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ダイセルブルーム・ユーログループ議長発言の衝撃 キプロス「ゲーム」はまだ続く
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/423.html
投稿者 eco 日時 2013 年 3 月 26 日 23:43:22: .WIEmPirTezGQ
 

(回答先: キプロス金融危機 (クライン孝子の日記) 投稿者 愛国日本 日時 2013 年 3 月 26 日 12:20:00)

ダイセルブルーム・ユーログループ議長発言の衝撃
2013/03/26 (火) 17:49


昨日の東京時間にはキプロス救済に関する暫定合意に達したことからリスク選好の動きとなりましたが、海外時間には一転してリスク回避の動きとなりました。

最初のきっかけはキプロス議会の金融委員会委員長パパドブロス議員が「キプロスのユーロ圏離脱の利益について検討する必要がある」と発言したことです。これまでユーロ圏などはキプロスがユーロ圏にとどまることができるように救済策を作ったのですが、それをひっくり返すような発言でユーロ売りが強まりました。

しかしその後報じられたダイセルブルーム・ユーログループ議長発言はそれ以上のインパクトのあるものでした。議長は「キプロスの銀行リストラ計画、そのほかのユーロ圏の前例とみなされるべき」「危機が後退した今、問題に対処するに当たりより思い切る必要がある」と述べさらに「(経営難の銀行が資金調達できない場合)われわれが株主や債権保有者と話して彼らに銀行資本再編への貢献を求める。必要なら預金保険対象外の預金者もだ」と述べたのです。

キプロスでは10万ユーロ以上(預金保険の対象外)の預金に関しては保護されず強制的に減額される見通しですが、これはあくまで特殊なケースであって、他の国で同様の措置は取られない、との見方がされていました。ところがユーログループの議長が「前例とみなされるべき」と今後他の国でも同様の措置が取れれる可能性を示唆したのですから、この発言は非常に重要なものです。

その後ユーログループ報道官が「議長は、キプロスの銀行リストラ計画、その他のユーロ圏の前例と見なされるべきとは発言していない」と議長の発言を否定しましたが、発言は一言だけ伝わったわけではなく、一連の発言として伝わったものですから、否定は説得力がありません。

今すぐに同様の措置が他の国で取られるという可能性はありませんが、脆弱な銀行は救済されず、預金保険の範囲外の預金者は社債などの債券保有者と同等のリスクを負うという前例ができ、それが今後も適用される可能性がある、ということになれば、体力の落ちている銀行から預金をより健全な銀行に移そうという動きが出るのが当然です。ひいては、ユーロ圏からの資金逃避が起きてもおかしくありません。

当初はユーロ売り、という動きになるのでしょうが、今後の展開しだいでは銀行システムに対する不信感が強まって、リーマンショックのような世界的なリスク回避の動きにすらつながる可能性もあるので注意が必要です。
http://www.gci-klug.jp/takano/2013/03/26/018640.php

キプロス「ゲーム」はまだ続く
2013年 03月 26日 12:53

コラム:キプロス問題がまいた2つの「懸念の種」
コラム:キプロス支援をめぐるロシアの危険な賭け
コラム:キプロスのユーロ離脱に現実味、対処は可能
コラム:新総裁の「市場対話力」カギ、半年後の実績が信認左右
By Felix Salmon

ロシアの富豪たちにとって、先週末は心休まる日々ではなかっただろう。まず、新興財閥のボリス・ベレゾフスキー氏が英ロンドン郊外アスコットの自宅で死亡しているのが見つかった。そして、キプロス2大銀行では預金保険対象外の大口預金者(ロシアの富豪)に負担が課されることになった。この負担は、キプロス危機が表面化した時の想像をはるかに超えるものになりそうだ。

キプロスのアナスタシアディス大統領は当初、大口預金者(10万ユーロ以上)に10%以上の預金課税を課すことには断固反対する姿勢を示していた。しかし、わずかこの1週間で、状況は劇的に変化した。国内最大手バンク・オブ・キプロスの預金保険対象外の大口預金は約40%カットされる可能性があり、同2位キプロス・ポピュラー(ライキ)銀行の大口預金者なら全額を失うことになる。

キプロス政府が、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の3者で構成するトロイカと合意した内容は、大胆かつ荒々しい地政学的権力闘争を映し出している。

公式声明には「ユーログループは、キプロスとロシアが金融支援で合意することを期待する」との言及があるかもしれない。しかし、ロシア人が意に反して数十億ユーロもの貢献を余儀なくされることを考えると、追加支援を喜んでするとは極めて考えにくい。

キプロス支援をめぐる欧州とロシアのポーカーゲームでは、欧州が最大限攻撃的な手を打った。それは基本的に、ロシア人預金者に最大限の貢献を強いるものだ。今回の合意で一件落着となるなら、ロシアにとっては明らかな負けとなり、EUにとっては勝ちとなる。

まず、資本規制が設けられないだろうことは良いことだ。バンク・オブ・キプロスの一部預金は凍結され、これは一種の資本規制と呼べるものだが、キプロス国内および国外へ移動するユーロの「引き出し制限」はない。金融市場も概ね平静を保っている。最大の打撃を被っているのがロシア人であることから、欧州株式ではパニックは起きていない。

さらに重要なのは、小口預金者への打撃やユーロ圏離脱といった大きな問題が避けられたことだ。そして、トロイカ的観点から最も重要なのは、全てが既存の銀行整理機関のもとで構築されており、キプロス議会の採決を必要としないため、ロシアの圧力で合意がひっくり返される心配がないことだ。

しかし、もちろんゲームはここで終わりではない。キプロス経済に与える影響はあまりに甚大で、もう1度か2度の大規模な債務支援なくしては、同国が長期的にユーロ圏にとどまることは極めて困難だからだ。

キプロス政府はかつてのアイスランドのように、国内の一部銀行を破綻させる。しかし、アイスランドには銀行以外にも産業があった。何よりも、アイスランドは自国通貨を安くすることで産業に競争力を与えることができた。

本当の意味でアイスランドのようになるには、キプロスは通貨を切り下げ、デフォルトする必要がある。それができなければ、キプロスは議会が反乱して緊縮策を無効にするまで、ユーロ圏のみならずEUから脱退するまで、外部から課された緊縮策に縛られて生きていくしかないだろう。

キプロス経済は向こう数年間、かなりの苦境を味わい、国民はそれを欧州のせいにするだろう。自国経済に見合わない過大評価された通貨を背負わされ、経済はマイナス成長しか展望できなければ、キプロスが自らユーロを離脱することは全く起こり得ることだ。こうした不満が表れ始めたとき、ロシアはもう一度キプロスに手を差し伸べるだろう。

(25日 ロイター)


[ロンドン 26日 ロイター] キプロスのサリス財務相は26日、100億ユーロの同国向け支援策の一環として、キプロスの大口預金者は預金の約40%を失う可能性があるとの見解を示した。BBCラジオで述べた。

同相は「(損失額は)その付近になる可能性があるが、予測はしたくない」とし、具体的な額はまだ決まっていないと語った。

http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE92P02820130326?sp=true

 
「ユーロ離脱も選択肢」と言うな、迷いは禁物−キプロス財務相 
  3月26日(ブルームバーグ):キプロスのサリス財務相は、ユーロ離脱という前例のない道を検討すべきだと騒ぐ口をふさぎにかかっている。100億ユーロ(約1兆2150億円)の救済が経済にもたらす痛みを和らげるためには、通貨同盟から抜けることも選択肢だとの声が前日に浮上していた。
ノーベル経済学賞受賞者でキプロス政府顧問を務めるクリストファー・ピサリデス教授と議会の金融委員会を率いるニコラス・パパドプロス議員がそのような考えを示していた。
サリス財務相は26日ニコシアでブルームバーグテレビジョンのインタビューに答え「ユーロ圏から離脱するなど、実行はおろか口にしたり頭で考えたりするだけで破滅だ」と語った。「われわれのいるべき場所は欧州でありユーロ圏だ。われわれはここにとどまるために必要な、いかなる行動もとる」と強調した。
資金移動の制限は恐らく、数週間は緩和されないだろうとも述べた。欧州に迫られ決定した、国内2位の銀行の解体と一部預金者の損失負担という合意措置の影響が消化されるのを待つ必要がある。
キプロスの銀行は頓挫した最初の救済合意が発表された16日以来閉鎖され、市民は現金自動預払機(ATM)からの限られた引き出し以外には銀行利用ができない状態。政府は25日、銀行の休業を27日まで続けることを決めた。
銀行システムからの急激な預金流出を防ぐための資本移動の制限は、例外的な状況においてのみ欧州連合(EU)法で認められている。サリス財務相はキプロスでの資本規制が数週間続くとの見通しを示した。
解体されるキプロス・ポピュラー銀行 の存続資産を引き継ぐキプロス銀行以外については、資本規制は「より緩やか」になるという。「経済の流れを止めないよう規制に適正なバランスを見いだすため、政府は銀行およびパートナーらと協議している」と財務相は述べた。
EUの欧州委員会は救済前の段階で、キプロス経済が今年マイナス3.5%成長になると予想していた。救済後は縮小幅が拡大するとエコノミストらはみている。
原題:Sarris Muffles Calls for Cypriot Exit From Euro AfterRescue (1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニコシア Tom Stoukas astoukas@bloomberg.net;ブリュッセル James G. Neuger jneuger@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/26 22:07 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK9NPL6KLVSV01.html


 

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コメント
 
01. 2013年3月27日 07:04:06 : zBYc960RaI
そもそも当局者の一言でリスクオン/リスクオフと切り替わることがおかしい。
ひどいカジノ経済だ。

02. 2013年3月27日 11:09:08 : GnRfb4ci8o
キプロスが取り付け騒ぎ回避へ資本管理措置、28日に営業再開
2013年 03月 27日 10:11 JST
[ニコシア 27日 ロイター] キプロスは27日に銀行の取り付け騒ぎを避けるための資本管理措置を導入する準備が整う見通し。国際支援機関との支援策での合意を受け、預金者の間では不安が広がっている。

キプロスのサリス財務相は銀行が営業を28日に再開し、資本管理の措置が27日の1000GMT(日本時間午後7時)までに整う見込みだと明らかにした。詳細は明らかになっていない。

財務相はキプロスのテレビのインタビューで、「銀行は28日に再開し、莫大な資金が流出する可能性を制限する最善の策を検討している。経済や企業、個人を懲罰的な状況に置くようなものではない」と述べた。

中央銀行総裁は、「緩やかな」管理措置を一時的に全ての銀行に対して導入するとしていた。財務相は先に、措置が数週間維持される可能性があると述べていた。

<銀行再開後すぐに預金者殺到か>

支援の条件では、国内2位のキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行CPBC.CYを閉鎖し、10万ユーロ以下の預金が国内銀行最大手バンク・オブ・キプロスBOC.CYに移管されることになっている。両行の10万ユーロ超の預金は凍結され、預金者は大半を失うことになる可能性が高い。国による預金保証の上限は10万ユーロ。

政府の高官は大口の預金者の損失が約40%になるとの推計を明らかにしている。

多くのキプロス国民は新たな合意に安心しておらず、銀行には営業再開後すぐに預金者が殺到するとみられる。

銀行の休業が長期にわたったことで、事業にも支障が出ている。キプロスのスーパーマーケット協会のAndreas Hadjiadamou会長は消費者の信頼感が底に達したと述べた。

キプロスのすべての銀行、3月28日まで休業=中銀 2013年3月26日
キプロスの銀行、28日に営業再開する見込み=サリス財務相 2013年3月26日
キプロス、国内行の営業再開時に資本規制導入へ=大統領 2013年3月26日
大口預金者の損失は約40%の可能性=キプロス財務相 2013年3月26日
 

 


 


BRICS首脳会議、開発銀行創設で意見まとまらず
2013年 03月 27日 10:09 JST
[ダーバン(南アフリカ) 26日 ロイター]  新興5カ国(BRICS)は26日、首脳会議を開いたものの、道路や港湾などのインフラ整備に融資する開発銀行の創設について、出資金の割合や開設場所で意見がまとまらなかった。

BRICS首脳会議は南アフリカのダーバンで26─27日の日程で開催。

ロシアのシルアノフ財務相は、BRICS首脳会合前に開かれた財務相会合後、「前向きな動きがあるが、開発銀行の創設について決定はなされていない」と語った。

BRICS首脳は、共同声明で言及するなどして、開発銀行創設に向けた勢いを維持したい考え。

シルアノフ財務相は「プロセスを加速させるための指示が示される」とし、4月の20カ国・地域(G20)会合で再度この件を協議する、と付け加えた。

複数の当局者によると、開発銀行へは当初500億ドルをBRICS全体で拠出すること検討しているが、各国がそれぞれ100億ドル拠出するか、もしくは、経済規模に合わせて拠出額を決定するかなど、依然意見がまとまっていない。

BRICS首脳会議では、金融危機などの際に利用できる外貨準備の共同積立基金についても承認される見通し。

開発銀行や外貨準備の設立は、主要国の利益を優先しているとの指摘がある世界銀行や国際通貨基金(IMF)へ依存せざるを得ない新興国の不満を反映している。


中国国家主席、アフリカとの対等な関係望むと表明 2013年3月26日
キプロス大統領とEU、支援策の大枠案で合意=関係筋 2013年3月25日
ロシア大統領、BRICSは「地政学上の問題にも対応を」 2013年3月22日
キプロス、ロシアに投資と融資延長を要請=財務相 2013年3月21日

 

 

キプロスを助けても感謝されないドイツの恨み節
強い通貨マルクを手放したのは亡国への道だったのか
2013年03月27日(Wed) 川口マーン 惠美
 キプロスなどという、日頃あまり話題にならない地中海の島のせいで、EUが揺れている。

 キプロスは南北に分かれているが、現在問題になっているのは南のキプロス共和国で、人口約87万人(北はイスラム系の住民が住んでいて、トルコが仕切っている)。

マネーロンダリング天国だったキプロス


キプロスは2004年にEUに加盟した〔AFPBB News〕

 ドイツでは去年からしばしば、この国のバブル崩壊が話題になっていた。

 長年、キプロスの銀行は、魅力的な金利を売り物に投資家のお金を集めていた。税金は安く、法律は抜け道がいっぱいで、マネーロンダリングはし放題。

 一時は国家経済の70%が金融による収入。その挙句、銀行資産が経済規模の8倍と、まことに不健全な状態となり、しかし、まさにそのおかげで、長い間、キプロスは好景気で潤っていた。

 キプロスが脱税天国になったのは、何も最近の話ではない。政府はすでに1970年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、自国を、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンにしようと図った。

 さらに、1990年にソ連が崩壊すると、好景気は絶頂となった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えたが、そのお金がどこから来たものかはやはり一切問われることがなかった(2012年11月3日付 Der Spiegl)。

 現在、キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だという。

 ロシアとキプロスは伝統的に縁が深い。第2次世界大戦後、キプロスは非同盟運動国(NAM) の1つとして、公式には東西どちらの陣営にも属していなかったが、ロシアはキプロスを積極的に支援していた。

 多くのキプロスの若者がモスクワへ留学し、一方、ロシア人は、キプロスをヨーロッパへの架け橋と見なしていた。キプロスの高級品店ではロシア語が通じ、ロシア人相手の商売が大いに繁盛した。

 キプロスの好景気にもう一度拍車がかかったのが、2004年のEU加盟だ。2008年にはユーロが導入された。

 そこでキプロスは、裕福なロシア人が容易にキプロス籍を取れるように計らい、ドイツ情報局の調べでは、すでに80人のロシアの権力者、富裕層の人々がキプロス国籍となり、EU市民としての権利を享受しているという。

 ちなみに、投資家でロシアの次に多いのが、英国だそうだ。キプロスは1960年まで英国の植民地だったこともあり、今でも3500人の英国兵が駐屯している。

キプロス大統領はロシアの大口投資家を守りたかった?

 いずれにしても、キプロスのバブルは破裂すべくして破裂した。今月の末までに175億ユーロのお金を都合することができなければ、キプロスは破産する。EUのユーロ国は、3月15日に緊急会議を開き、100億ユーロの援助を決めた。

 ただし援助の条件は、キプロスが自国の銀行に預けられているお金から58億ユーロを拠出するというもの。EUの血税がつぎ込まれるのだから、キプロスも少しは努力してほしいということだが、問題は、いったい誰の預金が犠牲になるかだ。

 16日の早朝に発表されたのは、全預金者に一度限りの税金をかけるという案だった。税率は、10万ユーロ以下の預金者は預金額の6.75%、それ以上は9.9%。つまり、小口預金者も虎の子の一部を失うことになる。

 今までの常識では、たとえ銀行が破産しても、10万ユーロ以下の預金は失われないというのが原則だった。投機とは縁のない人々が金融破綻の責任を負わされるのは、誰が考えても不公平だからだ。

 ただし、今回起こっているのは銀行の破産ではなく、救済であるから、事態は複雑だ。


キプロスの首都ニコシアのATMで預金を引き出そうとする人たち(2013年3月17日撮影)〔AFPBB News〕

 寝耳に水のキプロス国民は、その朝、銀行のATMに殺到し、虎の子を守ろうとしたが、すでに一定以上の金額は引き出せなくなっていた。

 しかも銀行は業務を停止。いつ開くかも分からない。瞬く間に大規模なデモが発生し、怒った国民で、国内は騒然となった。

 ただ、デモの様子を見ると、牙をはやしたメルケルの人形や、メルケルとナチのカギ十字の写真などが登場しており、あたかもドイツがこの非情な措置を計画実行した首謀者のような感じだった。この映像に、「ちょっと待って」と思ったドイツ人は多いはずだ。

 ドイツ第1テレビの報道によると、ブリュッセルで行われたEUの会議では、最初、小口預金者の虎の子には手を付けない方針で話が進められていたという。

 ところが、これに抵抗したのが当のキプロスのアナスタシアディス大統領だった。

 小口預金を課税対象から外すと、大口預金者への課税率が上がってしまう。彼は、ロシア人など大口投資家のお金を守りたい一心で、最高課税率を10パーセント以上にすることを断固拒否し、その代わり、小口預金者のお金に課税すると言い張った。

 そして、「それはまずい」とEUの財務大臣たちに説得されそうになると、一時、怒って、あるいは、怒ったふりをして、会議の席を立ったという。

 融資の条件である58億ユーロを、誰がどのように負担するか決めるのは、結局はキプロス政府である。ドイツ政府は、「累進税率法則についてはキプロス政府が決定することである」と口をつぐんでおり、ショイブレ財務相も、「小口預金者の預金が課税対象から外されることに異議はない」と言っている。

 また、他の財務相たちも、小口預金者を課税対象から外すべきだと思っていたようだ。だから、この案がアナスタシアディス大統領から出たことはおそらく間違いない。そしてそれが発表された途端、キプロス国内は案の定、前述の大騒ぎになった。

EU憎悪のキプロス国民、大統領はロシアに頼るもあえなく失敗

 アナスタシアディス大統領は、国内が騒然としたのを見て、慌てて国民に向かって言った。「このEUの決定を覆すよう、大いなる努力をしたい」と。

 大統領が、大口投資家からの圧力と一般国民の板挟みになっているのは分かるが、だからと言って、責任をEU、あるいは、ドイツになすりつけるのは卑怯だ。本はと言えば、責任のほとんどは自国にある。

 キプロス政府は、法案を急遽修正し、20万ユーロ以下の預金には手を付けず、20万から100万ユーロの預金者に6.75%、100万ユーロ以上には9.9%課税という新案をひねり出したが、これでは58億ユーロに達しないことは初めから分かり切っていたというから、彼らが本気でやっていたとは思えない。

 そして、19日の夜、その新案が議会に掛けられたが、賛成した議員が1人もいなかったというのが、また凄い。つまりキプロスは、EUからの援助を拒絶したのである。

 銀行が破産すれば10%の預金損失では済まない。国も破産する。ドイツから眺めている限り、キプロス政府がいったい何をどうしたいのかが分からない。

 デモをしている人々の掲げているプラカードを見ても、「ヨーロッパなど糞くらえ!」といったEU憎悪のセリフが多い。

 市民のインタビューでも、「我々もヨーロッパの一員として、ちゃんとした扱いを受ける権利がある」とか、「金の問題ではない。誇りの問題だ」という声ばかりだし、そもそも大統領自身がEUに大変不満な様子だ。だからだろう、彼の口からは、「腐敗した銀行システムの改革を!」などという殊勝な意見は出てこない。

 挙句の果て、キプロスはロシアに支援を求めようとした。この大統領は、あくまでも正攻法が嫌いなようだ。

 20日にはキプロス財務相が大急ぎでモスクワへ赴いたが、EUの委員長バローゾの方が一歩早かった。EUにしてみれば、キプロスのような極小国の問題を自力で解決できず、ロシアが手を差し伸べるとなると、面目丸つぶれとなるので、それはどうしても避けたい。

 バローゾがロシアのウラジーミル・プーチン大統領と何をどう取引したのかは分からないが、キプロスの財務相はまもなく、肩を落としてロシアから戻ってきた。プーチン大統領にしてみても、自国からキプロスに資産を持ち出している人間を敢えて助けたいと思わなかったのかもしれない。

 一方、ギリシャ正教会がキプロス援助を申し出ているという話もあった。アナスタシアディス大統領が司教と会見している映像が20日に出ていたが、これも失敗。EUが突きつけた最後通牒は25日だったので、緊張は否応なく高まった。

 ドイツでも、EUの1国が破産するといったいどうなるのかという不安で、人々の目はキプロスにくぎ付けになり、そのニュースばかりが刻々と流れた。EUは、アナスタシアディス大統領に恐喝されていたのである。

 24日の夜、再度ブリュッセルで会議が開かれ、結局、キプロスの銀行システムの改革を条件に、援助は行われることになった。キプロスで2番目に大きい銀行に大ナタが振るわれ、蘇生できる部門と切り捨てる部門に分けられるそうだ。

 しかし、驚くべきことに、アナスタシアディス大統領は、国内最大のキプロス銀行の方は、この整理の措置から外すことに成功した。

 EUの財務相たちは、キプロス破産の回避に一応ホッとした表情は見せているが、心の中は、キプロス政府の不誠実な態度に、怒りが沸騰していることだろう。

強いマルクを手放したのは痛恨の失策だったのか・・・


キプロスの中央銀行は25日、混乱回避策としての国内全ての銀行の休業措置を28日まで延長すると発表〔AFPBB News〕

 いずれにしても、今回のキプロス事件により、ドイツ人は急速にEU、そして、ユーロに対する信頼を失いかけている。

 「私たちの通貨はどうなるのだろう? 私たちの預金は?」

 通貨を信用できないというのは、最悪のことだ。ドイツでは、すでに不動産はどんどん値が上がっている。皆、考えることは同じなので、金相場も世界的に高騰してしまった。

 ドイツ人の不安は破綻国への度重なる援助にもある。今まで政府は、ドイツはEUの一員として生きるのがベストであり、援助は自国の救済でもあると国民を説得し続けてきた。

 しかし、国民はどんどん泥沼にはまっていくような不安に苛まれている。ザルを相手にしているような感じだ。キプロスの場合、「なぜ我々の税金でロシアの金持ちの預金を守らなければいけないのか?」という疑問も、怒りとなって噴出している。

 しかも、これだけ犠牲を払っているのに、EUの誰からも感謝されず、恨まれるばかりなのだ。

 先週、取材でノルウェーに行ったので、現地の人にEUについて尋ねてみたら、やはり「加盟しなくてよかった」ということだった。スイス人もそう思っているだろう。

 あれほど強かったマルクという貨幣を手放したのは、亡国につながる愚行であったのではないかと、多くのドイツ人が思い始めている。しかし、後戻りはできない。目を瞑って前進するのみ?

 ドイツ人の悪夢はまだまだ続きそうだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37413


 
  

 

【第257回】 2013年3月25日 広瀬 隆雄
キプロス救済は一応決まったが
危機が完全に去ったわけではない!
【今回のまとめ】
1.キプロスが欧州連合(EU)の示した救済条件に大筋で合意した
2.第2位「ライキバンク」顧客の10万ユーロ以上の預金は「全損」も?
3.ライキバンクは分割され、消滅する
4.ギリシャ、スペインの預金者が浮足立つ可能性も

キプロス第2位の銀行が“処理”の対象に

 日本時間の3月25日(月)朝、ブリュッセルで開かれていたユーログループの会合の席上、キプロスがEUの示した危機回避案に大筋で合意しました。

 それによると、キプロス第2位の銀行である「ライキバンク(=キプロス・ポピュラー銀行)」の顧客は預金のうち10万ユーロ以上の部分に関しては預金保証の対象とならないため、全額が失われるリスクが生じることになりました。(これは、下に述べる「預金税」ではありません。)

 一方、キプロス最大手である「キプロス銀行」の10万ユーロ以上の大口預金に関しては、現在のところまだ詳細はわかっていません。

 またライキバンクは“グッドバンク”(よい部分)と“バッドバンク”(悪い部分)に分けられ、事実上消滅する見通しです。よい部分に関してはキプロス銀行と統合される見込みです。

 なお今回キプロス政府とEUとの間でできあがった合意は、今後、ユーログループでの表決、さらにドイツ議会での表決で可決されることが必要となります。

キプロス問題、これまでの経緯をおさらい

 3月16日(土)に、EUがキプロスに対して「100億ユーロの金融支援を行う用意があるが、それには条件がある。キプロス自身も58億ユーロのお金を探して来い!」と宣告しました。

 58億ユーロを工面する具体的な方法として銀行預金に課税するという方法が提案されました。これは「預金税」と呼ばれるものです。10万ユーロ以上の預金に対しては9.9%、それ以下の部分については6.75%を“税金”という名の下に、政府が没収するわけです。

なぜ「預金封鎖」をしたのか?

