04. 2013年3月21日 16:58:53
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ロシアが外貨準備のユーロ比率見直しか、キプロス救済めぐる混乱で 2013年 03月 21日 16:04 JST トップニュース イスラエルに2発のロケット弾、オバマ米大統領訪問中 日本の軽自動車税制、優遇ではない=自工会会長 焦点:中国の対日姿勢「雪解け」か、外務人事から透ける思惑 黒田日銀総裁「身の引き締まる思い」、新執行部が就任あいさつ [モスクワ 21日 ロイター] ロシアのメドベージェフ首相は、ユーロ圏のキプロス救済をめぐる混乱を受け、ロシア中銀の外貨準備におけるユーロの比率を見直す可能性を示唆した。インタファクス通信が21日伝えた。 首相は、キプロス情勢がロシアの外貨準備に占めるユーロの割合を減らす理由か、との問いに対し「楽観的は返答をしたいが、それが見直しの理由だと言わさざるを得ない」と答えた。 世界第4位の規模を誇るロシアの外貨準備におけるユーロの比率は今年1月1日時点で42%だった。 首相は、キプロスの銀行預金に課税する案は「予測不可能だっただけでなく、何らかの不備がある証拠でもある」と指摘。 「もしキプロスで可能ならば、なぜスペインやイタリア、あるいは財政問題を抱える他の国でやらないのか。キプロスでは明日から預金の差し押さえが始まる。これが(外貨準備におけるユーロの比率)見直しを始める理由だ」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K04920130321 小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ | ババ抜きゲームになっているキプロス問題 2013/03/21 (木) 13:26 何故キプロスが問題なのか? ひょっとしたら、状況がイマイチ分かっていない人がいるかもしれません。 そもそもキプロスって?という人もいるでしょう。 愛と美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)誕生の地として知られるキプロス。地中海に浮かぶ島国なのです。人口は100万人弱。 だったら、仮にそのような国の経済が立ちいかなくなったとしても、ユーロ圏全体に与える影響は小さいだろうし、ましてや世界に与える影響も微々たるもの、と思いたいところなのですが‥だからと言ってバカにできない面があるのです。 もし、このキプロスがデフォルトを起こしてユーロ圏を離脱することにでもなれば、またぞろユーロ崩壊のシナリオが動きだし‥そうなるとまたしても超円高が襲うことが懸念されるのです。 では、何故キプロスが今危機に陥っているのか? 実は、キプロスの産業の特徴は‥ 「観光業が主なのでしょ? 綺麗な海だし‥」 もちろん、それもあるのですが‥それ以上に金融セクターが大きな比重を占めているのです。 「アイスランドみたいな?」 そういうことなのです。何しろキプロスの銀行が保有する資産は、GDPの8倍にも上るというのですから。 それだけ金融部門が大きいと、バブルが弾けるなどしなければガンガンお金を稼いでくれる訳ですが‥逆に、バブルが弾けると、それが裏目に出てしまう、と。 少しずつ状況が分かってきたかと思うのですが‥いずれにしても金融セクターの占める割合が余りにも大きくなり過ぎると‥仮に、民間銀行の経営が危うくなった時に、政府の力だけではとても支えることができなくなってしまうのです。 だってGDPの8倍もある資産を民間銀行が保有し、そして、その資産の大半が不良債権化する訳ですから。 日本に置き換えてみると、日本の民間銀行が500×8=4000兆円の資産を保有し、そして、その保有する資産の例えば半分が貸し倒れ処理されると、2000兆円が損失となり‥ その2000兆円を政府が穴埋めをすることなど、不可能でしょ? では、何故キプロスの銀行がそのように多額の損失を被っているかと言えば‥ ギリシャの債務をチャラにして上げたことがあったでしょ?ギリシャを救済するために。だって、ギリシャには支払うお金がないからです。 つまり、キプロスの銀行は、ロシアの富裕層を含む内外の預金者から集めたお金でギリシャの国債を購入していたが、その大半の債権がチャラにさせられてしまった、と。 言ってみれば、ギリシャを救うためにキプロスの銀行が犠牲になった訳で、こんなことになるのであれば、結局ギリシャ支援は何だったのかということになるのです。 いずれにしても、今度はこうしてキプロスの銀行が危機的状態に陥ってしまったので、誰かがそれを救う必要があるのです。 ギリシャの債務問題を処理する際に、このような副次的な問題が発生することは分かっていた筈。しかし、ギリシャの問題に関心が集まっている間は、キプロスのことなんか心配する余裕はなかった、と。先ずは、ギリシャをどうにかして‥そして、その後キプロスの問題が顕在化したら、その時にキプロスのことは考える、と。 結局、欧州の政治家たちのやっていることは、その程度のことであるのです。 ただ、それでも、あくまでも自分たちの責任と自分たちのお金で、そうした処理の仕方を選択しているというのであれば、外部の者が何かを言う必要もない。 しかし‥ 欧州のリーダーたちのやっていることは、世界のための存在するIMFを巻き添えにして‥つまり、本来、自分たちだけで処理すべき問題なのに‥大きな負担をIMFに押し付けた上で、その場しのぎの処理というか、ババ抜きゲームを続けているだけなのです。 だから、日本人としては怒りたくなるでしょ? では、このババ抜きゲームは、今後どうなるのか? つまり、誰に負担が押し付けられるのか? キプロスの議会は、キプロスの銀行の預金者にババが押し付けられることを拒否した訳です。 但し、もちろんこのままでは外部からの資金支援を得ることができずに、キプロスの銀行は破綻してしまいます。 いつ破綻するかと言えば、今度銀行の営業を再開した日に破綻するだろう、と。 では、いつ営業を再開するのか? キプロスは、21日、22日も銀行の営業を休みにすると決定したのだ、とか。 だったら、25日の月曜日に営業が再開されるのか? 但し、25日は、元々銀行の休業日になっていて‥そういうことで26日の火曜日に営業が再開され‥つま、26日がXデーになりそうだというのです。 ですから、時間が若干あると言えばある。