http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/899.html
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http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/8754229.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958813010&owner_id=6445842
NHKスペシャル『STAP細胞 不正の深層』の「人間失格」
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NHKはなぜこのような取材対象者にけがまで負わせるような取材をしたのだろうか。当時は社会的空気として、小保方氏は犯罪者であり、そのくらいのことはしてみかまわないという雰囲気が充満していた。『あの日』にはそうしたことが繰り返し書かれている。1994年の松本サリン事件で、第一通報者の河野義行氏に対して、警察のリークに全マスコミが「あたかも河野義行が犯人であるとの前提」で報道を行い、後に報道被害を与えたものとして大きな問題になったことを忘れてしまったのだろうか。
(渋谷一郎(著)「STAP細胞は何故潰されたのか」(ビジネス社・2016年)186ページ)
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1.BPOがNHKスペシャルに「クロ」判定
呆れて物が言へない。
2月10日(金)、BPO(放送倫理・番組向上機構)が、或る判断を下した。それは、3年前にNHKが放送したNHKスペシャル『調査報道 STAP細胞 不正の深層』(2014年7月27日放送)についての判断である。
BPOは、この番組について、「名誉棄損の人権侵害が認められる」として、NHKに対して、再発防止に努めるよう勧告を行なった。
この勧告は、元理化学研究所研究員・小保方晴子さんが、この番組について、人権を侵害された、と申し立てた事に対するBPOの結論である。BPOの放送人権委員会は、同日、3年前に放送されたこのNHKスペシャルの一部において、「場面転換などへの配慮を欠いたという編集上の問題があり、小保方氏が元留学生作製のES細胞を不正行為により入手して混入し、STAP細胞を作製した疑惑があると受け取られる内容になっている」とし、「名誉棄損の人権侵害が認められる」と結論ずけている。
BPOのこの結論に対し、小保方さんは、弁護士の三木秀夫氏を通じて、次の様なコメントを出した。
「NHKスペシャルから私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことをBPOに感謝しております。国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことでした。本NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません。(2017年2月10日 小保方 晴子)」
ところが、NHKは、これに対して、以下に述べるような「反論」を行なった。(後述)この記事を書くにあたって、私は、本当は、BPOの発表の全文とNHKのコメントの全文を読者に紹介したいと思ったが、紙面の制約から難しいので、番組の問題部分の核心についてのみ、要約の形で論じる事をお許しいただきたい。BPOの発表とそれに対するNHKのコメントは、インターネットで全文を読めるので、是非、読者の皆さんは、自分で読んで頂きたいが、私は、そのNHKのコメント(反論)を読んで、本当に呆れて物が言へない気持ちである、
2.STAP細胞は、本当にES細胞だったのか?
理研は、小保方晴子さんが、若山照彦教授や故・笹井芳樹氏らと共同で発表したSTAP細胞なる細胞は、ES細胞であった可能性が高いと結論ずけた。そして、マスコミは、理研のこの見解が、この問題の「結論」であるかのような報道を行ない、小保方さんを「犯罪者」扱いしたまま、この問題を「収束」させた。しかし、小保方さんは、引き下がらなかった。小保方さんは、『あの日』を出版し、小保方さんが「ES細胞を使ってSTAP細胞の存在をでっち上げた」ような印象を作り出した若山照彦教授や毎日新聞社の須田桃子さんらの主張に具体的な事実を挙げて詳細な反論を展開した。それに対して、若山照彦教授も、小保方さんを批判した毎日新聞社の須田桃子さんも、沈黙を守っている。
STAP細胞の実在性については、「再現されなかった」と言うが、再現されなかったのは、実験の後半部分である細胞からキメラを作製する段階などである。そして、このキメラ形成は、小保方さんではなく、若山照彦教授が担当した部分である。その部分について、若山教授が再現事件をしないと言うので、他の理研職員が作製を試みたがうまく行かなかったのである。一方、小保方さんは、自分が担当した実験の前半部分については、実験を再現している。それなのに、若山教授の担当した部分に再現性が得られなかった事まで小保方さんへの「疑惑」の理由にされているのである。
更に、そのSTAP細胞が存在するかどうかについては、その後、同じ実験ではないが、解釈によっては、STAP細胞に似た細胞とも取れるiMuSCsと言う細胞の作製が、ネイチャー誌の姉妹誌であるオンライン専用媒体Nature.com SCIENTIFIC REPORTS の2015年11月号で掲載され、関心を集めている。
科学史を振り返れば、がん遺伝子(オンコジーン)の存在も、最初の報告が為された1969年から10年後の1979年にようやく確認されている。そうした事を知れば、発表からわずか3年しか経っていない現在、若山教授の実験(キメラ作製)が再現されなかったと言う理由で、小保方さんの科学的主張を全否定する事も、ましてや小保方さんをペテン師呼ばわりする事も不当な事である事を読者は、理解されないであろうか?しかし、それでも、STAP細胞が存在するかどうかは、高度に専門的な科学上の問題である。従って、この記事においては論じない。ここでは、上述のNHKスペシャルについてのみ論じる。