 なお、課税が発表されると、その前に預金を全部引き出したいと考えるのが人情ですから、皆が銀行に殺到します。すると“取り付け騒ぎ”に発展する恐れがあります。

 そこでお金を引き出したり、別の口座に動かしたりできないように銀行取引を凍結する必要が出ます。これを「預金封鎖」と言います。現在、キプロスでは市民の生活に必要な最低限のキャッシュだけはATM(現金自動預け払い機)から出せる状態になっています。

 さて「58億ユーロを預金税でかき集めて来い!」と命令されたキプロス政府は、同国の憲法の手続きに従い、上記の預金税を議会の表決にかけました。

 その結果、預金税はアッサリ否決されてしまいました。

 しかし「もしかして、自分の預金がアブナイかもしれない」ということは、すでに庶民に知れ渡ってしまいました。このためキプロスの銀行は、もう通常の業務を続けることはできません。

議会にEU案を却下されたキプロス政府が取った措置

 そこでキプロス政府は、何とか大混乱を未然に防ぐため一連の方策を講じました。

 まず「銀行整理法案」が可決されました。これは経営内容が悪い銀行を、速やかによい部分と悪い部分に分け、出血を喰いとめる方法です。

 キプロスの場合、2番目に大きいライキバンクの経営内容がとりわけ悪いため、これをグッドバンクとバッドバンクに分け、グッドバンク部分を1位のキプロス銀行と合併させる必要が出たのです。

 次に「資本規制法案」が可決されました。これは一度に電信振替などの方法で持ち出せる金額を制限する法律です。預金の流出を食い止めるのがその目的です。今回の決定にはチェッキング口座(=小切手が振り出せる口座)の利用を大幅に制限することも含まれています。

 なぜ小切手すら振り出せないようにするかといえば、キプロス国内に銀行口座をもっている預金者が、たとえば「第三国に本社を置く○×証券」に口座を開き、そこへ小切手を送れば預金を移せてしまうからです。


最悪の場合は“物々交換”の時代へ逆戻り

 このように小切手の動きを封じるとなると、キプロス国内のあらゆる商取引がやりにくくなることが予想されます。上に書いたように現金の引き出しも制限されているわけですから、この規制が長引けば、最悪の場合“物々交換”の時代にもどるような不都合さが生じるリスクがあるのです。

 さらに、3つ目の方策として「連帯投資基金」の設立が可決されました。これはキプロス政府の持つ資産をこの基金に移管し、その信用力を担保にお金を前借りするという仕組みです。具体的には地中海沖の天然ガス田の権益やキプロス市民の年金ファンドの資産などを「ちょっと拝借」することになると言われています。

 もちろんキプロス政府は「何とか銀行を救おう」という善意からこれらの非常事態下での措置を講じようとしているだと思いますが、ちょっと間違えば、庶民は銀行預金の一部だけでなく年金も失うリスクに晒されるわけで、政府が国民の財産の処分に関して勝手に判断を差し挟むことを可能にする、上記の一連の立法には批判の声もあります。

 この連帯投資基金が実際に実行に移されるかどうかに関しては、現在のところ判然としません。

日本は、戦後で唯一“預金封鎖に成功”した国

 なお預金税は過去にいろいろな国で導入が試みられましたが、その大半は失敗に終わっています。第二次世界大戦以降で唯一、預金封鎖に成功したのは日本です。

 当時日本は戦争で多額の債務を抱えており、しかも太平洋戦争の過程で財閥の経済支配が強まり、貧富の差が拡大しました。そこで戦後の国家の立て直しに際しては、偏在する富を是正することが欠かせないと、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は考えたのです。そこで預金封鎖をした上で、旧円を新円に切り替えることを実施しました。

ギリシャ、スペインに飛び火するか注目

 さて、話をキプロスにもどすと、キプロス政府がEUの意向に沿うと決めたことで、当面、欧州中央銀行(ECB)からの緊急流動性支援プログラム(ELA)は継続されると思います。

 これは言わばキプロスに対する「酸素補給」です。しかし、これでキプロスの危機が一件落着するかどうかは、まだ予断を許しません。

 実は、今回の騒動で当初の予想より上手くいっていたこともあります。それは少なくともこれまでのところギリシャやスペインなどの近隣国では取り付け騒ぎが起こっていないということです。

 ただ、今回、ライキバンクの大口預金者が10万ユーロ以上の部分に関して全てを失う可能性が出たことを見て、近隣国の預金者が浮足立つ可能性が無いとは言い切れなくなってきました。

 とくにイタリアの場合、先の選挙の後、現在もまだ多数派形成ができておらず、政治は空白になっています。仮に再選挙ということになった場合、ユーロ離脱派が大幅に得票を伸ばす可能性もあります。


 


ユーロ危機と「ドイツ的な欧州」の誕生
対立を防ぐはずのプロジェクトが敵意を生んだ理由
2013年03月27日(Wed) Financial Times 


南欧では特にドイツに対する反感が強まっている(写真はキプロスの抗議デモの一幕)〔AFPBB News〕

 結局、キプロスは苦い薬を飲むことになった。国家的な屈辱と暗い将来に直面した国民の多くは、小さな母国は無慈悲な大国の意思に屈するよう強いられたのだと不満の声を上げている。

 無慈悲な大国とは、そう、ドイツのことだ。

 キプロスの新聞は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を「ドイツ野郎*1」と表現し、ヴォルフガング・ショイブレ財務相は「ファシスト」のような話し方をするとこき下ろした。ギリシャやイタリアですっかりお馴染みとなった反ドイツの感情がここにも広がった格好だ。

危機下で力を増すドイツと各地に広がる「ドイツ嫌い」

 このドイツ嫌いは不当だ。怒号が飛び交うその陰で、ドイツの納税者は今回もまた、ユーロ加盟国の救済資金をどの国よりも多く負担することになる。近隣諸国に数千億ユーロもの資金を融資しても、ネオナチだという批判しか返ってこないという状況は、少しひどいように思える。

 しかし、ドイツの力が増していること――そして、その力に対する怒りの気持ちも強まっていること――は、今や欧州政治のメーンテーマとなっている。

 何とも皮肉な話である。統合を目指して1950年代から続けられている「欧州プロジェクト」全体の最大の目的は、ドイツは強大すぎて近隣諸国と気持ちよく共存することなどできないという見方を根絶することにあったからだ。

 実際ベルリンでは、パリやブリュッセルと同じくらい、「ドイツ的な欧州ではなく、欧州的なドイツ」が必要だという言い方が何度も繰り返されてきた。

 ところが、キプロス危機が勃発してからは、「ドイツ的な欧州」の色彩が次第に濃くなっているように見える。危機下で取られている欧州大陸の方向性は、ベルリンの政治家と官僚の思想や意向によって形成されている面が強いからだ。

 確かに、キプロスとの交渉を主導したのは欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、および欧州中央銀行(ECB)の3者だった。だが、ドイツ政府の意見を聞いたり同意を得たりしなければ、どんな取引も成立し得ないことは最初から明らかだった。

 今回の危機が始まってから、ECB側のリード役をイタリア人のマリオ・ドラギ総裁ではなくドイツ人のヨルク・アスムセン専務理事がずっと務めていることも、ドイツが危機対応の顔になる要因となった。

*1=原語は「Hun」、第1次・第2次大戦中に使われたドイツ人をののしる言葉

 一連の騒動を少し離れたところから見ることができたら、ドイツの指導者たちは、どうしてこういうことになったのかと首をひねるに違いない。

 ドイツと近隣諸国は対立しているという認識に終止符を打つための欧州プロジェクトが、反ドイツ感情の復活につながってしまったのはなぜなのか? そして、このダメージはずっと残るものなのか?

 これについては、最近は非常に大きな利害が絡むようになっており、ドイツといえども国益を主張するのをためらうわけにはいかなくなっている、という見方でかなり説明がつくだろう。何しろ現在、欧州単一通貨の存続が疑問視されており、ドイツの納税者は様々な救済基金に巨額の資金を拠出しなければならない状況が続いている。

 ドイツはまた、この問題について明快で一貫性のある分析を行っている。危機の中心にあるのは放漫財政かお粗末なビジネスモデルであり、従ってその解決策は構造改革に関連した緊縮財政である、という見方だ。

 この処方箋は危険だと指摘する向きは多い。だが、そうした緊縮財政反対論者は、昨今の思潮を変えられるほど筋の通った代替策をまだ提示できていない。

 しかし、これはドイツが強いというだけの話ではない。実は、最近までドイツと拮抗していた欧州のほかの大国が極端に弱くなっているという話でもある。例えば、スペインとイタリアの政府は財政難にあり、弱体化している。英国はユーロ圏のメンバーではないため、一歩下がった立場を取っている。

何より際立つフランスの「不在」

 だが、今回の危機の最も顕著な特徴は、交渉のテーブルに有力なフランス人がほぼ皆無だったことだ。

 ジャン・モネ氏からジャック・ドロール氏に至るまで、フランス人は常に、欧州プロジェクトのために知的な指導力を発揮することを誇りにしてきた。仏独同盟が引っ張る形で欧州を前進させるべきだという考えはフランス人の思考の要であり、メルケル首相と緊密な協力関係を築こうとしたニコラ・サルコジ前大統領の決意にも反映されていた。

 「メルコジ」のコンビが欧州を動かしているという考えはかねて、ちょっとした錯覚だったものの、少なくともそれは舞台の中心にいようとするフランスの決意を表していた。

 ところがフランソワ・オランド大統領の下で、フランスがドイツと同等の役割を果たしているという考えは完全に消え去った。キプロスを巡っては、フィンランドさえもがフランスより議論に大きな影響を与えたように見えた。

 問題の一端は、オランド大統領が緊縮に対するドイツのこだわりに反対していることを世に知らしめながら、首尾一貫した対案を提示しなかったことにある。大統領はドイツを押し返せるような南欧諸国の同盟の先頭に立つことはなかったが、かと言ってメルケル首相と良い協力関係を築くこともなかった。

 フランス政府高官も、もはや昔のように欧州の中心部で重要な役割を果たすことはなくなった。ジャン・クロード・トリシェ氏の退任を受け、ECBを率いる総裁はフランス人ではなくなった。EUの域内市場を担当するフランス出身の欧州委員、ミシェル・バルニエ氏はどちらかと言えば軽量級だ。

欧州にとってもドイツ自身にとっても危険な状況

 ドイツの政策立案者でさえ、この状況が一時的であることを望んでおり、事態が正常化し、EUの新機構が創設された暁には、ドイツがこれほど公然と指揮を執る必要はなくなるかもしれないと考えている。だが、それは恐らく実現しそうにない望みだ。

 ユーロ圏の危機は決して終わっていないし、危機の終わりにどんなEU新機構が誕生するのか、さらには、それがドイツの力を弱めるのか、それとも強めるのか、ということも不透明だ。

 その結果、ドイツが監督者の立場に立たされたまま、小切手を書き、ルールを執行し、さらにはルールをどんどん作っていくことになる。これは欧州にとって、そして最終的にはドイツ自身にとって危険な状況だ。

By Gideon Rachman


03. 2013年3月27日 11:16:52 : GnRfb4ci8o
ユーロが対ドルで4カ月ぶり安値圏、欧州懸念根強い

  3月27日(ブルームバーグ):午前の東京外国為替市場では、ユーロがドルに対して前日に引き続き4カ月ぶりの安値圏で推移。キプロス救済に関連して民間セクターの損失負担の拡大などが懸念材料となっている。
午前10時42分現在のユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.2858ドル前後。前日のニューヨーク時間には一時1.2829ドルと、昨年11月以来の安値を更新し、200日移動平均を2日連続で下回った。一方、ユーロ・円相場は同時刻現在、121円68銭付近で推移している。
ロイター通信によると、欧州は銀行再編の際に、10万ユーロ(約1210万円)を超える預金を持つ預金者に損失を負担させる案を検討している。欧州連合(EU)欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)のスポークスマンを引用して報じた。
三菱東京UFJ銀行シニアアナリストの武田紀久子氏(ロンドン在勤)は、「キプロス問題そのものは少しマーケットで過小評価されてきたところはあるのかなとは思っている」とした上で、「しばらくはこの話とイタリアがユーロの上値抑制要因になるという展開も避けられないと思っている」と語った。
ドル・円相場は同時刻現在、1ドル=94円64銭前後。円は主要16通貨全てに対して下落している。27日付の日本経済新聞の報道によると、日本銀行はデフレ脱却へ国債買い入れを拡大するため新たな購入目標を設ける。
黒田東彦日銀総裁は26日の衆院財務金融委員会で「これまで以上に大胆に質的、量的な金融緩和をする」と強調。日銀による市場の期待への働き掛けについて「デフレ期待から2%のインフレ期待に変えることで、設備投資や個人消費にもプラスに効いてくるのではないか」と指摘し、「期待外れにならないように量的、質的な緩和をする」と述べた。
具体的な政策では、現在3年までとしている買い入れ対象国債の年限を5年に拡大すべきかどうかただされ、「イールドカーブ(利回り曲線)を全体としてどのようにして引き下げるか、その際、あらゆる選択肢を検討課題とする。ご指摘の点も当然、検討課題となる」と述べた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/27 10:44 JST


 

2013年 3月 27日 07:13 JST
欧米の自動車産業、日本との貿易自由化交渉に懸念

By MARIETTA CAUCHI

欧米の自動車メーカーは26日、日本と貿易自由化交渉を始めることに対して警戒感を表明した。日本への輸入障壁が維持される恐れがある一方で、欧米市場への日本車の流入が増加するとの懸念がその背景にある。

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AFP/Getty Images
 欧州連合(EU)と日本は25日、貿易自由化に向けた交渉を正式に開始した。また、米国は日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明したことを受けて、それを支持するかどうかの検討に入っている。日本が次々と貿易交渉を開始するのは、韓国に追いつこうとする努力の表れの一端だ。エレクトロニクス市場などで日本から急速に市場シェアを奪っている韓国はEUや米国と既に貿易協定を締結している。

 しかし、欧米市場を日本企業に開放することが議論される中で、ここ数カ月はユーロやドルに対する円安が進み、日本の輸出業者の競争力が増している。

 欧州の自動車業界には、韓国と締結した自由貿易協定(FTA)が韓国にだけ有利に働いているとの懸念を示すメーカーもある。EU域内生産ではあるが、同地域の新車需要が過去数十年間で最低水準に落ち込む中で、韓国自動車大手、現代自動車とその傘下の起亜自動車の販売台数は、ここ数年2桁台の成長を続けている。

 韓国では、FTAの発効で輸入車への関税が半減したため、輸入車の国内シェアが10年前の2%弱から、昨年初めて10%に達した。一方、日本市場は依然として国内メーカーに支配されており、海外のメーカーが日本の貿易障壁を批判している。

 欧州自動車工業会(ACEA)のイバン・ホダック事務局長は声明文で「(欧州メーカーに対して)実質的な輸出機会をもたらす公正な自由の貿易化なら強く支持する」とした上で、「しかしながら、日本との交渉を全面的に支持するには至っていない。関税引き下げで日本メーカーのEU市場へのアクセスが改善するだろうが、それに見合うだけの十分な機会が欧州の輸出業者に与えられるかどうか疑問だ」と、懐疑的な見解を示した。

 ホダック 氏によると、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなど、米国メーカーの欧州部門も会員となっているACEAが特に懸念しているのは、EUでは自動車メーカーに対して安全および環境面で高い基準が課されているにもかからず、日本に輸入される自動車が規制されることだ。

 欧州の自動車業界としては、「EUで認可された車種については、追加的な検定や費用の掛かる改良をせずに日本で販売されることを要請する」方向だという。

 EUの貿易相理事会は昨年11月、日本との経済連携協定(EPA)交渉を始めることで合意。その際、自動車など域内産業に重大な影響を及ぼす品目の輸入が急増した場合に関税を復活させるセーフガード(緊急輸入制限)を条件とした。これは韓国との協定によって懸念が生じた時にも導入された。

 フォードのアラン・ムラーリー最高経営責任者(CEO)は26日、日本の関税障壁と円安が引き続き不安材料だと、米自動車産業の懸念を反映する発言を行った。ブルームバーグテレビジョンとのインタビューの中で「日本は市場の開放と自由化に進まなければならない」と述べるとともに、最近の円安については「世界各国の大半が考えているように、為替相場は市場に委ねることが最も重要だ」と指摘した。

フランスの自動車大手に明暗
国際展開と国内リストラにかかる未来
2013年03月27日(Wed) Financial Times
(2013年3月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 他の大衆車メーカーと同様に、フランスのルノーとPSAプジョー・シトロエンも欧州自動車産業の長い病がいつ終わるのか分からない。両社が知っているのは、病人が健康を取り戻した後も、特に自分たちは厳しく管理された生産コストというダイエットを患者に続けさせなければならない、ということだ。

 厳格なコスト管理は国内の政治的理由から、フランス国内で投資を守り、可能な限り生産能力を維持しようとする誠実な取り組みとして描かれるだろう。だが、フランス自動車産業の危機を、欧州の過剰生産能力という全般的な問題から切り離して考えることはできない。

 ルノーとプジョーの未来は最終的に、2つの柱にかかっている。1つは世界的な生産と販売の増加、もう1つは、フランスの政治家と労働組合が必要だと認めたがるよりも多くの国内リストラだ。

欧州市場でも特に落ち込みが激しいフランスの苦境


フランスでは今年1〜2月期に自動車販売台数が13.5%も減少した〔AFPBB News〕

 筆者は今年1月、珍しい人を見つけた。欧州の新車登録台数の減少が今年末に向けて小さくなり、2014年には緩やかな回復が見えてくるかもしれないと考える自動車アナリストだ。

 欧州自動車工業会(ACEA)が3月19日に発表した統計を踏まえると、このような楽観論は支持できないように思える。ACEAの統計では、今年1〜2月期に新車販売台数が前年同期比9.5%減少していたからだ。

 フランスでの販売の落ち込みは13.5%と、イタリアを除くどの国よりも憂慮すべきものだった。だが、労働者の10人に1人が直接的あるいは間接的に自動車産業に雇用されているフランスでは、失業率が労働人口の11%に向かって上昇している。

 ルノーとプジョーには、人員削減を最小限にとどめ、自動車産業が今なおフランスの産業の基礎であることを示すよう政治的圧力がかかっている。

 だが、ルノーとプジョーを共通の運命で結ぶのと同じくらい多くのことが両社を区別している。過去12カ月間の株価を見るといい。ルノーは40%近く上昇したのに対し、プジョーは50%近く下落している。投資家は、ルノーの方が財務体質が強固で、少なくとも短期的には利益と妥当な配当を生み出す可能性が高いということを正しく認識している。

国際展開で大きくリードするルノー


パリ西郊のブーローニュビヤンクールにあるルノー本社〔AFPBB News〕

 いくつかの点で、そうした違いを生み出しているのは、ルノーの国際的な特徴だ。1999年に締結した日本の日産自動車との提携は、現在の危機におけるルノーの財務健全性の頼みの綱になっている。

 それと同じくらい有益なのは、1999年から2004年にかけて段階的に買収した、安価で元気のいいルーマニアの自動車メーカー、ダチアと、ルノー日産連合が昨年12月に経営権を取得することで合意したロシア最大の自動車メーカー、アフトワズだ。

 対照的に、プジョーは長年、国際的な提携を疑いの目で見る傾向があり、代わりに西欧の基盤に焦点を当てていた。

 だが、危機というものは変化を促す。最近発表されたゼネラル・モーターズ(GM)との提携によって、プジョーはGMと車両プラットフォームを共有することができるし、部品や原材料、サービスに関する両社の購買力も高まるだろう。

 プジョーはこの提携を、中南米とロシアで事業を拡大し、2015年までに欧州での販売台数の割合をグループ全体の半分に減らすための基礎だと考えている。プジョーの熱意は正しい路線に沿っており、同社は目標を達成するために正しい対策を講じている。だが、プジョーの動きは遅きに失したと言わざるを得ない。

株主構造にも大きな差

 もう1つ対照的なのは、ルノーとプジョーの株主構造だ。フランス政府は、ルノーの株式を15%保有し、19人の取締役会に2人の取締役を送り込み、同社がとめどない資本主義の力に翻弄されないことを誇りに思っている。

 逆説的だが、その結果、ルノーは過去6年間、雇用とコストを削減するのがプジョーよりも簡単だと感じてきた。フランス政府に全体像の一部であると感じさせていることが、明らかに大きな違いを生む。また、ルノーは工場を閉鎖することなく人員の削減や給与の凍結にとどめて、プジョーよりも賢明に振る舞ってきた。

 逆に、プジョーが昨年7月にパリ近郊のオルネー工場を閉鎖する意向を表明した時には、雇用と経済成長という政治綱領を掲げてその数週間前に誕生した社会党政権が怒った。

 そして政府は同社に厳しい要求を突きつけた。プジョーの金融子会社に対する70億ユーロの融資保証と引き換えに、プジョーの取締役会に任命者を1人送り込む権利を確保したのだ。

 国はさらに踏み込んで、戦略投資基金(FSI)を使ってプジョーの株式を購入したい気持ちに駆られるだろうか? 

政府の関与は必ずしも悪くない

 この考えは先月、予算担当相のジェローム・カユザック氏が口にしたものだ。だが、同氏は先日、自身に対する税務調査が原因で辞任しており、上級閣僚がカユザック氏の発言を支持したことは1度もない。

 ああ良かった、と読者が言うのが聞こえるようだが、筆者はそれほど確信が持てない。ルノーの例は、産業の構造改革が必要な時には、フランス政府にテントの中に入ってもらってそこから外をのぞいてもらう方が、外から中をのぞき込んでもらうより助けになることを示している。

By Tony Barber, the Financial Times' Europe editor
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37438


04. 2013年3月27日 12:58:11 : GnRfb4ci8o
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キプロスの預金カットでババを引いたロシア人が平気な訳
2013/03/27 (水) 11:25


 キプロスの銀行救済問題に関して、キプロスとトロイカ側の話がついたと報道されているのですが‥

 しかし、まだキプロスでは銀行業務が再開していないことをご存知でしょうか?

 昨日、26日には銀行業務が再開される予定だったですが、それが木曜日まで延長されるというのです。

 つまり、未だにキプロスの預金者たちはATMで少しずつお金を引き出すことしかできないのです。

 それに、例の大口預金者の預金カットにしても、40%のカットになるのか、或いはそれより少なくて済むのか、それも決まっていない。

 何故かと言えば‥正確な預金者のデータがないために、必要な財源を確保するためにカット率を幾らにすればいいのか計算ができていないためだというのです。

 いずれにしても、自分たちの預金が幾らカットされるかも知らされていない大口預金者たち。

 もう、二度とこんな銀行に預金をするのは止めよう‥そう思っているのに違いないのです。

 そう思うでしょう? 貴方だって。私がキプロスの銀行にお金を預けていたとすれば、当然そう思うと思います。

 しかし、キプロス政府は、EUの支援金がキプロスに到着すれば、預金の引き出しも自然に収まるだろうと見ているようなのです。

 確かに小口の預金に関しては、そうかもしれない。しかし、大口の預金に関しては、カット率が正式に決定され、そして残額の預金の引き出しが可能になったならば、即座に残額が引き出されてしまうと思うのです。

 そう思いませんか? だって、大口の預金者の多くは、ロシアの富裕層など、海外の預金者である訳ですから。

 本当だったら自分の国の銀行にお金を預ければいいのに、それをわざわざキプロスの銀行にお金を預ける訳ですから、それなりの理由がある筈。

 例えば、国内では金利が非常に低いとか‥或いは、金利にかかる税金が高いとか‥あるいは、預金口座を開設するのにいちいち面倒な手続きが必要だとか‥

 そうなのです、キプロスはタックス・ヘイブンなのです。だから、お金持ちは、キプロスの銀行にお金を預けたがるのです。

 しかし、こうして金融危機が勃発すると、思いもかけずに自分の預金が何の予告もなしにカットされてしまう!

 自業自得というべきなのか!?

 10万ユーロ超の預金は預金保険の対象外であるから、預金カットの対象とされても止むを得ないと言ってしまえば、そのとおりであるのですが‥

 でも、預金をカットされたお金持ちは絶対にそのことを忘れない‥と思っていると、ロシアのお金持ちたちは、意外と今回の預金カットに平然としているのだ、とか。

 平然としているとは言っても、もちろん内心では怒ってはいるのでしょうが‥

 では、彼らは、ロシアの銀行に預金しておけばよかったかと言えば‥

 過去ロシアでは、1993年にルーブルが切り下げられたり‥或いは、1994年と1996年には、約200の銀行を残して後は全て姿を消したり‥或いはまた、1998年の金融危機の際には、多くの銀行が支払い不能の状態に陥ったりして‥

 つまり、多くのロシア人にとっては、今回のような出来事は何度も過去に経験済みのことなのです。

 というよりも、自分たちが預けておいたお金を引き出せないような事態にこれまで何度も遭遇してきたからこそ、海外のキプロスにお金を預けているというのです。

 そういうことだったのですか?

 醤油こと!

 だったら、意外とキプロスの危機は今後自然に収まる可能性もあるということです。

 ただいずれにしても、この先、キプロスの金融立国戦略には大きな見直しが迫られると思うのですが、一体どのようにして経済を立て直すのか?

 この際、地中海の海の幸を食材に利用し、観光客にトロイカでも食べてもらってやっていくか?

 キプロスのアナスタシアディス大統領は、トロイカ側との交渉の最中に、IMFのラガルド専務理事に椅子を投げつけてやろうかと思った、なんて報じられていますが、本当なのでしょうか?

 そんなことを口にする位だから、よほど屈辱的な言葉を浴びせられたのでしょうか?

 いずれにしても、今回のキプロスの問題は、EU以外に、ロシア、トルコ、英国などがそれぞれの立場で登場し、今後の欧州情勢を予想する上で重要なヒントを与えてくれるのです。

 以上


ロシア大統領、対キプロス融資3000億円の返済条件緩和を指示
2013/03/27 12:00
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 ロシアのプーチン大統領は25日、債務・金融危機に直面しているキプロスに対するECB(欧州中央銀行)、EU(欧州連合)、IMF(国際通貨基金)の100億ユーロ(約1.2兆円)の金融支援が同日のユーログループ(ユーロ圏17カ国の財務相で構成)の緊急会合で最終決定したことを受けて、キプロスに対する期間5年の25億ユーロ(約3000億円)の融資返済条件を緩和する方向で検討するよう関係省庁に指示した。ノーボスチ通信(電子版)などが伝えた。

 これより先、キプロスのミハリス・サリス財務相は20日にロシアを訪問し、金融支援を要請していた。サリス財務相のロシア訪問は、キプロス議会が19日に債務・金融危機を回避するため、トロイカによる同国への100億ユーロの金融支援の前提条件となっている58億ユーロ(約7000億円)の自主財源調達のための預金課税法案を否決したため、代替策としてロシアに金融支援を求めたもの。しかし、サリス財務相とロシアのシュワロフ第1副首相やシルアノフ財務相との交渉は先週末の22日まで3日間に及んだが、結局ロシアからの支援の約束は得られなかった。

 サリス財務相はロシアに対し、16年に返済期限を迎える25億ユーロの融資返済期限の5年延長と金利を4.5%から2.5%に減免することに加え、50億ユーロ(約6100億円)の新規融資を要請していた。一方、ロシアのシルアノフ財務相は25日、こうした25億ユーロの融資条件の見直しで、10%相当の減損損失が生じるとの見通しを明らかにしている。

 
(増谷栄一)

ロシア、キプロスへの金融支援協議を継続2013/03/22 12:24
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ロシアとEUの対立へ

取り付け騒ぎが南欧へ波及も
 松崎 キプロス問題ですが、「最悪は超えたが、まだ目先の解決に過ぎない」という印象です。キプロスのユーロ離脱の可能性は、まだゼロではないと思っています。

 銀行の窓口は28日まで閉鎖される予定ですが、営業を再開したとき、殺到する預金者の引き出しに対してどうなるか。それにロシアのメドベージェフ首相は「ロシア国内にあるドイツ企業の資産凍結」をほのめかしてもいます。さらにユーログループのダイセルブルーム議長が、今回のキプロス救済策が「他国で危機が起きたときのひな形になる」と発言。これがひな形になれば、スペインなど南欧諸国でも取り付け騒ぎが起こりかねず、欧州株は急落して、ユーロも大幅に下落しました。

 西原 一時はなくなっていたユーロの「テールリスク」(暴落するリスク)が台頭してきています。とはいっても、騒がれているわりには今のところユーロ/米ドルは1.2850〜1.3050の間で動いているだけ。はっきりした動きがでないので取引しづらいですね。キプロス問題にメドがついたとしても、「じゃあイタリアは?」という話にもなるので。ただ事態は混迷しており、リスクはダウンサイドです。

イタリア総選挙から1か月、いまだ組閣は難航

 松崎 市場の関心も再びイタリアへ向きつつあります。同国のナポリターノ大統領から組閣を一任された民主党党首のベルサーニ氏ですが、今週26日か27日にも進捗を報告する予定です。もし組閣に失敗した場合、5月15日の次期大統領選出後にも再選挙となる可能性が高まります。大手銀行の見方も「キプロスやイタリアがまだ不透明だし、アメリカ経済も強いからユーロは1.2500ドルを目指すだろう」というのと、「キプロスは一服したし、イタリアの組閣が進むだろうから1.3200へ上昇する」というのと、まっぷたつに分かれています。

 西原 さらに今週はイースター休暇で、しかも月末、四半期末、そして日本やイギリスの年度末。実需の取引が増える時期です。実需筋はファンダメンタルズもテクニカルも関係なく、資金需要に応じて買ったり売ったりしますから、動きが読みづらい。

今週は調整の円高の可能性も

 松崎 私はユーロ/英ポンドの売りを考えていますが、0.86台までひきつけてから売ろうと思っています。イギリスでは先週、2013年度の予算案が発表されて世論調査では国民に好評です。1万ポンドの所得まで非課税となっていたり、個人的にもうれしいですね。ただし、格下げの警告が出たり、中期的には財務相の更迭や首相交代という噂まで出ていますので、用心をするに越したことはありません。

 西原 以前にも言いましたが、今年の二大テーマは「円売り」と「ポンド売り」で、ドル高になる可能性が高いんですが、一本調子でいくわけではありません。中期的には円安・ポンド安・ドル高が進むのでしょうが、今は調整の時期かなと思います。「次元が違う金融緩和」を期待させたアベノミクスですが、期待感ばかりが高まり、応えるのがかなり大変になっています。しばらくは93.50〜95.50円のレンジでしょうが、ブレイクするとしたら失望売りによるダウンサイドの動き。欧米勢も一時的な円高のヘッジを進めています。去年10月に円安が始まり1か月遅れで日本株も上昇を始めました。3月上旬から円安は落ち着いてきたのに日本株は高値を更新。始まりと同様、日本株も1か月遅れで調整が始まるかなと見ています。日本株が調整入りすることで、米ドル/円も調整しやすくなります。今週は期末でもあり、円高の可能性を念頭においたほうがいいでしょう。