しかし、余りにも関係者が多く‥そして、代案をまとめるためには余りにも時間が少なすぎるとも言える。 それに、よりによってこんな危機的な状況において、中心的役割を果たすべきIMFのラガルド専務理事の自宅が家宅捜査されたのだ、とか。 信じられます? 「国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事がフランスの経済財政相時代に職権乱用にかかわった疑いがあるとして、仏捜査当局は20日、同氏のパリの自宅を捜索した。ラガルド氏の弁護士は仏AFP通信に「ラガルド氏は何も隠していない」と疑惑を否定した。 疑惑の発端は、サルコジ前大統領に近い実業家ベルナール・タピ氏によるアディダス株売却。手続きに携わった当時の国営銀行クレディ・リヨネの誤った対応で同氏は自己破産に追い込まれたとして係争を起こした。タピ氏は2008年に巨額の賠償金を得たが、係争の調停にラガルド氏が介入し、タピ氏に便宜を図った疑いが持たれている。」(日経電子版) これだけでは分かりにくいかもしれませんが、要するに、タピ氏はサルコジ大統領を支持していたことから、ラガルド財務相の助けを得て、クレディ・リヨネとのもめ事を裁判ではなく調停によって解決することができ、しかも、その際勝ち取った賠償金(約4億ユーロ)が相場よりも相当高いものであったと疑われているのです。 いずれにしても、ラガルド氏の自宅に警察が乗り込んだ、と。 何か似たようなことを思い出しますね。まだ、数年ほどしか経っていないのです。 思い出しましたか? そうです、ラガルド氏の前任のストロス・カーン氏も、強姦容疑で、飛行機に搭乗した直後に機内で逮捕され‥結局、彼は釈放はされたものの、IMFの専務理事のポストを離れなければいけなくなってしまったのです。 彼はフランスの出身。そして、このラガルド氏もフランスの出身。そして、ともに政治家。 このような人たちを、そもそもIMFのトップの据えること自体が適切なのかどうか? 以上 http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2013/03/21/018605.php 焦点:ECB、キプロスに対する緊急流動性支援を断つ構え 2013年 03月 21日 13:51 JST トップニュース 黒田日銀総裁「身の引き締まる思い」、新執行部が就任あいさつ ドル96円付近、黒田日銀総裁への期待感がサポート 日経平均続伸、日米緩和への期待継続で4年半ぶり高値 米ボーイング、787型機の試験飛行を週内にも実施へ=関係筋 [フランクフルト 20日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)はキプロスに対する緊急流動性支援を断つことも辞さない構えだ。キプロスは19日、100億ユーロ(129億ドル)の支援策を受けるための預金課税法案を否決した。 支援はキプロスの銀行に対する資本注入に大半が費やされることになっており、ECBはこの支援がなければキプロスには支払い能力がなくなるとし、中銀の支援を受けるためには銀行に支払い能力があることが必要、との立場を明確化した。 この資金供給が閉ざされれば、キプロスは泥沼にはまり込むことになる。 他のユーロ圏諸国に対しては、ECBは国債買い入れや無制限の流動性供給を行う構えがあり、危機の波及を食い止めるための政策手段を揃えている。ただし、ドイツの抵抗で、ドラギECB総裁が新たな政策手段を生み出す可能性が制限されているという側面もある。 ECB理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は、ECBの国債買い入れ計画について、政府への財政ファイナンスに等しいとして反対したが、ECBが1年前に実施した長期流動性供給オペ(LTRO)などの措置は基本的に受け入れている。 この状況を踏まえ、ECBは恐らく新たな危機対応手段を考え出す必要性はなく、既存の措置を講じる前に、銀行預金者の不安を取り除くために各国政府と協力することになるだろう。 米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のシニア・ポートフォリオ・マネジャー、アンドリュー・ボソムワース氏は「波及のリスクとは、他国での取り付け騒ぎだ」と指摘。「預金保護は侵害されないものだとしたコミットメントなど、ECBや政府による口先介入は助けになるだろう」と述べた。 ドラギ総裁は昨年7月、ユーロ存続のため、ECBが責務の範囲内で必要なあらゆる措置を取ると発言、一定の条件を満たした場合の国債買い入れ計画を発表することでその約束を裏付けた。現時点で預金者の不安を取り除く発言を行うのであれば、ユーロ圏の金融システムが円滑に回っていると確信させるための取り組みも伴う必要がある。 <ECBは線引きを明確化> 19日遅くに発表した声明で、ECBは既存の規定の範囲内で必要な流動性を供給する構えがあるとの立場を明確化した。 預金者の不安を取り除きたいドラギ総裁を代弁するように、ECBのアスムセン専務理事は、ユーロ圏には他にキプロスのような銀行セクターを持つ国はない、と述べた。 ドイツ銀行のエコノミスト、ギレス・モエック氏は、ECBの流動性供給に対するコミットメントに加え、キプロスの銀行セクターの問題が同国特有のものだというアスムセン専務理事の発言は、ECBが他のユーロ圏の健全な銀行なら支援する構えがあることを示している、と指摘。同時に、支払い能力のない銀行には資金供給できないことを確認しているようなものだともしている。 国債利回りを急上昇させる最悪のシナリオとして、ユーロ圏他国の銀行顧客に不安が広がることが挙げられるが、これまでのところその兆候はない。 国債利回りの急上昇に備え、ECBは新たな国債買い入れプログラム(OMT)を利用できるが、発動の条件には当該国が改革や緊縮措置といった支援策にまず合意しなければならない。 モエック氏はOMTが基本的には有効な手段としてあるとしても、キプロスをめぐる情勢は、OMTの発動が実際は想定以上に難しいことを確認させるものかもしれないと指摘した。 <明確な境界線> ECBは「既存の規定の範囲内で」流動性を供給する構えがあると強調しており、そのスタンスは揺るがない。ECBはキプロスのために柔軟な対応をするつもりはないというわけだ。 20日の理事会会合でアスムセン専務理事はキプロスに支援策に合意するよう迫った。「支払い能力のある銀行にだけ緊急の流動性供給ができる。