3. 2015年9月03日 19:57:43
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>>02 新暴対法以降、やくざでは、もうめしが食えん そして闇社会の勢力図が変わりつつあるということだろうな http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45003 週刊現代,溝口敦経済の死角 2015年09月03日(木) 週刊現代,溝口敦 ヤクザ崩壊、「半グレ」勃興!あなたの隣に潜む新たな犯罪集団の実像とは?特殊詐欺、ヤミ金、危険ドラッグ…… 〔PHOTO〕gettyimages 私たちの生活を地獄に陥れる暴力犯罪の主役は、ヤクザから「彼ら」にとってかわられた。『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』(講談社+α文庫)を上梓したノンフィクション界の重鎮が彼らの生態を解き明かす。 文/溝口敦(ノンフィクション作家) 過去最悪の被害額 去年、全国の警察が把握した振り込め詐欺など特殊詐欺全体の被害額は約559億円に及び、過去最悪を更新した。 だが、この数字も実際の被害額の半分ぐらいだろうと、詐欺グループのリーダーは見ている。オレオレ詐欺などは、被害者がカネを詐取された次の日には本物の子や孫などと連絡がつき、「騙された」と気づくことになるが、未公開株詐欺やイラクの通貨、ディナール詐欺では、騙された後2~3年も騙されたことに気づかない被害者が多いというのだ。 「ややこしい話ですが、警察が『特殊詐欺』といっているのは『振り込め詐欺』と、『それ以外の特殊詐欺』なんですね。 『振り込め詐欺』には『オレオレ詐欺』『架空請求詐欺』『融資保証金詐欺』『還付金等詐欺』が含まれ、『それ以外の詐欺』には『金融商品等取引名目の詐欺』、『ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺』、『異性との交際あっせん名目の詐欺』、『その他の特殊詐欺』を含めている。 このうち特に『金融商品等取引名目の詐欺』には『いい金融商品を買わせてもらった。来春には上場するようだし、初値が買値の10倍は固いらしいから、間違いなく大儲けだ』と喜んでいる人がいる。こういう人が警察に被害を訴え出るのはまだまだ先の話です」
なるほど。詐欺と確定するまでに時間がかかる詐欺がある。つまり特殊詐欺の年間被害額は559億円に留まらず、1000億円以上に上るかも、と詐欺を仕掛ける側は観測している。罪悪感などは毛ほどもなく、恐るべき自信といえよう。 詐欺に限らず窃盗や強盗、恐喝や横領などカネを取る犯罪を「財産犯」というが、去年、全財産犯の被害額は約1130億円だった。ということは、警察の把握する被害額で見ても、特殊詐欺は全財産犯の約半分を占める。恐喝は暴力団を代表する犯罪だが、特殊詐欺から見れば、恐喝などはごくごく些末な犯罪にすぎない。 そしてこの特殊詐欺をもっぱら仕切っているのが半グレである。 「詐欺の帝王」は明大出身 半グレというと、暴走族「関東連合OB」を思い出す人が多いだろうが、同グループは'12年9月に起こした六本木クラブ襲撃事件による人違い殺人でメンバーが服役や逃亡するなどで四散、今や壊滅状態にある。 現在の半グレはほとんど一般人と変わらない経歴を持つ者が多い。私が去年会った「詐欺の帝王」といわれたKは現在39歳だが、明治大学の出身で、明大ばかりか全国の大学のイベントサークル世界を牛耳り、卒業して電通に入社、雑誌局に配属された。 溝口敦『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』 が、'03年早大のイベントサークル「スーパーフリー」レイプ事件が発覚し、Kは電通入社後もスーフリのケツモチ(後見役)をしていた関係から関与を疑われ、子会社に左遷された。これに嫌気してKは退社、イベントサークル時代の仲間や後輩を集めて自らヤミ金を営み、その後、ヤミ金グループを母体に特殊詐欺を行う日本一の詐欺集団を率いた。