プロフィル
西原宏一(にしはら・こういち)
 CKキャピタル代表取締役。青山学院大学卒業後、1985年、大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行、為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリ・ディーラー等を歴任。
 ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。
http://www.ck-capital.jp/

松崎美子(まつざき・よしこ)
 1986年よりスイス銀行東京支店入行、ディーラーアシスタントとしてスタート。1988年結婚のために渡英。翌年より英バークレイズ銀行本店ディーリングルーム勤務、初の日本人FXオプション・セールスとなる。1997年より米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスをつとめた後2000年に退職。2003年から個人トレーダーとしてFXや株式指数取引を開始する。2007年春からはブログを通じてロンドン/欧州関連情報を発信。
http://londonfx.blog102.fc2.com/


(2013年3月26日 読売新聞)

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05. 2013年3月27日 14:57:14 : GnRfb4ci8o

キプロスはどこへ−銀行に依存し銀行の道連れになった経済

  3月27日(ブルームバーグ):キプロス国民はこの10日間の混乱した出来事を理解しようと努めている。しかし国民の苦悩は終わったわけではなく、むしろこれから最悪が訪れるとみられる。確かに当面のユーロ離脱は回避されたが、銀行に依存し、結局は銀行の道連れになって沈んだ経済をどう立て直したらよいのかと国民は嘆いている。
首都ニコシアに住む3児の母で公務員のマリア・フィリポーさん(45)は「問題は解決していない。これから半年の間に悪いことが起こるだろう」と話す。「バンカーに好きなようにさせた」のが悪かったという。
紆余(うよ)曲折の末、預金保険の対象となる10万ユーロ(約1200万円)までの預金は保護されることになったが、それで国民生活が守られるわけではないと人々は言う。
ニコシアでトラックの運転手をしていたが半年前から失業しているエピファノス・エピファニオーさん(50)は「もっと多くの人が失業するだろう」として、「誰もわれわれがどこへ向かっているのか分からない」と不安を語った。
アナスタシアディス大統領はユーロ圏内や国際通貨基金(IMF)の圧力に屈し、キプロス2位の銀行、キプロス・ポピュラー銀行 (=ライキ銀行)の解体に同意した。ロシアから支援を取り付ける試みが成功せず、大統領には選択肢がなかった。
薬剤師のヤニス・エマヌイリディスさん(50)は、「合意に不満だ。キプロス経済を破壊するものだからだ」として、「銀行システムが破壊されればキプロス経済全体が崩壊する」と指摘した。
キプロスの銀行資産は1月末時点で1264億ユーロと、同国の経済規模(180億ユーロ)の7倍。欧州中央銀行(ECB)と欧州連合(EU)統計局のデータによれば、07年には銀行資産は780億ユーロだった。
ロシアの影
銀行業界肥大化にはロシアの影がある。キプロスの銀行システムにある資金は大半がロシアから流入したものだからだ。ドイツはキプロスの政権が先月代わる前にキプロス救済へのロシアの参加を求めていた。
プライム・コンサルティング社がテレビ局の委託で今月行った世論調査で、キプロス人の67.3%がユーロ圏を離れロシアとの関係を強化するべきだと答えた。調査は686人を対象に3月19、20両日実施された。
ニコシアの公務員フィリポーさんは金融業界と取引のあるコンピューター会社に勤める夫の職が心配だと話す。25日はギリシャの独立記念日でキプロスも祝日。ギリシャ大使館へのお祝いのパレードに参加する子供たちを見ながらフィリポーさんは、キプロスの状況は「最終的にギリシャよりひどくなると思う。子供たちの将来が心配だ」と語った。
原題:Cypriots Mourn Collapse of Livelihoods as Bailout CrushesBanks(抜粋)
更新日時: 2013/03/27 07:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK9CUR6S973F01.html

ユーロが対ドルで4カ月ぶり安値圏、欧州懸念根強い

  3月27日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では、ユーロがドルに対して前日に引き続き4カ月ぶりの安値圏で推移。キプロス救済に関連して民間セクターの損失負担の拡大などが懸念材料となっている。
午後1時52分現在のユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.2843ドル前後。前日のニューヨーク時間には一時1.2829ドルと、昨年11月以来の安値を更新し、200日移動平均を2日連続で下回った。一方、ユーロ・円相場は同時刻現在、121円81銭付近で推移している。
ロイター通信によると、欧州は銀行再編の際に、10万ユーロ(約1210万円)を超える預金を持つ預金者に損失を負担させる案を検討している。欧州連合(EU)欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)のスポークスマンを引用して報じた。
三菱東京UFJ銀行シニアアナリストの武田紀久子氏(ロンドン在勤)は、「キプロス問題そのものは少しマーケットで過小評価されてきたところはあるのかなとは思っている」とした上で、「しばらくはこの話とイタリアがユーロの上値抑制要因になるという展開も避けられないと思っている」と語った。
ドル・円相場は同時刻現在、1ドル=94円85銭前後。円は主要16通貨に対してほぼ全面安となっている。27日付の日本経済新聞の報道によると、日本銀行はデフレ脱却へ国債買い入れを拡大するため新たな購入目標を設ける。
外為どっとコム総合研究所のジェルベズ久美子研究員は、この日の相場全体の動きについて「ファンダメンタルズで見ると、中心はユーロ圏でありキプロス問題だ。ドル・円主導ではない」と指摘した。
黒田東彦日銀総裁は26日の衆院財務金融委員会で「これまで以上に大胆に質的、量的な金融緩和をする」と強調。日銀による市場の期待への働き掛けについて「デフレ期待から2%のインフレ期待に変えることで、設備投資や個人消費にもプラスに効いてくるのではないか」と指摘し、「期待外れにならないように量的、質的な緩和をする」と述べた。
具体的な政策では、現在3年までとしている買い入れ対象国債の年限を5年に拡大すべきかどうかただされ、「イールドカーブ(利回り曲線)を全体としてどのようにして引き下げるか、その際、あらゆる選択肢を検討課題とする。ご指摘の点も当然、検討課題となる」と述べた。
三菱東京UFJ銀の武田氏は、黒田総裁率いる新日銀体制について「次にまだこんなことがありそうだという期待を維持することにむしろ主眼を置いてくるのかなというふうに思っている。こういうことからしても、円売り安心感が広がっている今の状況というのは決定会合後も大きくは変わらないと思っている」と話していた。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net;東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/27 13:58 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKAJN06K50YE01.html


ECB総裁、度胸試しでキプロスに勝利−伊・スペイン前哨戦か


  3月26日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の瀬戸際戦術は、今のところ成功した。
ドラギ総裁は銀行を支える措置についてキプロスに最後通告を突き付け、100億ユーロ(約1兆2130億円)規模の救済を受け入れさせた。キプロスだから可能だったが、もっと大きな国を相手にこのような戦術を使うことに当局者らは尻込みするのではないかと、シティグループやABNアムロのエコノミストらは指摘する。
ABNアムロのマクロ調査責任者、ニック・コーニス氏(アムステルダム在勤)は「ECBは自らルールを定め、国際債権団が求める行動を取らせようと各国に圧力をかけている」と指摘。「度胸試しのゲームをスペインやイタリア相手に仕掛けるのは、キプロスの時のように容易にはいかないだろう」と話す。
ドラギ総裁はキプロスの銀行の生命線である中銀からの流動性を断つと示唆することで、事実上ユーロ圏での存続を確保するための期限を設定した。今のところ続いている市場の安定がイタリアの政情不安やスペインの赤字削減難航で揺らいだとき、総裁はそのような強硬策に出るのか、あるいは柔軟な対応をとるのか、再び選択を迫られることになるだろう。
キプロスの例は救済においてECBが使える「てこ」の大きさを明らかにした。財政難国の金融システムを支える緊急流動性支援(ELA)という仕組みをコントロールしているのがECBだからだ。ECB政策委員会はELAによる貸し付けのリスクが高くなり過ぎた、あるいは貸し付け先の銀行が支払い能力を維持できる望みがないと判断すれば、ELAの承認を拒むことができる。
降参するのは相手側
ECBは25日、このてこを使ってキプロスに債権団の要求を飲ませ、救済の条件である銀行システム縮小に同意させた後、キプロスの銀行の生命維持装置のスイッチを入れ直した。キプロス政府とユーロ圏諸国は1週間、この問題で相手の度胸を試し合っていた。
ドイツのメルケル首相がキプロスに対するいら立ちを募らせる中で、ECBは21日、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)が受け入れられる案を4日以内に示さなければキプロスの銀行への資金を断ち切ると通告した。BNPパリバの欧州担当チーフエコノミスト、ケン・ワトレット氏は「結局のところ、降参しなければならないのは相手側だということをECBは明確にした」と述べた。
ただ、ECBがキプロスで使った手法がスペインのような経済規模の国が救済を必要とした場合に繰り返されることはないと、シティのユーロ圏担当チーフエコノミスト、ユルゲン・ミヒェルス氏はみている。同氏は「ECBがキプロスと同じような態度を取るとは考えにくい」と話した。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の欧州担当チーフエコノミスト、リチャード・バーウェル氏も、イタリアのような経済大国に背を向ければ危機がユーロ圏全体に広がりかねないとして、ECBは債券市場での支援条件を緩めるよう迫られることになるだろうと指摘した。
原題:Draghi Wins Cyprus Chicken Game in Test Run for BiggerBailouts(抜粋)
更新日時: 2013/03/27 05:16 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKA4256KLVSS01.html


06. 2013年3月27日 16:54:58 : GnRfb4ci8o
キプロスが試みる未踏の金融実験-単一通貨圏で資本規制可能か 

  3月27日(ブルームバーグ):キプロスは過去に例のない金融の一大実験に踏み出そうしている。単一通貨圏で資金の移転を規制しようとする試みはこれが初めてだ。
アルゼンチンやアイスランドが通貨価値の急落防止のために同じような措置に踏み切った例が過去にあるが、ユーロ圏の一員であるキプロスの場合、銀行システムから流出する資金は、価値を失うことなくキプロス国外に持ち出すことが可能であり、規制の実施はより大きな困難が伴うと予想される。
キプロスのサリス財務相は26日、「わずか数週間」で規制の解除を目指すと述べたが、この目標の達成も難しそうだ。1980年代と90年代に資金流出を防ぐ努力を強いられた中南米とアジア諸国は、実際には6カ月から2年の間、資本規制を続けることになった。銀行システムが肥大化していたアイスランドは、2008年の銀行破綻から5年が経過しても規制を解除できていない。
ブリュッセルを拠点とするシンクタンク、ブリューゲルの上級研究員、ニコラス・ベロン氏は「政治の不手際のおかげで、ユーロ圏で初の資本規制をわれわれは経験しようとしている。一時的とはどのくらいの長さだろうか。アイスランドのように何年も続くこともあり得る」と指摘する。
定期預金の継続強制も
キプロスでは28日に銀行が再開される予定。これに先立ち、政府が計画する資本規制の種類を27日に発表する可能性がある。キプロス中央銀行のデメトリアデス総裁とサリス財務相は先週、1日当たりの預金引き出し制限や定期預金の継続強制といった広範な権限を議会から承認された。
デメトリアデス総裁とサリス財務相はまた、口座の新規開設やクレジットカードとデビットカードの利用、同一銀行の支店間の電信送金、非現金取引を制限することも可能になる。
原題:Cyprus Capital Controls First in Currency Union Could LastYears(抜粋) 
更新日時: 2013/03/27 13:09 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKAU6Y6S972H01.html


07. 2013年3月27日 17:29:31 : GnRfb4ci8o


2月の独輸入物価指数、前月比+0.3%=連邦統計庁
2013年 03月 27日 17:17

ドル94円後半、日銀緩和期待や外貨建て投信設定がサポート
ドイツの労働コスト、2012年はEU平均を32%上回る
中国、国内の銀行間債券市場への投資を南アに認める

[ベルリン 27日 ロイター] ドイツ連邦統計庁が発表した2月の輸入物価指数は前月比0.3%上昇、前年比では1.6%低下した。ロイターがまとめた予想は前月比0.2%上昇、前年比1.6%低下。

2月の前年比での低下率は、2009年11月以来の大きさだった。


 


アングル:キプロス支援策で欧州銀に激変も、資金逃避の懸念
2013年 03月 27日 13:46 JST
[ロンドン 26日 ロイター] キプロス支援策が欧州における救済のひな型になるとすれば、銀行にとっては「状況の激変をもたらす事象(game-changer)」となり、資金調達コストの上昇や、預金移転の活発化、増配の後ずれにつながる可能性がある。

キプロス支援策では10万ユーロを超える預金が凍結され、大口預金者がこの先、銀行救済時に一部負担を強いられる可能性が示唆された。こうした事態を受けて、銀行株は下落し、銀行債のデフォルト(債務不履行)に備えた保証コストが上昇した。

ベレンバーグのアナリスト、ニック・アンダーソン氏は「ベイルイン(預金者など銀行内部からの救済)はこうしてベイルアウト(政府など外部からの救済)に代わるだろう。結果として、銀行の資金調達コストは増え、預金はより移転しやすくなり、銀行は債権者を安心させるために自己資本の積み増しを迫られる」と指摘。「誰もが認識しているものの口には出さなかった重大な問題がついに表面化した」と述べた。

キプロス支援では、大口預金者に加え、国内2位のキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行CPBC.CYのシニア債保有者も損失を被るほか、国内最大手バンク・オブ・キプロスBOC.CYのシニア債保有者も影響を避けられない見通し。

ギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインに対する従来の支援策では、シニア債保有者や預金者に負担を押し付けることはユーロ圏の銀行からの資金逃避を招くとの懸念から、域内のリーダーらが二の足を踏んだ経緯がある。

新たな欧州連合(EU)規制の下では、シニア債保有者が将来の銀行救済コストの一部を負担するとされるが、2015年よりも前にこの条項が適用されることはない予定だ。

ユーロを導入していないデンマークは、ここ数年でシニア債保有者に損失を強いた唯一のEU加盟国だが、国内の銀行が2011年に債券市場から締め出されたことを受け、そうした損失負担発生の可能性を制限する方向に動き出した。

オリーブツリー・セキュリティーズのアナリスト、サイモン・モーガン氏は「ついにEUは正しいことを実行する。リスクを取ったなら、株主であれ、債券保有者であれ、預金保険対象外の預金者であれ、リスクにさらされるべきだ」と指摘。「(キプロス支援策は)これまでの(域内の)救済で最大の問題となっていた債券保有者(の負担問題)からの救済だ」と述べた。

同氏は、スペインやイタリア、ことによるとフランスには依然としてリスクがあるとした上で「これらの国の問題に対処する唯一の方法は、まずマネーを投じた投資家を前面に押し出すことだろう」と指摘した。

<預金者への警鐘>

アナリストらによると、預金者はキャッシュの分散化をこれまでになく進めることになりそうだ。

前出のモーガン氏は「(キプロス支援は)警鐘だ。リスクが高まれば、預金は一段と流動化するだろう」と話す。

エスピリト・サントのアナリスト、アンドルー・リム氏は「預金者が英国やスイスといった強固な非ユーロ圏銀行に資金を移転させることは合理的だ」と指摘する。

バークレイズのアナリスト、マイク・ハリソン氏は、キプロス支援を受けて、事前積立方式の預金保険制度の構築が各国で進むとの見通しを示す。

債券保有者もリスクへの警戒心が高まりそうだ。

同氏は「ベイルインの概念は人々が思っていたであろうペースよりも速く浸透しているように思える」と述べた。

アナリストらによると、投資家から自己資本比率の引き上げを求められれば、銀行は増配の見送りを迫られる可能性もある。

とはいえ、大半の銀行は既に、余裕のある資本を積むまで配当を見送るよう圧力にさらされており、規制も相変わらず国によって異なっている。

( 記者 Steve Slater 執筆協力 Aimee Donnellan at IFR in London;翻訳 川上健一;編集 吉瀬邦彦)


08. 2013年3月28日 01:08:16 : GnRfb4ci8o
キプロス、銀行再開に向けた資本規制を発表へ−中銀報道官 

  3月27日(ブルームバーグ):キプロスは銀行再開時の預金流出防止を目的とした資本規制の詳細を発表する準備を進めていると、同国中央銀行の報道官が明らかにした。キプロスでは、銀行がほぼ2週間にわたり閉鎖されている。
キプロス中銀のスティリアヌ報道官は27日、「資本規制の草案は完成しており、午後までに発表できるだろう」と述べた。発言は国営放送CYBCが放送した。
原題:Cyprus Working to Open Banks Tomorrow, Controls Ready Soon(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:Nicosia, Cyprus Georgios Georgiou ggeorgiou5@bloomberg.net;アテネ Natalie Weeks nweeks2@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Maria Petrakis mpetrakis@bloomberg.net;Jerrold Colten jcolten@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/27 22:02 JST


 


ユーロが対円で1%安、ユーロ圏救済時の民間負担強制に懸念
2013年 03月 27日 22:02 JS


米国株式市場・序盤=下落、さえないイタリア入札が圧迫
787トラブルの原因解明に至らず、調査は継続へ=運輸安全委員長
三菱自、アウトランダーPHEVで電池発熱事故

[ロンドン 27日 ロイター] 27日の欧州外国為替市場で、ユーロが下げ幅を拡大、対円で1%下落している。

キプロス支援で将来のユーロ圏救済時に民間投資家が負担を強いられることへの懸念が強まった。

さえないイタリア国債入札への需要も重荷となっている。

EBSのデータによると、ユーロは円に対して下落、120.085円と1カ月ぶり安値近辺にある。

ユーロは対ドルでも0.75%安の1.2762ドルと、4カ月ぶり安値を更新した。


キプロス中銀、最大手バンク・オブ・キプロスCEOを解任
2013年 03月 27日 23:13 JST
[ニコシア 27日 ロイター] キプロスの銀行最大手、バンク・オブ・キプロスBOC.CYのヤニス・キプリ最高経営責任者(CEO)は27日、中銀から職を解かれたことを明らかにした。

27日朝に中銀に呼ばれ、辞表の提出を求められたと説明している。

CEOは声明で「議会を通過した清算指令およびトロイカ(国際通貨基金、欧州委員会、欧州中央銀行の3者合同調査団)の要請に基づくもので、同行の特別管財人が指名された」と述べた。

26日には、同行のアンドレ・アルテミス会長が辞表を提出している。


キプロスはユーロ圏諸国救済の「ひな型」ではない−文書 
  3月27日(ブルームバーグ):国家救済の資金の一部を銀行の預金口座から徴収するというキプロス支援パッケージは決して、将来の救済の前例とはならない−。欧州各国政府はこう表明し、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長を務めるダイセルブルーム・オランダ財務相の発言が与えた印象の払拭(ふっしょく)に努めた。ブルームバーグ・ニュースが入手した部外秘の文書から分かった。
文書は「キプロス支援プログラムはひな型ではなく、極めて例外的なキプロスの状況に合わせて個別に設計されたものだ」としている。文書はユーロ圏諸国の財務省の代表らによって26日に合意されたもので25日の決定を市民に説明するための指針となる。
ダイセルブルーム議長は25日、ロイター通信と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、将来の銀行整理は各国が実施すべきだと語り、欧州の救済基金を銀行の資本増強に利用することに疑義を呈した。
同議長は同日中に自身の発言について説明したものの、数カ国の政府がキプロスでの手法が危機対応の標準の一部にはならないことを欧州レベルで確認することを求めた。
文書は「統合深化と結束強化、強化された経済統治の新たな枠組み、銀行同盟の完成に向けた追加措置」に基づいて通貨同盟を強化するとの首脳会議の決定を再確認している。
原題:Cyprus Program Isn’t ‘Template’ for Euro-Area Bailouts, EUSays(抜粋) 
更新日時: 2013/03/27 18:39 JST


 


 


欧州の混乱に拍車をかけるキプロス危機
2013年03月28日(Thu) Financial Times
(2013年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 キプロスの危機は、経済の「コップの中の嵐」かもしれない。だがそこにはもっと大きな船、それこそユーロ圏全体にとっても重要な教訓が隠れている。人々に希望を抱かせてくれる教訓もあるが、逆に不安にさせる教訓もある。ユーロ圏はまだ恐ろしい混乱から抜け出せないのだ。

 キプロス政府は先週、自分たちのオフショア・バンキング・モデルを何が何でも守ろうと、本来ならユーロ圏の預金保険で保護されるはずの10万ユーロ以下の預金にも損失を負担させる決断を下した。案の定、このアイデアはキプロス国内のみならず、ほかのユーロ圏諸国でも受け入れられなかった。


分割・整理が決まったキプロスのライキ銀行〔AFPBB News〕

 その後打ち出された現在のプランは、銀行の秩序ある破綻処理で期待される施策に比較的近いものになっている。

 これによると、国内第2位のキプロス・ポピュラー銀行(ライキ銀行)は「グッドバンク」と「バッドバンク」に分割される。

 ライキの10万ユーロ以下の預金と、90億ユーロの資産(緊急流動性支援=ELA=として中央銀行から借りている資金)は、国内最大手のキプロス銀行に移管される。残りは順次整理・処分される。

 10万ユーロ超の預金がある預金者に返ってくる金額は、バッドバンクの資産価値に応じて決まることになるだろう。

 また、キプロス銀行に10万ユーロを超える預金がある人は、その預金口座が凍結され、「ヘアカット(元本削減)」の対象になる。削減の規模はまだ分からないが、大きな数字(ことによると40%)になりそうだ。さらに、キプロスには一時的な為替管理も導入される。

ユーロ圏も最後には「正しい施策」を講じられる

 このプランはどう解釈すべきなのか? 筆者は、少なくとも4つの教訓が引き出せると考えている。

 第1の教訓は、すべての代替策を使い果たす前にとはいかないものの、ユーロ圏には最終的に正しい施策を講じる能力があるというものだ。「正しい施策」という言葉は、これを上回る良策は想像できないという意味で用いたわけではない。

 ただ、そのような良策はすべて、ユーロ加盟国やその国民の間に一定の連帯感があることが前提となる。そのような連帯感は今のところ存在しないし、当面は期待できない。

 キプロスに無償の支援を行うことにユーロ圏が消極的であることを考えれば、現在のプランはほぼ間違いなく、最も悪くないプランである。少額の預金を保護しているし、合理的な破綻処理プロセスも課している。

 国際通貨基金(IMF)は満足だろう。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長のユルン・ダイセルブルーム氏も満足だろう。オランダの手ごわい財務相である同氏は、債権者に厳しい姿勢で臨むことがユーロ圏にとっては正しいことだと信じている。

同じ1ユーロでも異なる価値


1ユーロはどこでも1ユーロではあるが・・・〔AFPBB News〕

 第2の教訓は、1ユーロはどの国においても1ユーロだというわけではない、ということだ。確かに、1ユーロ札は1ユーロ札で変わりはないのだが、実際のところユーロは、そのほぼすべてがいろいろな銀行の負債だ。

 キプロス危機では、銀行の負債1ユーロの価値はその銀行自体の支払い能力に、ひいてはその銀行を支える政府の支払い能力に依存しているという事実が浮き彫りにされた。

 もし、この銀行と政府の両方が支払い不能に陥れば、その銀行の預金者は預金の大きな部分を即座に失うだけでなく、一国の銀行システムが崩壊するのを防ぐ管理措置のために残りの資金も凍結されてしまう可能性が高い。

 このような「一時的」な管理措置はどれぐらい長く続く可能性があるのだろうか? フランスには「c'est le provisoire qui dure(一時的なものこそ長く続く)」という格言がある。アイスランドの例が示しているように、為替管理にはこの格言が当てはまることが多い。

 ただ、シンクタンクのブリューゲルに籍を置くガントラム・ウルフ氏が指摘しているように、「域内で為替管理が行われる通貨同盟」というのは形容矛盾である。

 こうした管理措置を近い将来に終わらせるためには、キプロスの銀行に資金を無制限に融通すると欧州中央銀行(ECB)が決断するしかない。果たしてECBはすぐに動いてくれるだろうか?