支援プログラムがすぐに受け入れられなければ、キプロスの銀行の支払い能力について確かめることはできない」と述べた。 ECBオペの担保としてキプロス国債は不適格となっているため、キプロス中銀は緊急流動性支援(ELA)の枠組みを通じて国内行に資金を供給している。 これら緊急的な融資は比較的容易に受けられるものの、ECBの理事会がELAの実施を許可することになっている。2週間ごとに見直され、供給を断つにはメンバーの3分の2の賛成が必要。 ベレンベルグ銀行のホルガー・シュミーディング氏は「もし本当に必要であれば、キプロスよりも大きな国が現在の支援条件を拒否することを促すような状況になるぐらいに条件を緩和することよりも、ユーロ圏は小国のキプロスを見放し、その損失拡大を防ぐことに注力することを選ぶだろう」と述べた。 (Paul Carrel記者;翻訳 青山敦子;編集 佐々木美和) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K03720130321?sp=true キプロスの銀行が貢献するなら救済に道-メルケル独首相が示唆
3月20日(ブルームバーグ):キプロスの銀行が同国の救済に貢献するならば、ユーロ圏諸国も支援しキプロスを域内にとどめることにやぶさかではない−。ドイツのメルケル首相がこのように示唆した。キプロス議会は19日に銀行預金課税法案を否決している。 メルケル首相は独議員らへの説明後にベルリンで記者団に、キプロス議会の採決結果は「遺憾」だが、キプロスの決定を「尊重する」と語った。しかしながら、キプロス金融支援の必要額170億ユーロ(約2兆1000億円)は同国の国内総生産(GDP)にほぼ匹敵し、そのような規模の救済は前例がないとメルケル首相は指摘。 「従って、キプロスの債務を持続可能にするために銀行が貢献することが必須だというのがわれわれの意見だ」と述べた。その上で、「キプロスはユーロ圏内のわれわれのパートナーであり、われわれは共に解決策を見つけなければならない」と付け加えた。 170億ユーロの必要資金のうち58億ユーロを銀行預金課税によって捻出させようとしたユーロ圏の戦略が失敗に終わり、政策当局はどこまでキプロスに圧力をかけるべきかを模索している。19日に欧州中央銀行(ECB)がキプロスの銀行への流動性供給を続けると表明したことを受けて、20日の株式相場とユーロは反発している。 次の段階としてはキプロス側が、欧州連合(EU)欧州委員会とECB、国際通貨基金(IMF)のいわゆるトロイカに対して提案を行うべきだとメルケル首相は述べた。 「しかしながら、キプロスが持続可能な銀行セクターを持つことが重要だということは言っておきたい」と首相は強調し、「現時点では銀行セクターは持続可能ではなく、その事業モデルのために膨大な困難にさらされるに至っている。われわれが欧州安定化メカニズム(ESM)からの支援を提供するならば、恒久的な解決を確保することがわれわれの責務だ」と語った。 メルケル首相は「われわれはさらに交渉を続ける。それはつまり、トロイカとわれわれがキプロスの提案を十分に尊重して検討するということだ」と述べ、「もちろん、ドイツも解決を望んでいる」と結んだ。 原題:Merkel Signals Readiness for Cyprus Solution If BanksContribute(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ベルリン Brian Parkin bparkin@bloomberg.net;ベルリン Patrick Donahue pdonahue1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net 更新日時: 2013/03/20 22:43 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJYNHZ6JIJVB01.html
キプロスの預金課税法案否決は遺憾、新たな提案見極める=独首相 2013年 03月 20日 22:34 JST [ベルリン 20日 ロイター] メルケル独首相は20日、キプロス議会が銀行預金課税法案を否決したことに遺憾の意を表明するとともに、欧州諸国はキプロス政府からの新たな提案を待っていると述べた。 記事の全文 キプロス、キプロス・ポピュラー銀行をロシア投資家に売却報道否定 2013年 03月 20日 22:30 JST [ニコシア 20日 ロイター] キプロス政府は20日、キプロス・ポピュラー銀行をロシアの投資家に売却することで合意したとのギリシャメディアの報道を否定した。 記事の全文 ユーロ上昇、キプロスは債務不履行回避との見方で 2013年 03月 21日 00:35 JST [ニューヨーク 20日 ロイター] 20日午前中盤のニューヨーク外国為替市場で、ユーロがドルと円に対して上昇した。キプロスが債務不履行(デフォルト)回避に向けて合意するとの見方が一部の投資家に広がり、同国への不安が緩和した。
ただ、キプロスの事態がスペインやイタリアなど域内の財政難国に悪影響を及ぼすリスクや域内の不透明感が残り、ユーロは引き続き売られやすい局面にある。 ドルは円に対して0.5%高の95.59円。日銀の黒田東彦総裁の発言が注目されている。 欧州株式市場=続落、キプロスの支援策否決観測で 2013年3月20日 ユーロ圏金融・債券市場・終盤=独連邦債上昇、キプロス不安で逃避 2013年3月20日 米株市場は続落、キプロス支援策めぐり欧州銀行への不安広がる 2013年3月19日 ユーロ下落、対キプロス支援策めぐる不安で=NY市場 2013年3月19日 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92J01A20130320 キプロスで尽きた欧州の指導者たちの信用 2013年03月21日(Thu) Financial Times (2013年3月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
キプロスの首都ニコシアで、手のひらに「No」の文字を書き、金融支援の条件とされた銀行預金への課徴金案に抗議する人々〔AFPBB News〕
