02. 2013年3月27日 11:09:08
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キプロスが取り付け騒ぎ回避へ資本管理措置、28日に営業再開 2013年 03月 27日 10:11 JST [ニコシア 27日 ロイター] キプロスは27日に銀行の取り付け騒ぎを避けるための資本管理措置を導入する準備が整う見通し。国際支援機関との支援策での合意を受け、預金者の間では不安が広がっている。キプロスのサリス財務相は銀行が営業を28日に再開し、資本管理の措置が27日の1000GMT(日本時間午後7時)までに整う見込みだと明らかにした。詳細は明らかになっていない。 財務相はキプロスのテレビのインタビューで、「銀行は28日に再開し、莫大な資金が流出する可能性を制限する最善の策を検討している。経済や企業、個人を懲罰的な状況に置くようなものではない」と述べた。 中央銀行総裁は、「緩やかな」管理措置を一時的に全ての銀行に対して導入するとしていた。財務相は先に、措置が数週間維持される可能性があると述べていた。 <銀行再開後すぐに預金者殺到か> 支援の条件では、国内2位のキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行CPBC.CYを閉鎖し、10万ユーロ以下の預金が国内銀行最大手バンク・オブ・キプロスBOC.CYに移管されることになっている。両行の10万ユーロ超の預金は凍結され、預金者は大半を失うことになる可能性が高い。国による預金保証の上限は10万ユーロ。 政府の高官は大口の預金者の損失が約40%になるとの推計を明らかにしている。 多くのキプロス国民は新たな合意に安心しておらず、銀行には営業再開後すぐに預金者が殺到するとみられる。 銀行の休業が長期にわたったことで、事業にも支障が出ている。キプロスのスーパーマーケット協会のAndreas Hadjiadamou会長は消費者の信頼感が底に達したと述べた。 キプロスのすべての銀行、3月28日まで休業=中銀 2013年3月26日 キプロスの銀行、28日に営業再開する見込み=サリス財務相 2013年3月26日 キプロス、国内行の営業再開時に資本規制導入へ=大統領 2013年3月26日 大口預金者の損失は約40%の可能性=キプロス財務相 2013年3月26日
BRICS首脳会議、開発銀行創設で意見まとまらず 2013年 03月 27日 10:09 JST [ダーバン(南アフリカ) 26日 ロイター] 新興5カ国(BRICS)は26日、首脳会議を開いたものの、道路や港湾などのインフラ整備に融資する開発銀行の創設について、出資金の割合や開設場所で意見がまとまらなかった。
BRICS首脳会議は南アフリカのダーバンで26─27日の日程で開催。 ロシアのシルアノフ財務相は、BRICS首脳会合前に開かれた財務相会合後、「前向きな動きがあるが、開発銀行の創設について決定はなされていない」と語った。 BRICS首脳は、共同声明で言及するなどして、開発銀行創設に向けた勢いを維持したい考え。 シルアノフ財務相は「プロセスを加速させるための指示が示される」とし、4月の20カ国・地域(G20)会合で再度この件を協議する、と付け加えた。 複数の当局者によると、開発銀行へは当初500億ドルをBRICS全体で拠出すること検討しているが、各国がそれぞれ100億ドル拠出するか、もしくは、経済規模に合わせて拠出額を決定するかなど、依然意見がまとまっていない。 BRICS首脳会議では、金融危機などの際に利用できる外貨準備の共同積立基金についても承認される見通し。 開発銀行や外貨準備の設立は、主要国の利益を優先しているとの指摘がある世界銀行や国際通貨基金(IMF)へ依存せざるを得ない新興国の不満を反映している。 中国国家主席、アフリカとの対等な関係望むと表明 2013年3月26日 キプロス大統領とEU、支援策の大枠案で合意=関係筋 2013年3月25日 ロシア大統領、BRICSは「地政学上の問題にも対応を」 2013年3月22日 キプロス、ロシアに投資と融資延長を要請=財務相 2013年3月21日