「銀行・政府・ユーロ圏」の複雑な関係

 キプロスから得られる第3の教訓は、銀行、各国の政府、そしてユーロ圏という3者の関係がかつて考えられていた以上に複雑化しているということだ。

 まず、キプロスへの一連の対応はユーロ圏にはほとんど参考にならないと結論づけることもできるだろう。銀行の負債の規模が大きいこと、銀行の債権者の評判が悪いこと、そして政府が支払い不能寸前の状態にあることから、この国は特異な事例であるというわけだ。

 あるいは、一連の対応はひな形になるが、キプロスと同様に脆弱な政府を持つ国にしか適用できないと見ることもできるだろう。あるいは、ユーロ圏内のすべての政府に適用できるひな形だが、2008年の時のような深刻な金融危機にある時はその限りでないと見なすこともできるだろう。

 さらに言うなら、キプロスへの対応はどんな状況においてもユーロ圏内のすべての政府に適用できるひな形だ、と考えることもできるだろう。

 この4つの見方のどれが正しいのか? それは誰にも分からない。だが恐らくは1番目か2番目だ。銀行が支払い不能の状態に陥ったらそのコストは納税者ではなく債権者が負うべきだという原則は、ユーロ圏全域で合意されているわけではない。

 例えば、ドイツ銀行が経営危機に陥ってもドイツ政府は救済の手を差し伸べないと考える人はいないだろう。ドイツ政府は当然、救済に乗り出す。

 キプロスのごたごたを受けて、ユーロ圏内の銀行は自己資本をもっと積むべきだという話になれば、それが理想的な結末だ。実際、ユーロ加盟国の財政力には限りがあるため、ユーロ圏内の銀行は圏外の銀行より自己資本を厚くしておく必要があると言ってよい。

 だが、現実はそうなりそうにない。恐らくは、最も安全な銀行は財政力が最も強い国の銀行だということになる。

 これに変わる結末があるとすれば、それは正真正銘の銀行同盟の設立だろう。だがそれには財政同盟か、厳しい破綻処理制度をすべての銀行に適用するという意志のどちらかが必要になるだろうし、どちらも実現しそうにない。

一段と辛くなる「不幸せな結婚」

 この危機から引き出せる第4の教訓は、筆者が「不幸せな結婚」と呼んだユーロ加盟国間の関係がさらに不幸せなものになっていることである。

 ユーロ圏全体にとってみれば、キプロスは大きな存在ではない。実際、ほかのユーロ加盟国政府や銀行の借り入れコストはほとんど変化していない。


キプロスの首都ニコシアの議会前で、欧州連合(EU)の旗に「ノー」と書きつけて抗議するキプロス市民〔AFPBB News〕

 しかし、危機になれば怒りの感情が表面化する。ユーロは欧州のまとまりを強めるどころか弱めてしまうのではないかというかつての懸念は、以前よりも妥当性が増しているように思われる。

 また今回の危機では、ユーロ圏内にとどまる対価が高そうに思える時でも(多くのキプロス国民にとってはそうだった)、債務国はその支払いに応じるということが明らかになった。

 離婚の方が――少なくともそう決断する瞬間は――恐ろしいように思えるのだ。

 同じことは債権国にも当てはまる。債権国は債務国の「救済」で酷使されていることに腹を立てているが、経済的な理由と政治的な理由の両方から、ユーロ圏から離脱するよりは救済に応じた方がいいと考えている。

 従って、ユーロ圏は度重なる危機に襲われながらも、足を引きずって歩き続けている。この状況は今後もずっと続くのだろうか? 続き得るのだろうか? 筆者には分からない。ただ筆者は、緊縮財政を熱心に進める戦略ではユーロ圏経済を健全な状態に戻すことはできないと見ている。これはもう、確信に近い。

最終章が書かれる気配も見えない痛々しい物語

 この戦略では、ユーロ圏で経済の脆弱な状態が続き、比較的弱い国がいつまでも債務危機や銀行危機、失業危機に見舞われ続けるのは確実だ。その一方で、ユーロ圏の現在の構成メンバーを維持するという決意は非常に固い。つまり、どうやっても抑えられない強い力とどうやっても動かせない物体が正面衝突することになるのだ。

 キプロスの危機は、長くて痛々しい物語における小さな、そしてある意味で典型的でないエピソードの1つである。そして、この物語の最終章が書かれる気配はまだ見えない。

By Martin Wolf


 


 


【第32回】 2013年3月28日 山田厚史 [ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員]
キプロスは他人事ではない
キーワードは国債、銀行は火薬庫
 海の泡から生まれた美神アフロディーテ(ビーナス)神話の発祥の地はキプロスである。文明の源流にひたる地中海の島がユーロ体制を動揺させている。銀行封鎖・預金課税という新手の荒療治が始まった。国家の債務危機という「EUの病」は、金融危機と表裏一体で、ある日突然、預金が国家に奪われる、という事態が日常に起こることを示した。

キプロス危機は他人事か

 日本から見たキプロス危機は、他人事である。

「EUは大変だ」「ユーロ体制は保ちますかね」そんな反応がほとんどだ。

 そうだろうか? 私には、このほど発足した日銀の黒田東彦総裁が抱える課題とキプロスは二重写しに見える。

 キーワードは国債。銀行は火薬庫、ということだ。

 もちろん日本は、キプロスのように外国の資金に頼る経済ではない。産業の厚みも経済規模も比べものにならない。だが、国家債務と金融不安が隣り合わせになっている経済の構造は変わりない。

「日本がキプロスみたいになるわけはないじゃないか」

 ほとんどの人は、そう思っているだろう。平時では、皆そう考える。原発がそうだったように、身近に危険がありながら、変わらぬ日常がつづいている限り、人々はまさかの事態は考えない。

 キプロスもそうだった。20世紀末に金融国家を針路としたキプロスの人々は「ギリシャ危機さえなければ、こんな悲劇に見舞われることもなかったのに」と嘆いているだろう。

 事の起こりはギリシャにあったが、キプロスにも問題があった。銀行がカネを貸して企業を育て、共に成長する、という本来の業務から逸脱したことである。集めたカネで国債を買いまくり、金利の低下で大もうけする、という金融業の堕落。リスクを取らず浮利を追う経営に走ったキプロスの銀行は、実は大変なリスクを犯していた。国債といってもギリシャ国債をたくさん買っていたのである。国家は破綻しない、という金融常識によりかかった経営が、ギリシャ危機で裏切られた。

キプロスは危機の新たな処理モデル

 それが日本とどう関係があるのか、は後で述べる。まずキプロスで何が起きたか、おさらいしよう。

 キプロスがEUに金融支援を願い出たのは2012年6月のことだ。3ヵ月前にギリシャの第二次支援策がまとまり、民間銀行が抱える国債の元本がカットされることなった。ギリシャ危機がキプロスに波及することはほぼ見えていた。

 だが当時、世界の目はスペインやイタリアに注がれ、小国であるキプロスに向かなかった。経済規模が小さいので、損害は知れている、欧州中央銀行(ECB)が救済するだろう、という程度の関心だった。

 今回、大騒ぎになったのは、EUの支援を受ける条件として、キプロス政府が銀行預金への課税を打ち出したからだ。

 これまでEUやECBの支援を受ける国家は、見返りに緊縮財政や増税を迫られた。キプロスでは課税と銘打ってはいるが、事実上の「預金カット」というメニューが加わった。国民の懐にいきなり国家が手を突っ込む異常な事態である。

 最初の案では、10万ユーロ(約1250万円)を超える預金には9.9%、10万ユーロ以下の小口預金には6.75%を課税する、となっていた。国民は怒り、小口預金への課税は見送られたが、10万ユーロ超の大口預金者に負担が集中することになった。税率はまだ決まっていない。20%とも40%とも言われている。

 預金者だけではない。キプロスで1位と2位の銀行は事実上の破綻処理となった。株主は株券が無価値になり、銀行が発行した債券(金融債)も切り捨てられ、投資は損害を受けた。銀行のリストラは、従業員の暮らしにも影響が出るだろう。

 国家の債務危機が、国債の暴落や元本カットを通じて金融部門に波及することは、これまでも散発的に起きていた。

 キプロスでは、銀行の損害が大きすぎて政府では処理しきれず、他に飛び火することを恐れたEUが、100億ユーロを支援する見返りに、キプロスの預金者に負担を求めたのである。

 ユーロ加盟国の財務相で組織するユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の議長・ダイセルブルーム・オランダ財務相は「(キプロスの処理は)ユーロ圏の金融危機を解決する新たなモデルになる」と語った。

 国家の破綻で銀行が被った損害を、銀行自身が埋めきれない場合、銀行の預金者や株主にも責任をとってもらう、ということである。つまりユーロ圏では、よその国が破綻すれば、自分の預金が減ることを覚悟しなさい、ということである。

 キプロスは外国、特にロシアからの資金を取り込み、銀行資産がGDPの7倍にも膨れた金融立国である。肥大化した金融がギリシャ危機をもろに受ける結果となったが、ユーロ圏の金融立国は他にもある。一人当たりGDPが世界一という金持ち国ルクセンブルクの銀行資産は、GDPの22倍に膨れている。マルタは8倍、アイルランドは7倍だ。国家の規模が小さい国が金融で生業(なりわい)をたてている。

 キプロスの処理は、金融にすがる小国をモデルにした救済劇だった。預金者まで痛めた前例は、今後のユーロ金融危機の方向を示唆している。

双子の兄弟

 そこで日本である。我が国は、バブル崩壊後の金融破綻を経験した。公的資金の注入も、大手銀行を3メガ銀行体制にした金融再編も断行した。欧州や米国に「バブル後の政策モデル」を示した、という自負もあり、欧州危機は我がことにあらず、の雰囲気が漂っている。そこに盲点がある。

 国家の債務危機はやがて銀行危機に波及する、という流れがユーロ圏で鮮明になった。アメリカも日本も、国家の債務が大きな問題になっている。リーマンショックの震源地だった米国は、ドル札を刷りまくって銀行や大企業に配り、危機を緩和している。その咎めで財政の首が回らない。日本は国民の貯蓄を国債にまわし、公共事業や社会保障を支えてきた。

 1000兆円を超える日本政府の借金を支えているのは主に銀行である。大企業は自己資金をため込んで、銀行融資を必要としない。中小企業には危なくて貸せない。溜まるばかりの預金の振り向け先が国債だった。不況と金融緩和で金利が下がっているので、買い込んだ国債価格は値上がりした。融資は手控え、漫然と国債を買っていれば儲かる。そんな夢心地の経営が続いている。

 ユーロ圏で他国が発行するユーロ建て債を安閑と買っていたキプロスの銀行と、円圏で発行される日本国債を横並びで買っている日本の銀行はよく似ている。ユーロ圏ではギリシャで発火し銀行という火薬庫のいくつかが爆発した。

 そこに黒田日銀総裁が登場した。「物価目標2%達成」が公約である。大胆な金融緩和でインフレ期待を煽り、投資や消費を呼び起こそうという政策だ。物価が安定的に上がることが景気を後押しする、という考えだが、その裏に見落とせない問題が潜んでいる。

 期待インフレ率が上がると、金利も上がる。物価が安定的に上がれば、金利は上がる。これまでの経験では、消費者物価が2%上がると、金利は2%超になる。

 金利が上がると国債価格は下がる。真っ先に影響を受けるのは銀行経営だ。長期にわたる金利の低下で国債を持っているだけで儲かった。そんな経営が反転し、持っているだけで損がでる。売れば国債価格がさらに下がり、経営悪化に拍車がかかる。

 政府債務の危機と銀行危機は双子の兄弟なのだ。

 背景には、地球規模の過剰流動性がある。米国を先頭に、「金融緩和は全てを癒す」という風に、マネーをふんだんに発行して経済矛盾を覆い隠す政策が採られてきた。世界的なカネ余りが超低金利をもたらし、借金の負担が楽になった国家はいとも簡単に国債を発行する。

 引き受ける銀行は、持っているだけで利益が出る。その怠慢が国家の債務危機を生み、金融に厳しい自己変革を求めている。資本主義が内蔵する「手荒な自己調整システム」である。日本がその枠外にあるとは考えにくい。

黒田総裁のもう一つの仕事

 日本で金利が上がり、政府と銀行が惰眠をむさぼる日はやがて終わる。

 長期金利が急上昇した時、日銀はどうするか。選択肢は二つある。一つは、金融緩和にブレーキをかける。金利上昇は市場からの警告、国債の消化能力が限度に達した合図、と判断して手じまいする。もう一つ選択は、日銀が市場で国債を買いまくり、金利上昇を力で抑えこむ。

 力で金利を押さえ込もうとすれば、市場と日銀の大勝負となる。

 うまく行けばいいが、無理をすれば日銀の一手買いとなり、政府が発行する国債が日銀に溜まってしまう。財政法で禁止されている日銀の国債引き受けが、事実上進んで行く。

 好調に見えるアベノミクスも、デフレ退治の「入り口」に過ぎない。マネーをばらまくため国債をどんどん買い上げるが、買った国債をどう始末するか、市場のあぶく銭をどう始末するか、政策の「出口」は何も考えていない。

 原発で発電したが、使用済みの核廃棄物をどうするか、考えていないのとよく似ている。原発は安全に運転しているときは、安い電力だった。

「全てを癒す金融緩和」は、ユーロという仕組みの中でほころび、金融そのものを破壊しかねない事態になっている。

 日本は安全でいるうちに、危機への想像力を逞しくすることが大事ではないか。それも黒田総裁の仕事である。
http://diamond.jp/articles/print/33890


09. 2013年3月29日 08:32:39 : GnRfb4ci8o
コラム:キプロスの教訓、今後も続く危機という名の「茶番」
2013年 03月 28日 17:38 JST

コラム:日経平均2万円超えと長期繁栄の予兆=武者陵司氏
コラム:キプロス「ゲーム」はまだ続く
コラム:キプロス問題がまいた2つの「懸念の種」
コラム:キプロス支援をめぐるロシアの危険な賭け

国際政治学者イアン・ブレマー

キプロスでの危機が過ぎ去った今、ようやく明らかになったことがある。キプロスが引き起こした「危機」は、騒がれていたほど注目には値しなかったということだ。

欧州連合(EU)の国内総生産(GDP)のわずか1%を占めるだけのキプロスは、ロシア人に租税回避地として利用されている国だ。仮にキプロスが地中海の債務の波に飲みこまれたとしても、ユーロ圏が破綻することはなかっただろう。

それにしても何という話だろうか。100万ユーロが積まれたキプロス行きの飛行機、ユーロ圏崩壊の危機をはらんだ土壇場のやり取り、モスクワでの緊急会談失敗──ニュースは数々の三文芝居で埋め尽くされた。

しかし、そんな世界を舞台にしたドラマの裏側で、キプロスの全政党はユーロ圏にとどまることを支持していたし、ドイツ政府もユーロ圏に対して献身的であり続けている。そうした中、キプロスがどうやってユーロ圏の存亡を揺るがせたというのだろうか。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長からは軽率な警告も飛び出したが、痛みを伴うキプロスの救済策が今後の「前例」になることもないだろう。キプロス支援策は将来の銀行破綻処理のモデルになると議長が発言すると、金融市場には動揺が走った。しかしその数時間後に議長は前言を撤回、「例外的な課題があるキプロスは特別なケースだ。マクロ経済調整プログラムは危機が懸念される国の状況に応じて変わるもので、一律のひな形が使用されることはない」と述べた。

キプロス問題はギリシャやイタリア、スペインでの危機再来ではなかった。キプロス救済策が、将来ユーロ圏の周縁国で危機が発生した際の前例を作り出したということもない。これは茶番だったのだ。

だが茶番から透けて見えることもある。これによってユーロ圏の新たな真実が浮き彫りになったということだ。言い換えれば、ユーロ圏が何かを実行する際には、必要のない危機を作り出す必要があるという真実だ。

組織としてのEUには多くの不確定要素があるため、何か行動を起こすためには恐ろしい脅威やギリギリの期限といったものが必要になる。良識のある人のほとんどは、今やユーロ圏が崩壊することはないことを知っている。だからこそ、ドイツは変革を望むなら以前にも増して声高に危機を叫ばなければならない。差し迫った危機がない場合、抜本的な変化を起こす方法は、市場の力が与える痛みを利用した方法に限られる。

キプロスの事例は2つの危機の在り方を浮かび上がらせた。1つは公の場で演じられる危機、そしてもう1つは、それほど注目を浴びていないが本質的にはもっと懸念されるべき危機だ。

でっち上げられたものであろうとなかろうと、危機は依然として欧州にある程度変化をもたらす役割を果たしていると言える。ただでっち上げの危機は、政治指導者たちの行く手を阻むだけではなく、欧州が集団としてまとまりにくくなる原因にもなる。

例えば、今のユーロ圏の外交はどうだろうか。フランスはマリに介入したが、事実上単独で行ったものだ。ある統計によれば、EU全体の対中貿易の中でドイツが占める割合は約半分と、ドイツは中国と良好な関係を築いているが、他のEU諸国は中国との関係に及び腰だ。

また、EU加盟27カ国のうちフランスと英国を除く25カ国は、シリアの反体制派への武器供与に反対の立場を取っている。EU内部で足並みが揃わないことで、一貫性のある外交政策を行うことが難しくなる場合が多くなるのだ。

では、これを踏まえた上で今後の見通しはどうなるのか。群れを統率するためならいつでもうそをつかなければならない欧州に、私たちはどんな期待を抱くことができるのか。

もし私が欧州の財務相だったとしたら、やはりうそでも「ユーロ圏が崩壊の危機にある」と言うだろう。こうした方法は、EUの小国で起きた債務危機に世界の注目を向けさせる。欧州でまた別の「危機」が持ち上がった時(にわかには信じられないが、私が聞いた話では次はスロベニアだそうだ)、私たちは抜け出たばかりの恐怖に再び押し戻されることになるだろう。

キプロスはギリシャとは違うだろうし、これからの債務危機における対応の前例を定めたわけでもないだろう。市場の力とメディアの熱狂が作り出す「でっち上げの危機」はきっと今後も目にするだろうし、キプロスはその現象を明らかにしてくれた。

*本稿は、国際政治学者イアン・ブレマー氏とのインタビューに基づくものです。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。 

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スロベニア、支援要請の必要ない─中銀総裁=通信社
2013年 03月 29日 04:06 JST

米株市場は上昇、S&P総合500種が終値ベースの過去最高値
キプロスの銀行は営業再開初日大きな混乱なく、資本規制1カ月継続
ロンドン株式市場は反発、投資家心理改善で過去2度目の10カ月連続高
欧州株式市場=反発、平穏なキプロス銀の営業再開などを好感

[リュブリャナ 28日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのクラニェツ・スロベニア中銀総裁は28日、同国が支援を要請する必要はないとの見解を示した。スロベニア通信(STA)が報じた。

市場では、銀行の不良債権が膨らんでいることから、スロベニアがキプロスに続き支援を要請するとの観測が浮上している。

総裁は「スロベニアは支援を要請する状況にないと断言できる」と言明。「だが政策担当者は財政の安定化や、銀行セクターおよびとりわけ実体経済の再生に関し、明確なシグナルを送ることが肝要」とした。

キプロスの銀行預金が国内総生産(GDP)の3倍の規模に達していたのに対し、スロベニアはGDPの40%未満にとどまっていると指摘。スロベニアの銀行で異常な資金の動きや預金引き出しは起こっていないと述べた。

国際通貨基金(IMF)はスロベニアの大手3行について、欧州連合(EU)の自己資本基準を満たすため、今年新たに10億ユーロ(12億8000万ドル)の資本増強が必要との見方を示しているが、総裁はこれについて確認した。

国有銀行が大半を占めるスロベニアの銀行セクターでは、不良債権が約70億ユーロと、GDPの20%相当に達している。だがクラニェツ総裁は、その半分以上について、引き当て済みと説明した。

3月20日に中道左派の新政権を発足させたブラトゥシェク首相に対しては、金融機関から不良資産を買い取る「バッドバンク」の設立や財政再建、銀行含む国有企業の民営化を推進するよう求めた。

またユーロ圏を離脱する国が出るとは想定していないと述べた。
 

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10. 2013年3月29日 10:00:41 : GnRfb4ci8o
ガスプロム〜悩める世界最大のガス企業 新たなガス田と新たな市場が必要
2013年3月29日(金)  The Economist


 ロシアのガスプロムは世界最大の天然ガス生産会社である。かつて、その好調な業績は永遠に続くと思われていた。旧ソビエト連邦のガス工業省を基に設立されたこの企業は、高騰する天然ガス価格の恩恵を長く被ってきた。同社が生産した天然ガスをパイプラインで欧州に送ると、反対に利益が欧州から流れ込んできた。
 ガスプロムは、サンクトペテルブルクに総工費19億ドル(約1800億円)の新本社ビルを建設中だ。また同社は、ロシア政府にとって無尽蔵の資金源となってきた。モスクワにあるロシア新経済大学(NES)のナターリヤ・ボルチコワ氏の言葉を借りるなら、ガスプロムはどのような問題にぶつかろうとも、「カネで圧倒する」ことができた。
 しかしその繁栄が今、脅かされている。長年採掘を続けたガス田は産出量が減少してきた。米国のシェールブームのおかげで世界の市場にはガスがあふれている。欧州の顧客は、ガスプロム以外にもガスの供給源があることに気づき始めた。ガスプロムが顧客に要求できる販売価格は下落傾向にあり、同社の業績見通しにも陰りが出てきた。
ガスプロムは普通のエネルギー企業ではない
 ガスプロムは長年、苦労することなく利益を上げてきた。そのため肥大化し、動きが重くなった。同社はロシア産天然ガスの75%を産出し、ロシアの国内市場を支配している。輸出は独占だ。ごく最近まで、西欧の天然ガスの約25%を供給し、市場を押さえていた。旧ソ連圏の東欧諸国では、今でも市場を強力に支配している。こうした状況にあったため、ガスプロムは長い間、世界的な天然ガス市場に参入する必要がなかった。
 ガスプロムは普通の企業ではない。同社には2人の主人がいる。株式公開企業として、理屈の上では、社外の投資家のために長期的に利益を最大化すべく努力しなければならない。しかし最大の株主はロシア政府であり、同社は政治的な目的も追求する。

出所:ブルームバーグ
 ガスプロムが実際に熱を込めて仕える主人は、投資家よりも国の方だ。ウラジーミル・プーチン大統領は、2000年代初めに権力基盤を固めた際、ガスプロムをロシアの新たな国家資本主義政策の柱に据えた。自身の腹心を同社のトップに任命し、外交政策の道具として同社を利用した。グルジアやウクライナ、ベラルーシ、モルドバなどと政治的紛争が生じると、同社を動かしてこれらの国へのガス供給を停止した。
 ガスプロムが持つ巨額の資金は、ロシア国内でプーチン大統領の力になっている。貧困層が凍えずに冬を過ごせるよう、同社はガスを安価で供給する。また、エネルギー企業としては異例だが、テレビ局と新聞社を買収した。これらのメディアは、今ではロシア政府寄りの姿勢を取る。ロシアのコンサルタント会社、ルスエナジーのミハイル・クルーティヒン氏は「ガスプロムの経営者はただ1人、プーチン大統領だ」と指摘する。
 政府高官と太いパイプを持つガスプロムは、法人税を軽減され、ガス田の優先的利用権を得てきた。しかしその恩恵を得るためのコストは膨大だ。役員にはたっぷりと特典を与える。例えば2008年には、ウマ用の日焼け灯と特別な浴槽への入札を実施した。これはウマ好きの役員のためのものだった。
 資材調達の方法も普通ではない。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)によると、ガスプロムは2011年に460億ドル(約4兆3000億円)の名目利益を計上しているが、汚職と非効率のため400億ドル(約3兆8000億円)を失ったという。
 プーチン大統領が推進するプロジェクトの中には、経済的な価値に疑問符のつくものもある。例えば、同大統領が固執する「サウスストリーム」パイプライン計画だ。これはロシア南部から東欧を経由してオーストリアにつながるもので、工費は210億ドル(約2兆円)に上る。これが実現すれば、何かと問題の多いウクライナを通らずに欧州にガスを送ることができる大動脈になる。政治的な魅力は大きい。しかし、天然ガスの軟調な価格と需要からすると、この計画は「商業的には話にならない」とルスエナジーのクルーティヒン氏は言う。
 バルト海の海底を伝ってドイツに通じる「ノルドストリーム」パイプラインは2011年に開通した。プーチン大統領にとっては外交上の大きな成果となった。だが実際に送られている天然ガスの量は、輸送能力の上限に遠く及ばないのが現状だ。
 ガスプロムが最近置かれている状況は、これまでとは異なる。問題をカネで圧倒しようとしても、問題は以前より増え、利用可能な資金は減った。同社の株価は3月4日に4年ぶりの安値を記録。投資家はガスプロムの価値を2008年の3分の1と評価する。あるブローカーの計算によると、1100億ドル(約10兆円)という現在の時価総額は、同社の資産価値の半分にすぎない。
欧州で吹き始めた逆風
 ガスプロムにとっての主要市場は欧州だ。欧州はかねて同社の牙城であり、売り上げの40%はここから上がる。ガスプロムは欧州の大手顧客と、原油価格に連動する価格で長期契約を結んでいる。同社はこの古い価格体系を維持しようと苦心しているが、うまくいっていない。これらの顧客は今、米国が輸入する必要がなくなった液化天然ガス(LNG)を購入するという別の選択肢を手にした。
 天然ガスのスポット価格が、ガスプロムとの長期契約に基づく価格を大きく下回ることもしばしばだ。ノルウェーの国有エネルギー企業、スタトイルは俊敏に動き、価格を抑えて市場シェアを積み上げた。
 ガスプロムも、消極的ではあるが徐々に値下げをしている。値下げの影響で、今年は47億ドル(約4400億円)の減益が見込まれる。米金融大手シティの試算によると、欧州の天然ガス価格が100万BTU(英熱単位)当たり1ドル下がると、ガスプロムの利益は40億ドル(約3800億円)減少するという。ガスプロムの経営陣は、これが一時的な問題であるかのように対応し、原油価格と連動する旧来の価格体系の維持にこだわりを見せる。
 ガスプロムは多くの顧客と長期契約を結んでいるため、世界的な天然ガスのだぶつきが同社の決算にただちに影響を及ぼすことはない。しかし、投資には既に締め付けが及んでいる。昨年8月には、バレンツ海沖の巨大ガス田開発を凍結した。これはガスプロムと、提携先の仏エネルギー大手トタル、ノルウェーのスタトイルが、米国向けの輸出を念頭に計画していたものだ。
 ガスプロムの古い事業運営に対する最後の障害は、法的なものだ。欧州委員会は反トラスト法に則った調査を開始した。ガスプロムが、中欧や東欧市場における支配的地位を悪用して競争を抑圧し、価格を吊り上げている疑いがあるとしている。もしこの件でガスプロムが敗れると、最大140億ドル(約1兆3000億円)の罰金を支払わなければならない。加えてガスプロムは、国ごとにガス価格を変えられるという強みを失うことになるかもしれない。
 ガスプロムに不利な決定が下されると、天然ガスの生産事業と供給事業の両方を所有することで欧州市場を支配するという戦略が維持できなくなる可能性がある。同社は密かにガスのパイプラインや貯蔵施設を買収してきた。資金に苦しむ欧州のガス会社に融資する契約を結び、それらの会社の顧客を囲い込む努力もしている。この戦略が機能しなくなると、ロシア政府にとって、外交カードとしてのガスプロムの価値は大きく低下することになる。
ロシア国内でも競争に直面
 ガスプロムの経営陣は、同社のビジネスモデルに脅威など存在しないと、ずっと主張してきた。アレクセイ・ミレルCEO(最高経営責任者)はシェールガス・ブームを「神話」と呼んだ。
 しかしプーチン大統領は最近、事実に目を向け始めたようだ。昨年、「本当のシェール革命」が起こっていることを認め、ロシアは天然ガス顧客と「相互に受け入れ可能な協調の形」を見出す必要があると発言した。
 将来は、ロシア国内でも厳しい競争が始まるかもしれない。国内では競合する2社が天然ガス市場で存在感を高めている。ノバテクとロスネフチだ。ノバテクは、プーチン大統領と旧知の仲であるガンナジ・チムチェンコ氏が一部所有するガス企業。ロスネフチは、やはり同大統領が顧問として信頼するイーゴリ・セチン氏が率いる国有石油企業である。
 ロシアで産出する天然ガスの25%は、ガスプロム以外の会社が占める。先出のロシア新経済大学(NES)のボルチコワ氏はこう指摘する――ノバテクとロスネフチの興隆は、政府が「競争を生み出す環境」を整えようとしていることを示唆するわけではないが、これまでほどには競争を阻害しないことにした可能性はある。
 ノバテクは、仏トタルと共同で、ヤマル半島に広大なガス田を開発中だ。ガスプロムによる輸出の独占を撤廃するよう政府に求めている。政府はまだ決定を下していない。パイプラインを通じた輸出はガスプロムの独占を維持しつつ、LNGの輸出は自由化する、といった形で独占を緩める可能性はある。
 欧州でガスプロムが苦戦している現状は、短期的には、ロシア国内で同社を競合相手から保護する方向に働くかもしれない。強硬な要求を突き付けてくる欧州の顧客や規制当局に対して、ロシア政府はガスプロムを守る形で対応する可能性が高い。ノバテクなどを犠牲にしてもガスプロムを保護する道を選ぶことも考えられる。
 しかし、長期的な方向は明らかだ。ガスプロムは、現在の特権的な立場がずっと続く、と当てにし続けることはできない。
新しいガス田と新しい市場が必要
 ガスプロムは、今後どのような企業を目指すのか、考えなければならない。同社は今でも、事態が思うように進まない時に、ガスの供給を止めるという脅迫的な態度に出ることはできる。同社輸出部門のセルゲイ・コムレフ氏は、そのようなシナリオはできれば避けたいとしながらも、「価格で折り合うことができなければ、ガスの供給を止める権利はある」と述べる。
 しかし、こうした横暴な振る舞いをあまり続けると、顧客はほかに流れていく。欧州連合(EU)の一部の国は、LNGの輸入を増やすほか、自国領土や領海でシェールガスを採掘することを真剣に検討している。フランス、ブルガリア、チェコは、シェールガス採掘に用いる水圧破砕を法律で禁止しているが、その一方で、東欧諸国は探査試掘を盛んに進めている。
 ガスプロムは現在、新たなガス田と新たな市場とを切実に必要としている。既存のガス田は枯渇に向かっている。しかしどちらも容易に手に入るものではない。
 先進国のエネルギー諮問機関である国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、ロシアは、現在の天然ガス生産量(年に6550億立方メートル)を維持するためだけに、2035年までに7300億ドル(約69兆円)を投じる必要があるという。
 ガスプロムが現在所有するガス田の埋蔵量は合計で35兆立方メートルに及ぶ。だが、その多くはヤマル半島や極東、シベリア東部など、アクセスの悪い地域にある。これらのガス田から産出される天然ガスは、輸送にこれまで以上にコストがかかる。ガスプロムはそれに耐えられるだろうか。見通しは明るくない。
 ガスプロムは2011年に400億ドル(約3兆8000億円)を投資したが、その成果は見えてこない。生産量は2001年以降増えていない。その間に、先進的だった技術の利点は失われつつある。
 社内には、新たなガス田開発への投資に必要な資金を賄う程度には、欧州における高値での販売を続けられると予測する向きもある。しかしその考えは楽観的に聞こえる。
 ガスプロムがもう少しまともな経営を行っていたなら、今頃はアジア市場に参入する道筋を見つけていたことだろう。アジアの天然ガス相場は、欧州より高い。もちろん米国よりも高い。
 アジアに天然ガスを送る1つの方法は、液化してタンカーで輸送することだ。しかしこの面でもガスプロムの動きは遅い。同社は世界の天然ガスの6分の1を産出するが、LNGの取引量では20分の1を占めるに過ぎない。ウラジオストクに70億ドル(約6600億円)を投じて建設する計画のLNG施設は支えになるだろうが、LNGを増産するにはさらに数十億ドルの投資が必要だ。
 アジア市場に向けては、パイプラインの建設も考えられる。当然、中国向けだ。中国はロシアに隣接し、潜在的には世界最大の天然ガス市場でもある。しかし両国はこの10年、実りのない押し問答を繰り返してきた。今年2月にパイプラインに関する合意を発表したものの、価格については合意できていない。
生産とパイプラインの分割も一案
 中国は、中央アジア、オーストラリア、中東、西アフリカから天然ガスを輸入する契約を結んでいる。ロシアを除くほぼ世界中から、と言ってよいだろう。中国はアジア水準の価格を拒否している。ガスプロムも譲歩する気はない。
 ガスプロムを、もっと動きの軽い、営利志向の企業に作り替えるには、かなりの政治的決断が必要だろう。ガスプロムの天然ガスを仲介する世界の業者の中には、ガスプロムが大規模にLNG生産を始めたら都合がよいと考える者もあるはずだ。かつては氷に閉ざされていた北極海の航路が使えるようになったことなど、LNG輸送に有利な自然条件もある。石油の世界的大手は、ロシアよりも投資が容易な国に資金を注ぎ込もうとするだろうが、それでも、これらの企業からの投資を誘う努力はしてみてもいいだろう。
 ガスプロムのパイプライン事業を生産販売事業から分離するのが合理的なやり方だ――というのが、多くのアナリストの一致する見方だ。こうすることで、経済的に無意味なパイプライン計画に、輸出から上がる利益が注ぎ込まれることがなくなるはずだ。
 さらに、天然ガス生産事業をいくつかの独立会社に分割する方法も有効かもしれない。それらの会社は、「回廊」(欧州の東西を結ぶパイプラインの敷設ルート)近くの比較的小さなガス田を開発し、採掘と販売で競争をすることになる。これらのガス田は、埋蔵量は十分だが、ガスプロム本体が手を出すには小さすぎるのだ。少しでも競争があれば、コストの高騰を抑える役に立つだろう。
 ガスプロムには、なお多くの利点がある。埋蔵量は膨大で、隣国は大量の天然ガスを求めている。しかしこれらの利点を活用する手際があまりにも悪い。あるアナリストはこの様子を「ジェット推進のインラインスケートを履いた恐竜」のようだと例える。
 今、それを変えられるのはプーチン大統領だけだ。今を逃すと、遠からず、大統領もガスプロムも打てる手が選べなくなってしまう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130326/245620/?ST=print