欧州の首脳たちは間違いなく、キプロスの一件で自分たちが大きなリスクを取っていることを認識しているはずだ。 危険であることは明らかだ。キプロスの銀行にお金を預けている人全員が痛みを強いられることになった今、欧州のほかの国では神経質になっている預金者が、危険な前例が作られたことに気づくかもしれない。 自分の金融資産が将来「ヘアカット(元本削減)」されるなんてごめんだ、小さなリスクだとしても、そんなものを背負うくらいなら今のうちにお金を引き出しておこう――。 ギリシャやスペイン、ポルトガル、あるいはイタリアの預金者はそう考えるかもしれない。もしそれが行動に移され始めたら、以前よりすさまじいユーロ危機が欧州を再び襲うことになるだろう。 今回が初めてではないEUの指導者たちの誤算 キプロスの救済計画を決めた人たちは、伝染のリスクが小さいことを期待している。スペインの銀行は快方に向かっているし、ギリシャも崖っぷちの状態から戻ってきた。キプロスの銀行にはロシアの資金が大量に預けられているから、これはあくまで特異なケースであり、ほかの国の預金者がここから教訓を引き出す理由はない、というわけだ。 そうかもしれない。しかし、欧州連合(EU)の指導者たちは以前、この種の計算で大きな間違いを犯したことがある。 彼らは2010年秋にフランスのドーヴィルで首脳会議を行った際、救済される国の国債を保有する投資家はいくらかの損失を被ることになると発表した。その結果、ユーロ危機はひどく悪化した。イタリアやスペインなど、リスクが高そうに見える国への貸し出しに対し、投資家がそれまでよりも大幅に高い金利を要求し始めたのだ。 では、あれほど苦労してユーロの分裂を回避したのに、欧州の首脳たちはなぜキプロス問題でこんなギャンブルに出たのだろうか? それは彼らもまた、信用――政治的な信用――を使い切ってしまったからだ。 この信用の不足は、欧州の北部と南部とでは異なる形態を取っている。ドイツ、オランダ、フィンランドといった国々の首脳たちの間には、新たな救済計画を持ち出しても、重いペナルティを科す内容でない限り有権者も議会もとにかく承認しないだろうという意識があった。 キプロスは小さな島国だから、経済を支えるのに必要な資金も比較的少なくて済む。額にして「わずか」170億ユーロだ。問題は、欧州の北部と南部の間では相手に対する信頼が基本的に不足しており、キプロスではそれが特に明確になるということだ。 北部と南部の相互不信 金融危機が始まってからずっと、ドイツのメディアは欧州南部の汚職の話であふれている。ドイツの有権者は、自分たちが汗水垂らして稼いだお金が根本的に腐敗している国々を支えるのに使われるという話を信じるよう仕向けられている。 キプロスは特に大きな問題だ。なぜなら、この国の銀行はロシアの不正な資金の避難先としてよく知られているからだ。キプロス経由で「往復」する資金、すなわちロシアからいったん持ち出された後、再びロシアに戻される資金の額からは、キプロスの銀行業界が猛烈な勢いで資金を洗浄していることがうかがえる。 10万ユーロを超える預金に税を課すことは、違法なロシアマネーを狙う効果的なやり方であるように思われる。そして、小口の預金者にも課税するという不可解かつ危険な決断は、苦境に陥った欧州南部の「一般市民」に対しても同情の念が尽きてしまったことを示している。 理屈の上では、ドイツのアンゲラ・メルケル首相をはじめとする欧州の首脳たちは有権者に対し、ここはひとつ歯を食いしばって、負担を求めることなくキプロスを救済しなければならない、そうしなければ欧州各地で銀行取り付け騒ぎが生じかねず、ついには自分たちの国の銀行が破綻してしまうのだと訴えることができたかもしれない。 だが実際には、理解できないという有権者の怒りの声がさらに強まった可能性が高い。 キプロスの支配者たちも、ほかの欧州諸国に対する政治的信用をごくわずかしか持ち合わせていなかった。EUには、和平合意が成立しておらず南北に分かれたままの状態でキプロスのEU加盟(2004年)を承認することに、かなり消極的な指導者が多かった。 ところがギリシャが、キプロスの加盟を認めなければEUの拡大そのものを拒否すると脅しをかけた。ポーランドやチェコ共和国などの加盟を認めない、というわけだ。 EUの指導者たちはこの恐喝行為に渋々屈した。後味の悪い結果となり、住民投票にかけられたコフィー・アナン国連事務総長(当時)による和平案をギリシャ系キプロスの有権者が否決したことで、その印象は特に強まった。その結果、キプロスが窮地に陥っても、同情されることはあまりなかったのだ。 だが、それ以上に大きな問題は、欧州の北部と南部の間に残る信頼と政治風土の溝だ。物事がうまく運んでいた危機以前は、公職者の高潔さのレベルが欧州各地で大きく異なり、「果てしなく緊密化する同盟」を目指す組織にとって問題だと言うことは、政治的に不適切であり、外国人嫌いとさえ見なされた。 ところが今、信頼と政治風土が域内で収束しないことが、少なくとも経済的な収束が進まないことと同じくらい重要であることは明白だ。また確かに、ドイツ、オランダ、スカンジナビア諸国も公職者の汚職という問題を抱えており、南欧全体を怠惰で腐敗した存在として描く風刺は著しく公正さを欠く。 それでも、ギリシャやイタリアといった国々で脱税が蔓延していることは事実だ。そのせいで、南部を救済するよう北部の有権者を説得することは常に難しかった。 オランダ大使の会合に見る「公金への態度」の違い 何気ない観察でさえ、公金に対する態度に大きな開きがあることがはっきり分かる。筆者は数年前、世界各地に駐在するオランダ大使が一堂に集まる会合に招待されたことがある。昼食はずらりと並んだサンドイッチとポテトチップスというあまり食欲をそそらないメニューで、しかも立食だった。 イタリアやギリシャの財政状態はオランダより悪かったものの、こうした国の大使はもっとましなものを食べているだろうと思ったものだ。 これは取るに足りないエピソードだが、このような文化的な違いは、話がキプロスの銀行に及んだ時に、欧州北部の人々が「もうたくさんだ」と言った理由を説明してくれる。欧州が公職における基準で確かな収束を生み出せなければ、その結果生じる信頼感の不足は最終的に、まずはユーロを破壊し、次にEUそのものを破壊する恐れがある。 By Gideon Rachman http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37401 文明とマネーの十字路キプロス 大国の文化と経済に翻弄された観光大国の物語 2013年03月21日(Thu) 竹野 敏貴 東地中海に浮かぶ小島キプロスが世界の関心の的となっている。3月16日行われたユーロ圏17か国財務相会談で、財政危機にあえぐキプロス共和国が最大100億ユーロの支援を受ける条件として、銀行預金に課税する、と発表したからである。
