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レベルの高かった第一回大統領選TV討論
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投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 06 日 15:23:07: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 「世界の警察」降りた米国、中東政策は置き去り  米大統領選討論会、ロムニー候補に軍配 投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 04 日 19:05:48)

 ■ 『from 911/USAレポート』第593回

    「レベルの高かった第一回大統領選TV討論」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)


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 ■ 『from 911/USAレポート』               第593回
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 予想に反してロムニーの圧勝であったとか、進行が「スベって」いたとか、色々な
ことが言われています。特に、ロムニーの圧勝であったということに関しては、ほと
んど誰が見てもそうであり、これで大統領選の行方は分からなくなってきた、それも
事実でしょう。

 ですが、そうした勝ち負けの評価を別として今回の大統領選のTV討論を評価するな
らば、かなりレベルの高い論戦であったように思います。どちらが勝つにしても、も
しかしたらアメリカという国は、21世紀に入って以来の大混乱の12年を乗り越え
て、良い意味で落ち着いた国になるのかもしれない、少々大げさですが、そんな期待
すら抱かせる内容であったと思います。

 勿論、そうは言っても、これは政治家の討論であり、専門家による自由なディスカ
ッションではありません。政策にしても、数字にしても、全てが選挙で勝つための政
治以上でも以下でもなく、言葉の一つ一つに客観性や100%の信憑性を期待できる
ものではないのです。

 ですから、こうしたTV討論については、通常は「内容」にはそんなに注目がされる
ものではなく、どちらがミスをしたとか、攻撃が効果的か、防戦はできたかというよ
うな、いわば格闘技のような見方をすることになるわけです。TV討論というのは、そ
れ以上でも以下でもないというのが常識的なところでしょう。

 その点で、今回はかなり異例でした。三点指摘しておきたいと思います。

 何と言っても、具体的な政策を巡って細かな点まで理解した、優秀な政治家同士が、
ちゃんとした論戦をした、そのレベルが高かったということがあります。前回の「オ
バマ対マケイン」、その前の「ブッシュ対ケリー」、「ブッシュ対ゴア」、「クリン
トン対ドール」という四回の大統領選では、常にキャラクターの「噛み合わせ」が不
協和であり、得意分野ではペラペラ喋っても、苦手な話題は避けたり、結果的にディ
ベートとしての全体像は歪んでいました。

 ですが、今回は予定通り内政に絞って進められた進行から逸脱することもなかった
ですし、どちらかの主張が尻切れとんぼになったり、話題が曖昧なままで終わったり
ということはありませんでした。言ってみれば、極めて実務的に進行したのです。

 この事は、別の見方をすれば、両人ともに「自分の支持層という、内輪向けではな
く、中道票に対して必死に、あるいは誠実に語っていた」ということもできると思い
ます。

 また、双方共に露骨な中傷作戦は取らず、TV討論としては、例外的なまでに「品位」
のあるものであったと思います。宗教や人種を巡る変化球作戦もゼロでした。ロムニ
ーはリビアでの米国大使暗殺にからんで、同国での「アルカイダの暗躍を許した」政
権の失態を追及するかもしれないという噂がありましたが、それもなし。一方のオバ
マに至っては、ロムニーの「政府に依存している47%」うんぬんという大失言に関
して攻撃を加えることを全くしなかったのです。

 第二に、極めて特徴的だったのは、この90分に及ぶ討論の底流には、一つの大き
なテーマが一貫していたということです。それは「財政規律」という問題です。特に、
2004年11月に、大統領の超党派の諮問委員会がまとめた、非常に厳しい財政規
律案である「シンプソン=ボウルズ案」について、両候補が真剣に意識していたのが
印象的でした。

 勿論、民主党のオバマと、共和党のロムニーは、正にこの問題について、180度
異なる哲学を持っているわけです。ですから、言い方も、そして言っている内容も正
反対からのアプローチになるのですが、一貫して二人とも真剣に財政規律の問題を意
識し続けていたというのは、特筆していいと思われます。

 三つ目は、レトリックは違うのですが、双方の政策がどちらも中道現実主義のゾー
ン内のものであったということです。現状認識が全く異なるわけでもないし、もしか
したら「一方から他方に変えても大混乱に陥るわけではないのでは?」という印象を、
中道票には与えたかもしれません。

 さて、では、こうした今回の討論の性格は、どちらに有利に働いたのでしょうか?
それは、圧倒的にロムニーだと思われます。世論はこうした「中道実務家の共和党候
補」を久しぶりに目にしたのです。共和党といえば、ここ十数年のあいだ「ティーパ
ーティー」であるとか「宗教保守派」しか目にして来なかった中道票が、「こっちで
もイイじゃないか」と思い始めた可能性は相当にあるのです。

 こうしたロムニーのいわば「構造的勝利」に加えて、ディベートのパフォーマンス
という問題があります。こちらも、冒頭で申し上げたように、ロムニーの圧勝でした。
ロムニーのパフォーマンスは、ほぼ完璧と言って良く、ジョークも小気味良く決まっ
ていましたし、何と言ってもアタマの回転が素晴らしく、そのくせ内容は非常に分か
りやすいのです。

 いわば、ビジネスの世界でいえば、トップ自らのプレゼンとして、最高の部類に入
るでしょう。若いうちからこの人は、こうしたプレゼン能力で何百ミリオンというカ
ネを稼いで来たわけですが、それも納得させられてしまう、それ程のパフォーマンス
でした。

 一方のオバマは、個別の論点で押し込まれたり、失言で大きくポイントを失うとい
うことはなかったのですが、全般的に切れ味を欠いていましたし、表情にも精気を欠
いていました。何となくそこには「激動の四年間」がもたらした疲労感のようなもの
も感じられ、痛々しいぐらいだったのです。

 勿論、陣営として準備不足ということもあったのではと思われます。特に気になっ
たのは、フレーズとか事例など細かな部分が「どこかで聞いたことのある」ネタが多
かったという点です。そうした「ネタの古さ」と「疲れているオバマ」というイメー
ジが重なってゆく、そして景気や雇用にはまだまだ力強さがない、ということになる
と、中道票の何割かは「政権を変えてもいいかもしれない」と真剣に思うかもしれな
い、それ程の失敗であったとも言えるでしょう。

 まだ部分的ですが、直後の世論調査ではフロリダが互角であるとか、激戦区のオハ
イオでのオバマのリードが減るなど、影響は出てきています。両陣営のアナリスト達
は、このTV討論の評価について、必死にレトリックを駆使した論評を始めました。こ
の週末、各局の政治討論番組は、相当にヒートアップするでしょう。

 では、これで一気に「ロムニー大統領誕生か」というと、現時点ではイーブンとい
うところだと思います。ですが、残り二回の討論の中で、もう一度この種類の失敗が
あるようですと、オバマは相当に追い詰められることになるでしょう。

 ちなみに来週には、「バイデン対ライアン」の副大統領討論があります。こちらも、
有能な政治家同士が、恐らくは「財政規律」を巡って大激論となる可能性があり、内
容については相当に期待できるように思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』。訳書に『チャター』
がある。 またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

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●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
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JMM [Japan Mail Media]                No.708 Saturday Edition
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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】101,417部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )  

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