http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/178.html
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表題は、「円安進行 中日の競合が激化」と、中国が円安を危惧し日本の経済政策を非難する内容と思わせるものだが、内実は、日本の経済金融政策を擁護する内容になっている。
中国の学者がそのような評価をするのは、日本にとって現在の中国は、韓国やドイツよりも、米国と同等レベルで“好ましい国際分業”が出来上がっているからと推測する。
現在のところ、円安にぴりぴりしているのは、韓国であり、ドイツである。(米国は、例により自動車産業が危惧を表明している)
レートの変化から言えば、12%程度の韓国よりも、20%近く上昇したユーロを通貨とするドイツのほうがきついかもしれない。しかし、自動車関連を別にすれば、日独のあいだも国際分業ができあがっているので、ドイツが深刻な打撃を受けることはないであろう。
円安でどこより打撃を受けるのは、自動車・家電・造船など輸出品目の上位10のうち9までが日本と激しく競合している韓国である。
ドイツのメルケル首相やIMFのラガルド専務理事は、このところの円安を政治的介入によるものと日本政府が悪いかのように語っているが、安倍首相の“願望表明”はあったとしても、目標レートを示した“口先介入”さえ行っていないのだから、的外れの非難である。
ドイツのメルケル首相やIMFの専務理事に反論させてもらうが、ユーロが対円で大きく上昇したのは、ひとえにECB=ユーロ圏の金融財政政策のせいなのである。
ECBがスペインなどの国債を無制限で買い入れる政策と、日本の量的金融緩和政策がシンクロすることで、円借り入れ→ユーロ転換のキャリートレードを増大させ、ユーロの対円レートを上昇させたのである。
日本の量的緩和政策が、円→ユーロのキャリートレードに“安心感”(円安傾向の持続)を与えたことは事実だが、理屈で考えればデフォルトを想定しなければならない国の国債さえ無制限に買い入れるというECB政策がなければ、それほど増大しなかった取り引きである。
私が投機家であれば、“まだ強い”段階の円を低利で借りてユーロに転換し、今なおリスクプレミアムの金利が付いているスペインやイタリアの国債を買ったであろう。
1ユーロ=100円のときに10億円借り、1千万ユーロ分のスペイン国債を買い、それを1ユーロ=120円の段階で売れば、12億円を手にすることができる。
10億円の短期借り入れに金利を1%支払ったとしても、12億円−10億円−1千万円=1億9千万円の利ざやを得られる。
(実際は、借り入れ金利もスペイン国債の利子を考慮すれば最低でもチャラになるので、2億円超の利益を得られる)
このような推移で円が対ユーロで安くなれば、ユーロ対ドルのレート論理から、必然的に、対ドルの円レートも安くなる。
デフレ脱却を後押しするため現在の90円水準を望ましいレートと考えているが、円安が今後さらに進むとすれば、円キャリー取引がより多くの通貨に対して行われるようになったときである。
国内では輸出企業や株式投機家などが輸出条件を良化させる円安状況に喝采を送っているが、円安を好機として国民経済の活性化に利用しなければ、円安がかえってボディーブローのように国力を劣化させることになるだろう。
それは、ほとんどの期間が小泉政権時代と重なる「キャリートレードによる異常円安に支えられた戦後最長の好景気」とリーマン・ショック後の日本経済を考えればわかる。
「小泉改革」が日本経済を強化したという見方もされているが、それは、小泉政権時代の好景気が、「規制緩和」の成果ではなく、異常円安に支えられたものであるという事実を忘れ去ったものでしかない。
異常とも言える円安に支えられた好況を、デフレ脱却につながる国民経済の好循環に活かさなかったどころか、労働市場を中心とした「規制緩和」政策を行うことで、企業がより多く内部留保に励む条件を与えた。
このため、日本経済は、リーマン・ショック後の“円ドルレートの正常化過程”で、 外需依存のもろさを見せ、グローバル企業もだが、多くの国民が過酷な状況に追いやられたのである。
最長の好況期に恵まれていた小泉政権時代の正しい経済政策は、異常円安という恩恵で得た「おまけの付加価値」を、デフレ脱却と内需の着実な拡大に活かすことだった。具体的には、給与の増額であり、設備投資及び研究開発費の増加である。
安倍政権は、今さらのように、消費税増税の地ならしとして「給与増で法人税減税」政策を打ち出しているが、そのような政策は、戦後最長の好景気に沸いた(グローバル企業だけで多くの国民はそのような実感はもてなかった)小泉政権時代に実施しなければならなかったのである。
年明けから取り沙汰されるようになり、実際にも採用さることになった「給与増で法人税減税」政策は、私が10年以上前に提言し、財務省官僚を自称されていた「匿名希望」氏ともあれこれ議論したものである。
10年前の日本経済の状況に対応した提言なので、現在においてもそれが有効性をもっているかどうか、機会を改めて説明したいと思っている。