19日夜には、キプロス国会が預金課税案を否決、先行きは不透明だが、銀行預金者にまで負担を強いる前代未聞の政策が提示されたことに、世界は動揺を隠せない。 金融機関の総資産はGDPの3〜5倍とも アフロディーテ誕生の地、ぺトラ・トゥ・ロミウ海岸 ギリシャ国債購入の割合が極めて高い銀行の経営が、ギリシャの財政危機のあおりで急速に悪化し、昨年6月、EUなどに支援を要請していたキプロス。
しかし、当時のディミトリス・フリストフィアス政権はその条件となる国営企業の民営化などの改革を拒み交渉は難航していた。 ところが、2月の選挙で、緊縮財政に前向きなニコス・アナスタシアディス新大統領へと政権交代があり、国民のそして世界の大きな期待が寄せられるなか行われた交渉での答えがこれだったのである。 今回、そのほかにも、法人税の引き上げという条件が掲げられているが、この国の法人税率は一律10%とEUで最低。実質的なオフショア金融ビジネスセンターとなっており、金融機関の総資産は国内総生産(GDP)の3倍とも5倍とも言われるいびつな状況にある。 そしてその2〜3割はロシアの資金。ソ連崩壊の頃からロシアの新興財閥の投資場所となっているのである。マネーロンダリングの場との懸念も拭い切れず、そうしたことを「総合的に」考慮したうえでの政策であるようだ。 こうした金融ビジネスに次ぐキプロスの基幹産業は観光業。美しいビーチや美味なる食を求め、人口86万人ばかりの小国に、年間その3倍もの観光客がやって来る。 ただし、鉄道もなく、バス便もよくないから、タクシーかレンタカーで動くことになるのでお金はかかる。とは言え、英語も通じるからあまり苦労はしない。車が左側通行なのも日本人にはありがたい。 至る所にリゾートホテルが立ち並び、富裕層のための別荘も多いところはタックスヘイブンのカリブ海島嶼国家に似ている。しかし、この島の真の魅力は多くの文化が混在する歴史にある。 キプロスには「アフロディーテ誕生の地」という売り文句もあるが、これは単なる比喩ではなく、実際に南西部には愛と美の女神アフロディーテが海の泡から生まれたとされる海岸があるのだ。ロマンチックなギリシャ神話の世界を楽しもうと、訪れるハネムーナーも多い。 そんなキプロス出身の有名人としてテニス選手マルコス・バグダディスとともに名が上がるのがマイケル・カコヤニス監督。アフロディーテも登場するエウリピデスのギリシャ悲劇「エレクトラ」「トロイアの女」「イフゲニア」の映画化作品で知られる。 イスラム勢力との戦闘が絶えないキリスト教国 キプロスには至る所に遺跡がある その名を世界的なものとしたのは『その男ゾルバ』(1964)。クレタ島独特の社会像が描きだされ、アカデミー賞3部門を獲得、カコヤニス自身も監督賞にノミネートされた。
そして、この映画をさらに有名にしたのが音楽。ギリシャの弦楽器ブズーキ特有の音色に彩られたテーマ曲は、ギリシャ旅行をすれば、観光客相手のホテルなどで必ずと言っていいほど耳にするものだ。 その原作はクレタ島生まれのニコス・カザンザキス。 ノーベル文学賞候補にもなるような文豪だが、議論を呼ぶ作品も多く、そういった意味での代表作「最後の誘惑」は、1988年にマーティン・スコセッシ監督で映画化された時も、イエスの描き方などが物議をかもし、上映中止運動も起こった。 映画にはイエスの奇跡として知られる蘇生したラザロの姿もあるが、そのラザロが2度目の死までの30年間、主教として過ごしたとされるのがキプロスで、今もラルナカの地には聖ラザロ教会がある。 同じく映画に登場するパウロがキリスト教に改宗したのち、広く布教に向かう際、最初に訪れた地もキプロスだった。 こうして早くからキリスト教が伝えられていたキプロスは、ローマ帝国が分裂してからは東ローマ帝国に属していた。 しかし、イスラム勢力との戦いはたびたび。地中海の小島という形容がされるこの地だが、地図を見れば一目瞭然、欧州大陸諸国より、トルコ、パレスチナ、エジプトといった地域の方がずっと近いのである。 12世紀末の第3回十字軍の際、イングランド王(獅子王)リチャードがパレスチナに向かう途中、成り行きでこの地を征服したものの、すぐさまカトリックのフランク人に譲ったこともあった。 その後、イタリアの都市国家の支配下となり、ウィリアム・シェイクスピアの4大悲劇の1つ「オセロ」の舞台ともなった。このドラマの主人公はトルコとの戦いのためキプロスに赴任していたベネチアの軍人なのである。 民族問題から解放されたギリシャと残ったキプロス キプロスには壁がある そんなベネチアは、レパントの海戦で勝利したものの、前年奪取されたキプロスを取り返すことはできず、以後オスマントルコによる支配が続くことになる。
19世紀末の帝国主義華やかなりし時代となると、英国も獅子王の時代と違ってキプロスの地政学的価値に注目するようになる。 エジプトの植民地化をすすめ、スエズ運河ににらみを利かせる意味もあって、露土戦争後のベルリン会議でキプロスの管理権を獲得したのである。 そして、第1次世界大戦時には併合、1925年にはついに直轄植民地とする。 オスマン帝国崩壊後結ばれたローザンヌ条約では、本土ではギリシャ人とトルコ人の「住民交換」が行われ、ギリシャに残ったトルコ人はトルコに、トルコに残ったギリシャ人はギリシャへ「帰還」させられた。 多くの人が故郷を失う措置だったが、ギリシャでは正教徒が大部分を占めるようになり、その後、ほかのバルカン諸国のような少数民族問題からは解放される結果となった。その一方で、英国の植民地キプロス島では、混在する状況が続くのである。 第2次世界大戦後も英国領であり続けたキプロスでは、ほかの植民地同様、自立への動きが強まっていった。 テロ行為が活発化する様は英国映画『キプロス脱出作戦』(1965)にも描かれているが、ギリシャへの併合(エノシス)を希望する者が多数を占めながらも、トルコ人までもがテロ行為を繰り返す状況に、現実的な手段として1960年共和国として独立することが選ばれる。 もちろん、この時も英国は地政学上大切なこの島をただ手放すことはなかった。デケリアとアクロティリの空軍基地を残すことに成功したのである。 今もその地には英軍が駐留しており、今回預金課税案が発表されると、すぐさま、オズボーン財務相は3000人以上駐留する軍関係者に影響が及ばぬよう配慮すると保証した。 キプロスが背負った文明の十字路としての歴史 マイケル・カコヤニス監督のエウリピデスの映画化「イフゲニア」 もっとも、ロシア人の次に多い外国人とされるこの地に暮らす一般の英国人に対しては何の保証も確約されていないのだが・・・。