この略歴に明らかなようにKは暴走族の出身でさえない。強いていえば渋谷のチーマーグループ「U」にちょっと関係した程度で、学業成績も優秀だった。ゼミではゼミ長をつとめ、学部を次席で卒業している。 今やこのような者が半グレやオレオレ詐欺グループのリーダーである。Kは温厚なビジネスマン風で、暴力的ではない。税務署に調査され、2億円ほど納税を余儀なくされたことはあるが、警察に逮捕されたことも、前科もない。 「月収」手取りで3億円 もちろん半グレのリーダーである以上、暴力団と没交渉ではないし、暴力沙汰も時に起こし、また被害にも遭っている。 '09年、Kは新宿の暴力団組長にカネを貸したが、その組長が上部組織から破門されたのを機に回収を図った。が、組長は薬物の仕入れがうまくいかず、「返したくても返せない」と弁明した。 これでトラブルになり、Kは最後、組長の仕事仲間の外国人に改造拳銃で足首を撃たれ、入院をくり返したあげく、ヤミ金と特殊詐欺から足を洗った経緯がある。 Kの場合、暴力事件は配下の役であって、K自身は現場に居合わせない。'09年千葉県船橋市のラブホテルに雀荘経営者ら2人を拉致し、生きたまま電動ノコギリで首を切断した男がいたが、この男もKの元配下だった。 暴力事件で名を売った半グレとしては関東連合がある。'10年発生の海老蔵事件、被害側だが'10年の朝青龍傷害事件、'11年の六本木キャバクラ暴力団襲撃事件、'12年の六本木クラブ「フラワー」襲撃事件など、毎年のように派手に暴力事件を重ねた。 しかしそれがたたって、前記した通り、関東連合は解体した。名を売っただけで、実は取れなかったのだ。計算高い半グレとしては異質であり、現在主流の生活態度ではない。 総じて半グレの生活指針は「オラオラ」である。これは「経歴に傷をつけない程度の反道徳的行為」「逮捕などの危険性が少ないグレーな仕事」などを意味する。つまり半グレの大半は意外なことに「遵法的」であり、逮捕されずに金儲けすることに価値を見出す。 こういう半グレは滅多なことでは暴力事件など引き起こさない。巨額を握った後、一般社会に紛れ込むのが彼らの理想なのだ。 Kは最終的にヤミ金300店を経営し、従業員1300人を抱えた。従業員のランクは下から上に店員-番頭(店長補佐)-店長-統括-総括-社長-幹部-K本人という順だったが、月給はヒラの店員で40万円からスタートした。 番頭は200万~300万円、店長700万~800万円、統括1000万円、総括5000万円、社長1億5000万~2億円、幹部2億~3億円。K本人が最低でも2億~3億円という給与水準だった。 断っておくがこれは年収ではなく、あくまでも月給である。それも税務署に届け出ない非課税の手取り額なのだ。Kのヤミ金店舗は特殊詐欺も手掛けたが、いかに半グレ商売が濡れ手で粟の高収益か、如実に示していよう。 Kのもとには毎週億に近いカネが流入した。仕事が仕事だから、銀行への積み立ても不動産への投資もできない。仕方なく東京・渋谷区に3軒のカネ置き部屋を借り、段ボールに詰めたカネを積み上げていた。みかん箱一つに1億円入るそうだが、それが床が抜けるほど積み上がったのだ。 半グレの怖さ 元をただせば、こうしたカネが多数の犠牲者の血と肉だったことはいうまでもない。すなわち多重債務者であるヤミ金利用者、子供可愛さになけなしの老後資金を詐取された高齢者、ちょっとエロサイトを覗いたことを勤め先に知られまいとするまじめで小心なサラリーマン、欲に駆られてもっと増やせると考えた小金持ちたち??等々。 半グレの怖さは物理的な暴力にあるのではなく、追い込み、掠め取っていく経済犯の怖さにある。彼らを前にして「俺は騙されない」と過剰な自信を持つことはむしろ危険だろう。 彼らは常に時事ネタや流行に注意を払い、騙しのストーリーを修正し、新ネタを肉付けしている。 例を挙げれば、最近はマイナンバー制度やふるさと納税、仮想通貨、バイナリーオプション(為替金融商品)、テストステロン、純金インゴットなどに取り組み、また研究している。端的にいえば、これらを新ネタにどう仕掛けるか、頭をひねっている最中である。 暴力団を「パシリ」に使う 一昨年から去年にかけて何人もの命を奪った危険ドラッグ業者にヤミ金出身者が多い事実はあまり知られていない。 早い話、去年9月からの1ヵ月で15人が死亡した危険ドラッグ「ハートショット」の製造元は東京・練馬区に所在したが、同社元社長の前職はヤミ金やオレオレ詐欺グループから「道具屋」と呼ばれ、レンタル携帯、転送電話、架空銀行口座、身分証などの面倒を見る業者だった。 危険ドラッグ業者の中には昔のヒッピー崩れもいたが、ここ10年ほどの傾向はドラッグについて知識をほとんど持たない金融屋、ヤミ金業者の参入だった。もちろん半グレの系統である。 彼らは中国の化学工場から薬物を仕入れ、それを日本で植物片にまぶし、パッケージして製造元、卸元と称していた。