キプロスを助けても感謝されないドイツの恨み節 強い通貨マルクを手放したのは亡国への道だったのか 2013年03月27日(Wed) 川口マーン 惠美 キプロスなどという、日頃あまり話題にならない地中海の島のせいで、EUが揺れている。 キプロスは南北に分かれているが、現在問題になっているのは南のキプロス共和国で、人口約87万人(北はイスラム系の住民が住んでいて、トルコが仕切っている)。 マネーロンダリング天国だったキプロス キプロスは2004年にEUに加盟した〔AFPBB News〕
ドイツでは去年からしばしば、この国のバブル崩壊が話題になっていた。 長年、キプロスの銀行は、魅力的な金利を売り物に投資家のお金を集めていた。税金は安く、法律は抜け道がいっぱいで、マネーロンダリングはし放題。 一時は国家経済の70%が金融による収入。その挙句、銀行資産が経済規模の8倍と、まことに不健全な状態となり、しかし、まさにそのおかげで、長い間、キプロスは好景気で潤っていた。 キプロスが脱税天国になったのは、何も最近の話ではない。政府はすでに1970年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、自国を、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンにしようと図った。 さらに、1990年にソ連が崩壊すると、好景気は絶頂となった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えたが、そのお金がどこから来たものかはやはり一切問われることがなかった(2012年11月3日付 Der Spiegl)。 現在、キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だという。 ロシアとキプロスは伝統的に縁が深い。第2次世界大戦後、キプロスは非同盟運動国(NAM) の1つとして、公式には東西どちらの陣営にも属していなかったが、ロシアはキプロスを積極的に支援していた。 多くのキプロスの若者がモスクワへ留学し、一方、ロシア人は、キプロスをヨーロッパへの架け橋と見なしていた。キプロスの高級品店ではロシア語が通じ、ロシア人相手の商売が大いに繁盛した。 キプロスの好景気にもう一度拍車がかかったのが、2004年のEU加盟だ。2008年にはユーロが導入された。 そこでキプロスは、裕福なロシア人が容易にキプロス籍を取れるように計らい、ドイツ情報局の調べでは、すでに80人のロシアの権力者、富裕層の人々がキプロス国籍となり、EU市民としての権利を享受しているという。 ちなみに、投資家でロシアの次に多いのが、英国だそうだ。キプロスは1960年まで英国の植民地だったこともあり、今でも3500人の英国兵が駐屯している。 キプロス大統領はロシアの大口投資家を守りたかった? いずれにしても、キプロスのバブルは破裂すべくして破裂した。今月の末までに175億ユーロのお金を都合することができなければ、キプロスは破産する。EUのユーロ国は、3月15日に緊急会議を開き、100億ユーロの援助を決めた。 ただし援助の条件は、キプロスが自国の銀行に預けられているお金から58億ユーロを拠出するというもの。EUの血税がつぎ込まれるのだから、キプロスも少しは努力してほしいということだが、問題は、いったい誰の預金が犠牲になるかだ。 16日の早朝に発表されたのは、全預金者に一度限りの税金をかけるという案だった。税率は、10万ユーロ以下の預金者は預金額の6.75%、それ以上は9.9%。つまり、小口預金者も虎の子の一部を失うことになる。 今までの常識では、たとえ銀行が破産しても、10万ユーロ以下の預金は失われないというのが原則だった。投機とは縁のない人々が金融破綻の責任を負わされるのは、誰が考えても不公平だからだ。 ただし、今回起こっているのは銀行の破産ではなく、救済であるから、事態は複雑だ。 キプロスの首都ニコシアのATMで預金を引き出そうとする人たち(2013年3月17日撮影)〔AFPBB News〕
