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「もういっそ、不倫かセフレが一番ラク」というアナタに
2016年7月20日
苦しい恋愛にハマらないための“新しい三角関係”のススメ
“失恋ホスト”としてこれまで1000件以上の恋愛相談に乗ってきた桃山商事のメンバーが、読者から寄せられたお悩みに対し、すぐに使える実用性の高いアイデアを伝授します!
上司との不倫を進めるか迷う30代の会社員・まりこさん
桃山商事ではこれまで、「恋愛における男ゴコロ談義」「恋愛ビブリオセラピー」という2つの連載を展開してきました。そしてこのたび、内容を再びリニューアルし、恋愛にまつわるお悩み相談連載を始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回メールをくれたのは、30代の会社員女性・まりこさんです。「もういっそ、不倫かセフレが一番ラクなんじゃないかと悟りつつある」という彼女。まずはその相談内容をご紹介します。
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すごく優しくて仕事ができる上司(38歳・妻子持ち)がいます。
家の方向が同じなので、タクシー帰りのときはいつも一緒になります。後部座席でいつも一人分の間を空けてくれるので、この人とは何もないなと安心していました。
以前、私が他部署の部長にセクハラをされていたとき、その上司に相談をしました。すると、相手が嫌がらない断り方や、上手い切り抜け方などのアドバイスをくれました。そんな話から、仕事の話まで、何でも話せる上司なのです。
でもある日、距離が縮まってしまいました。
会社の飲み会があり、お店を出る間際にトイレに寄ったのですが、みんながお店を出てしまうなかその上司は私を待っていてくれて、キスされました。そしてタクシーに乗り、いい雰囲気のまま肩を抱かれ、好きだと言われてしまいました。それ自体は全くイヤではなく……でも、妻子持ちということで関係を進めるのはどうかと思っています。
同世代の男性は「しっかりしていない」と思うことが多いです。まず、会話をするときに質問をしてこないし、相談をしても「俺ならこうする」ばっかりですし。そんな同世代と関係を築くのは疲れます。安心感を得るなら、不倫やセフレでも、お互いに納得していれば不幸にはならないかなと思っています。
でも、彼氏は欲しいです。(30歳 まりこ)
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以上がまりこさんからのお悩み相談です。さて、この状況をどう考えていけばよいでしょうか。
次ページ 「好きだ」という言葉が意味するものとは?
「好きだ」という言葉が意味するものとは?
まりこさんの言葉をひもといていくと、彼女が抱えている気持ちの輪郭が浮かび上がってきます。上司に対しては、同世代男子にない安心感に魅力を感じ、「イヤではない」という気持ちを抱いている。しかし、妻子持ちであるという点が引っかかり、関係を進めることを躊躇している……。これがまりこさんの現在地です。
話をややこしくしているのは、上司が言った「好きだ」という言葉です。例えばこれが単なるワンナイトのお誘いだったら、まりこさんもそこまで悩まなかったでしょう。仕事では信頼できる上司でありつつ、ときどき肉体関係を持って癒しと安心感を得る──。そんなバランスの関係を築くこともできたかもしれません。
しかし、「好きだ」という言葉があることで、この申し出を受けることの意味が変わってきます。少なくとも、上司にとっては“彼女”になることを意味するはずですが、最後に「彼氏は欲しいです」と言っているように、仮に関係を進めたところでまりこさんにとって上司は“彼氏”になりません。
このズレは小さくありません。なぜなら、気持ちに差があると「お互いに納得」することが難しくなるからです。仮にまりこさんがこの関係を続けつつ他の彼氏を探そうとしても、上司はそれを許さないでしょう。束縛や干渉が始まるかもしれないし、以前ならあり得たかもしれない恋愛相談もできなくなるはずです。
思えば、まりこさんは以前この上司にセクハラの相談をしていました。そんな部下の女性に対し、待ち伏せしていきなりキスをするだなんて、彼はかなり紙一重なことをしています。それほど本気なのだと取ることもできるし、自分のことになると冷静になれない人だと取ることもできますが、それも結局、まりこさんが自分で判断を下していくしかない問題です。
では、どうしたらいいのか。我々としては、上司を「彼氏」と見なせないなら、その関係は進めるべきでないと考えます。このままだと関係性が変化することにより、上司の魅力だった「安心感」が失われてしまう可能性が高いからです。気持ちにズレがあり、話せることも限定的になり、もしかしたら自己主張ばかりになるかもしれない上司に対し、魅力を感じ続けることができるでしょうか?