 

【第2回】 2013年3月29日 佐藤茂 [米系ヘッジファンド オプショントレーダー]
確率1000000000000000000000000分の1に負けたヘッジファンド
米ヘッジファンドの現役オプショントレーダーが、「オプションとは」に始まる基礎理論から、プロトレーダーの視点、そしてVIX先物までを解説する『実務家のためのオプション取引入門』。この連載では本書に収められている14のコラムから5つを紹介する。連載2回目の今日は、ノーベル賞受賞者によるヘッジファンドの破綻の顛末だ。
なぜLTCMは破綻したのか
歴史上もっとも「有名な」ヘッジファンドは何かと聞かれれば、ほとんどの人はLTCM(Long Term Capital Management)と答えるでしょう。 
これは、1994年に元ソロモンブラザーズの債券トレーディング責任者であるジョン・メリウェザー(John Meriwether)が起こしたファンドで、マイロン・ショールズとロバート・マートンも参画者に名を連ねていました。 
彼らは、最初の数年、年40%にも及ぶ高リターンをたたき出します。しかし1998年のロシア危機が引き金となり、数カ月で46億ドルもの資金を失い、実質的な破綻に追いやられることになります。 
LTCMの破綻の最大の理由がVaR(Value at Risk)を用いたリスク管理の失敗にあると言われています。 
VaRとは「次の何日間で、何%の確率で何ドル以下の損失にとどまる」という形式で表現される値で、会社全体のリスクを把握するのに用いられる指標です。 
通常、銀行は「次の10日間で99%の確率で何ドル以下の損失にとどまるか」を計算します。この数値をもとに、必要な資本を計算するわけです。 
LTCMは、VaRを用いて、これだけあれば十分だろうという資金を求めていました。しかし、その値を決定的に低く見積もっていたのです。 
メリウェザーは当初、新たに発行されるOn-the-Runと呼ばれる割高な債券をショート、Off-the-Runとなった割安な債券をロングし、そのスプレッドが縮小することで利益を上げる古典的な債券アービトラージを主な戦略としていました。しかし、ファンドが拡大し、高リターンを求める中で、株式指数オプションのショートなどのより高リスク高リターンの戦略にもポジションをとることになります。 
1000000000000000000000000分の1の出来事
彼らは、ポートフォリオ全体の1日あたりのボラティリティを4,500万ドル程度と見積もっていました。その100倍以上の資金を有していた彼らにとっては痛くもかゆくもないように映ったことでしょう。 
1日あたりのボラティリティを4,500万ドルとすれば、1カ月あたりのボラティリティはおよそ 

と見積もることができます。トータルで47億ドルの資金を有していた彼らにとっては 

ですから、1カ月で約半分(45%)の資金を失うことは10シグマ外の出来事だったのです。-10シグマより小さい範囲に入る確率はいかほどでしょうか。これは約、

の確率に相当します。つまり、彼らにとっては、「ありえない」ことだったのです。
しかし彼らにとってのこの「ありえない」ことが起こります。ロシアのデフォルトが引き金となり、1998年8月だけで21億ドルを 失うのです。そして9月には残りのほとんどの資金を失ってしまいます。
リスクマネジメント上の問題点
LTCMのリスクマネジメントにはいくつかの問題がありました。 
4500万ドルという1日あたりのボラティリティは、過去のS&P500の平均のボラティリティを元に算出していました。しかしこのボラティリティは一定ではありません。マーケットが暴落すると、ボラティリティは加速度的に増加します。つまり、さらに下落する可能性が高まるわけです。 

6章で詳しく説明しますが、実はリターンは正規分布には従わないことが知られています。彼らもそのことは認識していました。しかしながら突発的なイベントによる大暴落(Tail Risk)を低く見積もっていたのです。 

また、ポートフォリオ自体にも問題がありました。彼らは、その資金の約1/3を金利スワップ、約1/3を株式および株式指数オプションのショートによって失います。 
彼らのとっていたポートフォリオは、一見通常時は十分に分散されたかのように見えますが、実はロシアのデフォルトのような異常なことが起きた場合、ボラティリティは上昇し、縮小するはずのスプレッドは拡大、そして流動性は枯渇するということが起きます。 

そのすべてが彼らのとっていたポジションに大打撃を与えるものでした。 
実際にはリスクは全く分散されていなかったわけです。彼らの「大きすぎる」ポジションを枯渇したマーケットで解消していくことはあまりにも不利益でした。 
こういった要素はVaRには考慮されていません。 
1998年9月、追い詰められた彼らは、顧客に資金を募る手紙を送りますが、新たな資金を獲得することはできず、1カ月もしないうちに破綻状態となり、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)による救済措置がとられることになります。 
VaRが現在でも一つの有効なリスク指標であることには違いありません。しかしながら、「どの程度の確率でどの程度の損失以下にとどまるか」と同時に、「もしも実際に異常なことが起きた場合、どの程度の損失を被るのか」を知ることが大切です。 
そのため近年では、ストレステストの実施や期待ショートフォールといった指標が重要視されてきています。 
もっともおいしい原資産は「日本」
余談ですが、LTCM破綻の10年後の2008年夏、LTCMでトレーダーとして働いていた人物と話をする機会がありました。彼に、「当時のトレードでもっとも好きだったものは何か?」と聞いたところ、「Japan」と即答しました。 
日本では当時ワラントや転換社債が多く取引されていました。ワラントや転換社債は、本質的にはコールオプションです。彼らは当時、それらを本質的価値を下回る額で購入することができたそうです。 
彼らが日本で行っていた取引のほとんどが「ホームラン」(膨大な利益を生む素晴らしいトレードのこと)だったと言っていました。 

また彼によると、「LTCMに関する書籍では一切触れられていないが、実際にはLTCMもストレステストは行っていた」そうなのですが、残念ながらこれに関しては大きな欠陥があったと言わざるをえないでしょう。 
(次回は、4月3日に掲載します)
________________________________________
<書籍のご案内>

『実務家のためのオプション取引入門』
〜基本理論と戦略〜 
今まで日本になかったオプションの基礎から実践までを網羅した画期的な一冊。個人から金融関係者まで、本格的に学びたい人のために、論理的に明快にオプション取引に必須な知識を紹介します。米系ヘッジファンドの現役トレーダーが、実際に毎日使っている知識や手法を公開。
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◆目次
オプションとは  1章
プットコールパリティ  2章
オプション価格はどう決まるか  3章
オプション価格計算モデル  4章
ボラティリティとは  5章
ボラティリティサーフィス  6章
スプレッドとは  7章
グリーク  8章
グリークの視点からのスプレッド  9章
コールとプットの等価性 10章
オプションアービトラージ 11章
アメリカン型オプションの早期行使 12章
トレーダーの視点 13章
VIXとは 14章
用語集
正規分布表
索引
http://diamond.jp/articles/print/33453



11. 2013年3月30日 01:02:48 : GnRfb4ci8o
キプロスへの「核攻撃」で壊滅する金融業-国を道連れに崩壊か 

  3月29日(ブルームバーグ):キプロスの首都ニコシアに住む法律家、イオナ・コンスタンティヌさん(24)は、バンクホリデー(銀行休業)が始まった16日の朝、ロンドンで週末を過ごすために早起きして荷物を準備していた。
ノートパソコンを開いてフェイスブックにログオンし、「人々が叫びリンクが投稿される様子を見て、何が起きているのかと驚いた」と彼女は振り返る。
キプロス救済合意の一部として、国内の銀行預金への課税に指導者らが同意したというニュースを知ると、コンスタンティヌさんの計画は吹き飛んだ。法律家のボーイフレンド、シモス・アンゲリデスさん(35)と彼女はフライトをすぐにキャンセルし、預金が口座から消えてしまわないか確認するために銀行の再開を待った。しかし、窓口がようやく開くのは28日になってからのことだ。
キプロス国民は皆、金融システムが国を道連れに崩壊に向かっているのではないかと不安に襲われたが、この2人も例外ではなかった。アンゲリデスさんは「核爆弾が落ちたようだった。放射能の中で何とか生きている状況だ」と話す。
キプロスのアナスタシアディス大統領は、欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)から100億ユーロ(約1兆2000億円)の支援を得る条件として、国内2位のキプロス・ポピュラー銀行 の解体に同意した。10万ユーロまでの預金は保護されるが、それを上回る預金は同行では大部分が失われ、キプロス銀行 についても最大40%の損失負担が求められる。
滅びゆくキプロス
地中海東部に位置する島国のキプロスにとって、今回の支援策は「救済」の名にほとんど値しない。国内総生産(GDP)の80%、雇用の72%を生み出す金融サービス業は、観光業と共にキプロス経済の屋台骨を支えているが、財政資金穴埋めのための今回の合意によって、金融業が壊滅的な打撃を受けると予想されるためだ。
アンゲリデスさんは「半年後にはほとんどが廃業か、買い手あるいは借り手募集の看板を掲げることになるだろう。キプロスは住む人もない廃墟の国になるのではないか」と不安を隠さない。
原題:Cyprus Nuclear Option Empties Local Shops as Bailout ShutBanks(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Romesh Ratnesar rratnesar@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Romesh Ratnesar rratnesar@bloomberg.net;Josh Tyrangiel jtyrangiel@bloomberg.net
更新日時: 2013/03/29 14:25 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKEL686S972L01.html


 


仏大統領が75%の富裕税課税を提案、高額給与の企業に
2013年 03月 29日 10:27 JST
[パリ 28日 ロイター] フランスのオランド大統領は28日、従業員に100万ユーロを超える給与を支払った企業に対して、税率75%の富裕税を適用する考えを示した。

大統領はこれに先立ち、年収が100万ユーロを超える個人に75%の税率を課す構想を打ち出していたが、憲法会議が違憲判断を示したたため、課税対象を個人から企業に移す。

大統領は、ゴールデンアワーに1時間にわたって放映されたテレビインタビューで「私は公約を守る」と発言。債務危機が長引いていることを認めた上で、景気・失業対策を優先する考えを示した。

今年と来年は家計への増税・新税導入は計画していないとも発言。年金改革については、来年の導入を目指しており、年金給付開始年齢を引き上げる必要があるとの認識を示した。


焦点:スロベニアが救済要請との観測高まる、キプロス問題が波及
2013年 03月 29日 13:57 JST
[ロンドン 28日 ロイター] キプロス金融支援をめぐる混乱をきっかけに、同国と同じくユーロ圏内の小国で銀行セクターに問題を抱えるスロベニアが救済要請を迫られるとの観測が高まってきた。

スロベニアの2年物国債利回りは28日に7%近くまで上昇し、10年物国債利回りを上回って「逆イールド」が生じた。これは投資家がデフォルト(債務不履行)リスクの上昇を織り込んでいる兆候だ。

スロベニアは昨年10月、1年7カ月ぶりに国債を発行した。ヤンシャ前首相は、9億0700万ユーロの18カ月物政府証券(TB)が償還を迎えることし6月6日までには再び国債を発行する必要があると述べていた。

しかしキプロス問題が波及した結果、起債は困難さを増しており、救済要請に追い込まれる可能性が高まった。

スタンダード・バンクでアフリカを除く新興市場の調査を統括するティム・アッシュ氏は、スロベニアが国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)のトロイカとの間で、救済をめぐる交渉を迫られる可能性が徐々に高まっていると言う。

スロベニアの新政権は今のところ、借り入れ計画への言及を避けているが、年央に約20億ユーロの債務償還を控え、数カ月中に資金調達に動くと予想されている。

しかしスロベニアの債券市場は流動性が低い上、キプロスの救済問題以来、市場環境が悪化しているため、必要な額の調達は不可能ではないか、との見方がアナリストの間では強い。

2021年1月償還のスロベニア国債利回りは今週6.8%まで上昇し、昨年9月以来の高水準となった。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムも急上昇している。マークイットによると、スロベニア国債のプレミアムは21日以来123ベーシスポイント(bp)も上昇し、405bpとなった。

今週実施したロイター調査によると、エコノミストは次に救済を受けそうなユーロ圏の国として、スペインとスロベニアを挙げた。

コメルツバンクのエコノミスト、クリストフ・ウィール氏は「スロベニアは(6月に)起債を試みるだろうが、資金調達は不可能ではないか。長期金利は6%を超えており、7%を上回れば救済を求めざるを得なくなる」と話す。

<7%の呪い>

ほんの1週間前まで、状況はこれほど悲惨ではなかった。

スロベニアは最近、政治危機を経て政権が交代したとはいえ、債務負担と銀行セクターの規模は経済悪化に苦しむ他のユーロ圏諸国に比べて小さく、問題への対処はこれらの国よりずっと容易だとみられていた。

スロベニア政府の推計では、2012年の債務の対GDP比率は53.8%と、スペインの84%や救済前のキプロスの約80%を大幅に下回る。

スロベニアの銀行が抱える問題は、銀行セクターの規模そのものよりも、不動産バブル崩壊による資産の質低下にある。スロベニアの銀行のバランスシート規模はGDPの135%相当。キプロスの場合は約800%と巨大だった。

しかしスロベニアの銀行が抱える不良債権総額は約70億ユーロと、GDPの約20%に達する。同国の銀行は大半が国営だ。

新政権は前政権の計画を引き継ぎ、国営銀行の不良債権を買い取って民営化に道を開くための「バッドバンク」を設立する見通しだ。しかし景気後退の中で銀行システムの資本を増強するには、市場での資金調達が必要とみられる。

最近の経験に照らすと、資金調達の見通しは暗そうだ。

ギリシャ、ポルトガル、アイルランドの3カ国は、長期金利が7%を超えた時点で国債の新規発行コストが跳ね上がり、国際支援の要請を強いられた。

これら3カ国ではまた、支援要請前に国債利回りが逆イールド化した。

シティバンクのエコノミスト、ジャロミール・シンデル氏は、スロベニアの命運を決めるのは借り入れコストよりも、新政権の安定性と銀行資本増強の正否だと指摘。「国債利回りが上昇を続け、政府が信頼に足る(銀行資本増強)計画を素早く打ち出せなければ、救済支援に追い込まれかねない」と述べた。

(Ana Nicolaci da Costa記者)


スロベニア、支援要請の必要ない─中銀総裁=通信社
2013年 03月 29日 04:06 JST
[リュブリャナ 28日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのクラニェツ・スロベニア中銀総裁は28日、同国が支援を要請する必要はないとの見解を示した。スロベニア通信(STA)が報じた。

市場では、銀行の不良債権が膨らんでいることから、スロベニアがキプロスに続き支援を要請するとの観測が浮上している。

総裁は「スロベニアは支援を要請する状況にないと断言できる」と言明。「だが政策担当者は財政の安定化や、銀行セクターおよびとりわけ実体経済の再生に関し、明確なシグナルを送ることが肝要」とした。

キプロスの銀行預金が国内総生産(GDP)の3倍の規模に達していたのに対し、スロベニアはGDPの40%未満にとどまっていると指摘。スロベニアの銀行で異常な資金の動きや預金引き出しは起こっていないと述べた。

国際通貨基金(IMF)はスロベニアの大手3行について、欧州連合(EU)の自己資本基準を満たすため、今年新たに10億ユーロ(12億8000万ドル)の資本増強が必要との見方を示しているが、総裁はこれについて確認した。

国有銀行が大半を占めるスロベニアの銀行セクターでは、不良債権が約70億ユーロと、GDPの20%相当に達している。だがクラニェツ総裁は、その半分以上について、引き当て済みと説明した。

3月20日に中道左派の新政権を発足させたブラトゥシェク首相に対しては、金融機関から不良資産を買い取る「バッドバンク」の設立や財政再建、銀行含む国有企業の民営化を推進するよう求めた。

またユーロ圏を離脱する国が出るとは想定していないと述べた。


欧州のインフラ、緊縮財政で競争力低下の恐れ
2013年 03月 29日 15:30 JST
[ベルリン 28日 ロイター] 欧州のインフラ支出が緊縮財政の影響で伸び悩んでいる。情報サービス会社マーケットラインによると、昨年の欧州のインフラ支出は1.5%増の7410億ドル。世界平均の4.5%増、アジア太平洋の7.1%増を大きく下回っている。

マーケットラインによると、欧州のインフラ支出は今後4年間で若干増加し、2016年には4.3%の増加が見込まれているが、世界平均は引き続き大きく下回る見通し。

インフラ支出の伸びが欧州を下回るとみられるのは米国のみ。2016年の米国のインフラ支出は1.8%増にとどまる見込みという。

このため、欧州企業や欧州連合(EU)の関係者からは、インフラ整備で他国に後れをとるのではないかとの懸念の声が出ている。

2月発表の最新のEU予算では、インフラ投資プログラム「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ」の向こう7年間の予算が、当初の500億ユーロから293億ユーロに削減された。

特に大きくカットされたのが、ブロードバンドなどデジタルインフラ向けの予算。92億ユーロからわずか10億ユーロに減額された。

主要輸送インフラ向けの予算も210億ユーロから130億ユーロに削減。航空・道路プロジェクトは見直しを迫られている。

欧州域内の鉄道・道路・空港の接続を目指す「欧州横断ネットワーク」を統括するHarold Ruijters氏は、緊縮財政と景気低迷の影響で、向こう20年間は、事実上、支出のニーズを満たすことができないとの見方を示した。

欧州経営者連盟のユルゲン・トゥーマン会長は「欧州は、現時点では世界最高水準のインフラを誇るが、老朽化は進んでいる。維持するだけでも多額の投資が必要だ」と発言。

「世界の他の地域は、野心的な輸送の近代化、インフラ投資を進めている。欧州が投資を続け、競争力を維持することが重要だ」と述べた。

マーケットラインによると、中国のインフラ支出は人口1人当たりで日米を大きく下回るものの、今年の支出総額は初めて欧州を上回る見通し。

世界経済フォーラムのインフラ調査ディレクター、ペドロ・ロドリゲス・デ・アルメイダ氏は、欧州では経済が回復した後も、長期にわたって支出が不足する状態が続くと予想。

「2007─08年の建設支出の水準を回復できるのは、2016年頃になるだろう」との見方を示した。


スペイン・伊債利回りが上昇、キプロス懸念くすぶる 2013年3月28日
ユーロ/ドルが4カ月ぶり安値、伊・キプロス懸念が重し=NY市場 2013年3月28日
「質への逃避」が再開、欧州懸念広がり独2年債はマイナス金利 2013年3月28日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92S00Y20130329


12. 2013年3月30日 08:30:17 : GnRfb4ci8o
アイルランド 競争力回復、戻る外国人 低税率で海外投資呼び込み
2013.3.30 05:00

 アイルランド経済が史上最悪のリセッション(景気後退)から立ち直りつつあるなか、一度は同国を離れた外国人が戻り始めている。4月までの1年間では5万3000人が同国に移住すると見積もられている。

 ドイツ人のIT(情報技術)系技術者、トーマス・マーグさん(39)は2007年にアイルランドを離れたが昨年、米電子商取引サイト運営イーベイ傘下のオンライン決済サービス、ペイパルでドイツ人顧客管理者として働くためダブリンに戻ってきた。マーグさんは「以前は家を買う余裕はなかったが、ダブリンの住宅価格が手の届くところまで下がってきた」と話した。

 ◆コスト基盤大幅縮小

 アイルランドは1990年代から00年代にかけて急成長を遂げ、他の欧州各国から「ケルティック・タイガー」と呼ばれる好景気に沸いたが、不動産バブルの崩壊を受けて08年に経済が破綻。12年1月までに失業率は3倍の15%に達し、94年以降の最高を記録した。6大銀行のうち5行が国有化され、政府は10年に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に対して675億ユーロ(約8兆1500億円)の緊急融資を要請した。

 それから2年後、輸出額は約1700億ユーロとなり、好景気のピークだった07年よりも約9%増加した。同国のISEQ株価指数は07年以降61%下落したものの、過去2年で37%上昇。同期間では欧州で最大の上げ幅を記録した。

 欧州委員会は2月22日にアイルランド経済の今年の成長率が1.1%になるとの見通しを発表。欧州でこれを上回る成長率が予想されているのはマルタとエストニアだけだ。

 こうした回復は、支援と引き換えに実施された緊縮策の影響で、あらゆるセクターで賃金削減が実施されたことによる。アイルランド産業雇用者連合によると、不況が最も深刻だった09年には、調査対象企業の25%が賃金削減を実施した。同国統計局によると、昨年10〜12月期の平均週給は08年の720ユーロから695ユーロに減少した。

 賃金だけではない。オフィスからショッピングモールに至るあらゆる商業不動産価格も3分の2に下がった。商業不動産サービス会社CBREグループによると、ダブリン中心部の一等地にあるオフィスの賃料は、08年1〜3月期につけた1平方メートル当たり673ユーロから同307ユーロに値下がりした。住宅価格は07年のピークから50%下落。住宅家賃は昨年上昇したものの、07年よりも25%低い水準にある。

 ヌーナン財務相は2月21日に行われたブルームバーグテレビとのインタビューで「われわれの競争上の地位は劇的に変わった。コスト基盤が大幅に縮小し、賃金と投入コストが下がった」と述べた。

 ◆政府戦略の「肝」

 海外企業にとってのもう一つの魅力は12.5%の法人税率である。財務省は、低い税率が海外投資呼び込みを図る政府戦略の「肝」だとしている。経済協力開発機構(OECD)の12年のデータによると、各国の法人税率は米国が35%、フランスが33%、英国が24%となっている。

 ダブリンに約35人の従業員を抱えるオンライン決済会社サムアップの共同創業者、ペッター・メード氏は「アイルランド政府が極めて積極的な税体系を作ったのは明らかだ。コストと税、労働者の質、支払わなければならない賃金に注目すると、他国よりもバランスがとれていることがわかる」と話した。

 米交流サイト(SNS)最大手フェイスブックのアイルランド支社には現在400人の従業員が在籍しているが、今後100人の増員が行われる。アイルランド支社の代表代理、ガレス・ラム氏は、競争力が増したことが同国での事業拡大の理由の一つだと説明。「アイルランドで働くよう説得するのは簡単だ。あこがれの移住先だからだ」と話した。

 ペイパルのグローバル業務担当バイスプレジデント、ルイーズ・フェラン氏は、同社が昨年発表した1000人の新規雇用の約40%が外国人で埋まる見通しであると述べた。同社は大学や政府機関と連携して現地採用にも取り組んでいるが、語学スキルが必要な一部のポジションは外国人に頼らざるを得ないという。フェラン氏は「外国人従業員はアイルランドでの消費に積極的。その波及効果は住宅などの不動産から、ランチやブレークタイムのコーヒーに至るまで広範囲だ」と、外国人労働者増加による経済的効果の大きさを強調した。(ブルームバーグ Finbarr Flynn、Cormac Mullen)


13. 2013年3月30日 10:41:21 : GnRfb4ci8o
http://www.mag2.com/o/kinyukeizai/2013/0329.html
[This week TOPICS]
◇colum1 高城剛『キプロス危機は事実上の「預金封鎖」である』

◇イエスノー世論 『欧州通貨ユーロの導入は世界経済にとって良かったか?』

◇colum2 辛坊治郎『TPPに入らなければ、国力が緩やかに衰退してゆく』

◇colum3 山崎和邦『堅実な投資家が報われる時代が来た!?』


 キプロスの「預金封鎖」についてお話ししたいと思います。

 ニュースを知って、驚かれた方も多いと思います。今週、突如欧州の小国キプロスで、事実上の「預金封鎖」がなされました。日本の報道を見ると、「預金封鎖」という言葉は自主規制して使わないようにしているようですが、世界中の報道では、「預金封鎖」という言葉がヘッドラインを飾っています。なぜなら、実際「預金封鎖」は行なわれたからで、それはいまも続いているからです。

 背景を簡単にお話ししますと、ユーロ危機と呼ばれるギリシャやスペインなど国家破綻危機に面している南欧諸国のひとつであるキプロスも例外ではない、ということです。元々、キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民の間の対立があります。ギリシャ系の銀行は、EU加盟国でありユーロシステムに参加しているギリシャの国債を大量に保有していまして、しかしギリシャ危機に伴い、キプロスの銀行の大部分はその資産を大きく毀損することになって銀行危機が発生し、今回の経済危機の引き金となりました。

 そして、キプロスは、ユーロ圏でもっとも税金が低いことを売りにしていた金融立国でもありました。この国がオフショアであるかどうかは、判断が難しいところですが、ユーロ圏内の金融セクターであったことは間違いありません。特にロシアの富豪たちは、キプロスを好んで使いました。この場合のロシアの富豪とは、報道にはハッキリ書かれませんが、ユダヤ系ロシア人を指します。

 裏話は、2011年秋まで戻ります。世界的な金融のプロフェッショナルから、「そろそろキプロスは注意が必要だ」とワーニングが出たのは、2011年秋のことで、それは2012年から、かなり大きな口座管理料がキプロスで発生するというもので、そのワーニングをキッカケにキプロスに要注意マークが点滅しはじめました。状況を察知した人々は、資金を他の国へと静かに移しました。

 キプロスは、ユーロ圏でありながら税金が低いのが魅力の国です。今回、広く報道されていますように、キプロスに銀行口座を持つ人は、キプロス人であろうとなかろうと、現預金に最大約10%の税金が課されるというものです。これが、EUからの救済条件で、実はこれは遥か前から予測されていたことでした。それでも、ここに資金を置いておく理由は、10%程度の税金が加算されても、まだまだ他国より税金が安いと思っている人が多くいるからです。モチロン、割を食うのはキプロスの一般国民であり、結果、国民によって選ばれている政治家は、この資産税ともいうべき条件に大反対をし、事実上、金融機関は止まった状態のまま=預金封鎖になってしまいました。

 この行方は、まだわかりません。しかし、場合によっては「資産に一律の税をかけて没収」することは、この二十一世紀に先進国で平然と行なわれる可能性が極めて高い、ことだけを多くの人に理解させました。日本は第二次世界大戦後、預金封鎖を実行し、世界で唯一預金封鎖を混乱をきたざす成功した国家として名前を残しました。預金封鎖や資産税は、昔の話しではありません。いまユーロ圏で起こっている事を、誰もがしっかり理解しなくてはいけないのです。