寝耳に水のキプロス国民は、その朝、銀行のATMに殺到し、虎の子を守ろうとしたが、すでに一定以上の金額は引き出せなくなっていた。 しかも銀行は業務を停止。いつ開くかも分からない。瞬く間に大規模なデモが発生し、怒った国民で、国内は騒然となった。 ただ、デモの様子を見ると、牙をはやしたメルケルの人形や、メルケルとナチのカギ十字の写真などが登場しており、あたかもドイツがこの非情な措置を計画実行した首謀者のような感じだった。この映像に、「ちょっと待って」と思ったドイツ人は多いはずだ。 ドイツ第1テレビの報道によると、ブリュッセルで行われたEUの会議では、最初、小口預金者の虎の子には手を付けない方針で話が進められていたという。 ところが、これに抵抗したのが当のキプロスのアナスタシアディス大統領だった。 小口預金を課税対象から外すと、大口預金者への課税率が上がってしまう。彼は、ロシア人など大口投資家のお金を守りたい一心で、最高課税率を10パーセント以上にすることを断固拒否し、その代わり、小口預金者のお金に課税すると言い張った。 そして、「それはまずい」とEUの財務大臣たちに説得されそうになると、一時、怒って、あるいは、怒ったふりをして、会議の席を立ったという。 融資の条件である58億ユーロを、誰がどのように負担するか決めるのは、結局はキプロス政府である。ドイツ政府は、「累進税率法則についてはキプロス政府が決定することである」と口をつぐんでおり、ショイブレ財務相も、「小口預金者の預金が課税対象から外されることに異議はない」と言っている。 また、他の財務相たちも、小口預金者を課税対象から外すべきだと思っていたようだ。だから、この案がアナスタシアディス大統領から出たことはおそらく間違いない。そしてそれが発表された途端、キプロス国内は案の定、前述の大騒ぎになった。 EU憎悪のキプロス国民、大統領はロシアに頼るもあえなく失敗 アナスタシアディス大統領は、国内が騒然としたのを見て、慌てて国民に向かって言った。「このEUの決定を覆すよう、大いなる努力をしたい」と。 大統領が、大口投資家からの圧力と一般国民の板挟みになっているのは分かるが、だからと言って、責任をEU、あるいは、ドイツになすりつけるのは卑怯だ。本はと言えば、責任のほとんどは自国にある。 キプロス政府は、法案を急遽修正し、20万ユーロ以下の預金には手を付けず、20万から100万ユーロの預金者に6.75%、100万ユーロ以上には9.9%課税という新案をひねり出したが、これでは58億ユーロに達しないことは初めから分かり切っていたというから、彼らが本気でやっていたとは思えない。 そして、19日の夜、その新案が議会に掛けられたが、賛成した議員が1人もいなかったというのが、また凄い。つまりキプロスは、EUからの援助を拒絶したのである。 銀行が破産すれば10%の預金損失では済まない。国も破産する。ドイツから眺めている限り、キプロス政府がいったい何をどうしたいのかが分からない。 デモをしている人々の掲げているプラカードを見ても、「ヨーロッパなど糞くらえ!」といったEU憎悪のセリフが多い。 市民のインタビューでも、「我々もヨーロッパの一員として、ちゃんとした扱いを受ける権利がある」とか、「金の問題ではない。誇りの問題だ」という声ばかりだし、そもそも大統領自身がEUに大変不満な様子だ。だからだろう、彼の口からは、「腐敗した銀行システムの改革を!」などという殊勝な意見は出てこない。 挙句の果て、キプロスはロシアに支援を求めようとした。この大統領は、あくまでも正攻法が嫌いなようだ。 20日にはキプロス財務相が大急ぎでモスクワへ赴いたが、EUの委員長バローゾの方が一歩早かった。EUにしてみれば、キプロスのような極小国の問題を自力で解決できず、ロシアが手を差し伸べるとなると、面目丸つぶれとなるので、それはどうしても避けたい。 バローゾがロシアのウラジーミル・プーチン大統領と何をどう取引したのかは分からないが、キプロスの財務相はまもなく、肩を落としてロシアから戻ってきた。