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中村天風の師でもある頭山満という人物像を垣間見てみる
《頭山満》/夢野久作
筆者のお目にかかった頭山先生は、御自身で、御自身を現代の聖人とも、昭和維新の原動力とも、何とも思って御座らぬ。
「俺は若い時分にチットばかり、漢学を習うたダケで、世間の奴のように、骨を折って修養なぞして無い。一向ツマラヌ芸無し猿じゃ」と自分でも云うて御座る。
それでいて西郷隆盛のいわゆる、生命(いのち)も要らず、名も要らず、金も官位も要らぬ九州浪人や、好漢安永氏のいわゆる「頭山先生の命令とあれば火の柱にでも登る」というニトロ・グリセリン性の青年連に尻を押されて、新興日本の尻を押し通されて、新興日本の尻を押し通して御座った……しかも一寸一刻も、寝ても醒めても押し外した事は無かった。
日本民族をして日清、日露の国難を押し通させて、今は又、昭和維新の熱病にかかりかけている日本を、そのまんま1935年の非常時の火の雨の中に押し出そうとして御座る。……ように見えるが、その実、御自身ではドウ思っているかわからない。
ただ、相も変わらず芸無し猿、天才的な平凡児として持って生まれた天性を、あたり憚らず発揮しつくしながら悠々たる好々爺として、今日まで生き残って御座る。
そこが筆者の眼に古今無双の奇人兼、快人と見えたのだから仕方が無い。世間のいわゆる快人傑士が、その足下にも寄り付けない奇行快動ぶりに、測り知られぬ平々凡々な先生の、人間性の偉大さを感じて、この八十歳の好々爺が心から好きになってしまったのだから致し方マ無い。
そうして是非とも現代のハイカラ諸君に、このお爺さんを紹介して、諸君の神経衰弱を一挙に吹き飛ばしてみたくなったのだから止むを得ない。(以下、略)
【出展】
「玄洋社怪人伝ー頭山満とその一派」書しん心水’13年
- 中村天風、素手で虎が三匹いる檻のなかに入る 仁王像 2020/10/31 09:07:34
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