3.Nスペ『STAP細胞 不正の深層』は何を報じたか
ここで論じているNHKスペシャル『STAP細胞 不正の深層』(2014年7月27日放送)の内容を、この問題を追い続ける佐藤貴彦氏は、こう要約している。
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かつてネットの掲示板、2ちゃんねる(6月18日)に次のような怪文書が載せられ話題になった。
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小保方が引越しのどさくさに若山のところから盗んだ細胞が箱ごと発見されたことも公表しろよ。丹羽のTSもたくさん出てきただろ。
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NHKの取材は、この2ちゃんねるの怪文書の内容を裏付ける形となった。しかし、注意してほしい。ここでは、「小保方がどさくさに盗んだ」となっている。
若山研の引越しは2013年以降である。この時点では、すでにSTAP細胞作製の実験はほぼ終了している。若山氏と小保方氏がキメラマウスの作製に成功したのは2011年11月であるから、実験が終った後にES細胞を盗んでも意味がない。捏造に用いることは不可能なのである。
ただ、NHKの番組では「引越しのどさくさに盗んだ」とまでは言っていない。しかし、「小保方氏が引越しのどさくさに留学生のES細胞を盗んだ」というこの話は、この後も小保方氏が告発されるネタとして用いられている。出所が同じ話であることは間違いない。
また、この番組では、きわめて紛らわしい編集がなされている。すなわち、この番組では、(1)STAP細胞にアクロシンGFPが組み込まれていた。(2)若山研では、アクロシンGFPを組み込んだES細胞がつくられていた。(3)留学生の作ったES細胞が小保方氏の冷凍庫から見つかった。−−−という話が順番に述べられている。したがって、この番組の流れからすれば、「アクロシンGFPの入ったES細胞=留学生の作製したES細胞」であるかと想像した視聴者は多かったであろうと思われる。ところが、後になってわかることだが、留学生の作製したES細胞は、STAP細胞の捏造に用いられたとされるアクロシンES細胞とは何の関係もなかったのである。
STAP細胞にアクロシンGFPが組み込まれていたことを述べておいて、その後にアクロシンの組み込まれていないES細胞が小保方氏の冷蔵庫に見つかったことをことさら問題にするという番組の編集の仕方は、かなり不自然に感じられる。STAP細胞実験とは何の関係もないES細胞のことを追及したところで、なんら事件解決の役には立たないからである。
(佐藤貴彦(著)『STAP細胞 残された謎』(パレード・2015年)22〜23ページ)
http://www.amazon.co.jp/STAP%E7%B4%B0%E8%83%9E-%E6%AE%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E8%AC%8E-Parade-books-%E4%BD%90%E8%97%A4%E8%B2%B4%E5%BD%A6/dp/4434212273/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1452562919&sr=8-2&keywords=%E4%BD%90%E8%97%A4%E8%B2%B4%E5%BD%A6
佐藤貴彦(さとうたかひこ)名古屋大学理学部卒 著書:『ラカンの量子力学』など
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おわかり頂けるだろうか?これが、天下のNHKがやった「報道」である。編集によって、若山研究室に居た中国人元研究員が、小保方さんの「犯行」を裏ずける「証言」をしたかのような印象を作り出し、事件が進むさ中に、全国に放送したのである。
当然と言うべきだろう。この番組のこうした手法を、BPOは、今回、次のように批判した。
「本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷蔵庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正手段によって混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉棄損の人権侵害が認められる。」(BPO2017年2月10日)
お読みの通りである。BPOの今回のこの判断は、上に引用した佐藤貴彦氏の批判とほぼ同じ批判である。天下のNHKが、こうして、BPOの批判を受けたのである。
4.NHKの居直り
ところが、BPOのこの批判に対して、NHKは、次のように反駁した。
「放送人権委員会の判断の中で指摘された元留学生の作製したES細胞をめぐるシーンは、(1)小保方研究室の冷蔵庫から元留学生のES細胞が見つかったという事実、(2)小保方氏側は、保存していたES細胞について、「若山研究室から譲与された」と説明しているという事実、(3)一方、ES細胞を作製した元留学生にインタビューしたところ、小保方研究室の冷蔵庫から見つかったことに驚き、自分が渡したことはないと証言しているという事実を踏まえて、なぜこのES細胞が小保方研究室から見つかったのか、疑問に答えて欲しいとコメントしたものです。放送人権委員会が指摘しているような「小保方氏が、元留学生作製のES細胞を不正行為により入手し、STAP細胞を作製した疑惑がある」という内容にはなっていません。」(NHKのコメント)
「開いた口が塞がらない」とは、この事である。あのような印象操作を編集によって行なっておきながら、「放送人権委員会が指摘しているような『小保方氏が、元留学生作製のES細胞を不正行為により入手し、STAP細胞を作製した疑惑がある』という内容にはなっていません。」(NHKのコメント)と言うのである。ならば、何故、あのような編集をしたのか?と言いたくなるのは、私だけだろうか?
