http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/114.html
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浜田参与の見通しは的確だが、その対応策はお寒い限りである。
5%の消費税増税は、不当な利益がさらに増加するグローバル企業を別にすれば、貰う前に給与所得税が5%増税(非課税レベルの人さえ)、利子や元本の返済負担が5%アップというとんでもない災厄を国民経済にもたらす政策である。
末尾に参照投稿をリストアップしているが、財務省は推奨する消費税の算定式が「売上に係わる消費税額−仕入に係わる消費税額」になっているためわかりにくいが、その式の意味するところは「(売上−仕入)×税率」(注1)であるから、(売上−仕入)の粗利益(付加価値)を原資としている給与や債務返済(むろん、配当や役員賞与さらには法人税もだが)などに税金が課されていることと同じなのである。
注1:売上や仕入の金額がグロス(税込)の場合、この式で使われる税率はいわゆる消費税率より低い値になる。消費税率/(100+消費税率)で、5%のとき約4.76%となる。
給与で考えればわかりやすいだろう。
最終利益がゼロの事業者がこれまで社会保険料込みで1800万円の人件費(給与)を支払っていた場合、消費税が5%アップしたあとも赤字にならないようにしようと思ったら、他の経費条件が同じであれば粗利益(売上−仕入)を85.7万円増加させなければならない。逆に、粗利益を増やすことが困難なら、人件費(給与)を85.7万円だけ減らさなければならないわけである。
これが、98年間以降デフレ基調が定着し、勤労者の賃金が切り下げ続けられてきた基礎的要因である。97年の消費税増税がトリガーで、それで生じたデフレ基調が持続的な賃金切り下げにつながっているというのが正しい見方。
自動車業界や経産省・民主党・自民党の一部は、自動車取得税と消費税が二重課税だと騒いでいるが、事業者が稼いだ付加価値に課される消費税と、あるモノを手に入れて社会的インフラを利用し環境に影響を及ぼす負荷を考慮して課される自動車取得税は決して二重課税ではない。
多数の人が労苦のうえで得ている給与こそが二重課税なのである。
(自動車業界が恥知らずなのは、自動車ディーラーを含めた業界全体として、1円も消費税を納付していないどころか、根拠のない不当な消費税還付のほうが多い“身分”でありながら、二重課税だから自動車取得税をなくせと声高に叫んでいることである)
消費税が2%増税された97年秋に金融危機が勃発した主たる要因も、消費税が内包するこのような“波及効果”なのである。
中小企業の場合、源泉徴収した所得税の預かり金や消費税の納付が年2回になっているところが多い。日本の企業は3月決算のところが多いから、10月に半年分の消費税納付がやってくる。
税金という給与に次ぐ先取特権がある債務が発生したことで、それまでなんとかやりくりしてきた銀行への債務履行が困難になったことが97年秋の「金融危機」を現実化させた。バブル崩壊以後、投機を伴う過剰な債務を抱え、本来なら倒産すべき企業が銀行を救うために温存されていたが、消費税増税でその歯止めが吹っ飛んでしまったのである。
浜田参与は、「消費増税による景気への影響を軽減するための手段としては、補正予算編成などの財政措置よりも法人税率の引き下げなどで景気を刺激する方が効果的」と語ったそうだが、あまりにバカバカしい処方箋にあきれかえる。
まず、法人税を納付しなければならない事業者は全体の25%ほどしかない。
節税に励むグローバル企業が海外で納付している法人税との相殺で納付義務を負わないケースもあるが、赤字事業者の大半は、消費税増税で苦境に立つ国内専業の中小企業及び商店である。それらの事業者の多くは、利益増大をめざすというより生業という感じで事業を行っており、若干の損は経営者が補填するという経営実態である。
むろん、グローバル企業も、消費税増税で国内需要の縮小という打撃を被るが、その代償として従来以上の消費税還付(不当な利益)を得る。そして、グローバル企業の名にふさわしく、日本以外の市場で稼ぐことで日本の需要減も補おうとする。
「法人税率の引き下げ」は、グローバル企業を国内に留めておく効果はあるかもしれないが、消費税増税によって生じる景気の悪化を抑制する機能は持っていない。
消費税増税対策としては、浜田参与が否定している「財政措置」のほうが理に叶っている。消費税増税の“大義名分”(財政健全化)は疑われるが、付け回しで負担が増える国民に同等のバラマキを行えれば、消費税増税で起きる景気の悪化は最小限に抑えることができる。
消費税は、何度も書いてきたが、社会保障の持続性や強化とは無縁で、グローバル企業の国際競争力を強化するための“合法的な補助金政策”である。
だからこそ、絶妙なタイミングで安倍政権が誕生したことで加速化した円安基調を奇貨として(円安はグローバル企業に利益をもたらす)、スケジュール化されている消費税増税を凍結すべきである。
安倍自民党や官僚機構に塩を送る提言になるが、既に瀕死状態にある民主党の息の根を止める決定打は、消費税増税の無期延期政策である。
理念になのか、「三党合意」になのかわからないが、消費税増税を既定方針としている愚かな民主党は、安倍政権が消費税増税無期延期を打ち出すことで政治力を喪失し、二度と政権を手にすることはないだろう。
※ 最近の消費税関連投稿
「浮上する日本経済:来年・再来年の消費税増税が日本経済の浮沈を決する」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/859.html
「01. のnJF6kGWndYさんへ:消費税の内実について」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/871.html
「共有化したい消費税についての基本認識:nJF6kGWndYさんへ」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/891.html
「01. の2uOv2R3MRsさんへ:日本は統制経済ではなく自由主義経済」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/896.html
「03. coeQGfBbkKさん:「消費税倒産」や「消費税廃業」が97年金融危機やシャッター商店街の原因」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/898.html
「02. L3oWjvNiyMさんへ:税金は、財源ではなく、国民や企業の活動を制御するための政策手段」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/918.html
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5%の消費増税、日本経済へのショック大きい=浜田内閣官房参与
2013年 07月 13日 15:38 JST
[東京 13日 ロイター] - 安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米エール大名誉教授は13日に都内で開かれたセミナーに出席し、政府が現行5%の消費税率を10%まで段階的に引き上げる予定について、5%の消費増税による日本経済へのショックはかなり大きいと語った。
消費増税による景気への影響を軽減するための手段としては、補正予算編成などの財政措置よりも法人税率の引き下げなどで景気を刺激する方が効果的との認識を示した。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96C02220130713
- 消費増税だれが負担 攻防が映す経済への重圧 あっしら 2013/7/14 04:07:24
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