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(回答先: 経済成長という信仰〜成長が止まる時期が「目前」に迫っている/水野和夫 投稿者 仁王像 日時 2015 年 1 月 24 日 13:51:53)
「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫/集英社新書‘14年(第四章から抜粋)
第四章 西欧の終焉
≪欧州危機が告げる本当の危機とは?≫
重要なのは、この欧州危機が単なる経済危機ではなく、西洋文明の根幹に関わる問題であることです。西洋文明そのものの「終焉の始まり」である可能性もあるのです。
「海の国」英米が覇権を握った海の時代の特徴は、政治的に領土を直接支配することなく、資本を「蒐集(しゅうしゅう、コレクション)」していった点が挙げられる。
一方、「陸の国」ドイツとフランスは、英米のような「資本」帝国への道は選ばず、ヨーロッパ統合という理念にもとづいた「領土」の帝国化へと向かう。
独仏が手を携えて、単一通貨ユーロを導入し、共同市場を拡大させていく、そのプロセスのなかで、国民国家は徐々に鳴りを潜め、ヨーロッパはユーロ帝国という性格が色濃くなっていく。
近代とは、「海の国」が「陸の国」に勝利することで膜が開いた時代。しかし現在の状況は、「海の国」米国の覇権体制が崩壊し、EU、中国、ロシアといった「陸の国」が台頭しつつある。
≪欧州危機がリーマン・ショックよりも深刻な理由≫
主権国家システムが支持されるのは、それが国民にも富を分配する機能を持つからでした。しかし、グローバル化した世界経済では、国民国家は資本に振り回され、国民国家ではもはや対応できない。そこで、「国民」という枠組みを取り払って国家を大きくすることでグローバリゼーションに対応しようとしているのがEU方式だと言える。
独仏の「領土」帝国という観点から見た時、欧州危機とは、どのように読み解くことができるか。
EUですら結局は資本の論理に巻き込まれてしまう(失業者の増大と低賃金)。この事態は、リーマン・ショックよりもはるかに深刻な意味を帯びている。EUが向かっている帝国は、資本にも軍事にも依存せず、領土を「蒐集」する帝国だからである。
≪それでもドイツは「蒐集」をやめない≫
このような見方に立つと、ドイツはそう簡単にギリシャを見捨てることはしないだろうと思えます。領土の「蒐集」という運動が停止してしまうことは、EUの自己否定になりますから、「西洋の没落」から「西洋の終焉」へと向かうことになる。
ヨーロッパは誕生それ自体が、奴隷を「蒐集」しなければ成立しえなかったのです。より贅沢な生活をするには、つねに「異邦人」をたくさん「蒐集」しなければいけなかったのである。
≪資本主義の起源から「過剰」は内臓されていた≫
独仏の「領土帝国」も、英米の「資本帝国」同様、限界に近づいています。
現代の世界で起きている「帝国」化とは「蒐集」の終着地点です。リーマン・ショックは過剰にマネーを「蒐集」しようとした「電子・金融空間」が、自らのレバレッジの重みに耐え切れず自滅した結果。
そして欧州危機は、独仏同盟による領土の「蒐集」が招きよせた危機だと言えます。
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