現状まりこさんに強い恋愛感情がない以上、焦って関係を進めることはないと思います。しかし今回の一件は、まりこさんが彼氏を作るための重大なヒントを示しています。それこそが最大の収穫ではないかと思われます。
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一対一の関係から“新しい三角関係”へ!
まりこさんが上司に感じた魅力は、実はそのまま「まりこさんが求めているもの」と読み解くことができます。すなわち、何でも話せて、自分のことを気づかってくれて、会話をするときには質問をしてくれて、相談をしても自分の意見を押しつけてこない──。そういうものを、まりこさんは男性に求めているわけです。
これは極めてまっとうな願いだと感じます。人間として尊重され、相手から興味を持たれたいというのは、老若男女問わず誰もが抱く普遍的な思いでしょう。なのに、同世代の男性には求められない。期待できるのは成熟した年上男性だが、そうなると大抵が既婚者になってしまう。だったらもう、不倫かセフレでいいのかもしれない……。まりこさんは今、そんな気持ちになっているのではないかと想像します。
しかし、「相手を尊重し、人間として興味関心を抱く」というのは、はたして年齢を重ねないとできないことなのでしょうか? 我々はそうは思いません。誰だって、例えば尊敬する人や気心の知れた友人に対してこういった眼差しを向けているはずです。だからこれは、「30代の男性にその能力がない」という話ではありません。かといって、「まりこさんには相手から関心を持たれるような魅力がない」という話でもありません。現状まりこさんが男性からそういった“関心の矢印”を得られていないとしたら、それは単に「関係の築き方」の問題ではないかと考えられます。
というのも、人間的な関心(=interestingという感覚)というのは、例えば相手のセンスや能力、目のつけどころ、知識や発想力、言葉の選び方、行動力や経験値……などといったものに対して抱かれるものです。そう考えると、男性から関心の矢印を得たいならば、まりこさんの知識やセンスが発揮されやすいシーンを数多く共有する方が合理的、ということになります。
これは意外に見逃されがちなことですが、例えばデートというのは互いを“恋愛的”に探り合う場であり、“人間的”な判断を下すことに必ずしも向いているとは限りません。
だからまりこさんが彼氏を作るためには、男性と一対一で向き合うことよりも、趣味や特技、仕事やコンテンツといった“第三者”を媒介にしたコミュニケーションを心がけた方が近道です。
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桃山商事ではこれを“新しい三角関係”と名づけ、相談者さんに推奨しています。この第三者のところには、いろんなものが代入可能です。
恋愛は確かに一対一の関係ですが、つき合っても、結婚しても、ずっと一対一で向き合い続けるというのは意外にしんどいものです。それももちろん大事なことですが、好きな映画や本を共有して感想を言い合ったり、ニュースについて語り合ったり、一緒に仕事をしてみたり……そうやって上手な三角関係を作りながら、互いの知識やセンスに対して敬意や関心を払い合っていく。まりこさんの需要にフィットしているのは、そういった恋愛関係の築き方ではないでしょうか。
人間関係の中で安心感を得るためには、相手からのリスペクトや興味関心は不可欠なものです。そのためにも、「向き合う関係」から「三角関係」へのシフトをぜひオススメしたいと思います!
