ最も成功しているのが、安倍自民党である。 保守的論者からも評価される共産党 共産党も私の予測をはるかに超えて、快調な模様である。最近、立て続けにこういうことがあった。1つは、右翼的な論調で知られる衛星放送番組「チャンネル桜」に出演した時のことだ。何人かの論者から期せずして、「共産党がいちばんまともだ」「共産党がいちばん筋を通している」という声が上がった。もう1つは、平均年齢約80歳の「政界の長老」数人と会食をしたときのことだ。「共産党は正論を吐いている」という感想が出されたのだ。 あまりにも筋のない、ふらふらした浮き草のような政党が増えたことの裏返しであろう。前回のコラムでも「安定した野党」が共産党だと書いたが、共産党は自民党と正面から対決する政党、筋を通すという政党イメージが国民の間で一定の共感を呼んでいるということであろう。 みどりの風、生活の党、社民党、新党大地など今回も多くの雑多な政党が出ているが、これらの政党の政党イメージとはどういうものか。私の中では、民主党から逃げ出した連中が作った政党、あまりにも影響力のない小さな政党、消えつつある政党、というイメージぐらいのものでしかない。 共産党を除く野党は、選挙後、政界再編による立て直しを図る以外に、活路を見いだせないのではないか。参議院選挙は、そんな方向に動いているように思える。
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