5.太宰治の「人間失格」
もうひとつ、NHKの「反論」の中で、笑った箇所がある。それは、これである。
「この番組は、その最中の同年7月、社会の関心に応えようと100人を超える研究者・関係者に取材を尽くし、2000ページを超える資料を分析して客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作・放送しました。番組の中の事実関係に誤りはありません。」(NHKのコメント)
NHKのこの「反論」を読んで、私は、太宰治の『人間失格』の一節を思い出した。それは、この一節である。
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「しかし、お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」
世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、岡本にそう言われて、ふと、
「世間というのは、君じゃないか」
という言葉が、舌の先まで出かかって、岡本を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢(あ)うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬(ほおむ)られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)
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NHKは、「社会の関心に応えようと100人を超える研究者・関係者に取材を尽くし、」あの番組(NHKスペシャル『STAP細胞 不正の深層』)を作ったのだそうである。しかし、ここでNHKが言う「社会」とは何だろうか?或いは、「研究者・関係者」とは、どんな人たちだろうか?それは、太宰治が『人間失格』のこの箇所で取り上げた「世間」と同じではないのだろうか?
「社会」とは、NHKの事ではないのだろうか?そして、「研究者・関係者」とは、NHKの番組制作に都合の良い人たちばかりだったのではないだろうか?
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(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんな事をすると、世間からひどいめに逢(あ)うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(いまに世間から葬(ほおむ)られる)
(世間じゃない。葬るのは、あなたでしょう?)
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NHKスペシャル『STAP細胞 不正の深層』は、『人間失格』のこの会話に、余りにも符合している。
(終わり)
西岡昌紀(にしおかまさのり) 1956年東京生まれ 北里大学医学部卒 内科医(神経内科)
著書に「アウシュウィッツ『ガス室』の真実/本当の悲劇は何だったのか?」(日新報道・1997年)「ムラヴィンスキー/楽屋の素顔」(リベルタ出版・2003年)「放射線を医学する/ここがヘンだよ『ホルミシス理論』」(リベルタ出版・2014年)が有る。
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(以下資料)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170210/k10010872201000.html
STAP細胞 NHK番組にBPOが再発防止を勧告
2月10日 19時19分
NHKが3年前に放送したSTAP細胞の問題を検証した報道番組で、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏が人権を侵害されたと申し立てたことについて、BPO=放送倫理・番組向上機構の委員会は「名誉毀損の人権侵害が認められる」として、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。
続きを読む
3年前の7月に放送されたNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞不正の深層」について、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏は人権を侵害されたとしてBPOに申し立てていました。
これについて、BPOの放送人権委員会は、10日、記者会見し、番組の一部について、「場面転換などへの配慮を欠いたという編集上の問題があり、小保方氏が元留学生作製のES細胞を不正行為により入手して混入し、STAP細胞を作製した疑惑があると受け取られる内容になっている」としたうえで、「名誉毀損の人権侵害が認められる」と指摘しました。
また、番組の放送直前に行われた小保方氏への取材について行き過ぎがあり、放送倫理上の問題があったとしました。
そのうえで、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。
一方で9人の委員のうち2人が「人権侵害があったとまでは言えない」、「名誉毀損とするべきものではない」と、決定とは異なる意見を出しました。
決定について小保方氏は、代理人の弁護士を通じてコメントを出し、「私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことをBPOに感謝しております。国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことでした。NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」としています。