次ページ “生き延びるための手段”になった現代の恋愛
“生き延びるための手段”になった現代の恋愛
以上がまりこさんのお悩みに対する桃山商事なりの回答です。このような形で、女性たちが恋の望みを叶えるため、苦しい恋愛にハマらないための具体的な方法を考えていきたいと思います。
日本の女性はどちらかと言うと恋愛観が“受動的”で、相手に合わせること、男性から選ばれることに重きを置いてしまいがちです。それに対し我々は、これまでの連載を通じて「相手の言動より自分の気持ちを起点に考えましょう」「ハウツーやテクニックではなく、自分がどうしたいかを重視しましょう」といったことを訴えてきました。
我々としては本音のメッセージを送ってきたつもりだし、今もその気持ちに変わりはありません。しかし、昨今の社会情勢や桃山商事に届く相談内容を見るに、女性たちの抱えている焦燥感と危機感にはかなり差し迫るものがあり、もはや「自分の気持ちを大事にする」という余裕すら失われつつあるのではないか……と感じます。
その背景には、「男女の賃金格差」や「妊娠のリミット」といった構造的問題が存在しているはずです。女性たちの話を聞いていると、
・このまま一生働いていける気がしないので、早く結婚して主婦になりたい
・仕事も子どもも諦めたくないので、早く結婚&出産して職場に戻りたい
・結婚せずに働くつもりだが、孤独を分かち合えるパートナーは欲しい
・人生を安定的に送るためには、仕事があり、親と女友達がいればいい
といった本音を頻繁に耳にします。そこには、かつて恋愛が持っていたドキドキやキラキラといったムードはありません。現代の女性にとって恋愛は、「生き延びること」に直結した、極めて切実な問題になりつつあるのかもしれません。
少し話が大袈裟になってしまいましたが……新連載「で、私の彼氏はどこにいるの?」では、そのあたりの背景も意識しながら、お寄せいただく恋愛相談に対し、精神論や自己省察では終わらない、より具体的かつ実践的なアドバイスを提供していけたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。
回答/清田代表&森田専務 文/清田代表
この連載は、隔週で水曜日に公開。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページ ⇒ 「で、私の彼氏はどこにいるの?」
桃山商事の過去の連載もあわせてどうぞ!
・恋愛における男ゴコロ談義
・恋愛ビブリオセラピー
http://wol.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/071400090/071400001/?
破局と厄年の不幸を迎え……でも昇進して仕事は充実2016年7月20日
いま心を満たしてくれるのは、男性よりも女友達
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日経ウーマンオンラインの人気連載「お見合いおじさんは見た!」「38歳からの、大人の恋愛論」を手掛けたライター・大宮冬洋さんの恋愛ルポ。キャリア女性にスポットを当て、仕事と恋愛について書き綴ります。今回は、40歳の化粧品メーカー勤務の女性を取り上げます。
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こんにちは。ライターの大宮です。5年来の友人と恋愛関係になったのに、わずか4カ月で別れることになってしまった女性の話を聞いています。化粧品メーカーで管理職を務めている関根直子さん(仮名、40歳)です(前回記事はこちら「私の勤務先や学歴に引け目を感じる彼、4カ月で別れが」)。
別れの原因は、恋人の男性が直子さんの学歴や職歴にコンプレックスを感じてしまったこと。現在の20代には考えられないかもしれませんが、僕たちの世代の男性は「女性より優位に立ちたい。尊敬されて尽くされたい」という願望を内に秘めていることが多いのです。仕事人間の父親と専業主婦の母親に育てられ、大学でも女性は少数派だったことが影響しているのかもしれません。
現代は共働きが当たり前ですよね。「妻子を余裕で養える」収入を安定的に得ている男性などは一握りです。願望と現実に引き裂かれた男性は、無意識のうちに卑屈になったり消極的になったりします。その姿を見て、せつない思いをしている女性も少なくないと思います。
「女の厄年」で迎えた父親の死や自らの体調不良、さらには恋人との別れ。一つひとつを何とか乗り越えた34歳の直子さんを待っていたのは管理職への道でした。
次ページ 自分のチームを成長させたい 仕事への姿勢も一変
自分のチームを成長させたい 仕事への姿勢も一変
