19. 2013年4月16日 02:22:58
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>日本学士院の英文論文誌、Proceedings of Japan Academy Series B89でオンライン発表これか サンプルの偏りが小さく、初期のヨウ素被曝の評価に問題がなければ、今後の晩発性障害は、ほぼ無視しうるレベルになるということになるが 今後の実証が待たれる https://www.jstage.jst.go.jp/browse/pjab/89/4/_contents Internal radiocesium contamination of adults and children in Fukushima 7 to 20 months after the Fukushima NPP accident as measured by extensive whole-body-counter surveys By Ryugo S. HAYANO,*1,† Masaharu TSUBOKURA,*2 Makoto MIYAZAKI,*3 Hideo SATOU,*4 Katsumi SATO,*4 Shin MASAKI*4 and Yu SAKUMA*4 (Communicated by Toshimitsu YAMAZAKI, M.J.A.) Abstract: The Fukushima Dai-ichi NPP accident contaminated the soil of denselypopulated regions in Fukushima Prefecture with radioactive cesium, which poses significant risks of internal and external exposure to the residents. If we apply the knowledge of post-Chernobyl accident studies, internal exposures in excess of a few mSv/y would be expected to be frequent in Fukushima. Extensive whole-body-counter surveys (n F 32,811) carried out at the Hirata Central Hospital between October, 2011 and November, 2012, however show that the internal exposure levels of residents are much lower than estimated. In particular, the first sampling-bias-free assessment of the internal exposure of children in the town of Miharu, Fukushima, shows that the 137Cs body burdens of all children (n F 1,383, ages 6–15, covering 95% of children enrolled in town-operated schools) were below the detection limit of 300 Bq/body in the fall of 2012. These results are not conclusive for the prefecture as a whole, but are consistent with results obtained from other municipalities in the prefecture, and with prefectural data. https://docs.google.com/file/d/0Byf-QYeE0N7pTWFyRnVhMnhZNmM/view?sle=true 日本学士院紀要 Proceedings of the Japan Academy Series B 89 (2013) 157–163 の抄訳
福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果 ― 福島第一原発事故 7–20 ヶ月後の成人および子供の放射性セシウムの体内量 ― 早野龍五:東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 坪倉正治:東京大学大学院医学系研究科 生殖 · 発達 · 加齢医学専攻 宮崎 真:福島県立医科大学 放射線健康管理学講座 ∗ 佐藤英夫、佐藤勝美、正木 真、佐久間裕:ひらた中央病院(福島県石川郡平田村) 2013 年 4 月 11 日 オンライン掲載† 概要 福島第一原発事故は、福島県内の土壌を放射性セシウムで汚染した。チェルノブイリ事故で 得られた知見をそのままあてはめると、福島県県内の人口密集地で、年に数 mSv を超える内 部被ばくが頻出することが懸念された。 