まず細田の問題の記事は次のように始まっている。
小泉脱原発論 かつての女房役、自民・細田幹事長代行がバッサリ
(産経新聞2013年12月14日)
自民党の細田博之幹事長代行は13日、産経新聞社のインタビューに応じ、小泉純一郎元首相が「高レベル放射性廃棄物の最終処分場が見つからない」として脱
原発論を唱えていることに対し「直感で言っている。高レベル放射性廃棄物のことをあまり知らないのではないか」と批判した。太陽光などの再生可能エネル
ギーについては「原発に代わる選択肢だと思うのは錯覚だ」と語った。細田氏は平成16年5月から17年10月まで小泉政権で首相の女房役の官房長官を務めた。
このように細田は「小泉は高レベル放射性廃棄物のことを知らない」と断言しているのだが、実際よく調べてみると、細田の言っていることのほうが大きく間違っている。政治家は大きな方向性を議論するのが仕事で、細かい部分で間違っていてもそれは後で修正すればいい。しかし、政策の方向性を議論する大きな前提が大きく間違っていれば、それは当然に批判されるべきだ。
細田は小泉政権の時に、福田康夫官
房長官の後を継いで小泉政権の末期に官房長官に就任した政治家だ。小泉政権が回ったのは、実はバランス感覚優れた福田官房長官が押さえになった体ということはよく知られている。
小泉元首相は政治的な感が鋭く、アメリカの威光を借りて郵政民営化を実現した政治家だ。一方の細田博之は森喜朗元首相から「細(ほそ)ピューター」と呼ばれていた。これ
はどうも細田が森喜朗よりもパソコンがうまく使えたことから付けられたあだ名らしい。ただ、それはあくまで森喜朗と比べてパソコンが上手だったというだけで、細田の引用する原発の基礎データはことごとく間違っている。
以下、インタビューで細田が語っている内容を紹介した上で、その事実を逐一訂正していくことにしたい。
−−小泉純一郎氏が主張する「原発即時ゼロ」はできるのか
「原子力は人類にとって不可欠なエネルギーだ。最大のエネルギー効率を持っているし、CO2排出量も少ない。ウラン資源はリサイクルされる。原子力発電を継続利用せざるを得ないし、することが望ましい」
人類にとって不可欠かは価値観の問題。ただ、CO2排出量が少ないというのはともかくとして、ウラン資源はリサイクルされるというのが「原子力が不可欠な理由」にはならない。これは、政府の核燃料サイクル小委員会の結論として鈴木達治郎原子力委員会委員長代理が、「再処理と直接処分のコストは差はない」と指摘していたことや、推進派のはずの山名元・京都大学教授までも「MOX燃料のコストは他の化石燃料に比べて一割増」だということでかろうじてコスト計算としては許容できる範囲だと言ったことと矛盾している。また、核燃料サイクルを放棄した上でもウラン燃料に困ることはない。
−−「再生可能エネルギーへの転換は夢のある事業だ」とも語っている
「太陽光発電や風力発電はエネルギーの転換効率が極めて低い。研究開発や発電の際にも膨大な費用がかかる。『原発に代わる選択肢だ』と思うのは錯覚だ。世界で導入している国はほとんどない」
細田の指摘で唯一正しいといえるのはこの再生可能エネルギーへの批判だろう。ただ、研究開発に膨大なカネがかかる他に運転コストがかかるのは核燃料サイクルを利用した場合のバックエンドまで含めた原子力発電も同じ。
−−最終処分の方法は
「最終処分段階での高レベル放射性廃棄物にはウランもプルトニウムも含まれていない。ガラス固化体にすれば、容積も非常に小さくなる」
一般的には使用済み燃料を再処理すると8体の使用済み燃料からだいたい一体のMOX燃料を形成できることから核のゴミは8分の1になると言われている。そのように推進派の山名元は指摘している。
ただ、ここにもトリックがあって、高レベルでは減るが、中小レベルの放射性廃棄物が発生する。廃棄物の減容効果は確かにそれなりに魅力的だが、それでも最大2割の削減でしかない。核燃サイクルを回していくコストや最低1兆円と言われる六ケ所村の再処理工場の除染コストなどを考慮に入れる必要がある。
高速増殖炉もんじゅが実用化していればサイクルには決定的なメリットがあるものの、今の今まで実現できていない。高速増殖炉はロシアや中国で今後も研究されるだろうから日本は軽水炉だけにとどめておいて、これらの国で実現したものを技術移転するという考えでも全然構わないはずだ。
−−放射能漏れの危険は
「放射能の半減期は長いが、きちんと貯蔵すれば耐えられる。『危険ではない』ということを多くの人に理解してもらいたい。ちゃんと国民に説明すれば今後、最終処分場は見つかる」
−−見つからないので、小泉氏は「トイレなきマンション」と言っている