「管理職試験はかなりの難関で、同期の人たちはほとんど落ちていました。私はなぜか合格し、30代半ばの女性マネジャーとして社内で話題になっています。正直いって、女性だからゲタを履かせてもらったのかなと思うこともあります。若くして管理職になった男性は幹部候補生のすごい人たちばかりですから」
年上男性も含めて8人のメンバーを率いる管理職となった直子さん。部下の一人は3歳年下の独身男性で、昇格した直子さんを「サシ飲み」で祝ってくれたそうです。
「末っ子気質の私は年下が好きじゃないんです(笑)。年上に甘えるのは得意だけど、年下にはどう接したらいいのかわからなくて無駄に威張ってしまうこともあります。でも、彼と仕事のことを初めて熱く語り合えたのはよかったですね。恋愛感情? それはありません。上司としての愛情はたっぷりありますけど……」
僕は職場恋愛を個人的に推奨しています。同じ会社や学校の出身者は生い立ちや仕事観・生活観が似ていることが多く、結婚をしても家庭生活に行き違いが生じにくいと感じるからです。普通に生活していると、身近にいる異性が当たり前の存在のように感じます。でも、社会全体からすると価値観が似ている人は意外と少ないものです。
直子さんには社内の年下男性にも目を向けてほしいと思いますが、管理職という立場上は難しいのかもしれませんね。部下を任されているという責任感を人一倍感じ、仕事への姿勢も大きく変わったと直子さんは自覚しています。
「以前の私はいわゆる『ベルイチ』の女でした。自分の仕事はきっちりやるけれど、終業ベルが鳴ったら一番にダッシュで帰るのです。残業は基本的にしないし、会社の飲み会もほとんど断っていました。アフター5も休暇もすごく充実していましたよ。でも、マネジャーになってからは、メンバーと自分の成長を考えるようになりました。そのためにはチームの地位も向上させたい。(管理職になって)残業代が出なくなった今のほうが以前よりも残業しています」
若手管理職としてがんばっている直子さんですが、「仕事を口実にして見るべき現実から目をそらしている」と自己嫌悪に陥ることもあります。その現実とは、気になる男性すらいないこと。老後は孤独に過ごすことになるかもしれない、と直子さんは不安を抱えています。
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心を満たしてくれるのは男性よりも女友達
賢くて気遣い上手な直子さんが老後に孤独になるとは僕は思いません。なぜなら、恋人はいなくても固い絆で結ばれている女友達がいるからです。
「人数は少ないですよ。学生時代からのつながりの4人ぐらいです。全員が地方出身者という共通点があります。もはや家族みたいな関係ですね。自分の身に何かあったときのために、財布には彼女たちの名前と連絡先を書いた紙を常に入れています。話していて面白くて、ディテールも含めて満たしてくれるのは男性よりも女性ですよね。男性には何を求めているのかといえば、『これをすると人生はもっと楽しいよ』と私に教えてくれること。男性の好みは昔から変わっていません」
未婚既婚を問わず、アラフォーの女性たちから同じような話を聞く機会が少なくありません。恋愛対象は男性であり、彼らには刺激を求めている。でも、最も気を許せて助け合えるのは古くからの女友達だ、というのです。
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我が身を振り返ってみると、男性の場合はこのような友情は成立しにくい気がします。例えば大病をして寝込んだとして彼らに助けてもらう気にはなれません。妻もしくは母親を失ったら、僕たち男性こそ孤独感の高い生活になりそうです。せめて奥さんを大事にしなくちゃ……。
ええっと、直子さんの話でしたね。四十路を目前にした39歳の年に、直子さんは個人経営の結婚相談所に登録します。そこである現実に直面するのです。詳細は来週にお届けします。
文/大宮冬洋 写真/鈴木愛子
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記事一覧ページはこちら ⇒ 【キャリア女子ラブストーリー】
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お金のプロが教える、意外な「本当に必要な貯金額」2016年7月20日
貯蓄をしても安心感は得られない…ならば、発想を変えよう
お金を貯めることが最大の目的になって、「貯蓄疲れ」していませんか? 働く女性の相談を受けることが多いFPの加藤梨里さんが、これまで受けた相談を紹介しながら、お金やライフプランの課題を解決していく新連載をスタートします。前回の記事「お金のプロが伝授 貯金するなら「セールor定価」の答え」では、セールでのお買い物についてお話ししてもらいました。第3回の今回は、女性の貯蓄について考えていきたいと思います。
なぜ女性は貯蓄に積極的なのか?