しかし、ひらた中央病院で 2011 年 10 月から 2012 年 11 月に行った 32,811 人のホールボ ディーカウンター検査結果は、住民の内部被ばくが、この予想よりも遙かに低いことを明らか にした。特に、2012 年秋に、三春町の小中学校の児童生徒(1383 人:在校生の 95 %)を測定 したところ、全員が検出限界未満( 3 mSv 合計 全期間(人数) 106,070 14 10 2 106,096 2012 年 2 月 1 日以降 15,383 13 10 2 15,408 90,687 1 0 0 90,688 が、その一つが、福島県が 2011 年 6 月から始めた WBC 測定である。表 1 のように、100,000 人 以上の住民を WBC で計測し*2 、受診者の 99.9% がセシウム 134、137 両方の預託実効線量を足し ても 1 mSv に届かない。 ただし、福島県の WBC 結果公表には、Bq/kg もしくは Bq/全身 での細かな分布が含まれてお らず、測定された住民が、一日平均何 Bq の放射性セシウムを摂取しているのか、そしてそれが地 表に降下した放射性物質の濃度と関連するのかを知ることが出来ない。 以下では、福島県内の住民の放射性セシウムの摂取量が、実際にどれだけ低いのかを呈示する。 2 方法 〇 ひらた中央病院における WBC 検査 〇 FASTSCAN による 2 分間測定 〇 検出限界 300 Bq/全身(セシウム 134、137 ともに) 〇 身長 110 cm 以下:20 cm 踏み台を使用 身長 125 cm 以下:12 cm 踏み台を使用 〇 検査前にサーベイメーターによる評価あり 〇 2012 年 3 月 1 日より全更衣あり 〇 2011 年 10 月 17 日 ∼2012 年 11 月 30 日の期間に総数 32,811 人を検査(図 2) (ちなみに、このデータは、福島県が HP で公表している統計には含まれない) 〇 総数中、福島県民が 73 %、茨城県民が 23 % 〇 図 3 に福島県民居住地と土壌へのセシウム地表沈着量の関係を示す 論文投稿時に福島県 HP に掲載されていた資料より。現在は更に人数が増えている。 *2 3 Age distribution 2500 2000 Number of Subjects 1500 1000 500 0 0 20 40 60 Age 80 100 図 2 WBC 受診者の年齢分布 (4 歳–93 歳、中央値 12 歳、平均 19 歳)。横軸は年齢、縦軸は人数。 Number of Fukushima subjects Hn=24004L vs Deposition density 8000 Number of Subjects 6000 4000 2000 0 0 50 100 Cs Deposition Density HkBqêm 2 L 137 150 200 669 250 300 350 図 3 WBC 受診者のうち、福島県内在住者がどの程度の土壌セシウム 137 沈着量のところに 居住しておられたかを示す分布。横軸はセシウム 137 の沈着量 kBq/m2 、縦軸は人数。 3 結果 3.1 全体像 有意検出者のセシウム 134・137 比は放出初期におよそ 1:1 であったが、時間経過に伴いセシウ ム 134 が減衰する様子が WBC で捉えられている(図 4) 。以下、本論文では、セシウム 137 の計 測結果のみを示す。 ひらた中央病院のデータでは、2012 年 3 月を境に急激な陽性率低下があるが、3 月 1 日から全 員にガウン更衣をした効果と類推される(表 2、図 5、および図 6 を参照) 。つまり、2011 年 10 月 から 2012 年 2 月までの 5 ヶ月間に検出された 15 % の陽性者の中には、着衣の表面汚染がある割 合で含まれていた可能性が高い。しかし、その定量的評価はできない。そのため、2012 年 3 月以 4 Csê137 Cs concetration ratio 134 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0 Ê Ê Ê Ê Ê Ê Ê 200 300 400 500 Days after the accident 100 600 図4 比率の経時変化。横軸は事故後の日数。実線は事故直後の比率を 1:1 と仮定し、物理学的半減期 で計算した結果。 ひらた中央病院のホールボディーカウンターで測定されたセシウム 134:セシウム 137 の 20 Cs Detection Percentage 137 Ê 15 Ê Ê 10 Ê 5 Ê Ê Ê Ê Ê Ê Ê Ê Janê12 Marê12 All Children 0 Novê11 セシウム 137 の検出率の経時変化。黒は受診者全員、赤は子供。 Ê Ê Ê Ê Ê Ê Mayê12 MonthêYear Ê Ê Ê Ê Ê Julê12 Sepê12 Ê Ê Ê Novê12 図5 降のデータの解析を主に行うこととした。 表 2 、図 5、および図 6 から言えることは 1. 