http://www.asyura2.com/13/dispute31/msg/689.html
Tweet |
≪金本位制の自動調整作用〜金現送点≫
というのは、金本位制はそれ自身自動調整作用を持つからである。いまA、B二つの金本位制をとる国の間で、Aの輸出が増大してBからの輸入をしのいだとする。そうすると、AはBからその差額だけ金を受け取る。(BからAへ金は流出する)。そして、それだけAの金準備は増大すれば、それにともない通貨は増発され、物価は上がる。物価が上がればAの輸出は難しくなり、輸入が増えてくる。やがてAがBに対し入超となれば、今度はAからBへの金を輸出するようになる。金を輸出すれば、Aの金準備は減少し、それにつれて物価は下がっていく(金を輸入するBの方では逆に物価が上がっていく)。
物価が下がれば、再びAの輸出は増大し、またBから金の流入を招くであろう。こういう作用がこの制度にはある。しかも、この作用は政府が手を加ないでも自動的に行われる。なぜならば、金の輸出入に制約を置かない金本位制では、相手国まで金を送る費用(荷造費、輸送費、保険料等、それらを合わせて金の現送費という)を限界点(これを金の現送点という)として、第一図(冒頭)に見るごとく、為替相場はそれ以上にも以下にも動かないからである。
為替相場はその時々の市場における為替の需給によって決まるが、たとい取引相場が現送点を突破したとしても、その場合には為替で決済するより金を現送して決済した方が採算上有利となるからである。
ところで、金本位という言葉は、人によっていろいろの定義が与えられているが、ここではこの当時を背景として考えてみれば、
@ 金の一定量をもって価格の単位とする。
A 金と通貨と兌換に制約を置かない。
B 金貨の鋳潰し、溶解の自由を認める。
C 金の輸入に制約がない。
これらが金本位制成立のための条件と言えよう。この内@の条件から、AB両国の間に通貨の金純分量そのものの比較による為替相場が生まれる。これを金平価(gold parity)という。両国間の為替相場はこの金平価を中心として、そのときどきの為替の需給によって上下するが、さりとてCの条件がある限り、為替相場が上下二つの金現送点を逸脱することはない。
この二つを限界点として、確実に安定する。為替相場が安定すれば、物価も安定してくる。少なくとも商品自体の需給によって物価が上下することはあっても為替の面から動くことは避けられる。これが金本位制の自動調節作用について、一般に言われるところである。
だから英国が実勢から10%も開きのあるポンドを旧平価に引き上げ金本位制に復帰し、ひとたびこの作用が働き出せば、その圧力は物価を通して英国経済のあらゆる面に浸透していく。自然力のごとくのしかかる重圧という一面は、このことを言うのである。
【出展】
「円、ドル、ポンド」牧野純夫/岩波新書1960年
- 金は世界通貨である〜七世紀にわたる金価格の上昇/牧野純夫 仁王像 2019/8/17 08:03:09
(0)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。