▓ 高城 剛
日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオ・ビエンナーレ」でグランプリを受賞。総務省情報通信審議会専門委員などの要職を歴任。メルマガ「高城未来研究所」では実際に海外を飛び回って入手した世界情勢や経済情報など豊富な内容で配信。

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2013/03/22
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『高城未来研究所『Future Report』』03/22号より抜粋



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欧州通貨ユーロの導入は世界経済にとって良かったか?
欧州通貨ユーロの導入以来、ギリシャやキプロスの経済危機が世界へ影響しています。このユーロの導入について皆さんはどのようにお考えでしょうか。
ユーロ導入は良かったと思う⇒YES
いや、悪かった、悪影響だ⇒NO

【あなたの意見はどっち?】
ユーロ導入は良かったと思う
いや、悪かった、悪影響だ

日銀新体制で円安はどこまで進むのか
新体制となった日銀ですが、どこまで円安が進むのでしょうか。参院選までに1ドル105円に達すると思いますか?
1ドル105円に達すると思う
 59% (295票) いや、達しないだろう
 41% (424票)



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 TPP交渉参加問題が決着しました。もともと自民党は「農村型政党」ですから、党内に強力なTPP反対派を抱えているのは当然です。本来なら典型的な「都市型政党」であったはずの民主党政権下で決着しておいておかしくない話だったんですが、まあ、消費税値上げですら自民党と公明党の協力でやっと実現させたくらい「へたれ」の政党ではこの決断は無理だったでしょう。特に小沢一郎一派のいたころの民主党はもうめちゃくちゃで、執行部が決めようとすることには理非を問わず反対で、わざと執行部に「強行採決」させるために抵抗し続けるという状態でした。いったいあの騒ぎはなんだったのかというと、昔野党が「与党の横暴」を有権者にアピールするために「何でも反対」「牛歩で妨害」していた戦術を、小沢一派が与党内の権力闘争に持ち込んだってことなんですね。当時の民主党は、思い出しても笑ってしまうほどの惨状だったと言えます。

 さて、TPP参加問題をどう考えるか?一番簡単にこの問題の本質を見極めるには、「いったい誰が日本国内でTPPに反対しているのか」を知ることです。主な反対派は、「農協」「医師会」「共産党」「社民党」といったところです。一目瞭然、まさに日本の富に寄生する人たちです。

 江戸時代の終わり、まだ「鎖国」の余韻が残っている頃、日本の人口は3000万人ほどでした。という事は、人口3000万人くらいまでは、エネルギーを含めて日本は自給自足できる国だという事です。糞尿で肥料を作ってコメを育て、山に入って炭を焼き、それを都市に運ぶことで3000万人が食べられるほど、この国が豊かな自然環境に恵まれているっていうのは、今でも変わりません。ただ、この状況の中では高齢者は時として「姥捨て」され、飢饉のときには餓死者が出、国民が高度な医療や薬の恩恵に恵まれることももちろんできません。現在一億三千万人が80歳の平均寿命を享受し、特殊な事情を除けば一人も餓死することなくこの国で暮らせているのは、まさに貿易の賜物です。

 鉄鉱石、レアメタル、エネルギー等ありとあらゆるものが輸入品で、これを国内で加工して付加価値をつけ、それを海外に輸出して得た利益で海外から生活に必要な資源を買うことで、私たちの生活は成り立っているんです。そして日本の農業こそが、その恩恵を最大限に受けている産業なんです。

 高齢化した農村で、石油が無ければ農機具は動かず、田植えも刈り取りもできません。江戸時代のように、これらすべての農作業を人力でするのは、高齢化の進んだ現代日本の農村では不可能です。さらに、肥料、飼料、農薬の原料もほぼ100%輸入品です。これらが輸入できるのは、長年の貿易によって蓄えられた富が国内にあるからなんです。そして、日本の農産物の多くは現状において国内でほぼすべてが消費されていますから、国レベルで富の増減を考えたとき、残念ながら日本の農業は国家の富の蓄積に貢献していないのが分かります。農業はまさに日本国内における「寄生」産業なんですね。「医療」「共産党」「社民党」などが、「日本の富に寄生する人々」であることを説明するのに、多くの言葉は要らないでしょう。その「寄生」産業が、長年「日本の富を作り出してきた」商工業者が求めるTPP参加に反対するのは、あまりに筋が悪すぎです。

 私は、現在の豊かな日本を作り出してきた「エンジン」である業種の皆さんが推進を求めるTPPに、「寄生」産業である農協や医師会が反対するのは「筋違い」だと思うんです。たとえ、「TPP参加という判断が日本にとって間違い」だったとしても、です。

 二国間のFTA交渉でさえ「寄生」産業の抵抗で世界の先進国の中で圧倒的に遅れている日本が、「TPPにすら」入らなければ、国力が緩やかに衰退してゆくのは間違いありません。しかしその一方で、TPPに入ったら何かいいことが劇的に起きるかというと、現在の日本に、さあ、その体力があるかっていうのが私にはちょっと疑問なんですね。

 TPPは、国内に比較優位の産業があってこそ国益にかなうものなんですが、現在の日本に「比較優位の産業」が果たしてあるんでしょうか?一昔前なら、家電製品でも車でも、日本の工業製品は圧倒的に「比較優位」を維持していましたから、貿易が自由化するという事は、日本の富が増えるという事に直結していました。しかし、ほんの10年前に圧倒的なブランド力を持っていたシャープですら、韓国企業の下請けに成り下がる状況で、「完全に自由な弱肉強食」状態を目指すTPPが実現した時、果たして日本企業は大丈夫か?というところが、本来TPP参加に関して論じられなくちゃいけない話なんです。TPP参加で政府が育成策を講じなくちゃいけないのは、実は農業じゃなくて、「富を作り出す原動力」である商工業なんですね。ところが相も変わらず政治の世界で論じられるのは旧態依然の農業保護策ばかり、これで日本に明日があるのか本当に心配です。
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▓ 辛坊 治郎
読売テレビアナウンサー、理事・報道局解説委員長を経てフリージャーナリストに。大阪綜合研究所代表も務める。

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自分で病気になってつくづく思います。日本のメディアは病気が好きだなあ、って。先日、太平洋横断の記者会見をしたところ、翌日の新聞の見出しは軒並み「辛坊 がん」でした。一時間半に及んだ──
2013/03/22
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『辛坊治郎メールマガジン』03/22号より抜粋




 日本取引所JPX株が東証の取引活性度の象徴で、トヨタ株が円安相場の象徴だ、と既報で述べたが、日銀株が4ヵ月で3倍になった事実は何を意味するか?

 日銀の株(銘柄コード8301)は、昔からの店頭株として取引されて誰でもいつでも売買できる。今はジャスダック上場銘柄。但し株主議決権はなく解散時の財産分与にもあずかれない。今の株価は9万円以上だが、配当は5円と決められているから利回りにもならない。

 この株が、昨年11月、政権交代前に3万円だったが、4ヵ月で9万円を超えた。解散決定日までは3万円台を低迷していたが、組閣の直後に、一挙に5万円に急騰、約2ヵ月もみあって、3月に入って一挙に9万円を超えた。

 これの意味する所は、日銀がETFとREITの安いところを買ってきたから、日銀に相当な証券評価益がある筈だ、ということだ。この上げ相場の前に、日経平均その物(ETF)を安い日に買ってきた日銀、REITを安い日に買ってきた日銀、彼が一番儲かっているはずだ、と誰しもが気付いたはずだ。その日銀の株価は4ヵ月で約3倍になった。

 日銀は、日経平均100円安の翌日にETFを買い続けているし、まだ安い時期にREITを買う金を増額したと何度も発表したのだから、日銀が一番儲けたはずだ、と誰もが思うであろう。

 現に日銀が保有する資産は急増中の筈だ。昨年9月末で150兆円だったから今は200兆円を超えたろう。日銀株は取引高も少なく利回りにもならないから、投資対象としては話題にならないが、日銀の証券資産の急増に目をつけて、自分も一口乗った人もあったろう。現に筆者が一番投資効率が良かった銘柄は、この4ヵ月では、既述の日本取引所JPX株(8697)と日銀株だった。

 青春の日々を日銀の悪総裁たちに痛めつけられた筆者は、これで一応のケリを付けたつもりで、自分の口座の日銀株を利食い売りした日を「日銀リデンプション」(日銀怨恨の取り戻し)という記念日にしたことを私ごとながら書かせて頂く。

 黒田総裁は「日銀が買える資産は山ほどある」と発言しており(「日経ヴェリタス」3月10日号)、しかも、その買い入れ資金額を(極端にいえば自分で自由に)増額できる。現にこの半年は1ヵ月おきに5兆円か11兆円を増額してきた。いまから、「あの時に日銀株を買っておけばよかったっケ」というのは自由だが、こういうのを兜町で「福助の頭」という。そのこころは「あとにケ(頭髪)が付く」というのだが。

 日銀の株価が4ヵ月で3倍になったのは、「政権混迷中でも海外リスクがあっても、安い日に買った、そういう投資家は儲かる。しかも、安い日には買い続けたことだ」(これが「懸れば斬る。退けば斬る。待っても斬る。懸待(けんたい)一隅(いちぐう)を守らず」の心得だと既報で述べた)。を意味し、「今からは堅い投資家が儲かる。堅実な投資家が報われる時代が来た」という示唆と受け止めたいがどうだろうか?

 まるで、澤上ファンドの澤上さんの言を、本稿で代弁している感じだが、勿論、その意図はない。

 トヨタ株がドル相場の指標で日本取引所JPX株(コード8697)は証券市場活性度の指標だと既報で述べた。日銀株が「政策と連動する証券含み益」評価の指標だ、というのはどうだろうか。

 一方、日本取引所JPX株(8697)が東証の取引活性度の象徴だと本稿で言ってきたが、この株は1月の大発会を3740円台で始まった後、2月27日に7890円を示現した。その後は上値が重く、その高値を抜けて来ず、ようやく先週に高値をとってきた。これは近々中に、遅くも4月か5月には、整理局面に入るという啓示である、可能性がある。トヨタがドル相場の象徴だと述べて久しいが、トヨタが高値もみ合いに入ってからは、ドルも97円を抜いてこない。

『山崎和邦の投機の流儀』03/25号より抜粋



14. 2013年4月02日 02:23:29 : niiL5nr8dQ
キプロス救済で相次ぐ訴訟
まず教会が勝訴、外国企業も提訴の動き
2013年04月02日(Tue) Financial Times
(2013年4月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


救済を巡って大揺れするキプロスの首都ニコシア〔AFPBB News〕

 先週、キプロスの銀行システムの救済がまとまるや否や、訴訟が押し寄せ始め、実業家の後押しを得た地元の弁護士が小さな勝利を収めている。

 最初に提訴したのは、キプロスにビジネス上の大きな利害を持つキプロス教会だった。教会は、救済メカニズムの一環としてキプロス銀行の株主が持ち株を取り上げられることの正当性に異議を唱えた。

 「財産の没収はキプロスの憲法と欧州の人権宣言に反している」。キプロスの税理士事務所Dr・K・クリソストミディス・アンド・カンパニーの創業者兼パートナー、キプロス・クリソストミディス氏はこう話す。

 キプロス銀行の株式を保有する教会は政府を提訴し、3月28日に決定を覆すことに成功した。政府は31日、その結果、キプロス銀行の株主は全員、議決権がほとんどないクラスD株を新たに発行されると述べた。

キプロス銀行の預金ヘアカットに仮差し止め命令

 キプロスの法律事務所ステリオス・アメリカノスは3月29日、原告がキプロス銀行に保有する預金のヘアカット(元本削減)を阻止する仮差し止め命令を勝ち取ったと述べた。預金のヘアカットは救済メカニズムの中核を成す措置だ。

 政府関係者によると、この一件は恐らく法廷に持ち込まれる前に解決されるという。財務省と中央銀行には、仮差し止め命令の撤回を求めて最高裁判所に訴える権利があるからだ。

 だが、そうならなかった場合、問題の解決には数カ月、あるいは数年かかる可能性があり、救済プロセスを一段と複雑にしかねない。

 キプロスの司法長官と国会議員を務めた後、現在は法律事務所マルキディス・マルキディス・アンド・カンパニーのパートナーであるアレコス・マルキディス氏は「裁判所は通常、そうした問題で決定を下すのに1年以上の時間をかける」と言う。

 世界中の企業から似たような訴訟が起こされる見込みで、仮に訴訟が成功しなくても、救済を取り巻く複雑な法的状況を一段と混乱させるだろう。本紙(英フィナンシャル・タイムズ)は複数のロシア人弁護士から接触され、顧客のための訴訟の選択肢について説明を受けた。

 匿名を条件に話してくれたウクライナ企業数社も、自分たちの預金と自由な資金移動の権利を守るために提訴を検討しているという(ウクライナはキプロスの銀行に数十億ドルの資金を預けていると推定されている)。

リスクの高い銀行債を買った一般市民

 ここへ来て浮上した3つ目の大きな法律問題は、キプロスの一般市民はキプロス銀行とライキ銀行のリスクの高い証券を不当に売り込まれ、自分たちが取っているリスクを理解していなかったという数々の訴えだ。

 政府は、間違った情報で高リスク証券を買わされたと主張する債券保有者に対応するために特別仲裁機関を設けることを決めた。

By Michael Stothard in Nicosia and Roman Olearchyk in Kiev


ユーロ下落、ECB会合控え売り優勢−リスク回避で円全面高
  4月1日(ブルームバーグ):東京外国為替市場ではユーロが下落。イタリア政局やキプロス情勢に対する懸念がくすぶっているほか、週内に欧州中央銀行(ECB)の定例理事会を控えて、域内景気の弱さや将来的な金融緩和の可能性が意識された。
ユーロは対円で1ユーロ=120円後半から一時119円57銭まで下落。中国の3月の製造業PMI(購買担当者指数)が予想を下回ったことをきっかけに、オーストラリア・ドルを売る動きが強まり、ユーロにも売り圧力が波及した。ユーロは対ドルでも1ユーロ=1.2800ドルを割り込み、一時1.2771ドルまで値を下げる場面が見られた。
東海東京調査センターの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、今週のECB会合では「ひょっとすると緩和的な話が出てくるリスクが当然ある」とし、「ないとは思うが利下げするかもしれないし、将来かなり景気ベアな話をするかもしれないし、そういったものを警戒してユーロが売られている」と解説。「こうした流れは今後も続くわけで、ユーロはポジションがある程度きれいになるとまた売られる。基本的には売りの通貨」と話した。
一方、リスク回避の動きから円は主要通貨に対して全面高となった。ドル・円相場は1ドル=94円台を割り込み、一時93円35銭と3月6日以来の水準まで円高が進行。朝方発表された日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、3月調査)は事前予想を下回る内容となったが、3、4日に開かれる黒田東彦総裁就任後初の金融政策決定会合を前に為替市場の反応は限られた。
リスク回避
日銀短観では、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた業況判断指数(DI)が、大企業・製造業でマイナス8と昨年12月の前回調査から4ポイント改善した。同・非製造業もプラス6と2ポイント改善した。いずれも改善は昨年6月調査以来、3期ぶり。ブルームバーグ・ニュースの事前調査では、それぞれマイナス7、プラス8が見込まれていた。
クレディ・アグリコル銀行外国為替部の斎藤裕司ディレクターは、短観では「企業が依然として慎重姿勢であることは分かった」が、「市場の目はすでに4日の『異次元緩和』に行っている」と指摘。「大規模緩和が実施された後の短観が注目だ」と話していた。
一方、中国国家統計局と中国物流購買連合会が1日発表した3月の製造業PMIは50.9と、11カ月ぶりの高水準となったが、ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の予想中央値(51.2)には届かなかった。また、英HSBCホールディングスとマークイット・エコノミクスが発表した3月の中国製造業PMI改定値は51.6となり、速報値(51.7)から下方修正された。
1日の東京株式相場は下落。TOPIXは前週末比3.3%安と、約2年ぶりの下落率を記録した。
イベント・指標目白押し
今週は欧米でも注目のイベントや経済指標の発表が目白押しとなっている。米国ではこの日、3月の米供給管理協会(ISM)製造業景況指数の発表が予定されており、週末には注目の雇用統計が発表される。
一方、ユーロ圏ではECBの定例理事会が4日に開かれる。みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、「欧州ではイタリアやキプロスの政治情勢の混乱が注目されており、ユーロは売り要因の方が大きい」と指摘。米国については「米連邦公開市場委員会(FOMC)が緩和継続姿勢が示した中で、指標の改善が続くかどうか」に注目していると話した。
1週間にわたる連立協議が不調に終わったことを受け、イタリアのナポリタノ大統領は30日、10人から成る賢人会議の創設を発表した。大統領府の電子メールによると、10人にはベルサニ党首率いる民主党中心の中道左派とベルルスコーニ前首相の中道右派の2大勢力からも選ばれた。ベッペ・グリッロ氏率いる第3勢力の五つ星運動の議員は選ばれなかった。大統領は、ベルサニ党首とベルルスコーニ前首相をそれぞれ支える議員らが合意点を見いだすことに期待している。
下回る
記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net;Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/01 16:25 JST


15. 2013年4月02日 10:29:21 : xEBOc6ttRg

 
キプロスの「銀行預金課税」問題は他人事ではない 大前研一2013年04月01日
 
 キプロスの金融危機に端を発した「取り付け騒動」は、私たち日本人が脳裏に焼き付けておくべき問題だ。財政赤字が続く日本でも、将来、銀行預金への課税とか、極端な場合には預金封鎖という「禁じ手」が行われる日が来るかもしれないからである。
13日ぶりに銀行は営業を再開
 地中海の小国キプロスで3月中旬、現金引き出しが集中し、銀行のATMが紙幣不足になるなど混乱が広がった。ユーロ圏は財政危機にあるキプロスへの1兆円を超える金融支援と引き換えに「銀行預金への課税」を求め、それが引き金となった。
 キプロス政府は大手銀行を整理するなどの危機対応法案を可決し、ユーロ圏と再協議入り。3月25日に開かれたユーロ圏とキプロスとの間で、ひとまずキプロスへの金融支援条件について基本合意に達した。
 3月末までにまとまった最終的な決着方法は、(1)国内第2位のライキ銀行を破綻させ、その預金を当面凍結する(2)第1位のキプロス銀行の10万ユーロを超える高額預金者の預金の60%を取り上げ、うち37.5%を銀行の資本に組み入れ、さらに22.5%は90日間凍結する――というものである。預金者には40%が返還されることになるが、その時期に関しては定かではない。
 銀行は3月16日の営業停止以来、約2週間ぶりにようやく営業を再開しているが、引き下ろせる額は少額で、かつ海外送金を規制している。
 キプロスという国を理解するため、下の「キプロス概要」をご覧いただきたい。

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 トルコ軍が侵攻した1974年以来、北部はトルコ軍が実効支配を続けている。人口は公式には不明だ。一方、南部の人口は86万人で、住民はギリシャ系が多数派を占める。経済的にもギリシャに依存している。
Next:預金封鎖や一律天引きなどの政策は今後とりにくくなる
 南部のキプロス共和国は2004年に欧州連合(EU)に加盟、2008年には通貨ユーロを導入した。しかしキプロスは近年、各銀行が大量保有するギリシャ国債の暴落を受けて財政・金融は苦境に立たされている。ユーロ圏による金融支援が避けられない状況となっていた。トルコとの紛争の際、独立を支援してくれたギリシャへの依存が高すぎたことが仇となっていたのである。
 今回のキプロス問題の解決には、ユーロ圏の中でもとりわけドイツの意向が強く反映されている。「金融支援を受けるなら、キプロスの人々も犠牲を払うべきだ」とドイツのショイブレ財務相などが主張し、預金封鎖を行って銀行預金へ20%の課税を迫った、という構図だ。
 当初は2万ユーロ(240万円)以上の預金に課税することが検討されたが、これは3月19日のキプロス議会で否決された。しかし銀行預金に課税されるという話が出れば、当然、預金者はすぐに現金を引き出そうとする。その結果、取り付け騒動になり、キプロスの銀行はすべて休業に追い込まれてしまった。2008年のリーマンショックの余波で危機に陥ったアイスランドの場合でも、主としてドイツなどからインターネットで預金引き出しが殺到した。結局、アイスランドのすべての銀行は破綻し、預金もフイになった。
 今回はそのときほどドラスティックな手段ではなかったが、スペインやポルトガルにも同じ手法が使われるのではないか、という心理的な動揺が広がり、ユーロ圏全体に一時パニックが広がった。またEUの案では当初2万ドル以下の人にも課税されるということだったが、取り付け騒動などの実力行使を見たEU側が大幅な修正を余儀なくされている。
 この数週間の教訓により、EUも、そしておそらくほかの国も、預金封鎖、一律天引きの徳政令などは今後政策的にはとりにくくなるだろう。
Next:ロシアを狙い撃ちか。その理由は?
こうした混乱の中、ロシアがキプロス問題で激しく抗議している。なぜなら、多くの富裕ロシア人がキプロスの銀行に口座を持っているからだ。
 課税ラインが「10万ユーロ以上」となっていることも、ロシアを刺激した。キプロス人には10万ユーロ以上の預金者は少ないが、キプロスに口座を持つロシアのお金持ちはほとんどの場合、10万ユーロ以上を預けている。「ドイツはロシアを狙い撃ちにした」と、ロシアは反発したのである。
 ここで、「キプロスの銀行預金残高の推移」をご覧いただこう。

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 キプロス国内居住者とユーロ圏居住者を除いた「その他居住者」は、ほとんどがロシア人だ。
 また、銀行預金だけでなく、ロシアはキプロスへの投資も活発に行っている。次の「キプロスへの直接投資の額」を見ていただきたい。

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 キプロスへの直接投資額は、米国、ギリシャ、イギリスに次いでロシアが第4位となっている。一方、興味深いのは、対ロシア直接投資額を見るとキプロスが第1位なのである。
 これにはカラクリがある。ロシアのお金持ちがキプロスに口座をつくりタックスヘブンとして利用する。そして、そのお金を使ってロシアに有望な儲け話があれば投資しているのだ。名目上、キプロスからロシアに投資することで、外国人の優遇措置が適用される。ロシア人が外国人になりすますために、キプロスが利用されてきたと言える。
 プーチン大統領もメドベージェフ首相もEUに猛烈抗議したが、本来なら抜け道を使っているロシア人に被害が及ぶだけだから「知らん顔」していても良かったはずだが、彼らが騒いだことで、国民には痛くもない腹を探られたりしている。
ユーロ圏のキプロスと圏外のアイスランドの違い
 こうした観点から見ると、キプロス問題はユーロ圏とロシアの代理戦争でもある。ロシアが、キプロスというユーロ圏の国をマネーロンダリングまがいの行為に利用している。そこに制裁を加えようというドイツなどの意図が見え隠れする。
 同時に、キプロス問題を見たユーロ圏の他の国々は、肝を冷やしたと思う。キプロスという小国でもあれだけの取り付け騒動が起きるのだから、スペインやポルトガルといった国では「銀行預金への課徴金」という手段はもう使えない。EUの高官の中には当初「預金への課徴金は解決の定番となりうる」と豪語していた人もいたくらいだが(今は否定している)、キプロスでの混乱を見るとユーロ圏内で「禁じ手」を2度実行することは難しいと言える。
 アイスランドの金融危機から国家破綻に至ったプロセスを見ていると、ユーロでなかったことが幸いしている。アイスランド・クローナはリーマンショックの前は1ドル=60クローナであったが、2009年には125クローナとなり大暴落した。そのために輸出は振興し、観光客も大幅に増えたので経済は順調に回復している。
 しかし、キプロスは通貨ユーロを採用しているので、経済が破綻しても通貨を下落させて回復する、という伝統的は手法をとることができない。この面からもまた、通貨同盟を形成する時に考慮しておかなくてはならない大切な教訓を残したと言える。
Next:日本で金融資産が底をついた時、どんな混乱が起きるか
 ところで、この「銀行預金への課徴金」というのは、日本にとっても他人事ではない。日本が財政危機に陥れば、新紙幣の発行と同時に銀行預金に事実上の課税を行うことになるだろう。たとえば、旧紙幣で100万円を銀行に預けていた人が、新紙幣では80万円にされる。こうやって国民の資産から2割を巻き上げることで財政赤字を賄うのである。
 実は、1990年代の住専危機の後に当時の大蔵省がこれを試みようとしていた。この時は、国会議員やATMメーカーなどから情報が先に漏れてしまったので、計画は頓挫してしまった。ATMの設計技術者がおかしな仕様に気づき友人に口外してしまったり、官僚から相談を受けた議員などが地元で話をして噂が広まった。広島のある金庫メーカーに注文が殺到したのも同じ頃だから、タンス預金を意図していた人が意外な広がりを見せていたのだろう。
 今後、国債市場が動揺するようなことがあれば、財務省は必ずこの「禁じ手」を使ってくるだろう。公的債務が国内総生産(GDP)の2倍以上になった日本では、どんなに緊縮財政をとっても、見せかけの景気刺激策をとっても、消費税を2倍にしても、その債務を返済することは難しい。
 いまは国民の金融資産を国債に転換する装置(銀行や郵貯など)をフル稼働させているが、間もなくその財源が尽きる。その時に、日本ではどのような混乱が起きるのか。アイスランドやキプロスの問題から学ぶことは多い。

 
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130401/346032/?ST=business&P=5



16. 2013年4月02日 17:40:03 : xEBOc6ttRg
キプロス銀とキプロス・ポピュラー銀は15日まで取引停止=証取
2013年 04月 2日 17:14

トップニュース
基金と輪番合体してわかりやすい形で緩和示していく=日銀総裁
焦点:ドイツはユーロ圏導く役割を認識、他国からは不満噴出も
ドル92円後半、フロー主導で1カ月ぶりの円高水準
日経平均続落、一時300円超下落も次第に下げ渋る

[ニコシア 2日 ロイター] キプロス証券取引所は、キプロス銀行BOC.CYとキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行CPBC.CYの取引を15日まで停止すると発表した。

キプロス支援合意によると、キプロス・ポピュラー銀行の資産は優良・不良に分類され、優良資産はキプロス銀行に移管される。

またキプロス銀行の大口預金の37.5%は、株式に転換されることになっている。


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焦点:ドイツはユーロ圏導く役割を認識、他国からは不満噴出も
2013年 04月 2日 16:47 JST  
[ベルリン 1日 ロイター] 健全な財政に活発な輸出、低失業率に支えられているドイツは、欧州の中で言うことを聞かない他国をまとめる、唯一の大人として役割をだんだんと認識するようになってきている。

他国はその状況を楽しんではいない。キプロスやギリシャに加え、イタリアやスペインはおおっぴらに「ムッティ(ドイツ語でママ)」に対する憤りを表明。これはドイツの当局者がメルケル首相をひそかに呼ぶ時のあだ名でもある。フランスなどもあまりいい顔を見せてはいない。

ドイツの政治家や当局者のムードには、経済面での自信を裏付けに、ユーロ圏を強固に導く親としての責任感のようなものが漂う。それがたとえ欧州の中で不人気であってもだ。

ロンドンを拠点とするシンクタンク、欧州改革センター(CER)のチーフエコノミスト、サイモン・ティルフォード氏は最新の冊子の中で、ドイツが自国を通貨圏全体のモデルとして言及しながら、常にユーロ圏の他国にどう経済運営をすべきかの指示を与えていると指摘している。

ドイツ側の見解をまとめれば、ドイツはユーロ圏の存続に対する特有の責任があるとの考え方が浮かび上がってくる。

裏を返せば、問題国の支援に対するドイツの負担が大きく、ユーロ圏崩壊時に失うものが最も多いため、関係国が財政赤字を削減し、改革を実行し、ユーロ圏を沈ませるような過ちを犯さないということを確実なものとする必要があるという事情だ。

ドイツは、欧州委員会や欧州中央銀行(ECB)に対し、政治的な圧力に屈することなく道筋を堅持することができるとの信頼感をそれほど持っていない。

全てのユーロ圏支援策に国際通貨基金(IMF)を巻き込み、たとえメルケル首相に怒りの矛先が向いたとしてもあえて悪い警官を演じることにドイツがこだわっているのは、こうした事情があるからだ。