女性からの相談で圧倒的に多いのが、「どれくらい貯めておけばよいの?」というもの。その答えは、第1回目の記事「ボーナスの「使っていい額」教えます 使う勇気も大切」でお話した通り、いざという時のための生活費として生活費の半年から1年分や、夢を叶えるためのお金が中心になります。人によって異なりますが、おおまかには200〜300万円あれば、基本的に当面は十分でしょう。
でも実際には、すでに手元に300万円以上ある、かつ、特に近いうちに使う予定もないという人でも、「何となく不安だからもっと貯蓄しなければ」と感じていることが多いのです。1000万円あってもまだ不安だという人もいます。「貯めなきゃ」という焦りは、貯蓄があるなしにかかわらず、多くの女性が抱えているのです。
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次ページ 貯蓄は不安を消し去るための手段
貯蓄は不安を消し去るための手段
「何となく不安」な心理には、女性の社会的な立場や高齢化が影響していると思います。最近は「下流老人」「老後破産」といった言葉が躍り、社会全体に老後資金への不安が高まっています。女性は男性よりも長生きで、2人に1人は90歳を迎えるといわれていますから、より強い危機感があるようです。20代ですでに老後資金を貯めている人も珍しくありません。
老後資金は、仮に60歳で退職してから90歳まで生きると、生活費だけでも約5000万円は必要です。ここから公的年金の収入を差し引いても、退職金や貯蓄で約2000万円が必要です。30歳から60歳までの30年間で貯めるなら、年間約66万円、月に5万円以上になります(※)。
もしずっとシングルだったら、この老後資金を自分で工面せねばなりません。結婚すれば夫婦で必要な老後資金は少々変わるとはいえ、妊娠・出産をすれば仕事に制約が出て収入ダウンのリスクがあります。また、女性を取り巻く雇用環境は改善傾向にあるとはいえ、いまだに残る賃金格差などのハンデもあります。そんななかで稼ぎ続けられるのかを考えると、老後への貯蓄は気が遠くなる道のりに感じられます。これが、「働けるうちに稼いで貯めておかねば」という切迫感につながるのでしょう。女性にとっての貯蓄は、先行き不透明な人生の不安への、ひとつの対抗策なのかもしれません。
次ページ 「貯めなきゃ」の焦りの原因は貯蓄がないことではな...
「貯めなきゃ」の焦りの原因は貯蓄がないことではない
実際に、不安を強く感じている人ほど、がんばって貯蓄しています。ある30代の女性は、「人生の最低最悪のケースでいくらかかるかを想定して、それを目標に貯めたい」と相談に来ました。老後資金のために約2000万円、介護に備えて約300万円、病気に備えて約100万円〜300万円など、考えられるリスクを挙げていくと、想定される必要資金はどんどん膨れ上がっていきました。しかし、いくら最低最悪を想定しても、想定外のことは起こりえます。いくら貯めても、不安がゼロになることはないのです。
つまり、「貯めなきゃ」という焦りの原因は、「お金がないこと」ではなく、「人生の変動リスク」なのです。
「貯める」ばかりでなく「増やす」ための戦略も考えよう
そこでおすすめしたいのが、「貯める」よりも「増やす」発想です。「増やす」といっても、必ずしも株式投資などをせよということではありません。もちろんチャレンジするのもひとつですが、お金を生み出す自分を育てるのです。たとえば、万が一いまの会社を辞めても、専門性を活かして別の会社に転職できる、ITのスキルを活かしてクラウドで仕事ができる、趣味のパン作りの腕を活かして自宅で教室を開ける、といった強みを身につけるなどです。私はかつて、想定外のタイミングで会社を辞めてしまったことがあるのですが、書く力や話す力のスキルアップをしていたおかげで、執筆や講師の仕事で食いつなぐことができました。
今の会社や住む場所、そして経済や社会の情勢が想定外の方向へ変わったとき、貯蓄があるに越したことはありません。ですが、すべてを貯蓄だけでなんとかしようとするよりも、収入が続けば負担は軽くなります。人生のステージが変わっても稼げる自分を育てることは、将来のお金を増やすのと同じ効果があるのです。
長い人生には計画性が大切です。一方で、長いからこそ、長期戦に勝ち抜く経済力をつけるためには「貯める」以外の方法も大切です。いま、コツコツと貯蓄をしている人は、ぜひ日頃の努力を自分で認めてあげてください。そして、貯蓄しなきゃという焦りを一度脇に置いてみてください。将来のお金を生み出す力をつけるという視点でお金に向き合ってみると、不安な気持ちが少し軽くなるかもしれません。
※生活費約15万円/月、60歳〜90歳まで30年間の合計で概算しています。公的年金で受け取れる金額は12万円/月、65歳〜90歳の25年間受け取ると仮定。(年金制度基礎調査平成23年「54性別・世帯類型別・不動産有無別 本人及び配偶者の平均公的年金額」より、厚生年金加入の女性の平均額を使用)
文/加藤梨里、イラスト/梶塚美帆
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記事一覧ページは⇒加藤梨里の「お金が増える!使い方講座」
http://wol.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/070100086/071400003
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