「ガラス固化体は、原発1基あたり年間約30本しか発生しない。貯蔵スペースは4畳ほどだ。熱も出ない。臨界にも達しない。そのぐらいのゴミは産廃と変わらない」
再処理してできる高レベル放射性廃棄物を固めた「ガラス固化体」について、細田が完全な無理解を露呈しているのがこの部分である。というよりも、ここで細田は「産経読者にはわかりゃしない」と嘘を付いているのだろう。意図的に様々な必要な前提を除外して語っている。
細田が間違っているのは「熱も出ない」という部分と「産廃と変わらない」という部分。まず熱量に関しては資源エネルギー庁のデータだと次のようになっている。
ガラス固化体では内部の放射性核種が崩壊し続けており、製造直後の発熱量は約2300W(600Wの電気コンロ4台弱相当)で固化体の表面温度は200℃以上になる。この高温のために新しい固化体は地層処分には不適格であり、30-50年間冷却して発熱量が560W~350Wに減ったところで地層処分される予定である(http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/qa/syo/syo03.html)
細田が巧妙に避けているのは熱量ではなく、放射線量についての情報である。放射線については資源エネルギー庁のサイトでは次のようにある。
製造直後のガラス固化体(日本原燃(株)仕様)の放射線量は、その表面の位置に人間がいた場合、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告の中で100%の
人が死亡するとされている放射線量(約7Sv(シーベルト))をわずか20秒弱で浴びてしまうレベル(約1,500Sv/h)です。
しかし、放射線量は対象物から距離をとることや、遮蔽を施すことによっても、その影響を低減することができます。例えば、製造直後のガラス固化体でも、
1m離れた位置に厚さ約1.5mのコンクリートの遮へいをほどこすことにより、法令上の管理区域(この区域に立ち入る人は浴びた放射線量の管理をする必要
があります)を設定しなくてもよいレベルになります。
ガラス固化体は、処分するまで30年から50年の間貯蔵され、さらに、処分を行う段階においてはオーバーパックという厚い金属製の容器に封入されるので、その表面における放射線量はずっと減少します。
例えば、50年後には放射能が約1/5になり、表面の放射線量は約1/9になります(表面で約160Sv/h、表面から1m離れた位置で11Sv
/h)。さらに、オーバーパック(厚さ19cm)に封入することにより、オーバーパック表面の放射線量はずっと小さくなり、表面で約0.0027Sv
/h、表面から1m離れた位置で約0.00037Sv/hとなり、1m離れた位置に約0.8mのコンクリートの遮へいをほどこすことにより、法令上の管理区域を設定しなくてもよいレベルになります。
上の資源エネルギー庁のサイトの説明を見ても分かるように、細田の発言は、「様々な前提条件」を付けなければ正しいとはいえないものだ。だから、「産廃と変わりない」という発言は極めて不穏当である。細田は再稼働議連の立場で、世論操作をするために不完全な情報を伝えている。だから次のような結論になる。
−−小泉氏の反原発発言の真意は
「直感で言っているのではないか。高レベル放射性廃棄物のことをあまり知らないのだろう。何だか分からないのかもしれない。爆発物が入っていると思っているのではないか。原子力爆弾の人的被害みたいに健康を害すると思っている節がある」
細田は、極めて高いレベルの放射能については発言しないまま、使用済み核燃料の問題を矮小化しようとしている。ふつうの産廃であればヤクザの産廃業者がそれこそ栃木の山奥に不法投棄してもさほどの問題は出ないだろう。それは普通の産廃には「半減期」などという厄介なものがないからである。ただ、放射性廃棄物の問題はそうではない。
細田の言う「原子力爆弾の人的被害みたいに健康を害すると(小泉が誤解している)」のは誤解ではない。使用済み燃料は、適切な遮蔽をしなければ、本当に即死レベルで人が死ぬ線量を発している。遮蔽にはコストがかかる。
この細田は以前にも「原発はあらゆる意味で安全で地震・津波、テロに耐えうるという結論が次第に出てくる」という発言をしていたことがある。これも地震の影響で福島原発が壊れていないということはまだ結論付けられていない現段階では、事実として間違っている。
しかも、今朝の報道によれば以下ののような事実が確認されたという。「産経新聞」から。
東京電力は13日、炉心溶融(メルトダウン)が起きた福島第1原発3号機で、原子炉を冷却する「高圧注水系(HPCI)」の機能が、これまでの推定より早
