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投稿者 okonomono 日時 2012 年 8 月 09 日 06:26:54: ufgCmUGS6CG6M
 

(回答先: test 投稿者 okonomono 日時 2012 年 7 月 31 日 14:06:17)

橘木俊詔 名著「格差社会」から消費税増税賛成へ

2012年7月26日、参議院の「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(第八回)」に招致された参考人の顔ぶれは次の通りであった。

橘木俊詔(同志社大学経済学部教授)
高山憲之(公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構研究主幹)
結城康博(淑徳大学総合福祉学部准教授)
岩本沙弓(大阪経済大学経営学部客員教授)
菊池英博(日本金融財政研究所所長)

このうち岩本沙弓氏と菊池英博氏の意見陳述は、消費税増税に反対する一般国民にとって必聴すべきものだった。ところで、賛成論に耳を傾けるのも大事なことだ。1つには、論拠の問題点を理解するため。もう1つには、評価すべき部分を正当に評価するためである。私は、橘木俊詔氏の陳述に注目した。

橘木氏は、小泉政権(2001〜06年)の構造改革による所得格差拡大に早くから警鐘を鳴らした経済学者の1人である。その橘木氏が現在、消費税増税に賛成している。どうしてこんなことになってしまったのだろう。そうおもって『格差社会 何が問題なのか』を読みかえしたら、なんのことはない、橘木氏の主張は6年前から一貫していた。

[2006年当時の橘木氏のプロフィール(岩波新書より)]

橘木俊詔(たちばなき としあき)
1943年兵庫県に生まれる.小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,1973年ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.).その後,米,仏,英,独の大学・研究所で教育職・研究職を歴任.京都大学経済研究所教授,経済企画庁客員主任研究官,日本銀行客員研究員,経済産業省ファカルティフェローなどを経て
現在,京都大学大学院経済学研究科教授
   2005年度日本経済学会会長

『格差社会 何が問題なのか』(橘木俊詔著 岩波新書 2006年9月20日)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0609/sin_k317.html


[以下要約]

第5章6 税制と社会保障制度の改革 [189〜201ページ]

■ 税の累進度の低下
税制と社会保障制度が所得格差に与える影響は大きい。したがって、それらの制度改革は、格差社会の問題を是正するために必要不可欠である。
日本の税の累進度は、20年ぐらいで急速に低下した。所得税の最高税率は、70%[1986年]から37%[2006年]となり、相続税においても累進度が低下している。

■ 逆進性の高い消費税
消費税も、所得分配の不平等化において重要な役割を果たしている。消費税は、所得における消費比率の高い低所得者からたくさん税金を取り、高所得者からあまり税金を取らない、逆進性のある税である。
1989年に導入された時の税率は3%だったのが、現在5%にまで上げられ、逆進性がさらに高まっている。

■ 社会保障制度における逆進性
社会保障制度は、国民から社会保険料を徴収して、年金や医療、介護、失業[給付]といった形で支給する制度である。
財源には税金も導入されているが、保険料の徴収という視点から見ると、年金をはじめ、逆進性のある制度が存在する。

■ 税と社会保障の再分配効果の比較
税と社会保障による再分配効果は近年高まっている。これは、社会保障制度の給付の面に依存すると考えられる。しかし、国際比較をすると、日本において税と社会保障が与える再分配効果はきわめて小さい。

■ 国民健康保険未納者の増加[省略]

■ 国民年金を未納する若者たちの将来[省略]

■ 所得税の負担率を上げる
格差を是正するために、所得税の累進度の低下を是正することを提言する。最高税率は、50%前後が適当だと考える。

■ 日本の税負担率は先進諸国の中で最低
日本の租税負担率(21.5%)も所得税の負担率(6.0%)も、世界の先進国の中で最低である。所得税の負担率を上げる余地がある。所得税率を上げる場合、高額所得者の比率は低額所得者の比率よりも高くてよいと判断する。

■ 「累進所得税」の導入による年金改革
社会保障制度における財源調達に関しては、税の比率をできるだけ高めて、社会保険料の比率を少なくすることを提案する。中でも基礎年金について、財源の全額を消費税に求める「基礎年金全額税方式」の導入を主張する(『消費税15%による年金改革』 東洋経済新報社 2005年)。
消費税率は15%程度が妥当だと考える。ヨーロッパ諸国の消費税率は20〜25%であり、消費税においても、日本の負担率は低い水準にある。
消費税率をアップさせるためには、累進性を持たせる必要がある。すなわち、食料品や教育、医療など生活に欠かせない分野への支出は非課税にし、一般財だけに税金を掛ける。贅沢な商品には15%よりも高い税率を掛ける。
消費税は間接税なので、直接税や保険料を徴収するのにくらべて、国民の勤労意欲や貯蓄意欲、企業の設備投資欲を阻害する程度が非常に小さく、経済効率を高めることができる。
年金において税方式が定着したら、医療、介護にも税金の比率を高めていくという政策を提案する。

[以上要約]

単純にまとめれば、橘木氏は2006年当時の日本を「低福祉・低負担の国」と見ており、政府は国民の所得格差を是正すべきだという立場から、「中福祉・中負担の国」をめざすことを主張している。消費税増税に賛成する現在の橘木氏の立場は、その延長線上にある。

私が橘木氏の消費税増税賛成について納得できないのは、次の2点にまとめられる。なぜ増税をデフレ不況下の現在行わなければならないのか。なぜよりによって自由民主党(および民主党、公明党)が積極的に推進する政策に与するのか。これらのことは、橘木氏の意に反する結果をもたらすことにはならないのだろうか。

橘木氏の論拠の具体的な問題点については、岩本氏と菊池氏の陳述および中村哲治氏(国民の生活が第一)や井上哲士(日本共産党)などの質疑を通して明らかとなったようにみえた。それは、菊池氏が「格差問題」について橘木氏から勉強させてもらったと述べているのとは対照的に、橘木氏が菊池氏から「マクロ経済」について十分に学んでいないことに由来するかのようであった。

「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会1/3 参考人」(nicozon)
http://www.nicozon.net/watch/sm18476559
「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会2/3 質疑応答」(nicozon)
http://www.nicozon.net/watch/sm18476664
「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会3/3 質疑応答」(nicozon)
http://www.nicozon.net/watch/sm18476708

陳述資料:「福祉国家への道が日本の進む姿」(橘木俊詔 『エコノミスト』 第90巻 2012.7.24 毎日新聞社)
http://mainichi.jp/feature/news/20120713org00m020019000c2.html  

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