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(回答先: 中村天風の師でもある頭山満という人物像を垣間見てみる 投稿者 仁王像 日時 2020 年 10 月 27 日 09:55:14)
中村天風、素手で虎が三匹いる檻のなかに入る
私はしょっちゅう諸君に、私がしたことを聞かせるだろ。虎の檻のなかへ入ったことや、豹の頭をなでた話だとかね。
大阪に虎の金子さんていう人がいます。−入会してすぐ私に、「先生、二十五年、私は先生をさがしてた」というから、「そらまあ頼みもしないのにご苦労さんだが、その動機は?」
「動機はというのはこうなんです。芦屋の親類同様につき合ってる人間の家の応接間へ行ったら、紋付きの羽織、袴を着た人間が−虎のなかに立ってるのを見て、不思議な話だと思ったんです。あれは本当の話ですか」
「ああ、私は忘れてたよ。そんなことがあったっけなあ」
べつに自慢して話すんじゃないんだよ。これは信念があるからできたわけなんだ。
イタリーからコーンという猛獣使いがね−ライオンと虎と豹と像をもってきて、−頭山満先生にお目にかかりにきた。−コーンさんが頭山先生の顔を見て、「おや、この方は猛獣の檻に入っても、けっして猛獣はどうもしません」と言う。ああいう人たちは目を見るらしいんです。頭越しに私を見て、「ああ、この人も大丈夫だ」と、こう言うんです。−
それで−猛獣をいっぺんご覧にいれましょうと言うので私たちを連れていった。三匹まだ馴らしていない虎がいた。−頭山先生とみんなそのままゾロゾロ、ゾロゾロ行ったら、果たして、ウウーッとたいへんな勢いなんだ。そうしたら頭山先生がニッコリ笑ってね、
「勢いのあるやっちゃなあ。天風、いっちょう入ってみるか」と、こう言ったんであります。冗談なんか言う人じゃありませんからね、そういう場合に。
「はいっ」と言って、私が虎の檻のわきへ行ったら、コーンさんが、「どうぞ」 それでスーッと私、なかへ入っちゃったんだ。−これをあなた方、どう思う?
私は何の疑いもなかった。自分の子供よりかわいい、目のなかに入れても痛くないと思っているほどの頭山先生が、「天風、いっちょう入るか」−−この言葉だけでも私は入りますよ。
さなきだに、はるばるイタリーから来たコーンさんが「どうぞ」−ですもんね。−この二人の言葉でスーッと私は入ったんです。何のわだかまりもありゃしない。絶対の信念ですよ。
それで−二重になっている二つ目の扉をピーンとあけてなかへ入った。そのときの私の気持ちは、今あなた方の前に立ってると同じ気持ちだ。そうしたら、ウウーッと言ってたやつがスーとしずまっちゃって、三匹がスーッと私の回りに来て、二匹がうずくまって、一匹がその後ろにいました。
それを時事新聞の記者がパッとフラッシュをたいて写真を撮りやがった。虎がパーッと行ったよ。−野郎、フラッシュライトも何もおっぽりだしやがって、ちぢみあがっちまいやがったんだよ。
頭山先生は相変わらずニコニコ笑って、「勢いのあるちゃっちゃなあ」と言うから、「勢いがありますよ、こいつは」と、いちばんなかで勢いのあるやつの頭ひっぱたいてやった。もうほかにすることはないからね。
それでコーンさんも、私の言ったとおりだというような顔をしていて、それからまあ、べつにすることはない、虎と一生苦楽をともにするわけにはいかないから、そのまま挨拶もしないで出てきた。虎もべつに後を追っかけてきませんでした。
【出展】
『盛大な人生』中村天風/経営合理化協会‘90年初版
(補)
子母沢寛「勝海舟」によると、江戸の三舟の一人で槍の達人の高橋泥舟が虎の檻に入ったという話がある。
彼は何らかの得物を持って気合十分に虎を威圧しながら檻に入り無事出たという。
また、泥舟は道場の片隅に米俵を積んで置き、遠くから槍を構えて気合を入れて穂先をピンピンと跳ね上げると、米俵がピンピンと跳ね上がったという。
史実のほどはわからない。
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