冗談のような話だが、13年度税制における法人税減税政策は、そのときに提示した3点セット「給与増加減税・設備投資減税・研究投資減税」がそっくりそのまま採用されている。
※ 参考投稿
「【「デフレ不況」からの脱却をめざして】 グランド・デザインを持ちつつも、まず第一歩の政策実施を [政財界が望む「法人税減税」の活用方法]」
投稿者 あっしら 日時 2002 年 8 月 29 日 21:43:46:
http://www.asyura2.com/2002/hasan13/msg/284.html
[一部引用]
「■ 「供給力>供給」のギャップ縮小策としての「法人税減税」
法人税減税を先行的に実施するという政策アイデアが出ているが、法人税は利益に対して課税されるものだから、その減税方法は多様なものが可能であり、経済状況を変動させる力にもなる。
予定されている法人税の減税を所属勤労者の給与水準を引き上げる方向に誘導できる内容にしなければならない。
人件費のみに限定せず、設備投資や研究開発投資への減税措置もそれなりに有効である。
人件費は償却期間もない無条件の「費用」だから、設備投資のように償却期間を短縮するかたちでのインセンティブは働かない。
インセンティブにするためには、前期からの人件費増加分を考慮して課税方法を決定しなければならない。
例えば、10億円の人件費が10億5千万円になったら、増加分の5千万円の50%である2500万円を所得から控除するといったものである。
黒字が2500万円であれば、この企業の所得は0円となる。
法人税減税予算の2兆円をすべて人件費増加インセンティブに活用すれば、10兆円ほどの給与所得者の所得増加となる。
これは、消費税税収を上回る規模だから、デフレ解消に必ずや資する。」
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円安進行 中日の競合が激化
このほど開催されたダボス会議において、一部の国家の指導者と金融界の有力者は安倍政権の金融緩和策をこぞって非難し、日本が「金融戦争」を引き起こしているとした。日本の量的緩和策は、本当に世界金融戦争を引き起こしうるのだろうか。環球時報が伝えた。(文:周永生・中国日本経済学会理事)
中国には、「重病の治療には劇薬を用いる」という古いことわざがある。20数年間に渡り低迷している日本経済にとって、安倍首相の2000億ドル規模の量的緩和策は、「劇薬」の程度に遠く及ばない。歴代の日本政府が投じた8000億ドルの資金はすでにほぼ使い尽くされたが、日本経済の起死回生の効果に達しておらず、世界金融に対しても大きな影響を及ぼしていない。むしろ日本経済の世界に対する影響力が日増しに低下している。細かさを重視する考え方の制限を受け、日本の経済政策は非常に控えめであり、往々にして小規模な投入を講じるばかりだ。この探りを入れるような戦略は、日本経済に与える影響さえ限られているのだから、世界金融戦争を引き起こすはずもない。
世界の紙幣印刷競争を引き起こしたのは米国とEUであり、日本はせいぜいその追随者でしかない。世界では一部の人間が責任を日本になすりつけようとしているが、これは世界金融市場の変動を引き起こした自らの責任逃れであり、本国もしくは本地域でより大規模な量的緩和策を実施するための口実である可能性もある。これこそが中国の警戒すべきことであり、日本にばかり注目してはならない。
別の面から論じれば、量的緩和もそれほど恐ろしいものではない。量的緩和は、緊迫する金融、経済成長の原動力不足を受け講じられる、やむを得ない措置なのだ。これを実施しなければ、経済は引き締めの繰り返しに陥るだろう。企業は投資可能な資金を持たず、消費者も消費能力を失う。これでは消費を刺激し、経済と福利厚生の充実を促すことは不可能だ。他国が量的緩和策を講じたからといって、世界で「金融戦争」が生じると憶測してはならない。我々は大げさな言葉に耳を傾けるのではなく、事実そのものについて論じ、日本の金融措置から受ける影響について真剣に考慮するべきだ。
円安進行は中国の対日輸出に影響を与え、対日輸出に支障が生じる可能性がある。特に低付加価値商品への影響が深刻だ。また円安により、日本の一部商品の中国市場におけるシェアが回復し、上昇する可能性がある。これらの商品は海外で競争力を高め、中国の海外市場シェアに食い込むだろう。中国製品の多くはこれまで、低価格により日本製品と競争してきた。この流れを今後10年内に変えることは難しい。日本は現在、金融の手段により中国製品の価格優位に打撃を与えており、新たな危機が生じる可能性が高い。金融戦争は現実的ではない。中国は海外市場において、いかに日本製品と競合すべきかを検討しなければならない。(編集YF)
「人民網日本語版」2013年1月30日
http://j.people.com.cn/94476/8113379.html
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- いくつかの補足:“巻き戻し”効果の円安など あっしら 2013/1/31 10:14:30
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