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(回答先: EUが対イラン制裁強化、銀行・輸送・産業セクターに全面制裁へ 天下の愚行、ノーベル平和賞 投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 16 日 04:54:31)
コラム:
EUへのノーベル平和賞、理念と程遠い現実
2012年 10月 16日 12:54 J
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By John Lloyd
今年のノーベル平和賞が欧州連合(EU)に決まったと聞いたとき、真っ先に思い浮かんだ言葉は「冗談だろう」だ。少し考えて「なるほど、一理ある」となるが、実際のところ、現在のEUがノーベル平和賞を受ける十分な理由は見当たらない。
「冗談だろう」という反応は至極当然だ。欧州ではこのところ、デモやスト、抗議運動が絶えない。ギリシャの首都アテネでは、同国を訪問中のメルケル独首相に抗議するデモ隊が警官隊と衝突した。スペインでは、国の分裂回避に軍が投入されるかもしれない。ユーロ圏をめぐっては、ギリシャ離脱などの憶測記事が絶えず流れてくる。欧州の多くの知識人の間では、EUが市民道徳の平和的な広がりとはどういうものなのかを世界に示すプロジェクトだという信念が揺らいでいる。
そうした中、この先すべてがうまく行くかどうか何の保証もないまま、EUはノーベル平和賞を受賞し、キング牧師やワレサ元ポーランド大統領、アンドレイ・サハロフ氏らの仲間入りをする。
今回の決定は、オバマ米大統領が2009年に同賞を受賞したことを思い起こさせる。あの時、私はオバマ大統領への授与はまずい考えだと思った。彼を称賛していなかったからではなく、むしろ称賛していたからだ。私はオバマ大統領の知性や人々を熱狂させる能力、真面目さを称えていたが、彼が大統領としてどれほどの実績を残せるか(残したか)は未知数だ。良かれ悪しかれ実績を残す前にノーベル平和賞を与えることは、黒人初の米大統領という事実と大統領としての能力を混同したり、彼がすでに歴史上の人物になったとみなすなど、メディアがはまったのと同様のわなに陥ることに他ならない。
オバマ大統領への平和賞授与が時期尚早だったとすれば、EUへの授与は逆に遅きに失したように見える。EUはもともと、戦争防止のメカニズムとして産声を上げた。平和を希求する構想が、枠組みに支えられていることに疑問の余地はほとんどない。1980年代にEUに加わったギリシャやスペイン、ポルトガルは当時、経済的加盟基準は満たしていなかったが、独裁政権から民主主義体制への移行の方が重視された。当時は欧州楽観主義がさざ波のように広がったのだ。一部の良識ある人たちからはEUの終わりを求める声が出る今、なぜノーベル平和賞が与えられるのだろうか。
「一理ある」と思うのは、その点にある。平和が根付いたのを当然と思うことで、我々はEUが果たす役割を過小評価したり、軽視しがちだ。EUは自発的かつ合意に基づく組織であり、加盟国が道を踏み外したとしても戦車は出てこない。ドイツ生まれの社会学者ラルフ・ダーレンドルフ氏が著書「ヨーロッパ革命の考察」で書いたように、社会を運営する方法はもはや1つではなく、「我々独自の骨組みを作るためにお互いから永久に学ぶことができる」のだ。
現在の危機により、こうしたEUの理念は霧で覆われている。EUは期待されていたような成果を挙げていないとの絶望感さえある。我々は、国家の集合体が一緒になって大きな変化を成し遂げてきたということを忘れてしまう。
ただ、これらを考慮してもなお、ノーベル委員会がEUに平和賞を授与する理由はどれほどあるだろうか。十分な理由は見当たらないのではないか。少なくとも、そのタイミングは「今」ではないだろう。EUの前身である欧州石炭鉄鋼共同体の設立が提唱された時や、南欧諸国が軍事政権を倒してEUに加盟した時、旧共産主義国が加盟した時など、誰にでも分かりやすいタイミングがあったはずだ。ノーベル賞のような賞は、適切なタイミングで授与され、世界中で広く共感を得られるものでなければならない。
今になってEUにノーベル平和賞を授与するのは的外れに見える。あたかも「今は困難な時期にあるが、かつての輝きを取り戻せる」と勇気づけているように見える。しかし、欧州が抱える問題点は根深く、亀裂は非常に広い。危機の解決には統合強化が必要だが、欧州市民はそれに反対しているように見える。EUの根底を揺るがす格差はかつてないほど広がっている。
それでも、こうした問題はいずれ解決されるだろう。過激主義者はさておき、EUの崩壊を心から望む人は欧州にはいないのだ。EUが生き残るためには、その骨組みに負担をかけ、指導者を疲弊させるような大いなる変革が必要だ。それに成功したとき初めて、ノーベル平和賞にも値するだろう。しかし、ノーベル委員会は、オバマ大統領の時と同様、実際に着手する前に栄誉を与えてしまったのだ。
*筆者はオックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所の共同創設者。英フィナンシャルタイムズ(FT)紙の寄稿編集者であり、FTマガジンの発起人でもある。著書には「What the Media Are Doing to Our Politics(原題)」など多数。
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