フランスのオランド大統領は先週、長引く緊縮財政策について警告を発し、「こだわれば、欧州をリセッションに追いやるだけでなく、暴発にもつながりかねない」と述べた。

<欧州の病人>

進まない労働改革、非効率な官僚制、競争力の低さといった10年前の状況をエコノミスト誌が表紙で「欧州の病人」と表現したことを、ドイツのリーダーらは訪問者に思い起こさせたいようだ。

シュレーダー前首相が推し進めた一連の社会保障・労働市場改革を、2003年に野党側だったベテラン議員の1人は、「われわれはかなり良好な成功事例を打ち立てた」と述べた。この改革「アジェンダ2010」で労働市場に奇跡を巻き起こしたとの認識は現在、与野党間で共有されている。

改革以外に存続の道はないとするメルケル首相の見方は、出身の旧東ドイツでの経験が影響しているとも言える。

ただし、首相の戦略は3つのリスクを伴う。まずは倹約家のドイツで機能した経済政策は、欧州では機能しないかもしれないということ、次に厳しい支援プログラムに耐えきれなかった国がデフォルトに陥る可能性、最後に、南欧では主流派の政党に反発し、反緊縮派に支持が集まる可能性だ。

スペインの輸出に回復の兆しが見え、ギリシャの生産性が改善しても、南欧の経済見通しは依然として暗いままで、失業率が上昇し続ける中で回復の兆しは遠のいている。

これまで支援を受けた国でデフォルトに陥った例はないが、ギリシャでは構造改革に遅れが生じており、2度目の支援が行われたものの債務は膨らんでいる。ドイツは、キプロスが支援の条件を飲まなければ、キプロスのデフォルトとユーロ離脱を容認する姿勢を明確にしていた。

ギリシャの昨年の総選挙での情勢に加え、イタリアで総選挙後に政局の行方が不透明となっている状況は、有権者の反動の表れだ。

これまでにないほどに手におえなくなっている欧州の他国と対峙(たいじ)し、ドイツは最終的に、一家を離散させるか、さらなる金融支援をいとわない姿勢を維持するかの厳しい選択を迫られる可能性がある。

(Paul Taylor記者;翻訳 青山敦子;編集 宮崎亜巳) 

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17. 2013年4月03日 00:49:39 : xEBOc6ttRg
キプロス危機が示すユーロの将来

2013年4月3日(水)  FINANCIAL TIMES

キプロス危機が浮き彫りにしたのは、ユーロ圏の首脳たちの視野の狭さだ。今回の危機が回避されても、ユーロが抱える根本問題は解決しない。各国首脳が自国の都合を優先し共通利益を追求できない以上、ユーロは終わるしかない。

 ギリシャ危機が沈静化してから今回のキプロス危機が勃発するまでの8カ月間、多くの人が筆者に意地悪な笑顔で、「(君の)あの予測はどうなったんだ」と尋ねてきた。どういうことか。

 筆者は2011年11月の当コラムで、ユーロ圏の首脳が10日以内に解決策を見いださない限り、ユーロは救えないと断言した*1。2011年の時ほど劇的ではないが、2006年にも似た予測をした。イタリアが今後もユーロ圏にとどまりたいのなら、ロマーノ・プロディ政権が最後のチャンスだ*2、と。

*1=当時、ギリシャ問題に加えイタリアの国債利回りが急騰するなどユーロ危機が深刻化。筆者は11月28日付で12月9日に開催される欧州連合首脳会議で抜本的対策が取られなければ、ユーロ崩壊の恐れがあり、「残された時間はせいぜい10日だ」と書いた。結局、同首脳会議では財政規律強化のための新条約を作ることで合意、財政統合を目指す方針を打ち出して、危機を抑えた
*2=1997年以降、イタリアの賃金は毎年3%上昇しており、2006年時点で単位労働コストがドイツより20%も高くなっていた。そのため筆者は競争力を回復する抜本的構造改革を進めなければイタリアがユーロ圏にとどまることが難しくなると警告した
 プロディ政権はよい改革もできず期待外れだったし、2011年の10日間もユーロ圏で何か行動が取られることはなかった。それでもユーロは今なお存在しているし、イタリアもユーロ圏にとどまっている。

銀行同盟があれば

 だが筆者は再び予測をしたい。今回の賭け金を倍にしようと思う。

 ドイツとキプロスのように全く異なる国が加盟している「ユーロ圏」なるものには持続性がない。欧州連合(EU)とキプロスが最後の土壇場で妥協案を見いだしたとしても、この予測は変わらない(編集部注:欧州中央銀行=ECB=はユーロ圏の支援策がまとまらなければ3月26日にキプロスの銀行への支援を打ち切るとしていたが、ユーロ圏17カ国は25日に、キプロスの金融支援策をぎりぎりでまとめた)。

 ユーロ圏に銀行同盟が存在して、各国の銀行を監督し、破綻処理を行い、預金保険を引き受ける役割も果たしていれば、この風変わりな通貨システムが逆風の中で機能する最低限の条件は整っていただろう。そうすればキプロスの銀行の問題も解決されたはずだ。

 だが、現在のユーロ圏にそうした銀行同盟は存在しない。5年後にも存在しないだろう。ドイツはこうした銀行同盟の提案を自国納税者の負担が大きくなりすぎるとの理由で、頭から否定している。


3月15日の欧州首脳会議以降、混迷を極め25日に決着したキプロス危機。だが、南欧諸国と北部欧州の溝は深い。写真はキプロスのアナスタシアディス大統領(左)と、ドイツのメルケル首相(写真2点:ロイター/アフロ)
ユーロ圏が繰り返す政治的過ち

 皮肉なことに、キプロスもこうした案を拒絶するに違いない。銀行同盟ができると、海外預金のオフショアセンターになるという同国のビジネスモデルが維持できなくなるからだ。

 いずれにせよ、遠い将来どのような銀行同盟ができても、それは今回の危機に対しては何の解決力も持たない。

 キプロスの危機によって、何か重大な結果が生じるというわけではない。ただ、今回の出来事は、ユーロ圏内の集団的行動が抱える問題を見事に浮き彫りにした。

 今回の件が大騒ぎになったきっかけは、本来、預金保険によって保護されているはずの預金者にも損失の負担を強いるという危険な合意だった(編集部注:ユーロ圏財務相らとキプロスのニコス・アナスタシアディス大統領が3月16日に合意した)。ユーロ圏の役人は、法律には詳しいが、経済の面では素人だ。彼らが考えついた“素晴らしいアイデア”とは、預金保険の対象である10万ユーロ(約1200万円)以下の預金にも課税するというもの。

 それによってヘアカット(元本減免)をするつもりではなかったが、彼らには、預金保険の暗黙の約束を反故にすれば、それは義務の不履行となり、銀行の取りつけ騒ぎを引き起こしかねないということが分かっていなかった。

共通利益を守ろうとしない首脳ら

 キプロス議会は3月19日、このとんでもない案を拒絶した。これは正しい。しかし、キプロス政府はその後、3つの大きな間違いを犯した。

 第1の間違いは、アナスタシアディス大統領がロシアに支援を求めたことだ。これはユーロ圏と協調するどころか、反旗を翻したに等しい。特にドイツはこれをあからさまな敵対行動と見なした。ロシアが支援を断ったことからしても、これはお粗末な判断だった。

 第2の間違いは、キプロスは極めて重要な時期に3日間、欧州の財務相会議にもユーロのワーキンググループにも連絡を取らなかったことだ*3。

*3=3月20〜21日、キプロスのマイケル・サリス財務相は支援を求めるべくモスクワを訪問し、ロシアのアントン・シルアノフ財務相と会談するなど、3日ほどEU関係者と連絡を取っていなかった
 第3の間違いは、キプロス政府が3月21日、年金基金をはじめ国の資産を流用して政府系ファンドを設立するという提案をしたことだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は翌22日、この案を即、論外だとして退けた。

 この一連の出来事は、欧州の政治的指導者たちが、いかに無責任に自国の利益のみを追求し、共通の利益を守ろうとしないかということをこれ以上ない形で示す格好となった。

 しかし筆者がここで強調しておきたい最大のリスクは、重大な不測の事態が生じるということではない。もちろん不測の事態は生じるかもしれない。だが、筆者が考える最大のリスクは、詰まるところ、ユーロ圏で繰り返される政治的過失に起因するものだ。その影響はすぐには表れないが、着実に積み上がっていく。

 中でも最も悪影響を招いた政策は、財政の引き締めによる調整の方向性がユーロ圏内で均衡を欠いていたことだ。キプロスの銀行が経営難に陥った原因は、ギリシャの政府と銀行が破綻し、ユーロ圏がそこに民間部門を巻き込んだことにある。

 イタリアでも、緊縮財政のせいで景気は後退局面から不況に悪化した。その結果、2月24〜25日行われたイタリア総選挙では、反ユーロ、反既成政党の抗議運動である「5つ星運動」が単独の党としては最も多くの議席を獲得した。今年、再選挙が実施されれば、ベッペ・グリッロ氏率いる同党が、絶対多数を獲得する可能性は十分にある。

 欧州北部の国々が財政を拡張して、最低でも南欧諸国の緊縮分を埋め合わせれば、ユーロ圏全体の財政はマクロ経済的にバランスの取れたものになる。しかし北部の国も財政の引き締めに走ったため、ユーロ圏は景気後退の中にありながら、基礎的財政収支が黒字という状況に至った。こうした場合、経済の調整は生じない。調整が生じなければ、危機も解決されない。

ユーロはいずれ終わりを迎える

 筆者はかねてドイツやフィンランドやオランダが、キプロスやギリシャやポルトガルと1つの同じ通貨同盟を形成するのは無理だと考えてきた。両者が意見を合わせ、政治的・経済的にもっと均衡の取れた調整をしない限り、この実験は終わりを迎えることになる。

 2011年11月に筆者が書いたことも、今繰り返し書いていることも、要するにユーロには、かなり先かもしれないが、いずれ恐らく終わりが訪れるということだ。各国政府がこれから正しい対応を取る可能性が全くないとは言わないが、これまで3年間の危機管理を見る限り、その可能性は低い。

 各国政府の現在の政策は、各国民の利益に反するものであり、継続していくには強制力が必要になる。ユーロ懐疑派でなくとも、こうした通貨同盟は、道義的にもひどく間違っていると結論づけざるを得ない。

Wolfgang Münchau


 

JBpress>海外>欧州 [欧州]
ドイツ人の怒り最高潮、なぜクロアチアも加盟するんだ
キプロスの次はスロベニアと、渦中のEUにさらなる火種
2013年04月03日(Wed) 川口マーン 惠美
 今年の7月から、またEUの加盟国が増えるらしい。28番目の加入国の名はクロアチア。旧ユーゴスラビアの一角だ。

 アドリア海を挟んで、イタリアと向かい合うように伸びる国で、海岸線が長く、それに沿って1246個の島が散らばっている。風光明媚で、物価が安いので、観光客が多く、GDPの5分の1を観光に依存している。

ドイツでヤミ労働に従事する、次のEU加盟国クロアチアの人々

 クロアチアのEU参加に向けての交渉は、2005年から始まっていた。目標は2013年6月。EUに加盟希望の国は、定められたEUのスタンダードを満たすことが必要で、半年ごとにその改革の進捗具合を報告し、EUの加盟国拡大委員会の審査を受ける。

 去年の11月の段階では、クロアチアはまだ問題が多いということで、早急な改善が求められていた。最大の懸念は、蔓延している汚職と、司法の混乱。司法制度は一応改革されたものの、依然として満足に機能せず、裁判の遅延が絶望的で、汚職もその他の犯罪も効果的に裁かれる見込みがないらしい。


欧州連合(EU)の旗に「ノー」と書きつけて抗議するキプロス市民〔AFPBB News〕

 ところが3月26日、2013年7月からのクロアチアのEU加盟が正式に発表された。ドイツ人の反応は、「なぜ、今?」というものだ。

 その前日まで、キプロス問題が嵐のように吹き荒れ、ようやく深夜の審議で、その救済問題に幕が引かれた矢先だった。しかも、幕が引かれたと言っても、別にめでたいわけではない。ドイツ人のEUに対する不信は、これまでで最高のところまで膨張している。

 なのに、よりによってその翌日にクロアチアの加盟。「キプロス問題で悪いニュースばかり聞かされていたEU市民に、良いニュースを届けたかった」という説明に腹を立てた人は多かったと思う。「クロアチアのEU加盟が、なぜ良いニュースなのだ!?」と。

 クロアチア人は、すでにドイツにたくさん入っている。私の知っている限りでも、周りにたくさんいる。ドイツとクロアチアの主要な都市の間には、網の目のように長距離バス網ができていて、定期バスが始終往復している。EU国境ではパスポート検査があるが、入国に何の問題もないそうだ。

 ドイツにいるクロアチア人の多くは、不法労働者だ。3カ月の観光ビザで入ってきては、ドイツでお金を稼ぎ、いったん国に帰り、また観光ビザで入るということを繰り返す。

 私の知っているクロアチア人は女性が多く、家政婦や掃除婦、あるいは介護婦として働いている。ドイツでは、お掃除は自分でしない人が多く、かといって、正式に掃除婦を雇うと、週1回でも高額な出費となる。もちろん、社会保障費を支払わなければいけないし、法定の休暇日数も保証しなければいけない。

 そこで一般に行われているのが、ヤミ労働である。家庭での掃除で動く金額は微小なので、ほぼ正式に黙認されていると言ってよい。

 最近は、寝たきり老人の世話を住み込みで頼む人も多い。家が広くて、介護婦に1室を与えることができれば、住み込んでもらってお給料を払っても、老人ホームより安く済む。

 そういう情報は口コミでどんどん広がり、「うちもそういう人が欲しい」となると、当の介護婦が親戚やら友人を紹介してくれる。ドイツで稼ぎたい人はたくさんいるのだ。

 中には、姉妹2人で1組になり、3カ月ごとに交代して、法の目を潜り抜けている人もいる。雇っている方にしても、穴が開かないので都合がよい。3カ月で出国していれば、内部告発や、お金を貰っている現場を現行犯で捕まらない限り、何の問題もない。

社会保障費が目的でブルガリアやルーマニアからやって来るロマが急増

 こういうヤミ労働に多く従事しているのが、旧ユーゴスラビア諸国、そして、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなど東欧の人々だ。東欧の方はすでにEUの加盟国なので、ドイツのどこに住もうが勝手だ。

 ところが最近、違う問題が持ち上がっている。ルーマニアとブルガリアから、おびただしい数のロマが入り込んでいるのだ。ルーマニアもブルガリアも2007年からEUの加盟国なので、ドイツへ入るのは問題がない。もちろん住む権利もある。

 ロマがドイツで何をしているかというと、ヤミ労働ではなく、ずばり正攻法でドイツの社会保障費を狙う。ロマというのは東欧に多くいるが、特に多いのがブルガリアとルーマニア。私は昨年12月にアルバニアに行ったが、ここにも多かった。

 ロマの共通点は、彼らが自国でまったくサポートされていないどころか、その存在さえ認められていないほど激しく差別されていることである。私事ながら、うちの三女は現在、アルバニアでそのロマの子供たちを救済するNGOのプロジェクトに参加して同地にいるので、その状況は少しは知っているつもりだ。

 ロマの子供は出生届さえ出されていないこともあり、そうなると、教育も受けられない。自分の国で不法滞在しているようなものだ。

 たとえ学校は出ても、そのあと誰も雇ってくれないので、多くは生きていくために、先祖代々の稼業である物乞いやゴミあさりをするしか方法がない。絶望的な状況だ。その彼らが、現在、長距離バスに乗って続々とドイツへやって来る。

 EU市民は、ドイツで事業を申請すれば滞在が許可され、子どもを連れていれば、すぐに児童手当がもらえる。事業申請には26ユーロと住所があればよく、ベルリンの外国人集中地域のノイケルンでは、去年の夏の段階で、1377のブルガリアの事業者、1034のルーマニアの事業者が登録されていたという。今はさらに増えているだろう。

 児童手当は2人目までが185ユーロ、3人目からはもっと額が上がる。児童手当は18歳までで、場合によっては25歳まで延長が可能。なお、登録した事業がうまくいかないと、今度は最低の生活を保障するための臨時の生活保護費が出る。

 アルバニアでは、ユーロに換算して月に200ユーロあれば普通に生活できると聞いたので、彼らにとってドイツの児童手当と生活保護費は、垂涎の的。どんどん流入者が増えるのは当然のことだ。


2011年4月、仏・伊首脳は、難民大量流入の問題でシェンゲン協定を修正すべしとの認識で一致し、欧州連合(EU)首脳部あてに書簡を送った〔AFPBB News〕

 EUにはシェンゲン協定というのがある。EU内での国境でのパスポート検査は廃止し、人間の自由な往来を保証するというものだ。イギリスだけはシェンゲン協定の加盟を拒否しているので、EU国の中で唯一入国検査があるが、他の国は出入り自由だ。

 ただし、ルーマニアとブルガリアは、2007年にEUに加盟したが、シェンゲン協定への参加は、7年間据え置きということになっていた。

 つまり、来年、その据え置きの7年が終わり、ブルガリアとルーマニアの人々が、何の検査もなくEUに入れるようになるはずなのだが、3週間前、EUの内務大臣の会議で、ドイツの内相が拒否権を発動して、待ったをかけた。

 ドイツとしては、すでに社会保障システムに無視できないほどの損害が出始めており、これ以上の社会保障濫用ツアーは看過できないのである。

EU内の自由な往来は、ドイツのお金を狙うためにある?

 ドイツ内相は、ブルガリアやルーマニア政府をサポートして、ロマが祖国で生活できるようにすべきだと提案し、私もそれがベストだと思うのだが、EUにはヨーロッパ単一を願う原理主義者のような政治家も多く、ドイツ内相はあたかもEU分離派のようにひどく批判されてしまった。

 ただ、ドイツ国民は内相を支持している。「貧しい人はどんどんドイツへやって来て、私たちの税金を使ってください」などとは決して思っていない。

 現在、シュトゥットガルトでも、ロマの物乞いが急激に増えている。聞くところによると、物乞い集団はマフィアなど犯罪組織によって組織化されており、夜になると、元締めが上がりを集めるのだそうだ。

 そういえば、物乞いをしている人たちに、目にはっきり見える身体障害者が多い。足がなかったり、手がなかったり。去年の夏からは、突然、車いすに乗って物乞いをしている若いロマが増えた。車椅子で走り回っていた人たちは、その後、半年ほどで、忽然と消えた。

 驚いたのは、先々週、ノルウェーに行ったとき、そこにもロマの物乞いがたくさんいたことだ。現地の人に聞いてみたら、つい最近からの新しい現象だという。

 ノルウェーはEUには加盟していないが、シェンゲン協定に加盟している。だから、デンマークやスウェーデンなどから検閲なく人が入ってくるので、ロマも混じって入ってくるのだろう。とはいえ、こんな寒いところで物乞いとは、何と頑丈な人々かと思う。

 正確に言うなら、クロアチアのEU加盟と、EUの貧しい国々からの不法労働者の問題と、さらに、ロマの社会保障制度の濫用は、3つの異なった問題で、それぞれ別途に対処しなければいけないのかもしれない。しかし、実際には、根っこのところは繋がっているようにも思えてならない。

 ドイツの内相が、「EU内での自由な往来というのは、ドイツの生活保護を受ける方が自国で暮らすよりもよい生活ができると思った人々が、いつの日か、ヨーロッパのあらゆるところから、自由にドイツへ来られる自由を意味するのか?」とブリュッセルで言ったのは、ドイツ人の持つ疑問を的確に表している。

 クロアチアの加盟が発表された翌日27日、今度は、スロベニアの財政が破産の危機に陥っているというニュースが流れた。

 スロベニアは、2004年に旧ユーゴスラビアから初めてEUに加盟した国だ(クロアチアは旧ユーゴで2番目となる)。ユーロ導入は2007年。破産を回避するため、EUの援助を申請するらしい。

 これらの国を審査して加盟を認めたのはEU自身なのだから、自業自得とはいえ、いったいどんな審査だったのかと思う。ユーロ圏内の経済格差はとにかく半端ではない。

 ちなみに、アルバニアも2009年にEU加盟を申請した。その翌年、加盟の条件と国情があまりにもかけ離れているということで、申請は却下されたものの、まだ諦めずに一路邁進中だそうだ。

 EUの前途は多難である。

荒廃するエジプト経済
2013年04月03日(Wed) The Economist

エジプト経済は破滅に近づいている(写真は今年1月、エジプトの首都カイロで起きた反大統領派のデモ隊と警察隊側についた市民らとの衝突現場)〔AFPBB News〕

 カイロのバザーで騙されたことに腹を立てた古風なアラブの旅行者は、卑劣なエジプト人はまるで「最後の審判の日がないかのように」振る舞っていると切り捨てた。

 2年前に革命がエジプトを混乱に陥れてから寛大な支援策をエジプトに提供しようとしてきた国際通貨基金(IMF)も、同様の懸念を抱いているかもしれない。

 エジプトの経済は国の政治とともに、かつてないほど破滅に近づいてきたが、歴代政権は迫り来る危険を平気で無視してきた。

 ムスリム同胞団が支配する現政権も例外ではない。ムハンマド・モルシ大統領は、就任から9カ月経っても、IMFを納得させるだけの妥当な経済計画を立てていない。

外貨準備が激減

 IMFが提案した48億ドルのスタンドバイ協定とIMFのお墨付きがあれば、大部分が寛大な条件で提供される最大150億ドルの多国間援助への扉が開かれ、全体の借り入れコストが大幅に削減される可能性がある。

 モルシ政権はこの3月、エジプトが緊急融資用にIMFに預けている政府の資金に手を付けられるという提案も拒んだ。

 年内に予定されている総選挙の前に緊縮策を課すことを恐れて、モルシ政権は代わりに、国内銀行から高金利で借り入れを行い、友好国(ほとんどが湾岸諸国)に現金と燃料を懇願し、「イスラム」債の発行を認めるための法案を強引に通過させることに忙殺されてきた。

 そうした措置でも転落に歯止めはかからなかった。2011年1月の革命前には360億ドル前後あったエジプト政府の外貨準備高は約130億ドルまで急減しており、3カ月分の輸入を賄うのがやっとだ。

 だが、理論上は130億ドルという金額でさえ、大部分は手を付けられない。こうした外貨準備は、カタール(40億ドル)やサウジアラビアとトルコ(10億ドルずつ)のような友好国がエジプトの中央銀行に最近預けた資金で構成されているからだ。


 湾岸の豊かな君主国は今、これ以上資金を出す気はないと話しているため、モルシ政権は中央銀行の金庫をいっぱいにするために、イラク、そして伝えられるところではリビアにも頼っている。

 こうした国が渋々資金を出したとしても、数字を良くするだけで、実態が良くなるわけではない。

 また、エジプトの通貨の価値が12月から10%下落していることから、中央銀行は一段と厳しい為替管理を課しており、こうした措置が貿易と外国投資の流れをせき止め始めている。

 例えば、一部の輸入薬剤は薬局から姿を消しており、証券会社は今、外国人顧客に本国に資金を引き揚げるのが大変になると警告している。

 いずれにしろ、新たに国内に入ってくる資金はほとんどない。同胞団の営業担当者が投資を熱心に訴えているにもかかわらず、エジプト当局はなお、外国資本に敵意を見せている。一連の裁判所の判断は、10年以上前に行われた民営化を覆し、税務署員は過去に遡って多額の徴税を行うようになった。

 通貨の下落で、エジプトのインフレは12月の年率5%足らずから2月には8%に上昇している。増え続けるエジプトの失業者にとっては特に厳しい状況だ。ある労働団体は、革命以後少なくとも4500の工場が閉鎖したと報告しており、これが公式の失業率が9%から13%上昇した理由を説明している。

病的な水準に近づく財政赤字

 だが、犯罪が急増している証拠や、現在エジプトの都市に殺到している大量の無許可の露天市を見ると、公式統計よりはるかに高い非公式の試算の方が信憑性がある。好況期にはエジプトの国内総生産(GDP)に対する寄与度が12%に上った観光業に従事する多数の労働者も仕事にあぶれている。

 多くの観光客を引き付けるビーチリゾートは、値下げして営業を維持しているが、ピラミッドや王家の谷、ナイル川の観光船といった古くからの観光スポットは不気味なほど人けがない。

 一方、政府の財政赤字は、6月の年度末までにGDP比12%と、従来目標である9.5%を超え、病的な水準に近づくのは間違いなさそうだ。約200億ドルという1つの請求書が赤字の大部分を占めている。補助金である。

 歴代のエジプト政府は10年以上にわたり、市民の騒乱を恐れて、1斤の値段が米国の1セントにも満たないパンや1リットル20セント以下のガソリン(欧州のガソリンスタンドの価格のほぼ10分の1)、実際のコストの7%に過ぎない調理用ガスといった品々を、有り難いとも思わない消費者に提供する制度の改革に取り組むことから尻込みしてきた。

 ディーゼル燃料だけでも、補助金総額の半分近くを占める。ディーゼル燃料は、エジプトの民間輸送手段だけでなく、何百万人という貧しい農民が使っている灌漑ポンプにも動力を提供している。

 だが政府は、エジプトのディーゼルの多くを国際価格で輸入しなければならなくなっている。部分的には、国の石油独占企業が返済を迫られている債務を完済するためにより多くの原油を輸出しなければならなくなっているからだ。

 さらに、密輸や買いだめ、さらには十分な量を輸入できない政府の無能さによって拡大するディーゼル燃料の不足は、1マイルもありそうな長い列を作り出しており、殴り合いの喧嘩や発砲事件が絶えない。闇商人は今、公定価格の2倍の値段を請求する。

頭を働かせろ


補助金が出るパンはまだふんだんにある〔AFPBB News〕

 補助金付きのパンはまだ十分にある。これはいいことだ。何しろ、スイスの銀行クレディスイスは平均的な家庭は所得の半分近くを食料に使っていると試算している。

 公式の貧困ラインを下回るエジプト人の割合は2009年の21%から昨年は25%に上昇しており、エジプト人は子供たちを食べさせるために危険なほどパンに頼るようになっている、と栄養学者たちは警鐘を鳴らしている。

 国内の小麦収穫高は消費量の半分を占めるのがやっとで、エジプトが世界最大の小麦輸入国である理由もここにある。

 政府の備蓄が異常に低い水準まで減少しているにもかかわらず、国の商品供給公社は輸入を減らしており、エジプトの春作の収穫高に関して、一部の専門家が非現実的なほど楽観的だと言う見通しを公表している。

 「我々は初夏までに需給が逼迫すると見ている」とある民間トレーダーは言う。


モルシ政権もただ手をこまねいてきたわけではないが、対応は不十分〔AFPBB News〕

 公正を期すために言うと、モルシ政権は差し迫った危機のことを完全に忘れたわけではない。

 いくつかの関税や小規模な税を引き上げたり、恐らく早ければ6月にも補助金が出る一部物資を制限する計画について議論したりしている。

 だが、モルシ政権に本当に欠けているのは、代表団がカイロを訪問した後、IMFが声明で丁寧に表現した要請――モルシ大統領に広範囲にわたる経済改革に対する「幅広い支持」を確立するよう求めた内容――に応えることだ。

 モルシ政権は、改革のための一貫した計画を提案したり、国民にその覚悟をさせたりしていないばかりか、モルシ大統領と同胞団は、30年間政権の座に就いた後で2011年に倒された独裁者ホスニ・ムバラク氏が使ったのとほとんど同じ方法で批判者を力ずくで排除しようとしてきた。

迫り来る審判の日

 だが、エジプト人はそう簡単には脅されなくなっており、結果的に暴力の高まりを伴う政治の麻痺を招く事態になっている。

 モルシ大統領は自らの権力の限界に不満を募らせる様子を見せており、野党は、大統領が自分たちを阻止するためにさらに強硬な戦術を試みるのではないかと思っている。多くのエジプト人は今、本当に審判の日が近づいているのではないかと心配している。
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/a/8/250/img_a8294c20661efd8c3f2669a80b63d99919340.png


18. 2013年4月03日 01:42:40 : e9xeV93vFQ


  キプロス財務相が辞任、資本規制は一部緩和
2013年 04月 2日 23:14 JST
[ニコシア 2日 ロイター] キプロスのサリス財務相が2日、辞任した。100億ユーロの支援条件をめぐる国際債権者との協議終了後に辞表を提出した。