プーチン大統領にしてみても、自国からキプロスに資産を持ち出している人間を敢えて助けたいと思わなかったのかもしれない。 一方、ギリシャ正教会がキプロス援助を申し出ているという話もあった。アナスタシアディス大統領が司教と会見している映像が20日に出ていたが、これも失敗。EUが突きつけた最後通牒は25日だったので、緊張は否応なく高まった。 ドイツでも、EUの1国が破産するといったいどうなるのかという不安で、人々の目はキプロスにくぎ付けになり、そのニュースばかりが刻々と流れた。EUは、アナスタシアディス大統領に恐喝されていたのである。 24日の夜、再度ブリュッセルで会議が開かれ、結局、キプロスの銀行システムの改革を条件に、援助は行われることになった。キプロスで2番目に大きい銀行に大ナタが振るわれ、蘇生できる部門と切り捨てる部門に分けられるそうだ。 しかし、驚くべきことに、アナスタシアディス大統領は、国内最大のキプロス銀行の方は、この整理の措置から外すことに成功した。 EUの財務相たちは、キプロス破産の回避に一応ホッとした表情は見せているが、心の中は、キプロス政府の不誠実な態度に、怒りが沸騰していることだろう。 強いマルクを手放したのは痛恨の失策だったのか・・・ キプロスの中央銀行は25日、混乱回避策としての国内全ての銀行の休業措置を28日まで延長すると発表〔AFPBB News〕
いずれにしても、今回のキプロス事件により、ドイツ人は急速にEU、そして、ユーロに対する信頼を失いかけている。 「私たちの通貨はどうなるのだろう? 私たちの預金は?」 通貨を信用できないというのは、最悪のことだ。ドイツでは、すでに不動産はどんどん値が上がっている。皆、考えることは同じなので、金相場も世界的に高騰してしまった。 ドイツ人の不安は破綻国への度重なる援助にもある。今まで政府は、ドイツはEUの一員として生きるのがベストであり、援助は自国の救済でもあると国民を説得し続けてきた。 しかし、国民はどんどん泥沼にはまっていくような不安に苛まれている。ザルを相手にしているような感じだ。キプロスの場合、「なぜ我々の税金でロシアの金持ちの預金を守らなければいけないのか?」という疑問も、怒りとなって噴出している。 しかも、これだけ犠牲を払っているのに、EUの誰からも感謝されず、恨まれるばかりなのだ。 先週、取材でノルウェーに行ったので、現地の人にEUについて尋ねてみたら、やはり「加盟しなくてよかった」ということだった。スイス人もそう思っているだろう。 あれほど強かったマルクという貨幣を手放したのは、亡国につながる愚行であったのではないかと、多くのドイツ人が思い始めている。しかし、後戻りはできない。目を瞑って前進するのみ? ドイツ人の悪夢はまだまだ続きそうだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37413
【第257回】 2013年3月25日 広瀬 隆雄 キプロス救済は一応決まったが 危機が完全に去ったわけではない! 【今回のまとめ】 1.キプロスが欧州連合(EU)の示した救済条件に大筋で合意した 2.第2位「ライキバンク」顧客の10万ユーロ以上の預金は「全損」も? 3.ライキバンクは分割され、消滅する 4.ギリシャ、スペインの預金者が浮足立つ可能性も キプロス第2位の銀行が“処理”の対象に 日本時間の3月25日(月)朝、ブリュッセルで開かれていたユーログループの会合の席上、キプロスがEUの示した危機回避案に大筋で合意しました。 それによると、キプロス第2位の銀行である「ライキバンク(=キプロス・ポピュラー銀行)」の顧客は預金のうち10万ユーロ以上の部分に関しては預金保証の対象とならないため、全額が失われるリスクが生じることになりました。(これは、下に述べる「預金税」ではありません。) 一方、キプロス最大手である「キプロス銀行」の10万ユーロ以上の大口預金に関しては、現在のところまだ詳細はわかっていません。 またライキバンクは“グッドバンク”(よい部分)と“バッドバンク”(悪い部分)に分けられ、事実上消滅する見通しです。