http://www.asyura2.com/13/dispute31/msg/227.html
Tweet |
(回答先: 水野和夫氏は、資本主義の終焉を謳っている〜その先はどこえゆくのか 投稿者 仁王像 日時 2015 年 1 月 07 日 20:28:38)
「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」水野和夫/日経新聞’07年
(まえがき から続き)
本書では次の三つのことを指摘。
1)帝国の台頭と国民国家の退場=帝国化
資本が容易に国境を越えるグローバリゼーションの時代は必然的に「帝国」と親密性を有する。16世紀には資本は主権国家と結婚したが、21世紀には資本は帝国をパートナーに選んだのである。経済的な「国境」が限りなく低くなり、国境内に権力を及ぼす「国民国家」の力が衰退する一方、金融帝国と化した米国や、中国・インド・ロシアなど旧帝国の台頭が著しい。
2)金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位性=金融化
グローバリゼーションの下では「資本の反革命」によって先進国の賃金が抑制される。ないし低下するから、先進国ではディスインフレ、ないしデフレが定着する。金融政策は緩和基調となり、実物経済に比してマネーが膨張するから、資産価格が上昇しやすくなり、先進国経済は資産価格依存症に陥ることになる。
いわば、金融経済(尻尾)が実物経済(頭)を振り回す時代になったのだ。そして近い将来、金融経済が頭になり、実物経済、すなわち雇用や生産活動が尻尾になる可能性が高い。雇用が尻尾になるということは「中流階級の没落」が始まったことを意味する。
3)均質性の消滅と拡大する格差=二極化
近代は国民に均質であることを要求したが、グローバル経済の時代には国家単位の均質性は消滅する運命にある。日本に即していえば「一億総中流意識」の崩壊であり、格差拡大の時代の到来である。
格差は構造的問題となり、景気回復では解決できない。だから、政策で成長を目指せば目指すほど時代の流れから取り残される人が増え、人々の将来への不安が高まる。その結果、将来に備えることよりも毎日の生活の充実を優先する刹那主義が蔓延し、いっそう少子化が進むことになる。
90年代から現在に至るまで、政策の基本には「インフレ(成長)がすべての怪我を治す」(近代の基本原理)という発想があった。皮肉にもこの成長至上主義が、戦後最長の景気回復下で国民の閉塞感を強めている大きな理由である。この原理は、近代化ブームに沸くBRICsでは通用するが、ポスト近代に移行した先進国では弊害ばかりが大きくなる。
21世紀の最大の勝者は、国境を越える巨額の資本や「超国家企業」であり、敗者は容易に国境を越えることができない先進国のドメスティック経済圏企業や中流階級である。
「資本の反革命」を本質とするグローバリゼーションは、利潤動機を前面に押し出して全世界を覆い尽くしていくから、まずは世界の経済構造を変えていくが、その影響は経済の面のみにとどまらない。グローバル化は政治・経済・社会のすべてを根本的に変えるプロセスであり、その分析には経済学だけでなく政治学、社会学、文学など学術的なアプローチが不可欠である。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。