く停止していたとする新たな分析結果を発表した。事故時に消防車を使用した注水が別配管に流れ原子炉に十分届いていなかったことも判明。東電は「格納容器
内には従来の評価よりも多くの燃料が溶け落ちていた」とし、廃炉工程に影響する可能性が浮上した。東電は報告書で別の冷却装置については、津波の影響によ
り機能喪失になったとしたが、HPCIに関しては地震による影響などさまざまな原因が考えられるため、今後詳しく調べる。
このように細田の言うような「原発はあらゆる意味で安全で地震・津波、テロに耐えうるという結論」などはどこをたたいても出てこないのである。
今福島の事故で待機中に飛散している(あえて言えば)微量の放射性物質とことなり、これから処分を考え無くてはならない廃棄物は数百年のスパンで監視が必要なものである。監視コストだけ考えても大変なもので非常に割に合わない。
使用済み核燃料は、国家債務のようには、アベノミクスでインフレにして吹き飛ばすことはできない。今、脱原発に踏み切らなければ、どんどん増えていく。老害というべき細田博之はどうせもうすぐ死ぬ。自民党清和会の行ってきた原発行政のつけを払うのは次の世代以降の日本人だ。
民主党の福山哲郎は「使用済み燃料の問題は積み重なる財政赤字の問題と同じ」とシンポジウムで話していたが、その通りだろう。
しかし、細田のようなツケ回しの精神は永田町だけではなく、霞ヶ関においてこそ実は最も顕著に見られる。
今朝の朝刊には次のような記事もあった。
「原発ゼロ」なし崩し 核燃サイクル・もんじゅも継続明記
東京新聞(2013年12月14日 朝刊)
経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」は十三日、エネルギー基本計画案を了承した。経産省の素案段階で「重要なベース電源」としていた原発を「基盤となる重要なベース電源」と書き換え、さらに推進色を強めた。国民の意見を踏まえて決めた民主党政権の「原発ゼロ目標」からの転換姿勢を鮮明にした。
原発の依存度が増す新設や建て替えについての考えは記載せず、判断を先送りし、将来に含みを残した。運転から四十年で廃炉にする原則にも言及はなかった。脱原発につながる項目は曖昧にして、なし崩し的に原発を進めようとする姿勢が見え隠れしている。
実現性が疑問視されている核燃料サイクルは「着実に推進」とした。ずさんな保安管理とトラブル続きで停止中の高速増殖原型炉もんじゅの研究も「実施体制を再整備する」と継続を明記し、研究終了を掲げた前民主党政権時の方針は白紙に戻した。実用化のめどがないまま国民の税金が投入され続ける恐れがある。
基本計画は中長期のエネルギー政策の方向性を示し、三年をめどに見直す。
前民主党政権は二〇一〇年の計画で、将来的に全電源の半分を原発に頼る方針を決めたが、福島第一原発事故後に「二〇三〇年代に原発ゼロ」目標に転換した。
自民・河野氏「反省がない」エネ基本計画を批判
自民党の河野太郎副幹事長は13日夜のBSフジ番組で、原発を「重要なベース電源」と位置づけた政府のエネルギー基本計画案について、「原発がベース電源であるはずがない。東京電力福島第一原発事故の反省が全くない」と批判した。同時に「今ある原発を40年で廃炉にすれば2050年に脱原発になる。それをどこまで前倒しできるか議論するべきだ」と強調した。河野氏は党内きっての脱原発派として知られる。
脱原発を遅らせれば遅らせるほど、原子力にまつわる国家債務が増えていく。このツケを支払うのは今の官僚や政治家ではない。すでに「東電賠償」という形で、原子力発電をいい加減に運営してきたことのコストを国民は支払わされている。
核燃料サイクルを続けるくらいなら廃炉研究に予算を回した方がいい。しかし、経産省は廃炉研究予算は、科技庁系の文科省なしは環境省系の原子力規制庁の予算になると知っている。だから、頑として文科省からもぎ取った核燃料サイクルの利権を手放そうとしないのだ。
細田のような指導者が統治機構にいる限り、この国では原子力など扱えない。
細田博之の細(ほそ)ピューターはもうとっくに壊れてしまっているということだ。
[#核燃料サイクル #細田博之]壊れた「細(ほそ)ピューター」:若者殺しの核燃料サイクル推進論 ジャパンハンドラーズと合理的選択
http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/35631321.html#more
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