よい部分に関してはキプロス銀行と統合される見込みです。 なお今回キプロス政府とEUとの間でできあがった合意は、今後、ユーログループでの表決、さらにドイツ議会での表決で可決されることが必要となります。 キプロス問題、これまでの経緯をおさらい 3月16日(土)に、EUがキプロスに対して「100億ユーロの金融支援を行う用意があるが、それには条件がある。キプロス自身も58億ユーロのお金を探して来い!」と宣告しました。 58億ユーロを工面する具体的な方法として銀行預金に課税するという方法が提案されました。これは「預金税」と呼ばれるものです。10万ユーロ以上の預金に対しては9.9%、それ以下の部分については6.75%を“税金”という名の下に、政府が没収するわけです。 なぜ「預金封鎖」をしたのか? なお、課税が発表されると、その前に預金を全部引き出したいと考えるのが人情ですから、皆が銀行に殺到します。すると“取り付け騒ぎ”に発展する恐れがあります。 そこでお金を引き出したり、別の口座に動かしたりできないように銀行取引を凍結する必要が出ます。これを「預金封鎖」と言います。現在、キプロスでは市民の生活に必要な最低限のキャッシュだけはATM(現金自動預け払い機)から出せる状態になっています。 さて「58億ユーロを預金税でかき集めて来い!」と命令されたキプロス政府は、同国の憲法の手続きに従い、上記の預金税を議会の表決にかけました。 その結果、預金税はアッサリ否決されてしまいました。 しかし「もしかして、自分の預金がアブナイかもしれない」ということは、すでに庶民に知れ渡ってしまいました。このためキプロスの銀行は、もう通常の業務を続けることはできません。 議会にEU案を却下されたキプロス政府が取った措置 そこでキプロス政府は、何とか大混乱を未然に防ぐため一連の方策を講じました。 まず「銀行整理法案」が可決されました。これは経営内容が悪い銀行を、速やかによい部分と悪い部分に分け、出血を喰いとめる方法です。 キプロスの場合、2番目に大きいライキバンクの経営内容がとりわけ悪いため、これをグッドバンクとバッドバンクに分け、グッドバンク部分を1位のキプロス銀行と合併させる必要が出たのです。 次に「資本規制法案」が可決されました。これは一度に電信振替などの方法で持ち出せる金額を制限する法律です。預金の流出を食い止めるのがその目的です。今回の決定にはチェッキング口座(=小切手が振り出せる口座)の利用を大幅に制限することも含まれています。 なぜ小切手すら振り出せないようにするかといえば、キプロス国内に銀行口座をもっている預金者が、たとえば「第三国に本社を置く○×証券」に口座を開き、そこへ小切手を送れば預金を移せてしまうからです。 最悪の場合は“物々交換”の時代へ逆戻り
このように小切手の動きを封じるとなると、キプロス国内のあらゆる商取引がやりにくくなることが予想されます。上に書いたように現金の引き出しも制限されているわけですから、この規制が長引けば、最悪の場合“物々交換”の時代にもどるような不都合さが生じるリスクがあるのです。 さらに、3つ目の方策として「連帯投資基金」の設立が可決されました。これはキプロス政府の持つ資産をこの基金に移管し、その信用力を担保にお金を前借りするという仕組みです。具体的には地中海沖の天然ガス田の権益やキプロス市民の年金ファンドの資産などを「ちょっと拝借」することになると言われています。 もちろんキプロス政府は「何とか銀行を救おう」という善意からこれらの非常事態下での措置を講じようとしているだと思いますが、ちょっと間違えば、庶民は銀行預金の一部だけでなく年金も失うリスクに晒されるわけで、政府が国民の財産の処分に関して勝手に判断を差し挟むことを可能にする、上記の一連の立法には批判の声もあります。 この連帯投資基金が実際に実行に移されるかどうかに関しては、現在のところ判然としません。 日本は、戦後で唯一“預金封鎖に成功”した国 なお預金税は過去にいろいろな国で導入が試みられましたが、その大半は失敗に終わっています。第二次世界大戦以降で唯一、預金封鎖に成功したのは日本です。 