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2013年02月08日 天木直人のブログ
断っておくが私は尖閣国有化に端を発する中国の対日攻勢について、それを擁護するつもりはまったくない。
それどころか中国の軍事覇権的な一連の強行姿勢について強くそれを批判する立場である。
だからこそ日本はそのような中国に対し、これ以上そのような行動を許さないような正しい外交・防衛策を国をあげて取らなければいけないのだ。
いまほど我が国の外交・防衛抑止力の鼎の軽重が問われている時はないのである。
しかし残念ながら日本は正しく対応できていない。
それゆえにレーザー照射問題をめぐる日中間の攻防は泥仕合の様相を呈してきた。
私が繰り返し指摘し、そして懸念してきたとおりである。
何が問題なのか。
まず指摘しなければならない事は、今度のレーザー照射がどこまで危機的な威嚇的なものであったかという事である。
なぜならば、中国のレーザー照射は野田民主党政権の時はもとより、小泉政権時からも度々行なわれていたことがわかった。
その時のレーザー照射と今度の照射に威嚇としての危機的違いがあったのかどうか。
さらにいえば尖閣国有化以降の中国の威嚇軍事行動に関しては、レーザー照射攻撃のほかにも威嚇的軍事行動が繰り返されていたという。
そのような威嚇行動と今度のレーザー照射威嚇との間に決定的な危機的違いがあったかどうか。
このような事は素人には分からない。直接情報のない者には判断できない。
もし大きな違いがなく、今度ばかりを日本が大騒ぎしたとしたら、それは日本が作為的に騒いだものだという中国側の言い分に口実を与えることになる。そして中国はその通りの対応を見せ始めた。
大きな判断ミスだ。
もし今度のレーザー照射攻撃が武力行使や武力威嚇にあたるほどの危機的なものであれば、その対応は、私が繰り返し書いてきた通りである。
すなわち中国側の行動が、軍の単独行動なのか中国の国家意思に基づくものかを真っ先に見極める必要がある。
そしてそれを見極めるために、公表する前に中国側と極秘の緊急協議を行なうべきであった。
たとえ中国側がそれに応じなかったとしても、そして応じても正しい返答が得られなかったとしても、少なくとも日本側から接触し、問題提起をすべきだった。
すなわち軍の単独行動なら極秘裏になかったことにしてリスクマネジメントを行なう。そうする事によって中国に貸しをつくる。
もし中国の戦争も辞さずという意図が確認されれば、その時こそ日本は毅然として国連憲章に従って平和のための正当な措置をとり、国際社会に向かって訴えざるを得ないと中国側に事前通告する。
もちろん日本がどのような対応を取ろうと中国側は反発し、すべて自分に都合のいい対応をとるだろう。
しかし初動段階で日本が先手を取って正しい対応をしていれば、その後の外交・防衛抑止政策において有利に立ち続けることができたはずだ。それが重要なのだ。
ところが日本側にも非があったことが明らかになった。
すなわち防衛省の対応の甘さと遅さがあった。
1月30日に起きたレーザー照射の事実を外務省が知らされたのは5日だった、実は安倍総理や小野寺防衛相さえもまた5日になってはじめて知らされたという事が昨日の国会審議ではじめて明らかにされた。
最大の誤りは、安倍首相がそれを中国と事前協議する前に公表を命じ、抗議を命じたことだ。
安倍首相官邸は中国の不当性を国際社会にアピールすることで中国をけん制しようとしたという(2月8日読売)。
その判断こそが間違いなのだ。
これでは中国が慌て、面子を潰し、そして反発するのも当然だ。
そしてその通りとなった。中国の反論が始まった。こうなれば泥仕合だ。
外務省でさえ「抗議は公表前が常識」といい、「防衛省は騒ぎすぎだ」と言っている(2月8日朝日)のである。
さらに混乱は続く。
小野寺防衛相は7日の国会答弁で今回の中国の行動が国連憲章違反の可能性があると答弁したのに対し、外務省の局長は、今回の照射が威嚇にあたるかどうかは中国の目的や意図を総合的に判断する必要があると明言を避けたという。
おどろくべき事だ。
防衛大臣の答弁を外務官僚が否定しているのである。
これを要するに、国家の外交・防衛上の一大危機に際し、政府が一体となって対応出来ていない証拠である。
私も担当していたから言うのであるが、こんな時こそ国家安全保障会議を緊急招集し統一的な対応を取るべきであった。
たとえそれがお粗末な会議であるとしても、いまこそ国家安全保障会議をしなくて何のための国家安全保障会議だということである。
日本と中国は、それぞれ内部事情を抱えたまま泥仕合に突入しようとしている。
今度のレーザー照射事件はもはや凍結されるほかはない。
これ以上の非難の応酬は日中関係をさらに悪化させるだけだ。
最後は米国の介入による沈静化しかない。
日本のメディアも評論家も、もはや語る言葉はない。何を語ってもむなしい(了)。
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