こうしてキプロス共和国はギリシャ系とトルコ系が混在するまま独立した。役職を一定の割合で分け合うことで均衡を保とうとしたものの、トルコ系への割り当てが多すぎるとの批判が強くなり、1963年にその縮小へと動いたことから状況は一気に悪化。 現実を見たマカリオス大統領がエノシス放棄へと向かうと、1974年には急進派によるクーデターが発生。それに対してトルコ系住民保護を名目として派兵されたトルコ軍が北キプロスを占領してしまったのである。 この時のトルコの作戦名は「Operation Attila」。カコヤニス監督はすぐさまキプロスへと飛び、「Attila ‘74」というドキュメンタリーを撮ったが、その視点はどうしてもギリシャ寄り。見る者により評価が極端に割れるものとなっている。 1983年にはトルコだけが承認する北キプロス・トルコ共和国の建国が宣言され、南北をグリーンラインと呼ばれる緩衝地帯が隔て、武器を持った平和維持軍兵士が警備する日々が続いている。 結局、本土での住民交換同様、政変の際、トルコ系は北に、ギリシャ系は南へ、と移住が進み、住み分けはそれなりに出来上がってしまった。 この地の対立はステレオタイプに言えば北のイスラム、南のキプロス正教という宗教によるものだが、古くは5000年前から異文化が数多く通り抜けて行った「文明の十字路」としての長い歴史が作り上げた根は実に深い。 2004年、キプロスはEU加盟を果たした。現実には分断国家のキプロス共和国だけの加盟である。その際、大きな問題となったのが、この国のタックスヘイブンとも言える状況だった。 その結果、法人税は2倍以上に引き上げられ、現行の10%となった。2008年にはユーロが導入され、さらに進むであろう南北の経済格差が大きな懸念となった。 そこには別の面もあった。トルコもEU加盟交渉を開始したことから、そのアキレス腱とも言えるキプロス問題解決へと積極的に動く可能性もあり、再統合への道も見えてきたのである。 ところが、現実にはEUのスタンダードを全く満たすことができず、遅々として加盟交渉は進んでいない。昨年、期限は2023年だと、レジェップ・エルドアン・トルコ首相の方が発言するまでになってしまっている。 一方、その後始まった欧州の経済危機を尻目に、トルコ本国の経済成長は堅調だ。ベースが違うとはいえ、今回の事態を見て、トルコは今後をそしてキプロスのことをどう考えるのだろうか。その動向にも注目していきたい。 (本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号) (703)その男ゾルバ (704)キリスト最後の誘惑 (705)キプロス脱出作戦 703.その男ゾルバ Zorba the Greek 1964年米国・ギリシャ映画 その男ゾルバ (監督)マイケル・カコヤニス (出演)アンソニー・クイン、アラン・ベイツ、イレーネ・パパス (音楽)ミキス・テオドラキス
ギリシャ人の血を引く英国の作家バジルは、ギリシャで出逢った音楽家だというゾルバを、クレタ島にある亡父の遺産の炭鉱の現場監督に起用した。 クレタ島の小村で暮らすようになった2人。ゾルバは宿の女主人と、バジルは世間と没交渉状態にある未亡人と惹かれ合うようになっていく。 ところが、未亡人に思いを寄せていた少年が自殺してしまい・・・。 クレタ島出身のニコス・カザンザキスが1946年に発表した小説を、キプロス出身でギリシャで活躍中のカコヤニスが監督した地域の雰囲気が強く伝わってくる文芸作。 ミキス・テオドラキスのテーマ音楽は今やギリシャ音楽を語るとき欠かせないエバーグリーンとなっている。 704.キリスト最後の誘惑 The last temptation of Christ 1988年米国・カナダ映画 キリスト最後の誘惑 (監督)マーティン・スコセッシ (出演)ウィレム・デフォー、ハーヴェイ・カイテル、バーバラ・ハーシー (音楽)ピーター・ガブリエル
ローマ帝国支配下のパレスチナを舞台に、かつて『偉大な生涯の物語』(1965)『キング・オブ・キングス』(1961)などの映画作品が描いた新約聖書に即したイエスの生涯を、ニコス・カザンザキスの原作をベースとして、イエスの人間としての面をも描いた異色作。 上映反対デモまで起きた問題作だが、公開後は大ヒットを記録した。 705.キプロス脱出作戦 The high bright sun 1965年英国映画 キプロス脱出作戦 (監督)ラルフ・トーマス (出演)ダーク・ボガード、ジョージ・チャキリス、スーザン・ストラスバーグ
1950年代のキプロスでは、マカリオス大司教に導かれた独立運動が激化していた。 そんなキプロスで諜報活動に明け暮れるマクガイア少佐にとって、恋人ジュノーとの時間が唯一の息抜き。 ある日、ジュノーは父の旧友の家でキプロスの青年と口論となる。ところが、その青年は独立運動のゲリラの幹部で・・・ 英国統治下のキプロスを舞台に、独立運動に揺れる島の姿を描いた珍しい作品だが、あくまでも英国からの視点に終始した娯楽映画となっている。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37403
政治家殺すに拳銃は不要、博士論文あればいい 連邦教育大臣の辞任でドイツ政界に激震走る 2013年03月21日(Thu) 川口マーン 惠美 ドイツで変なことが起こっている。2月9日、連邦教育大臣のシャヴァーン氏が辞任した。彼女が1980年に書いた博士論文が盗作であると指摘され、去年、母校のデュッセルドルフ大学が調査に入っていた。 そして、大学は2月5日にその結果を発表し、博士号を剥奪したのである。多くの引用を使いながら、参考文献を明示しなかったというのが剥奪の理由である。 論文盗作をめぐる辞任劇は過去にも 哲学部の学部長が記者会見で、問題の論文について、「体系的に、故意に、不正を論文全体に分散している。自分の力で作り上げなかった思考上の業績を、自分の物であると偽った」と述べた。 それも、怯えたような顔で、極悪人を裁くような口調で言ったのだ。そのうえ、論文の調査はこれで終了し、外部の第三者に依頼する必要はないとした。 一方、シャヴァーン氏はこの決定を認めず、司法の裁断に任せるため、大学を訴えるという声明を出した。博士号の有無よりも信用の問題である。シャヴァーン氏はメルケル政府の重鎮で、アンゲラ・メルケル首相とは特に親しい、よき戦友のような仲だった。 ただ、どんな判決が出るにせよ、裁判は時間がかかる。ところが、9月には総選挙が控えている。盗作容疑で博士号を剥奪された教育大臣を抱えて選挙運動をするのは、メルケル首相の負荷が大きすぎる。そんなわけで、話し合いの結果、9日にシャヴァーン氏の辞任ということになったのである。 辞任記者会見を行うドイツのシャヴァーン教育相〔AFPBB News〕
