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(回答先: 「卒・緩和」の痛み 米中共振に揺れる市場 投稿者 あっしら 日時 2013 年 6 月 26 日 03:04:24)
[地球回覧]米「スーパーリッチ」の復活
集中する富、裏に貧困化
金融危機から約5年。景気回復を背景に米国の「スーパーリッチ」が勢いを盛り返している。停滞する雇用情勢と異次元の世界に、米経済のゆがみも見え隠れする。
米ニューヨーク市マンハッタン南西のチェルシー地区。24階建てのビルが高級マンションに生まれ変わる。新興の開発業者が2億ドル(約200億円)を投じて改装する「ウオーター・タワー」だ。
案内された10階のテラス。北にエンパイア・ステート・ビル、西にハドソン川の視界が広がる。天井まで続く窓、大理石の浴室、最新鋭のジム――。ぜいたく三昧の造りだ。
「売り出した50戸は1週間で完売した。投資ファンドを解約した人もいたけど、ほぼ現金払いね」と販売担当のビッキー・バロンさん。販売価格はテラス込みで400平方メートルの2LDKの部屋が1400万ドル。近く販売する最上階、5500万ドルの物件も購入希望者が鈴なりだという。
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大企業の会長、有名女優、人気司会者――。業者は購入者を明らかにしないが、購入者像をこう説明する。8割は米国人。金融関係や起業家のほか芸術家も多い。年齢は20代から退職者まで。大半が第2の住み家として買う。
アールデコ調のタワーは完成が大恐慌直前の1929年。設計者ラルフ・ウオーターはウォール街の著名な高層ビルも手がけ「世紀の建築家」と呼ばれた。恐慌後は豪華さが敬遠され忘れられていた。
そんなバブルの象徴が再び人気を博すのは、今の世相と無縁ではない。米ピュー・リサーチ・センターの最新の調査では、米家計の大半が資産を減らした2009〜11年に、上位7%の富裕層は資産を逆に3割近く増やした。80年代からの富裕層への富の集中が、金融危機を経て加速していることを示す。
直近で大きいのは株高。米国では上位1%の富裕層が金融資産の半分を持つ。米株価の最高値更新はスーパーリッチたちには強い追い風だ。株式を多く持つ起業家や経営者は特に恩恵が大きい。
ファイル交換ソフト、ナップスター創業者でフェイスブック社長だったショーン・パーカー氏は今月、自身の挙式に1000万ドルを使った。カリフォルニア州の森に池や橋、石門を建設。自然環境を害したと指摘されると、250万ドルの罰金も払った。
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だが、米各地には対極の光景も広がる。米西岸オレゴン州ポートランド。路上で数百人のホームレスの若者が生活。「1泊15ドル」の安宿の看板が並ぶ。
「宿がない。小銭をくれないか」。声をかけてきたジョエル・ボズウェルさん(24)はノースカロライナ州出身。高校を中退し父と同じ石工になったが不況が直撃、職を求め放浪中だ。「履歴書を150通は送ったけど厳しい」。長身の青年の表情は曇る。
成功者をもり立て、活力としてきた米国。だが「近年は頂点での富の爆発と底辺の貧困化が加速した。多くの若者は技能獲得の機会も失い国の競争力を急低下させている」とコロンビア大のジェフリー・サックス教授は話す。
もっとも自由競争を標榜する米国では、富裕層の増税などの再分配政策が勤労意欲をそぐとの声も多く一筋縄ではいかない。
成功を誇る「トロフィー・アセット(資産)」と称されるチェルシー地区の豪華なタワーは輝きを保つのか、それともバブルの遺産としてまた忘れ去られるのか。その命運は、米国が持続可能な成長へ「解」を見つけることができるかどうかにかかっている。
(米州総局編集委員 西村博之)
[日経新聞6月23日朝刊P.13]
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