福島県の内部被ばくレベルは土壌汚染のレベルに比して非常に低い。 2. ことに小児においては、2012 年 5 月以降に受診された 10,237 人で、検出限界(300 Bq/全 * 身)を超えた方がいない。3 3. ごくわずかに、100Bq/kg(数千 Bq/全身)を超える放射性セシウムを保有する方がおられ なお、検出限界における推定実効線量の最大値は、 ∼ 10 才:21 µSv/年( 5.8 Bq/日 ) ∼ 15 才:13 µSv/年( 2.7 Bq/日 ) ※()内は一日平均摂取量 である。 *3 5 表 2 ひらた中央病院での WBC 検査結果。n は受診者数、ndet はセシウム 137 検出者数、 ndet /n はセシウム 137 検出割合。左側に全受診者の結果を、右側に 15 歳以下の子供の結果を 示す。また、表の上半分は、全員更衣前、下半分は全員更衣後の結果である。 全員更衣前の小計 全員更衣後の小計 年月 2011 年 10 月 11 月 12 月 2012 年 1 月 2月 2012 年 3 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 合計 n 638 2,258 2,338 2,843 2,949 11,026 3,572 3,043 1,056 1,776 2,325 1,979 2,416 3,237 2,381 21,785 32,811 全受診者 ndet 137 ( Cs) ndet /n (%) 76 327 352 341 244 1,340 113 44 13 13 6 10 1 1 11 212 1,552 n 12.0 15.0 15.0 12.0 8.3 12.1 3.2 1.4 1.2 0.7 0.3 0.5 0.0 0.0 0.5 1.0 312 970 1,456 1,665 1,907 6,310 1,821 1,162 321 1,079 1,236 1,223 1,804 2,736 1,838 13,220 4.7 19,530 子供 (年齢 ≤ 15) ndet 137 ( Cs) 33 85 133 123 113 487 9 3 0 0 0 0 0 0 0 12 499 ndet /n (%) 10.6 8.8 9.1 7.4 5.9 7.7 0.5 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.09 2.6 表3 ひらた中央病院でセシウム 137 の体内量が最も多かった 4 名の方々のデータ。最初の検 査結果(左)と、二回目の検査結果(右)の比較。 年齢 性別 男 74 70 74 66 男 女 女 居住地 二本松 川俣 二本松 川俣 137 一回目 Cs (Bq/全身) 12,270 7,032 4,830 4,300 測定月 2012.8 2012.7 2012.8 2012.7 137 Cs (Bq/kg) 183.7 111.6 69.4 69.6 二回目 測定月 2012.11 2012.11 2012.11 2012.11 137 Cs (Bq/全身) 6,177 2,547 2,139 1,485 137 Cs (Bq/kg) 91.9 40.6 30.3 23.9 * たが(表 3)4 、天然のキノコやイノシシ、川魚などの食材を日常的に、未検査で摂取してい たことがわかっている。これらの方々は、汚染食材の摂取を控えることで、生物学的半減期 に沿った体内放射性セシウム量の減少が確認されている。 最も高い方であっても、その実効線量は、約 1mSv/年程度であり、前述のチェルノブイリ事故後の係数を用いた予 測値よりも低い。 *4 6 All subjects: Oct 2011 Feb 2012 n 11026, nnd 9686 88.0 150 Frequency 100 50 0 0 100 150 40 30 Frequency 20 10 0 0 200 All subjects: Mar 2012 Nov 2012 n 21785, nnd 21573 99.0 50 137 Cs concentration Bq kg Children age 15 : Oct 2011 Feb 2012 n 7045, nnd 6558 93.0 50 137 Cs concentration Bq kg Children age 15 : Mar 2012 Nov 2012 n 15108, nnd 15096 100.0 100 150 200 60 50 40 Frequency 30 20 10 0 0 10 8 Frequency 6 4 2 0 0 200 50 137 Cs concentration Bq kg 100 150 50 137 Cs concentration Bq kg 100 150 200 図 6 セシウム 137 が検出された方の、体内セシウム 137 濃度 (Bq/kg) の分布。上の二つが全 受診者、下の二つが子供。左の二つは全員更衣前の 2012 年 2 月までの結果、右の二つは全員更 衣後の 2012 年 3 月以降の結果。