辞任の記者会見は感動的だった。メルケル首相によって、シャヴァーン氏に対する称賛と謝辞が述べられた。その言葉は温かく、メルケル首相の悔しさがひしひしと伝わってくるものだった。 シャヴァーン氏の短いスピーチも、決然としていてよかった。自分の正当さを主張したあと、しかし、政府の重荷になることはできないので辞めると、彼女は手短に語った。すべてが辞任劇ではなく、晴れやかな儀式のように見えた。 実は2011年2月、当時の国防大臣が、同じく博士論文の盗作が原因で退いた。カール=テオドール・ツー・グッテンベルクだ。 当時39歳、12世紀まで遡ることのできるやんごとなき家柄の出身で、有能で優雅、国民の間に絶大な人気があった。ついでに言えば、夫人は鉄血宰相ビスマルクのひ孫だ。推定資産は約4億ユーロ(450億円)。マスコミは、彼をしてスーパースターと呼んだ。 メルケル内閣の人気閣僚だったグッテンベルク元国防相〔AFPBB News〕
しかし、そのスーパースターが2006年に書いたという論文は、確かにいただけない物だったようだ。論文を書いた当時、すでに議員であったグッテンベルク氏は、誰かに代筆させたのではないかと、私は想像しているが、それを言っても始まらない。 このとき、グッテンベルクの論文が盗作だと言い出したグループは、インターネットをフルに活用して、無断引用の部分を見つけた人が誰でも投稿できるようなページを開設していたので、グッテンベルク攻撃は一時、まるで暇人のゲームのようになった。 その結果、論文の2割がどこからか引っ張ってきた他人の論文そのままだということが分かった。そして、氏はついに「コピー・アンド・ペースト大臣」と呼ばれるに至り、政治家として再起不能となった。メルケル氏は将来の首相とまで言われた人材を失い、打撃を受けたのであった。 ただ、盗作は事実だったとしても、この事件には政治的な匂いが濃厚だった。しかも、政敵を追い落とすには、ハニートラップ以外に、博士論文攻撃という方法があるということに、皆が気付いたのである。 博士論文の調査を請け負う会社。メルケル首相も標的に? グッテンベルク辞任を仕留めた1カ月後、この博士号狩りのグループは、ヴロニプラグという会社を設立した。顧客の依頼により博士論文を調べる会社だ。 要するに、盗作だと証明するのが仕事だが、これが途方もなくお金になることが分かったのだろう。今回のシャヴァーン大臣の博士論文を調べて、盗作だと言い出したのも、もちろんこの組織だ。 ヴロニプラグの創設者、M・ハイディンクスフェルダー氏(47歳)のインタビューを読んだ(ハンブルガー・モルゲンポスト紙、2月11日付)。氏は2004年から12年まで、海賊党の党員であることを隠してSPD(社民党)に所属していたというから、スパイのようなものである(海賊党というのは比較的新しい党で、2011年に若者の浮動票を得て一時的に盛り上がった)。 それが明るみに出たので、SPDをある日の夜中に突然辞めて、10時間後には海賊党のリストに登場したと、本人がインタビューで語っている。 実は、氏はつい最近まで、本名を絶対に明かさなかった。グッテンベルク大臣の論文騒ぎのときの記事を読むと、まだ匿名になっている。それが今、凱旋将軍のように姿を現し、40の論文を手掛け、そのうち15が国会議員のものだと豪語している。 調べる方法は、同社のホームページに書いてあるところによれば、論文をあるソフトに掛けるらしい。すると、75%の盗作が認められる部分、50%の盗作が認められる部分などと、自動的にカラーの見取図となって出てくる。以下はインタビュー記事からの抜粋。 ハンブルガー・モルゲンポスト(以下、H・M):「あなたは、博士論文の盗作を探す仕事で生活しているのか?」 M・ハイディンクスフェルダー(以下、H):「2011年11月からはそうだ。まだオンライン研究者という職もあるが、それは目下のところ休業中」 H・M:「他人の論文を調べさせたければ、あなたに依頼することができるが、その条件は?」 H:「2つの方法がある。金を払って依頼する。あるいは、興味深い物件であること。値段は数百ユーロから始まり、ちゃんと調べる場合は数千ユーロとなる」 メルケル独首相は米経済誌フォーブスが昨年8月に発表した「世界で最も影響力のある女性100人」の第1位に、2年連続で選ばれた〔AFPBB News〕
H・M:「メルケル首相の博士論文に欠陥を見つけたら、報奨金を出すという申し出を受けているという話は本当か?」 H:「本当だ。しかし、それについては話したくない」 H・M:「5ケタの金額?」 H:「ノーコメントだ」 H・M:「しかし、メルケル氏の論文を調べているのではないか?」 H:「下調べは終わっている。しかし、だからといって、それをさらに進める価値があるというわけではない。ところで、大事なことを言っておかなければならないが、私の手掛けている論文は、有名な人々の物だけではない。私はすでに何人もの教授たちを失脚させた。たとえ彼らが、健康上の理由で辞任していたとしても」 メルケル氏は物理学者だ。彼女の論文は、独自の実験をテーマにしており、コンピューターの手には負えないという話を聞いた。そうでなければ、とっくの昔にやり玉に挙がっているはずだ。 そのとき、私の脳裏に、シャヴァーン氏の博士号剥奪の発表をした、デュッセルドルフの哲学部の教授の姿が浮かんだ。あの硬直した態度は、あまりにも不自然だった。ひょっとしたら彼も、「あなたの論文も調べたよ」と脅迫されていたのではないだろうか。 博士論文の盗作調査は正義かゆすりか 引用であるかないかの証明は、多くの場合、難しい。コピー・アンド・ペーストは別として、シャヴァーン氏の論文のように哲学の部門などでは特に難しいだろう。 自分で考え出したと思ったことを、他の人がすでに記していた。