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H・グレイシー「無敗の法則」拾い読み
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投稿者 仁王像 日時 2019 年 3 月 25 日 20:07:18: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 


「無敗の法則 ヒクソン・グレイシー」ダイヤモンド社‘10年から

≪この本で伝えておきたいこと≫ 
 それは、多くの人が自分の可能性を眠らせたままにしているということ。何よりも伝えたかったのは、私がやり遂げたことは誰にでもできるという真実なのだ。
≪「柔術」と「グレイシー柔術」の違い≫  
 日本人が教えた伝統的な柔術には、基本的にスポーツとしての形式がある。これが持ち込まれたのは、活気と混乱に満ちた実に秩序のない国、ブラジルだった。われわれには、闘いを実践としてとらえる感覚が備わっていた。真剣勝負では、予測不可能な要素が決め手となり、まったく先が読めない。これがグレイシー柔術にしかない特徴なのだ。

第一章 自分と相手を見つめる
 命を賭けた闘いをしているときほど、個性がはっきり表れる状況はない。道場では(たいていの場合)命を賭けて戦ったりしないから、タップすれば試合は終わる。(道場でも)みな闘う以上は、勝ちたいのだ。だから人格がいろいろな形をとって表れる。

第二章 正しい心のあり方を探す
≪勝つために負けを受け入れる≫
 私が初めて日本を訪れたのは15年ほど前のことだ。私が抱ていたイメージは…日本に来て失望した。確かに深い尊敬の心を感じたが、それは強さや精神力ではなく、むしろ弱さから生まれたものだったからだ。
 第二次世界大戦の影響もあるんかもしれない。
 私の場合は、敗北はいつも身近な存在だった。私は負けたくないと考えるあまり、負けることを常に考えずにはいられなかった。いつも意識してきたのはコインには表と裏の表面があるということ。寝ているとき、トーナメントで負けた夢を見て泣きながら起きたこともあった。いつ負けてもおかしくないと考えていた。
 それを認めることができれば、どんな問題が起こっても、解決方法はあるし…。

≪自分を何より大切にする“現代版サムライ”≫
 自分を中心に考えることは、生きることの基本だ。そう感じられない人は、間違った道を歩んでいるのだろう思う。
 個人的に、私は武士道を愛し、サムライが信じて守り続けた信念のすべてを愛している。しかし、奉仕するという考え方だけは、立派だとうは思うものの好きになれない。自分らしさを出さない。自分のことは一切考えない。たしかに完璧で非の打ち所のない戦士だといえる。しかし人間としては弱い。今の時代に生きている私たちにとって、素晴らしいとは思えない。
 何よりも手に入れるべきなのは、幸せだ。自分の幸せを見つける以上に大切なことなどない。

≪明日なんか来ないつもりで生きる≫
 最近、父が95歳でこの世を去った。父はその直前まで、自分を老人だとは思っていなかった。父は農園に子供をつれて行くと、父はまずこう言った。「道着を持ってきたか? 道場へ行って練習だ」もちろんその頃には、父はずいぶん体が弱くなっていたので、勝負をすれば完敗したはずだ。それでも、自分の柔術を教えてくれた。私たちに技を伝えたいという気迫はどこまでも強かった。
 心と頭はまったく衰えていなかった。父には自分が無理だと感じることなど、何一つなかった。驚異的な精神力だ。それは肉体を超えたものだった。

第三章 すべて柔術が教えてくれる
≪格闘技的トレーニングで人生はうまくいく≫
 柔術の練習をすれば、必ず何かを身につけることができる。ただし柔術は方法の一つに過ぎない。
 格闘技は、自分を知るための道筋を示してくれる。格闘技で体験するストレスは、厳しいものだ。それに比べると他のストレスなど、たいしたことのないものに思えるだろう。
 格闘技で身に受けたその力は、仕事などのいろんな場面で生きてくる。だから調練の一つとして、私はすべての人に格闘技をすすめる。

≪「何も持たない」という幸せ≫
 数年前まではブラジルに農場を持ち、リオのイパネマビーチに部屋を所有し、カリフォルニアのマリブに家があった。しかし今は何も持っていない。妻と別れるときに気づいたのだ。何しろ彼女は30年間も自分の妻でいてくれたし、別れるなら、それなりのものを受け取ってもらうことが、私にとっても幸せなのではないかと思ったのだ。だから「すべて君のものだ」と言った。私はすべての資産を彼女に譲り、無一文になって、将来のことは何一つの保証もないまま、家を出た。それでも正しい決断をしたという自信があった。
 …すべてを手にしていたかつての私より、何も持っていない今の私のほうが幸せなのだ。

≪「勝つことではなく、絶対に負けない」こと≫
 柔術とは何か。自分自身を理解するシンプルな方法で、基本的には負けない人間になれる術だと。
 私は、相手の体格や制限時間などの条件を問わず、いうでも喜んで挑戦を受けてきた。そんなとき、まず心がけていたのは、相手を打ちのめすことをしないことが重要だと考えていた。決して自分がやられないことだ。私は、飢えた目で闘いを挑んできたが、勝つことを優先したことはない。何よりも大事なのは、生き残ることだ。これは父の教えだった。
 基本は、自分自身をいかに守るかを知ることだ。暴力は不安な心から生まれる。臆病者の心から生まれる。本当に力のある強い男は暴力になど頼らず、必要のない攻撃はしない。抑制が効き、穏やかで、自信に満ちている。


(仁王像)
 グレイシー柔術で知られるグレイシーが、プロレスラー高田延彦との試合が新聞のほぼ一面を使って報じられたのを読んだことがある。試合はアッという間に決まり、その時のグレイシーの感想も載っていた。感想はシンプルなもので淡々としたものだった。
 内容は記憶していないが、奢った風はなく、何か深いものを予感させるものだった。数年後、切り取っておけば良かったと悔やんだが、後の祭り。
 今回、本書を手にしたが、相当、多弁である。だが内容は、さすが超一流を極めた人物は一線を超えていると思わしむるものだった。
 

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