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人が人を傷つける悲しい会社〜専門家「逃げるのは恥じゃない」/nhk
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181120/k10011717291000.html?utm_int=news-social_contents_list-items_043
2018年11月20日 14時27分
「狭い部屋で2人だけになり、数時間、自分の欠点を言われ続けた」
「“給料泥棒”と言われた。それもみんなの前で言われた。心が折れた」
パワーハラスメントを受けたという人の話は深刻で、時にそれは心を病ませたり、死に至らせたりします。
なぜ、人はパワハラをするのでしょう、どう対応すればいいのでしょう。規制する法律がまだなく、国で本格化な議論が始まったパワハラを考えてみました。
(ネットワーク報道部記者 目見田健 松井晋太郎 田隈佑紀)
フルシカトもパワハラ
ネット上でもパワハラに関するさまざまな体験が飛び交っています。
無視を続けたり、仕事を与えたりしないこともパワハラです。
業務上、合理性のないこと、明らかに不要なことを強制されること。それもパワハラとされています。
“された”も“した”も増える傾向
国は、平成24年度と平成28年度、民間の調査会社に委託したパワハラの調査結果を公表しています。
対象は20歳から64歳の従業員1万人。インターネットを通じて行われました。
「パワハラを受けたことがある」と答えた人は平成24年度の25.3%から平成28年度は32.5%に増えていました。
一方、「パワハラをしたと感じたりパワハラをしたと指摘されたことがある」という質問でも、7.3%から11.7%にこちらも増加しています。
“された”という人も“した”と感じた人も増える傾向にあるのです。
規制する法律なし
ただ、パワハラはセクハラと違って規制する法律がありません。
国は19日の審議会で法整備を行う方針とその素案を示していて、来年の通常国会に関連する法案を出すことにしています。
パワハラをどう防ぐのか本格的な議論はこれからです。しっかりとした議論が求められるのは、パワハラが時には心を病ませ、時には死に至らせるからです。
裁判でもパワーハラスメントと社員の自殺に因果関係を認める判決が今月も出ています。防ぐための施策の整備は急務なのです。
上位下達が過ぎる会社
命に関わることもあるパワハラ。
それには企業の体質が大きく関わっているという専門家がいます。
企業などにハラスメント防止の対策を助言している「職場のハラスメント研究所」金子雅臣所長です。
その体質は上意下達。上の命令を下に徹底させることを指します。
「結果を出していくために、ある程度上位下達は必要です。ただ結果を追い求めるが余り、それが過度になっていく。職場がそうなった時、パワハラが起きやすくなります」
上が絶対で、下から意見が言えない状態。金子さんは競争が激しくなっている中、そのおそれを抱えている企業が増えているとみています。
仕事ができる人が加害者に
また、そうした企業では、仕事ができる人がパワハラの加害者になっているケースが多い、というのも金子さんの見方です。
「自分ができるために求めるハードルが上がり、部下ができないことを認められません。上層部も仕事ができるために止めることができない。そこでエスカレートしていく。悪循環ですね」
意見が言えない組織の中では、とがめられることもないため、パワハラをしても大丈夫なのだと思い、繰り返してしまう。そのこわさがあるという指摘です。
教育と考えている?!
心理学の専門家に分析してもらいました。
社会心理学が専門で集団における人間関係に詳しい立正大学の西田公昭教授です。パワハラをするのは、自身のこれまでの経験がベースにあるのではないかとみています。
「自身が成長する中で家庭や学校で実際に人が人に高圧的に接する場面を見てきた、暴力的な指導を受けてきた。それを受け継いでパワハラを当たり前と思ってしまっているのではないか。パワハラという概念はなく、例えば教育やしつけだと考えている場合もあると思います」(西田さん)
「そのうえで家庭や上司との間でストレスがあったり、相手が無礼な態度をとったと感じたりすることが引き金になり、ハラスメントにつながってしまうのではないでしょうか」
西田教授は「個人的な資質はなかなか変わらないこともあります。研修をしたり、当事者以外の第三者の目を入れて、“それ以上はだめ”とパワハラに気付かせたりする態勢づくりが必要です」などと話し、組織として対策を進める必要を強調していました。
逃げるのは恥じゃない
では、パワハラをされそうな時、された時にはどう対応すればいいのか。話を聞いたのは働く人のカウンセリングに詳しい神奈川大学の杉山崇教授です。
「逃げる方法と立場を維持したまま戦うという方法があります。ただ戦うことはなかなか難しい場合があります」(杉山さん)
それは、パワハラをする人は『自分を妨げるものは悪であり、挑戦して乗り越えるものだと信じて疑わないタイプがある』からだそうです。
また『部下が自分に奉仕することを求め、それができないことを許さないタイプ』もあるといいます。
「対策は同じように困っている仲間を増やすこと、それが何かあった時の準備につながります。またパワハラを受けそうな時には、長く接触しないように他の用事を作っておくなどの工夫も必要かもしれません」
「そしてパワハラを受けたと感じたら、速やかに相談機関に足を運んだり、つらい時にはカウンセリングを受けたりすることも考えてください」
杉山教授も第三者の力を借りることの大切さも訴えていました。
傷つけないで、大切にして
無記名のアンケートを取るなど組織をあげてパワハラを防ぐ取り組みを進める企業も増えています。
でも取材して思ったのは、やはり、自分がされて、いやなことは、人にしないのが基本ということ。
例えば自分の親、きょうだい、子どもが同じことを言われたり、されたりしたらどう思うか、果たして同じことができるのか、考えてみるのも基本かなと思ったりします。
親しい人にできないことは、親しい人がされていやなことは、他の人にもしちゃいけない。
ひとりを傷つけることで、その人に関わる人たちの心も、間違いなく傷つけているのです。
人が人を傷つけるのではなく、人が人を大切にする会社に。競争が厳しくなっているいまだからこそ、そう思います。
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