表現が違うだけで、内容は似ているということは大いにありうる。それをコンピューターが自動的に発見し、故意に引用を隠したとされるなら、非難された人間は無実を証明できなくなる。メルケル氏のように、自然科学の分野でない限り、文系の場合はどんなに注意しても、常にその危険に晒されていると言える。 だから、「あなたの論文を調べた」ではなく、「調べる予定だ」と言われただけで、大学教授たちが怯えるのは分かる。もちろん、政治家にとっても命取りだ。 ちなみにハイディンクスフェルダーは、「政治家は、他の人よりも高い完璧性を証明しなければいけない。なぜなら、彼らは国民を代表し、彼らの名において、重要なことを決定するからだ」と言う。 つまり自分のしていることは、お金のためでも、政治的な目的のためでもなく、道徳を正すためだと主張しているのだ。なるほど理屈ではそうだ。しかし私には、彼のエネルギーが、どうしても犯罪的に見えて仕方がない。 いずれにしても今回は、多くの人が、何かおかしいと感じているようだ。著名なジャーナリストもその1人らしく、この報道の際に強烈な皮肉を放った。「シャヴァーン大臣が30年前に担当の教授を撲殺していたなら、すでにそれは時効になっていた」と。しかし、シャヴァーン氏には残念ながら、殺人ではなく、論文盗作の容疑が掛かっている。時効はない。 お金で博士号を買える国は、世界に多々ある。博士号をお金で買おうなどとは、もちろん浅ましい話だが、博士号をネタにゆすりを働く人間がいるなら、それはもっと浅ましい。裁判所が、シャヴァーン氏の訴えに対してどんな判決を下すかが、今から楽しみだ。 キプロス、代替案策定が火急の課題−ECBやロシアも焦点
3月20日(ブルームバーグ):キプロス議会が銀行預金課税法案を否決し、財政難のキプロスをユーロ圏にとどめるための救済パッケージが宙に浮いたことを受け、欧州の政策当局はどの程度までキプロスに圧力をかけるべきかを思案している。 欧州中央銀行(ECB)が来週までキプロスの銀行を支えるとの観測から、20日の株式相場とユーロは上昇している。ECB政策委員会はこの日、フランクフルトで会合。ドイツのメルケル首相はキプロス議会の決定は「遺憾に思う」としながらも、同国の銀行が救済に貢献する限り、同国への関与を続ける考えを示唆した。 メルケル首相はベルリンで記者団に、「キプロスの銀行セクターが持続可能であることが重要だ」とした上で、「キプロスはユーロ圏内のわれわれのパートナーであり、従ってわれわれは共に解決策を見つけなければならない」と語った。 救済コストの一部をキプロスの預金者に負わせようとする欧州の方針は非難の的となり、議会はこの法案を否決した。ブリュッセルでの徹夜の交渉を終えて16日に帰国したアナスタシアディス大統領は、この措置以外の選択肢はECBが同国の銀行の1つに対する資金供給を停止するという「言い表せないほどの悲劇だ」と訴えていた。 ECBと国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)欧州委員会で構成するトロイカの当局者はキプロス入りしており、一段の資本規制や銀行休業を週末まで延長する可能性を協議している。事情に詳しい欧州当局者が匿名を条件に明らかにした。 焦点はロシアに 独紙ツァイトに掲載されたインタビュー記事によると、ECBのアスムセン理事は「支払い能力のある銀行にしかECBは緊急流動性を供給できない」と言明した。「銀行セクターの早急な資本増強を確実にする救済パッケージが早期に合意されない限り、キプロスの銀行の支払い能力は自明とは言えない」と述べたという。 銀行預金案が否決された後、ロシアにも注目が集まっている。格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスの見積もりによれば、ロシア企業と個人がキプロスで有する資産は概算で310億ドル(約2兆9600億円)。キプロスのサリス財務相は19日の採決を待たずに、金融支援を協議するためモスクワに飛んだ。 サリス財務相はロシアのシルアノフ財務相との会談後、両国が融資について協議中だと述べた。25億ユーロ(約3100億円)の既存融資の期間延長、あるいは新規融資の可能性について問われたサリス財務相は、「それらを超えた内容」を含め協議したと回答。交渉は「必要な限り続ける」と続けた。 ルクセンブルクのフリーデン財務相は19日のインタビューで、ユーロ圏財務相ができる限り早急に会合を開くべきだと述べた。会合の議長を務めるオランダのダイセルブルーム財務相もユーログループはキプロスを援助する用意があると述べた。 代替案の策定が急務 欧州委は必要資金を調達する代替策の提案をキプロスに求めた。ドイツ財務省のコットハウス報道官も定例記者会見で「ボールは完全にニコシア側にある」と述べた。 アナスタシアディス大統領は20日、ニコシアで政党指導者らと会談した。同日のキプロス証券取引所と銀行は閉鎖されている。超党派の専門家チームはキプロス中銀に集結し、58億ユーロを調達するための「プランB」を協議すると、キプロス政府のスティリアニデス報道官が明らかにした。 キプロス国債は昨年6月にECBオペの担保として不適格になっているため、キプロスの市中銀行は同国中銀の緊急流動性支援(ELA)を通じて資金を得ている。各国中銀のELA実施にはECB政策委員会の許可が必要。ECBが維持不能な状況だと判断すれば、ELAを停止させることができる。ECBは19日の声明で、「既存のルールの範囲内で」流動性供給を続けると表明した。 原題:Europe Weighs Cyprus’s Fate After Lawmakers Reject BankLevy (1)(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ベルリン Patrick Donahue pdonahue1@bloomberg.net;フランクフルト Jeff Black jblack25@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net;Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net 更新日時: 2013/03/21 00:29 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJXA606TTDVK01.html |