政府はサリス氏の辞表を受理し、後任にジョージアデス労働相兼財務次官を指名した。

サリス氏は、主要目的であった国際債権者との支援合意を達成したほか、自身が銀行システム破綻の原因を追究する調査の対象となっていることから、辞任は妥当と説明。「(調査の)作業を促すために、大統領に辞意を伝えることが適切と判断した」と語った。

アナスタシアディス大統領は同日、元最高裁判事3人を起用し、危機の原因を追求する調査を開始する方針を発表した。

サリス氏は辞任前、キプロスが3月末に導入した資本規制の解除時期については特定できないと語った。

これに先立ち、財務省は同日、資本規制を一部緩和。実施期間2日で、中銀の承認を必要としない取引の上限を5000ユーロから2万5000ユーロに引き上げたほか、小切手の利用を月額9000ユーロまで可能とする方針を発表した。

ただ、1日の預金引き出し限度額300ユーロや海外への持ち出し限度額1000ユーロなど、その他の規制措置は据え置かれた。政府当局者は、国内銀行の営業再開に伴い3月28日に導入された資本規制が完全に解除されるまでには最長1カ月を要する可能性があるとしている。

キプロス政府はこの日、欧州連合(EU)・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)の3機関(トロイカ)との支援条件をめぐる協議を完了した。

初回支援は5月に実施される見通し。

支援の金利は2.5%。返済は10年以内に開始し、融資の返済期間は12年。

支援条件に基づき、キプロスは2018年までに財政再建策を実施する運びとなる。

また、政府当局は、支援合意で決定したキプロス銀行BOC.CYの大口預金に対する40%の事実上の凍結について、10%を解除することを決定した。


 


大量の預金引き出し起こっていない=スロベニア中銀総裁
2013年 04月 2日 23:41 
[リュブリャナ 2日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのクラニェツ・スロベニア中銀総裁は2日、大口預金者に負担を求めるキプロス救済策を受けた著しい預金引き出しの動きは出ていないと述べた。

同総裁は会見で「われわれは、日々(預金)フローを監視しているが、大きな動きは検知していない」と説明。「キプロス問題めぐる動きは、わが国の預金者の信頼に影響を与えていない」と述べた。

スロベニアの銀行セクターは、国内総生産(GDP)の20%に相当する約70億ユーロ(89億9000万ドル)の不良債権を抱えており、市場ではユーロ圏内でキプロスに続きスロベニアが金融支援の要請を迫られるとの観測が高まっている。

クラニェツ総裁は、前月20日に誕生した中道左派の新政権に対して、財政および経済の安定化に注力しているとの「明確なシグナル」を送るよう要請した。

スロベニア中銀は同日、経済見通しを発表し、今年のGDPを1.9%減、2014年を0.5%増とした。

だが総裁は、2014年のプラス成長回帰は、外的環境やとりわけ国内政策に大きく左右されるとして「懸念している」と述べた。

銀行セクターについては、これまでECBからの緊急流動性支援は必要としていないとし、期間3年流動性供給オペ(LTRO)が支援を提供しているとの認識を示した。

スロベニア10年物国債利回りはこの日、前週末の6.06%に対し、6.09%をつけた。

*内容を追加して再送します。
 
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スロベニアは再建策提示を、キプロスの二の舞回避ー中銀総裁

  4月2日(ブルームバーグ):スロベニア銀行(中央銀行)のクラニェツ総裁は、国際支援の要請を回避するために、同国政府は経済再建と銀行安定化に向けた計画の詳細を示すべきだとの見解を示した。
欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーでもあるクラニェツ総裁は2日、同国の首都リュブリャナで記者団に対し、ブラトゥシェク首相率いる内閣は問題解決に関して「真剣であることを示す」必要があるとし、2014年の見通しについてまだ「不安だ」と付け加えた。ブラトゥシェク首相は2週間前に就任したばかり。
総裁は「政府にはスロベニアの金融および経済的苦境を安定化させる重大な責任がある」と指摘。「スロベニアに関する不透明感は政府の次の行動にかかっている。政府が経済プログラムの詳細を示すことを期待する」と話した。
原題:Slovenia Needs to Say How It’ll Avoid Cyprus Fate, KranjecSays(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Agnes Lovasz alovasz@bloomberg.net;リュブリャナ Boris Cerni bcerni@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Balazs Penz bpenz@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/02 23:38 JST


 


イタリア、組閣への試み終わり新たな段階=中道左派連合のベルサニ氏
2013年 04月 3日 00:36 JST
[ローマ 2日 ロイター] イタリア中道左派連合を率いる民主党のベルサニ党首は2日、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派の自由国民との大連立を重ねて拒否、総選挙後の組閣に向けた自身の試みは終わり、新たな段階が始まったとした。

中道右派が次期大統領の起用を要求していることについても、受け入れられないとの認識を示した。

国内問題は再選挙で解決できないとの考えも述べた。

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イタリア大統領、政局の行き詰まり打開できず 2013年3月30日
イタリア連立協議は物別れ、大統領が29日に各政党と協議再開 2013年3月29日
イタリア、上下院の議長選出が新政権樹立のカギ握る可能性 2013年3月16日.

 

スペイン、財政赤字目標引き上げ目指す−欧州委は交渉を否定

  4月2日(ブルームバーグ):スペインは2013年の財政赤字の目標を対国内総生産(GDP)比で約6%と、従来の4.5%から引き上げることを目指し、欧州連合(EU)の欧州委員会と交渉している。リセッション (景気後退)が続く中、スペインは中期予算計画の修正を準備している。
スペイン政府の方針だとして匿名を条件に語った経済省の報道官は、政府が対GDP比およそ6%の財政赤字を目指していると説明した。また、スペインが今年の成長率目標をマイナス1%と、従来のマイナス0.5%から下方修正する可能性があるとの一部報道についてはコメントを控えた。
一方で欧州委のベイリー報道官はブリュッセルで記者団に対し、EUはスペインと協議していないとした上で、スペインの財政状態に関する評価をまとめる必要があると語った。
原題:Spanish Government Seeks Higher 2013 Deficit Goal AmidRecession(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:マドリード Angeline Benoit abenoit4@bloomberg.net;ブリュッセル Jones Hayden jhayden1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/02 23:33 JST

 

3月のドイツ消費者物価は前年比1.8%上昇、予想上回る

  4月2日(ブルームバーグ):ドイツの3月のインフレ率は前月と同水準にとどまった。予想は前月比での低下だった。
独連邦統計庁が2日発表した3月の消費者物価指数 (CPI)速報値は、欧州連合(EU)基準で前年同月比1.8%上昇と、1月と変わらず。2年ぶりの低水準を維持した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト23人の予想中央値では1.7%上昇が見込まれていた。3月の指数は前月比で0.4%上昇した。
ユーロ圏はリセッション(景気後退)から抜け出せずにいる一方、ドイツ経済は今年1−3月(第1四半期)にプラス成長に回帰したと独連邦銀行(中央銀行)はみている。賃金上昇がドイツの個人消費とインフレ率を押し上げる可能性がある。同国では昨年、最大6.5%の賃上げを労組が勝ち取っており、ドイツ金属産業労組(IGメタル)は今年5.5%の賃金上昇を求めている。
バーデン・ビュルテンベルク州立銀行(シュツットガルト)のエコノミスト、イエンスオリバー・ニックラッシュ氏は「インフレは現時点で懸念材料ではないし、近いうちに状況が変わると示唆する要素もない」と指摘した上で、「長期的には労組による賃上げ要求がドイツの物価上昇圧力となる可能性はある」と述べた。
別のエコノミスト調査によれば、3日発表されるユーロ圏の3月のインフレ率は1.6%と、2月の1.8%から鈍化したとみられる。
欧州中央銀行(ECB)の最新予想では2014年のユーロ圏インフレ率は1.3%の見込み。ECBは2%弱を政策の目安としている。
原題:German Inflation Rate Unexpectedly Held Steady at 1.8% inMarch(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:フランクフルト Stefan Riecher sriecher@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/02 23:50 JST

 


2月米製造業受注額:3%増、自動車けん引−資本財下方修正 

  4月2日(ブルームバーグ):2月の米製造業受注額は前月比で増加した。自動車や民間航空機の需要が増えた。
米商務省が2日発表した2月の製造業受注額 は前月比3%増加と、5カ月ぶりの大幅な伸びとなった。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は2.9%増だった。前月は1%減少(速報値は2%減)に修正された。
2月は耐久財受注額が5.6%増となり、全体をけん引した。先月26日発表された耐久財受注統計(速報値)の5.7%増からはほぼ変わらず。非耐久財受注額は0.8%増加した。
自動車・部品の受注は1.4%増えた。前月は1.3%のマイナスだった。民間航空機の需要は95%増。前月は24%減少していた。輸送用機器を除く2月の受注額は0.3%増加と前月の2%増から大幅に減速した。
設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注は3.2%減少と、先週の耐久財受注統計で示された2.7%減から下方修正された。前月は6.7%増だった。
国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア資本財の出荷は1.9%増。先週発表の速報値から変わらず。前月は0.7%減だった。
全体の出荷は0.9%増加し、在庫は0.2%増に減速した。この結果、在庫・出荷比率は1.27カ月と、前月の1.28カ月から低下した。
原題:Orders to U.S. Factories Climb on Demand for Autos, Planes(1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/03 01:06 JST


19. 2013年4月03日 09:22:00 : e9xeV93vFQ
2013年4月2日 橘玲
[橘玲の世界投資見聞録]
地中海の小国・キプロスの経済危機を
収束させた預金者負担の後味

?キプロスは地中海の東端、「小アジア」とも呼ばれるアナトリア半島の南に位置する風光明媚な島国だ。といっても、今回の経済危機が起きるまで、紀元前に遡る長い歴史のあるこの国に関心を持つ日本人はほとんどいなかっただろう。


地中海に落ちる夕陽?(Photo:cAlt Invest Com)
?エジプトとメソポタミアを結ぶ海の要衝であるキプロスは、ヒッタイトやアッシリアといった古代オリエント諸国、エジプト王朝、アケメネス朝ペルシアの支配を受けた後、アレサンダー大王に征服され、やがてローマの属州となった。

?ローマ帝国の分裂にともないキプロスは東ローマ帝国の所領となるが、1191年、十字軍遠征途上にこの島に立ち寄ったイングランド王リチャード1世がキプロス王国を建国する。当時はイタリアの海洋都市の勃興期で、キプロス王国は十字軍遠征(エルサレム奪還)の最前線であると同時に、レバント(東地中海)貿易の一大拠点となった。その経済はイタリア諸都市に依存し、15世紀末、相続争いの混乱のなかでヴェネチア貴族の娘だった女王が主権を祖国(ヴェネチア共和国)に譲り王国は消滅した。


十字軍遠征の拠点だったコロッシ城からキプロスの町を眺める?(Photo:cAlt Invest Com)
?16世紀、新興のオスマントルコが小アジアを席巻しヨーロッパに攻め上ると、キプロスはその軍門に下る。その後、第一次世界大戦でイギリスに併合され、第二次世界大戦後にようやく独立を達成した。

?だが3000年に及ぶ数奇な歴史を持つこの島では、独立後もギリシア系住民とトルコ系住民が対立し混乱が続いた。

?1974年、ギリシアとの合併を求める勢力がクーデターを起こしたことをきっかけにトルコ軍が介入して島の北部を占領、それまで混住していた住民は、ギリシア系は南のキプロス共和国、トルコ系は北のキプロス連邦トルコ人共和国(北キプロス)に分かれることになった。もっとも北キプロスは国際社会の承認を受けていないため、一般にキプロスというと南のキプロス共和国を指す。

?南北分断後のキプロス島は実質的な戦時下で、国連によるたび重なる仲介でも両者の隔たりは大きく、1990年代に至っても砲撃や銃撃戦が勃発した。だが97年にキプロス共和国がEU加盟候補になると状況は大きく変わりはじめる。

生き延びるための戦略が金融業だった


古代ギリシア時代のクリオン遺跡。紀元前14〜13世紀?(Photo:cAlt Invest Com)
?キプロスはもともと漁業と農業しか産業のない島で、そのうえ北キプロス(トルコ)と戦争状態にあったから、ひとびとの暮らしは貧しかった。だが冷戦が終わり、ソ連が崩壊する頃には治安もかなり改善し、欧米諸国から観光客がやってくるようになった。キプロスは温暖な気候に恵まれ、古代ギリシアや古代ローマの素晴らしい遺跡がたくさん残されている。

?観光とともに、キプロスが生き延びるために選んだもうひとつの戦略が金融業だ。

?キプロス住民のほとんどはギリシア系だが、イギリス統治下にあった歴史から英語がごくふつうに通じる。金融機関の公用語は英語だから、これはキプロスがタックスヘイヴンになるにあたって大きなアドバンテージとなった。


クリオン遺跡にあるアポロンの神殿跡?(Photo:cAlt Invest Com)
?キプロスがオフショア金融センターとして存在感を見せはじめたのは、ロシアからの富の受け皿になったからだ。

?東ローマ帝国はギリシア人の国であり、そこではカトリックに対抗する正教(オーソドックス)が信仰されていた。だが1453年、首都コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)がオスマントルコの手によって陥落し東ローマ帝国は滅亡してしまう。

?こうして正教会は旧東ローマ帝国の各地に分裂し、ロシア皇帝(ツァーリ)が正教の正統な後継者を名乗るようになる(ロシア正教)。こうした歴史的経緯からロシアとギリシアには宗教的・文化的なつながりがあり、ロシア人の南(地中海)への憧れもあって、キプロスはロシアの富裕層にとって代表的な避寒地となった(私がキプロスを訪れたのは2年前の冬だが、ホテルの客の大半はロシア人の家族連れだった)。

?自由化後のロシアでは、オリガルヒと呼ばれる新興財閥が台頭したが、プーチン政権を批判して逮捕・収監された大富豪ミハイル・ホドルコフスキーや、亡命先のロンドンで零落し自殺したボリス・ベレゾフスキーを見るまでもなく、彼らの政治的立場はきわめて不安定だ。そのため、財を成したロシアの富豪は、その富を守るために海外で蓄財しようとする。その格好の機会を、キプロスの金融機関が提供したのだ。

?こうして90年代以降、キプロス経済は観光と金融を両輪に急速に成長していくことになる。キプロスの1人あたりGDPはいまでは3万ドルに達し、欧米の先進国と肩を並べるまでになった。

次のページ>> ギリシア国債を大量に保有

キプロスの中心都市レメソス(リマソール)。クリスマスのシーズンで、ラウンドアバウト(円形交差点)の中心にサンタクロースのデコレーション。付近には金融機関やブランドショップが集まっている?(Photo:cAlt Invest Com)
ロシアからの資金とギリシア国債

?キプロスにロシアの資金が流入するようになった背景は、さほど複雑なものではない。

?後発のタックスヘイヴンであるキプロスには、そもそもヨーロッパの富裕層を顧客に獲得することができなかった。いつ戦争が始まるかわからないような国に大金を預けようとするひとはそれほど多くない。

?一方、ロシアの企業や富裕層はコンプライアンスに問題があり、欧米の金融機関は資金を受け入れたがらない。すべてがロシアマフィアの裏金ということはないだろうが、正規の業者でも、電信送金では記録が残るため、ロシア国内で闇両替したドルの現金を大量に持ち込もうとするのだ。

?キプロスの金融機関は、ロシア人の顧客に対してはコンプライアンスのハードルを大幅に下げて、あやしい資金でも喜んで受け入れた。さらには、通常より高い金利を提示して顧客を引きつけようとした。その結果、GDPの7倍にもなる巨額の預金を保有するようになったのだ。

?キプロスの金融機関の預金金利が高い理由もきわめてわかりやすい。彼らは、集めた預金でギリシア国債をせっせと買っていたのだ。

?キプロス共和国自体は、信用力がないため国債を発行することができない。キプロスのひとたちは自分がギリシア人だと思っているのだから、日本の銀行が日本国債を買うように、「安全」で高金利なギリシア国債を購入するのは当然だったのだ(おまけにキプロスにはギリシア系金融機関のオフショア子会社もたくさんある)。


キプロスの首都レフコシア(ニコシア)。9000年の歴史を持つ城塞都市。北キプロスとの境界線上に建つ?(Photo:cAlt Invest Com)
?ところがそのギリシアが財政破綻してしまい、EU主導でギリシア国債を保有する金融機関などが最大で50%の債権放棄をさせられることになった。キプロス共和国の財政は健全だったとしても、この措置によって国内金融機関が大幅な債務超過に陥り、かといってGDPをはるかに上回る損失を公的資金で救済することもできず、ロシアなどに資金援助を求めたものの万策尽きて2012年6月、EUに金融支援を求めることになった。

?ユーロ危機の解決が難しいのは、財政の悪化に苦しむ南のヨーロッパに対し、ドイツなど北のヨーロッパが支援を行なう正当な理由を有権者に説明できないからだ。

?キプロスの経済規模はユーロ圏全体の2%程度に過ぎないが、ギリシアなど他の国々に波及する可能性を考えれば、救済せずにユーロから脱退させる政治的リスクは大きい。だがそうはいっても、100億ユーロもの資金を無償でこの島国に投じるようなことをすれば、最大の出資者であるドイツのメルケル政権は今年9月の総選挙を乗り切れない。このようにして、銀行預金のカットという奇策が登場した。

?もっとも、預金者はお金を銀行に貸しているだから銀行の債権者でもある。株式会社が破綻した場合は、まずは株主が出資金の範囲で有限の責任をとる。それでも債務が残るのなら社債などを購入した大口の債権者が債権を放棄し、それでも足りなければあとは小口の債権者(すなわち預金者)が損失を被るしかない。本来であれば半分以下になってしまう預金がEUの金融支援によって9割も戻ってくるのだから、預金者にとっても悪い話ではないと考えたのだろう。

?だがいかんせん、キプロス政府にはこうした事情を国民に説明し納得させる時間も能力もなかった。そのため預金封鎖を強行し、強制的にすべての預金に課税しようとして大混乱を引き起こしたのだ。

次のページ>> ペイオフによる資産没収

預金額10万ユーロ超をペイオフ

?地中海の小さな島国をめぐる春の椿事は、結局、ヨーロッパ諸国で一般に預金保険が適用される10万ユーロまでの少額預金を全額保護し、10万ユーロ超の大口預金をペイオフ(保護対象外)とすることで決着した。これによってキプロス政府は有権者の同意を得やすくなるが、その代わり大口預金者の負担は大きくなり、最大手のキプロス銀行で預金の最大損失は60%、破綻処理が決まっているライキ銀行に至っては損失割合が80%にのぼるとの試算も出ている。これでは資産没収とほとんど変わらない。

?このような極端な措置がキプロス議会を通過したのは、大口預金者の大半がロシア人(個人と法人)で、その多くがグレイなものだから表立って抗議できない、という事情があるからだろう。


キプロス最大の金融機関バンク・オブ・キプロス。今回の金融危機では存続銀行になった?(Photo:cAlt Invest Com)
?キプロスがEUに金融支援を求めてから今回の混乱まで8カ月以上たっている。本来ならその間に安全なところに資金を移してしまえばいいのだが、ロシアに戻すことも、スイスなど信用力の高い金融機関に送金することもせず、キプロス国内に留まったままだったということが、こうした大口資金の性質を示している。キプロスのような透明性の低いタックスヘイヴンの存在を不快に思っていたEUの高級官僚にとっては、預金者に負担を求めるのは犯罪収益の没収のようなものだったにちがいない。

?キプロスの抱える特殊な事情を考えれば、今回の騒動がギリシアやスペイン、イタリアへと波及していくことはないだろう。だが欧州(とりわけ南のヨーロッパ)の預金者が、この事態をどのようにとらえているかは別の話だ。

?近代国家は立法・司法・行政の三権と、警察や軍隊などの暴力を独占している。キプロス問題は、国家が預金封鎖のような極端な措置を実行できることと、国家破産の危機に瀕すれば国民の資産が優先的に保護されるわけではないことをすべてのひとに知らしめた。

?次に財政危機に陥る国が現われたとき、今回の「教訓」に学んだ預金者が大規模な取り付け騒ぎを起こさない保証はない。そしてそのような国は、近い将来、必ず現われる。

?これはもちろん、ヨーロッパだけの話ではない。


20. 2013年4月03日 09:35:22 : e9xeV93vFQ
キプロス、17年以降GDP比4%の基礎的財政黒字達成の必要=覚書
2013年 04月 3日 07:24 JST

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[ブリュッセル 2日 ロイター] キプロス政府と国際支援団が合意した総額100億ユーロの支援内容の覚書(MOU)によると、キプロスは2017年以降、プライマリーバランス(基礎的財政収支)で対国内総生産(GDP)比4%の黒字を達成する必要がある。

ロイターが2日、覚書を入手した。

それによると、2013年の国債関連費用を除いた基礎的財政赤字は3億9500万ユーロ、対GDP比率にして2.4%となる見通し。2012年の同比率は1.9%だった。

2014年の基礎的財政赤字は6億7800万ユーロに増加。対GDP比では4.25%となる。その後は減少に転じ、2015年は3億4400万ユーロ、率にして2.1%となる見通し。

2016年に基礎的財政収支は黒字化する見通しで、黒字額は2億0400万ユーロ、GDP比1.2%と見込む。2017年以降は4%とする。

覚書の財政赤字削減目標は、キプロスGDPを2013年が前年比およそ8%減、2014年が約3%減、2015─16年は約1%のプラス成長回復と見込んでいることを示唆している。

このほか、行政・年金・労働市場など一連の改革や民営化を含む財政再建措置も盛り込まれており、キプロス政府は、通信・電力・港湾関連企業の持ち株売却などを通じ14億ユーロ以上を調達する。

観光業が歳入を大きく押し上げる見込みがあるとして、同セクターの競争力強化に向け、政府は調査を実施する。

キプロスは天然ガスや沖合いの海底鉱床の売却を通じて、多くの資金を確保することを望んでおり、覚書では、資源開発に必要なインフラ計画および関連法の整備、売却資金を管理する基金設立に関する計画を第2・四半期に策定するとされている。

公務員賃金の伸び凍結や年金受給資格年齢の2歳引き上げ、アルコールやたばこ、ガソリンの物品税、付加価値税(VAT)、法人税、金利・配当収入への課税を引き上げる。

一連の財政再建措置の実施を通じて、キプロスの公的債務は2020年にGDP比で約100%に縮小すると見込まれている。
 


キプロス株:下落、ヘレニック銀急落−2週間ぶりに取引再開
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  4月2日(ブルームバーグ):約2週間ぶりに取引が再開された2日のキプロス株式市場では、指標のキプロス総合指数 がこの3週間で最大の下げとなった。100億ユーロ(約1兆2000億円)規模の同国救済をめぐる混乱の中で取引停止が続いていた。
キプロス総合指数は2.6%安の99.46で終了。ヘレニック銀行は20%下落した。クルーズ船運航会社ルイスは18%安、コンピュータ部品販売のロジコムは10%下げた。同指数の他の15構成銘柄は取引がなかった。キプロス証券取引所のウェブサイトによると、この日の出来高は38株、売買代金は1万9209ユーロだった。
原題:Cyprus Stocks Retreat as Market Reopens After Two-WeekHiatus(抜粋) 
更新日時: 2013/04/03 07:37 JST

NY外為:ユーロ下落、失業率が最悪で推移−景気回復を悲観 

  4月2日(ブルームバーグ):2日のニューヨーク外国為替市場ではユーロが主要16通貨のうち12通貨に対して下落。ユーロ圏の2月の失業率が過去最悪にとどまり、域内経済がリセッション(景気後退)から脱却することは困難との懸念が広がった。
ユーロは対ドルで下落。ユーロ圏の3月の製造業景況指数は引き続き縮小を示す水準となった。ニュージーランド(NZ)・ドルは商品輸出価格の上昇を手掛かりに上昇。欧州中央銀行(ECB)は4日に金融政策決定会合を開く。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)のRBSセキュリティーズで為替ストラテジストのブライアン・デンジャーフィールド氏は、「製造業景況と失業率の両方が材料だった」と述べ、「いずれも軟調な結果に終わったほか、一部のマクロ経済統計が全体的に弱くなっていることを考慮すると、ECBが追加緩和を実施するとの観測がある程度相場に織り込まれているとも考えられる」と続けた。
ニューヨーク時間午後5時現在、ユーロは対ドルで0.2%下げて1ユーロ=1.2820ドル。ユーロは対円ではほぼ変わらずの119円79銭。円は対ドルで0.2%下げて1ドル=93円44銭。
米商務省が発表した2月の製造業受注額は前月比3%増加と、5カ月ぶりの大幅な伸びとなった。この後ユーロは対ドルでの下げを縮小する場面もあった。
ドル指数
主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は0.2%上昇の82.920と、4日ぶりに上昇した。
ニュージーランド・ドルは上昇。対米ドルで0.5%高となった。同国の商品輸出価格は3月に7.4%上昇と、約3年ぶりの大幅な伸びを記録した。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が2日発表した2月のユーロ圏失業率は12%。1月の失業率も当初発表の11.9%から12%に修正された。12%は統計開始の1995年以来で最も高水準。
英マークイット・エコノミクスが発表した3月のユーロ圏製造業景気指数(改定値)は46.8と、前月の47.9から低下。3月21日発表の速報値(46.6)からは上方修正された。同指数は50が活動拡大と縮小の分かれ目。
ポンドが下落
英ポンドは主要16通貨の中で最も下げがきつかった。製造業統計が予想以上に悪かったことが売り材料となった。ポンドは対ユーロで0.6%下落した。
先進10カ国の通貨で構成されるブルームバーグ相関加重通貨指数によるとユーロは過去1か月間で1.8%下落。ドルは0.1%安、円は0.1%上昇した。  
バンク・オブ・ニューヨーク(BNY)メロンの主任為替ストラテジスト、サイモン・デリック氏は、「ユーロは引き続き幅広い通貨に対して下落するだろう」と述べ、「対ドルでのユーロにとって、夏前に1ユーロ=1.23−1.24ドルまで下げるという展開は全くあり得ない話ではなさそうだ」と続けた。
ユーロは第1四半期に対ドルで2.8%下落。イタリアで2月に実施された総選挙後、同国の政局がこう着状態に陥っていることが弱材料。任期切れまで6週間となったナポリターノ大統領は「賢人会議」の創設を発表。同会議の10人のメンバーは大統領の任期終了前の新政権樹立を目指し協議を開始する。
原題:Euro Weakens as Unemployment Rises to Record; N.Z. DollarClimbs(抜粋) 
更新日時: 2013/04/03 06:57 JST

PIMCOトータル・リターンF、資金流入11年以来の低水準 
  4月2日(ブルームバーグ):ビル・グロース氏が運用する世界最大の投資信託「PIMCOトータル・リターン・ファンド 」は3月の資金流入額が3200万ドル(約30億円)と、2011年12月以来最低となった。
米調査会社モーニングスターのデータによると、トータル・リターン・ファンドが2013年1−3月(第1四半期)に集めた資金は22億ドル。昨年は180億ドルだった。同ファンドの運用資産は約2890億ドル。
30年債の上昇局面は終わるとの見方から投資家は株式に向かっている。米経済は改善の兆しが表われ、株式相場は08年の金融危機による下落分を穴埋めして最高値を更新している。米投資信託協会(ICI)によると、米国株に投資する投信は年初から3月20日までに推定185億ドルを集めた。12年1−3月期には164億ドルが引き出されていた。株式投信の需要が再び高まっているものの、債券投信はそのあおりを受けておらず、年初から3月20日までに576億ドルを集めた。
モーニングスターによると、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の旗艦ファンドであるトータル・リターン・ファンドは同種のファンドの一部に運用成績で後れを取ったことから、11年12月に13億5000万ドルが引き出され、同年は初めて年間で資金流出超過となっていた。ブルームバーグの集計データによれば、昨年の同ファンドのリターンはプラス10.4%と、95%の同種のファンドよりも高い成績だった。今年はプラス0.7%で、同種のファンドの89%を上回っている。  
原題:Gross’s Total Return Fund Receives Lowest Deposits Since2011(抜粋) 
更新日時: 2013/04/03 08:34 JST


 


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