セシウム 137 が検出されなかった方は、このグラフに表示し てないことに注意。 これらの結果は、実効線量が極めて低いことを示唆しているが、これが「十分に食材に注意を 払った住民の、自主的な要望による WBC 検査」という、強いサンプリングバイアスによって得ら れている可能性は否定できない。 そこで、次のセクションで、サンプリングバイアスのないデータではどうか、ということを示す。 3.2 三春町における WBC 検査 –サンプリングバイアスのない検査による結果– ひらた中央病院では、三春町の小中学生ほぼ全員を対象に、これまで 2 回の WBC 検査を行っ ている。これは、検査対象に行動や食習慣の偏りのほとんどない、サンプリングバイアスフリーな データセットといえる。 三春町(人口約 18,000 人)は福島第一原発から約 50km 西方に位置し、農家数が全世帯の約 20 % を占める。セシウム 137 の土壌沈着量は 9∼160 kBq/m2 (平均 80 kBq/m2 )であった。三 春町民の多くが、高い内部被ばくのリスクに直面した、といえる。 第 1 回目の検査は 2011 年 11 月 24 日 ∼ 2012 年 2 月 29 日に 1494 人(全体数の 94.3 %) 、第 2 回目の検査は 2012 年 9 月 3 日 ∼ 11 月 8 日に 1383 人(同 95.0 %)に対し行われた(表 4) 。 結果として、第 2 回では検査を受けた全員が検出限界を下回り、検査を受けるべき対象全体の 95 % をカバーするという、サンプリングバイアスがない状況で、内部被ばくが非常に低く抑えら 7 三春町の小中学生のホールボディーカウンター検査結果。左が一回目の検査、右が二回目の検査。 表4 2011 年 8 月 25 日 時点での在校生数 2011 年冬の 測定者数 1,585 測定率 1,494 94.3% 137 Cs 検出者数 54 2012 年 4 月 1 日 時点での在校生数 2012 年秋の 測定者数 1,456 測定率 1,383 95.0% 137 Cs 検出者数 0 Cs Bqêbody 137 1400 1200 1000 Ê Ê 800 Ê Ê Ê Ê Ê Ê ÊÊ Ê Ê Ê Ê ÊÊ ÊÊ Ê Ê 600 400 200 0 2012ê01 Ê Ê Ê Ê ÊÊ Ê ÊÊ Ê Ê ÊÊ ÊÊ 2012ê04 YearêMonth 2012ê07 Detection Limit ÊÊÊ ÊÊÊ Ê 2012ê10 三春町の小中学生の WBC 検査で、2011 年冬にセシウム 137 が検出された方のうち、 2012 年秋の検査も受診した 40 人の体内セシウム量の推移のグラフ。2 回目の検査では全員 図7 が検出限界未満となった。直線は、一回目測定結果と二回目測定結果(不検出の場合は一律に 150Bq/全身として表示)を結んだもので、理論的な意味は持たない。 れていることが示された。 一方、第 1 回では、1,494 人中 54 人に有意な放射性セシウムの検出がみられた。うち、卒業し てしまった 14 人を除く 40 人は、2 回目の検査で検出限界を下回った(図 7) 。これは、第 1 回の 検査後、放射性セシウムをほぼ摂取せず、体外に排泄された結果とも考えられるが、検出の一部は 表面汚染を見ていた可能性もある。この要因についてこれ以上深く分析はしない。 4 まとめ 福島第一原発事故に伴う、多くの人口が住む土地への放射性セシウムによる土壌汚染は、住民に 重大な内部・外部被ばくのリスクをもたらす。もしチェルノブイリ事故後と同等の土壌汚染→内部 被ばく移行があるとすれば、住民の多くが、数 mSv/年 の内部被ばくを受けることが予想される。 にも関わらず、ひらた中央病院にて施行された WBC 検査では、住民の内部被ばくレベルが極め て低いことが示された。事故後 12∼20 ヶ月にかけて施行された検査では、放射性セシウムが検出 されるのは受検者の 1.0 % のみ(小児では 0.09 %)であった。 三春町では、全児童生徒のうち 95 % の WBC 計測を町が主導して行い、2012 年秋の検査では、 その全員が検出限界以下であることを示した。これは福島県において、初めて対象のほぼ全数を計 測した、サンプリングバイアスのない内部被ばく評価である。 8 これらのデータは、福島県全体の状況を網羅するものではないが、県内の他の自治体や県のデー タともおおむね一致する。しかしながら、この結果がすべての福島県民を内部被ばくのリスクから 解放したわけではない。計測の行き届いていない年齢の高い住民の中には、ごくわずかではある が、100 Bq/kg を超える体内セシウムを持つ方が事実おられるのである。 土壌汚染と内部被ばくのレベルに大きな違いが見られる理由を解明することは、本論文の範疇外 であるが、今回の結果は、日常食からの放射性セシウム摂取が低い、とする、いくつかの陰膳検査 等の結果とも一致する。 いずれにせよ、内部被ばくレベルを低く保つ為に、食品の検査・スクリーニングおよび WBC 検 査は、福島県において継続的に施行されていく必要がある。 参考文献 抄訳では、参考文献は省略させていただきます。 |