一方、NHKは「BPOの決定を真摯(しんし)に受け止めますが、番組は関係者への取材を尽くし、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではないと考えます。今後、決定内容を精査したうえで、BPOにもNHKの見解を伝え、意見交換をしていきます。また、放送倫理上の問題を指摘された取材の方法については、再発防止を徹底していきます」としています。
BPO決定の概要(全文)
NHK(日本放送協会)は2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告STAP細胞不正の深層」を放送した。
この放送に対し小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は以下の通りである。
STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は本件放送による人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となってしまっている。
申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。
本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
その他、若山氏と申立人との間での取扱いの違いが公平性を欠くのではないか、ナレーションや演出が申立人に不正があることを殊更に強調するものとなっているのではないか、未公表の実験ノートの公表は許されないのではないか等の点については、いずれも、人権侵害または放送倫理上の問題があったとまでは言えない。
本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。
NHKのコメント
本日のBPO放送人権委員会決定についてのコメントは以下のとおりです。
小保方晴子氏が平成26年1月に発表した「STAP細胞」については、同年4月に理化学研究所が研究不正を認定しました。その後、理化学研究所が、本格的な調査を進める中、「STAP細胞はあるのか」「小保方氏の研究はどうなっていたのか」という疑問に世界的な関心が集まっていました。この番組は、その最中の同年7月、社会の関心に応えようと100人を超える研究者・関係者に取材を尽くし、2000ページを超える資料を分析して客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作・放送しました。番組の中の事実関係に誤りはありません。
STAP細胞については、理化学研究所による小保方氏の検証実験でも一度も作製に成功せず、世界的な話題となったネイチャー誌の論文も取り下げられました。番組の中では、遺伝子解析の結果として、STAP細胞は実際にはES細胞だった可能性を指摘しました。また、小保方氏の研究室の冷凍庫から元留学生が作製したES細胞が見つかった事実を放送しました。番組放送後の同年12月、理化学研究所が公表した調査報告書は、小保方氏が「STAP細胞」だとした細胞は、調べた限りすべてES細胞だったことも明らかにしています。
放送人権委員会の判断の中で指摘された元留学生の作製したES細胞をめぐるシーンは、(1)小保方研究室の冷凍庫から元留学生のES細胞が見つかったという事実、(2)小保方氏側は、保存していたES細胞について、「若山研究室から譲与された」と説明しているという事実、(3)一方、ES細胞を作製した元留学生本人にインタビューしたところ、小保方研究室の冷凍庫から見つかったことに驚き、自分が渡したことはないと証言しているという事実を踏まえて、なぜこのES細胞が小保方研究室から見つかったのか、疑問に答えて欲しいとコメントしたものです。放送人権委員会が指摘しているような「小保方氏が、元留学生作製のES細胞を不正行為により入手し、STAP細胞を作製した疑惑がある」という内容にはなっていません。
他の細胞の混入を防ぐことが極めて重要な細胞研究の現場で、本当に由来がわからない細胞が混入するのを防ぐ研究環境が確保されていたのか、そこにあるはずのないES細胞がなぜあったのか、国民の高い関心が集まる中、報道機関として当事者に説明を求めたものです。このシーンの前では、小保方氏がES細胞の混入を否定し、混入が起こりえない状況を確保していたと記者会見で述べたという事実についても伝えています。
今回の決定では、この番組の中で、「小保方氏が、元留学生作製のES細胞を不正行為により入手し、STAP細胞を作製した疑惑がある」と放送したとして人権侵害を認めています。
しかし、今回の番組では、STAP細胞は、ES細胞の可能性があることと、小保方氏の冷凍庫から元留学生のES細胞が見つかった事実を放送したもので、決定が指摘するような内容は、放送しておらず、人権侵害にあたるという今回の判断とNHKの見解は異なります。
また今回の決定では、委員会のメンバーのうち、2人の委員長代行がいずれも、少数意見として、名誉毀損による人権侵害にはあたらないという見解を述べています。
今回の番組は、STAP細胞への関心が高まる中、関係者への取材を尽くし、客観的事実を積み上げ、表現にも配慮しながら、制作したもので、人権を侵害したものではないと考えます。
BPOは、独立した第三者の立場から放送への苦情や放送倫理上の問題に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的に、NHKと民放連が設立した組織であり、NHKとしてその勧告を真摯に受け止めるのは当然のことと考えます。
今後、決定内容を精査した上で、BPOにNHKの見解を伝え、意見交換をしていきます。
また、放送人権委員会が指摘した取材上の問題については、平成26年に番組が放送される前に、安全面での配慮に欠ける点があったとして小保方氏側に謝罪しましたが、今回の決定の中で改めて指摘されたことを重く受け止め、再発防止を徹底していきます。
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