当時日本は戦争で多額の債務を抱えており、しかも太平洋戦争の過程で財閥の経済支配が強まり、貧富の差が拡大しました。そこで戦後の国家の立て直しに際しては、偏在する富を是正することが欠かせないと、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は考えたのです。そこで預金封鎖をした上で、旧円を新円に切り替えることを実施しました。 ギリシャ、スペインに飛び火するか注目 さて、話をキプロスにもどすと、キプロス政府がEUの意向に沿うと決めたことで、当面、欧州中央銀行(ECB)からの緊急流動性支援プログラム(ELA)は継続されると思います。 これは言わばキプロスに対する「酸素補給」です。しかし、これでキプロスの危機が一件落着するかどうかは、まだ予断を許しません。 実は、今回の騒動で当初の予想より上手くいっていたこともあります。それは少なくともこれまでのところギリシャやスペインなどの近隣国では取り付け騒ぎが起こっていないということです。 ただ、今回、ライキバンクの大口預金者が10万ユーロ以上の部分に関して全てを失う可能性が出たことを見て、近隣国の預金者が浮足立つ可能性が無いとは言い切れなくなってきました。 とくにイタリアの場合、先の選挙の後、現在もまだ多数派形成ができておらず、政治は空白になっています。仮に再選挙ということになった場合、ユーロ離脱派が大幅に得票を伸ばす可能性もあります。
ユーロ危機と「ドイツ的な欧州」の誕生 対立を防ぐはずのプロジェクトが敵意を生んだ理由 2013年03月27日(Wed) Financial Times
南欧では特にドイツに対する反感が強まっている(写真はキプロスの抗議デモの一幕)〔AFPBB News〕
結局、キプロスは苦い薬を飲むことになった。国家的な屈辱と暗い将来に直面した国民の多くは、小さな母国は無慈悲な大国の意思に屈するよう強いられたのだと不満の声を上げている。 無慈悲な大国とは、そう、ドイツのことだ。 キプロスの新聞は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を「ドイツ野郎*1」と表現し、ヴォルフガング・ショイブレ財務相は「ファシスト」のような話し方をするとこき下ろした。ギリシャやイタリアですっかりお馴染みとなった反ドイツの感情がここにも広がった格好だ。 危機下で力を増すドイツと各地に広がる「ドイツ嫌い」 このドイツ嫌いは不当だ。怒号が飛び交うその陰で、ドイツの納税者は今回もまた、ユーロ加盟国の救済資金をどの国よりも多く負担することになる。近隣諸国に数千億ユーロもの資金を融資しても、ネオナチだという批判しか返ってこないという状況は、少しひどいように思える。 しかし、ドイツの力が増していること――そして、その力に対する怒りの気持ちも強まっていること――は、今や欧州政治のメーンテーマとなっている。 何とも皮肉な話である。統合を目指して1950年代から続けられている「欧州プロジェクト」全体の最大の目的は、ドイツは強大すぎて近隣諸国と気持ちよく共存することなどできないという見方を根絶することにあったからだ。 実際ベルリンでは、パリやブリュッセルと同じくらい、「ドイツ的な欧州ではなく、欧州的なドイツ」が必要だという言い方が何度も繰り返されてきた。 ところが、キプロス危機が勃発してからは、「ドイツ的な欧州」の色彩が次第に濃くなっているように見える。危機下で取られている欧州大陸の方向性は、ベルリンの政治家と官僚の思想や意向によって形成されている面が強いからだ。 確かに、キプロスとの交渉を主導したのは欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、および欧州中央銀行(ECB)の3者だった。だが、ドイツ政府の意見を聞いたり同意を得たりしなければ、どんな取引も成立し得ないことは最初から明らかだった。 今回の危機が始まってから、ECB側のリード役をイタリア人のマリオ・ドラギ総裁ではなくドイツ人のヨルク・アスムセン専務理事がずっと務めていることも、ドイツが危機対応の顔になる要因となった。 *1=原語は「Hun」、第1次・第2次大戦中に使われたドイツ人をののしる言葉 一連の騒動を少し離れたところから見ることができたら、ドイツの指導者たちは、どうしてこういうことになったのかと首をひねるに違いない。 ドイツと近隣諸国は対立しているという認識に終止符を打つための欧州プロジェクトが、反ドイツ感情の復活につながってしまったのはなぜなのか? そして、このダメージはずっと残るものなのか? これについては、最近は非常に大きな利害が絡むようになっており、ドイツといえども国益を主張するのをためらうわけにはいかなくなっている、という見方でかなり説明がつくだろう。何しろ現在、欧州単一通貨の存続が疑問視されており、ドイツの納税者は様々な救済基金に巨額の資金を拠出しなければならない状況が続いている。 ドイツはまた、この問題について明快で一貫性のある分析を行っている。危機の中心にあるのは放漫財政かお粗末なビジネスモデルであり、従ってその解決策は構造改革に関連した緊縮財政である、という見方だ。 この処方箋は危険だと指摘する向きは多い。だが、そうした緊縮財政反対論者は、昨今の思潮を変えられるほど筋の通った代替策をまだ提示できていない。 しかし、これはドイツが強いというだけの話ではない。実は、最近までドイツと拮抗していた欧州のほかの大国が極端に弱くなっているという話でもある。例えば、スペインとイタリアの政府は財政難にあり、弱体化している。英国はユーロ圏のメンバーではないため、一歩下がった立場を取っている。 何より際立つフランスの「不在」 だが、今回の危機の最も顕著な特徴は、交渉のテーブルに有力なフランス人がほぼ皆無だったことだ。 ジャン・モネ氏からジャック・ドロール氏に至るまで、フランス人は常に、欧州プロジェクトのために知的な指導力を発揮することを誇りにしてきた。仏独同盟が引っ張る形で欧州を前進させるべきだという考えはフランス人の思考の要であり、メルケル首相と緊密な協力関係を築こうとしたニコラ・サルコジ前大統領の決意にも反映されていた。 「メルコジ」のコンビが欧州を動かしているという考えはかねて、ちょっとした錯覚だったものの、少なくともそれは舞台の中心にいようとするフランスの決意を表していた。 ところがフランソワ・オランド大統領の下で、フランスがドイツと同等の役割を果たしているという考えは完全に消え去った。キプロスを巡っては、フィンランドさえもがフランスより議論に大きな影響を与えたように見えた。 問題の一端は、オランド大統領が緊縮に対するドイツのこだわりに反対していることを世に知らしめながら、首尾一貫した対案を提示しなかったことにある。大統領はドイツを押し返せるような南欧諸国の同盟の先頭に立つことはなかったが、かと言ってメルケル首相と良い協力関係を築くこともなかった。 フランス政府高官も、もはや昔のように欧州の中心部で重要な役割を果たすことはなくなった。ジャン・クロード・トリシェ氏の退任を受け、ECBを率いる総裁はフランス人ではなくなった。EUの域内市場を担当するフランス出身の欧州委員、ミシェル・バルニエ氏はどちらかと言えば軽量級だ。 欧州にとってもドイツ自身にとっても危険な状況 ドイツの政策立案者でさえ、この状況が一時的であることを望んでおり、事態が正常化し、EUの新機構が創設された暁には、ドイツがこれほど公然と指揮を執る必要はなくなるかもしれないと考えている。だが、それは恐らく実現しそうにない望みだ。 ユーロ圏の危機は決して終わっていないし、危機の終わりにどんなEU新機構が誕生するのか、さらには、それがドイツの力を弱めるのか、それとも強めるのか、ということも不透明だ。 その結果、ドイツが監督者の立場に立たされたまま、小切手を書き、ルールを執行し、さらにはルールをどんどん作っていくことになる。これは欧州にとって、そして最終的にはドイツ自身にとって危険な状況だ。 By Gideon Rachman
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