http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/509.html
Tweet |
「経済版NATO」は西側を再建できるか
欧州連合(EU)首脳とオバマ米大統領はG8サミットの機会を利用して、「環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)」交渉を始動する計画で、双方は来年末までに交渉を妥結する考えだ。欧米は世界のGDPの半分、世界貿易の3分の1を占め、貿易額は1日27億ドル、相互投資額は3兆7000億ドルに達する。このためTTIPが発効すれば、世界の貿易・投資ルールづくりをリードし、経済分野における西側世界の指導権が再確立されることになる。EUはTTIP以外に、カナダとの包括的経済貿易協定交渉も行なう。西側経済大国クラブであるG8で米欧がTTIP交渉を始動することの持つ象徴的意義は口に出さずとも明らかである。(文:王義◆・チャハル学会シニアフェロー、中国人民大学欧州問題研究センター教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
TTIPは自由貿易協定に止まらず、計り知れない政治的影響を持つ内部市場の創造でもある。交渉では二大市場間の行政分野の貿易障害を撤廃し、欧米の共同発展を促すことに尽力する。その戦略的意義は、経済そのものをとうに超えている。ドイツの週刊誌シュピーゲルなどは、TTIPは自由貿易協定に止まらず、ひとまとまりの協力制度を築こうとするものであり、日増しに変化する国際経済環境のもたらす新たなチャンスと試練に対処するため、米欧利益共同体、すなわち「経済版NATO」を構築することが最終目標だと分析している。
現在世界には急速な変化が生じており、西側の伝統国家は次第に優位を失いつつある。TTIPは西側を衰勢から救い、世界の形勢を一変させる助けとなるのだろうか?バローゾ欧州委員長はTTIP交渉は「情勢を一変させる出来事」となり、21世紀の自由貿易協定に新たな時代を開くと考えている。
冷戦時代は米国がEUの後を追って環大西洋自由貿易圏をつくろうとしていた。だが今ではEUが米国の後を追って貿易と投資を含むTTIPを手がけている。この変化自体が、米欧の戦略面の考えの違いを反映している。EUは国際競争の中で前をオオカミ(米国)、後ろをトラ(新興国)に挟まれていると強く感じている。TTIPの推進に力を入れるのは、トラと手を組んで既得権益を維持することを選んだことを示している。これは米国のアジア太平洋回帰に対する戦略面の反応でもある。政治屋たちはTTIPの力を借りて政治的な得点を稼ぎ、EUが孤立していないことを示し、再び虎の威を借りて世界を指導することを期待している。3期目を目指す中、バローゾ委員長はTTIPに賭けることを決めた。
EUの交渉目標は米国との貿易・投資を増やし、市場参入の許可、規則面の協調、世界標準の確立を通じて雇用と経済成長を促進することだ。投資、消費、輸出が牽引する経済成長において、EUは輸出にしか望みを託せない。このため自由貿易協定(FTA)、特にTTIPを経済的・戦略的苦境を脱するための切り札とみなしている。EUが溺れる者は藁をもつかむ思いで、一心不乱にFTAを推進するのは、まさに米国の思うつぼだ。EUがアジアで中国を避けて韓国、シンガポールと交渉を妥結し、日本、インド、ベトナム、マレーシア、インドネシアと交渉を進めるのは、客観的に見て米国のアジア太平洋回帰戦略に呼応したものだ。
TTIP交渉は関税減免以外に、市場参入の許可と規制・監督法規、非関税障壁、市場規則という3つの鍵となる問題の解決に尽力する。ひとたび欧米が製品技術標準を統一すれば、世界に重大な影響を与え、新たな国際標準となる。妥結した場合TTIPは新たな国際貿易、投資ルールの基礎となり、国際ルールの制定全体に影響を与え、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定と共に、中国がグローバル化に参与するのに必要なコストを大幅に引き上げる。TPPは理論上は中国を排斥するものではない。だが米国とEUは経済的隔たりがより小さいため、TTIPはTPPより妥結が容易であり、戦略面の中国締め出し効果が一段と目立つ。中国は再建された西側に再び直面せざるを得なくなる。EUとのFTAまたはBRICSのFTAによってこれを解消できるかどうかで、中国の戦略的知恵が試されることとなる。(編集NA)
◆は木へんに危
「人民網日本語版」2013年6月19日
http://j.people.com.cn/94474/8290763.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。