一説に危険ドラッグ市場は1200億円規模といわれていたから、これは儲かると参入したにすぎない(日本で危険ドラッグは今年初めほぼ終熄した。一部にカチノン系薬物α-PVPの根強い愛好者が残る程度)。 これに対し、覚せい剤は相変わらず暴力団のシノギである。覚せい剤市場は数千億円規模といわれ、危険ドラッグより大きいが、これ以上の発展性はない。 山口組系の暴力団、五菱会がヤミ金を創始したのは事実だが、'03年全国の警察が一斉に手入れに動いて、そのヤミ金王国はもろくも崩れた。前出のKも一部五菱会のヤミ金組織を乗っ取る形で組織を拡大している。 その後のヤミ金やオレオレ詐欺、ディナール詐欺などはほとんど半グレが創建した。暴力団の組員は半グレに比べ高齢者が多く、彼らがIT、インターネット、スマホの時代に、新しいシノギを考案することはほぼ不可能だ。彼らのうち、新し物好きだけが半グレに学びつつ、特殊詐欺や危険ドラッグに手を出している。が、組員の多くは詐欺の受け子や出し子など、最も危険が多い部分のパシリに使われている。 全国いたるところに「半グレ」は存在する 暴力団は隙間産業を見つけ出すことで戦後社会を生き抜いてきた。公営賭博のノミ行為、野球賭博、パチンコの景品買い、債権回収、地上げ行為、覚せい剤の密売など、すべて暴力団だからこそできた負のサービス業であり、これらの供給は暴力団が担うしかなかった。 その意味で暴力団にはシノギを作り出す創建力があったわけだが、今やこうした役割は半グレに取って代わられた。暴力団組員の多くは単なる「怠け者のジジイ」に転落している。 全体の組員数も2万2300人で、25年前に比べ3分の1に激減している。中で山口組だけがまだ組員数1万人以上を数えるが、この程度の社員数を持つ企業は日本にゴマンとある。暴力団は今や完全に構造不況業種なのだ。 では、半グレ集団はどうなのか。 その出身は前に記した通り一般人とさほど変わらない。単にヤンキー気質やチーマー風の身ごなしが板についた若者がリクルートされているだけだから人材源は無尽蔵である。たとえていえば、就職情報誌で面接に行ったら、そこがヤミ金だったといった風の「そこらのアンちゃん」が半グレの末端である。 つまり暴走族だった経験も格闘技好きだった一時期も持つ必要はない。単にゲーム感覚で多重債務者や高齢者を自殺に追い込んでも、平然としていられる感性の持ち主なら、半グレになり得る。 そんなことをいえば、日本全国半グレだらけではないか、と反論されようが、ハッキリいえば、半グレは単なる犯罪者集団である。だから、「人を見れば泥棒と思え」が有効なアドバイスになるほど、全国至る所に半グレは存在する。 経済学の知識もある そんなことならまだしも暴力団の方がいいという人もいるだろうが、こういう情況は欧米先進国とほぼ同じではないのか。欧米には暴力団のような半公認の総合的犯罪集団はない。だが、個別専門的犯罪集団はある。不良もいるし、街のチンピラもいる。 日本も欧米並みに片時も油断がならない犯罪社会に入ったのだと考えたらどうだろう。何も半グレを特別に恐れる必要はない。 だが少なくとも半グレ特有の手口については知っておくべきだろう。「かぶせ」である。 大学を2年で中退して以来、一貫して詐欺師人生を歩み、とりわけ未公開株詐欺を得意とする詐欺師が教える。 「経済学でプロスペクト理論というのがある。これは、人は損を諦めて損切りすれば、新たな損をかぶらずに済むのに、損を回復してプラマイゼロにしたい欲求が強いという理論です。 つまり損した100万円は新たに儲ける100万円より重い。これがあるからわれわれは一人の被害者を骨の髄までしゃぶれるわけ。一人の被害者に『かぶせ』をやって、徹底的に一人をしゃぶり尽くす。それが最も確実な詐欺の方法だからです」 一度被害者になった者は「損を回復しましょう」「いい弁護士を紹介します」といったアプローチに弱く、結局は二度、三度と騙されていく。つまりかつて被害者になったことがない一般人は、一度でも半グレたちの被害者になってはならないのだ。これが実践的な教訓である。 組織に属さず、ヤクザのような「暗黙のルール」もない無法の集団「半グレ」――。半グレはどこからきてどこに棲み、なにを資金源としているのか。だれも書けない現代社会最大の暗部に鋭く斬り込む巨匠・溝口敦の傑作ルポ 「週刊現代」2015年9月5日号より
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