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1967年、ウルトラセブンは何と戦ったのか
時効スクープ 〜今だから、聞けた
宇宙開発とベトナム戦争と若者たちが生み出した物語
2016年7月6日(水)
久保 健一、片瀬 京子
ウルトラマンシリーズで異彩を放つウルトラセブン(c)円谷プロ
今年、2016年は、ウルトラマンシリーズの放送が始まって50年という記念すべき年だ。NHKでは7月9日土曜20時から、BSプレミアムで「祝 ウルトラマン 50 乱入LIVE!怪獣大感謝祭」を放送する。ウルトラマンのハヤタ隊員(黒部進)、ウルトラセブンのモロボシ・ダン(森次晃嗣)、帰ってきたウルトラマンの郷秀樹(団時朗)、ウルトラマンコスモスの春野ムサシ(杉浦太陽)など、錚々たるメンバーが顔を揃え、3時間、生放送を行う。
それに先駆ける格好で、7月6日水曜日放送の「アナザーストーリーズ」(NHK BSプレミアム、21時から)では、ウルトラマンシリーズからヒーローをひとり取り上げる。初代のウルトラマンではなく、ウルトラセブンだ。
なぜ恐れられ、なぜ愛されたのか
番組制作にあたって行った街頭インタビューでは「ウルトラマンシリーズではウルトラセブンが一番好き」という人に何人も出会った。
この連載を河瀬大作から引き継いだ久保健一は1972年生まれ。子供の頃はウルトラマンシリーズに夢中になっていたが、ウルトラセブンだけは「怖かった」。
なぜウルトラセブンは久保少年から恐れられ、2016年に街頭インタビューに答える大人たちから好かれているのか。番組ではその謎解きを行っている。
1967年、ウルトラセブンに先行する大人気シリーズ「ウルトラマン」は、怪獣ブームを盛り上げ、42.8%もの視聴率をたたき出していた。しかし、制作時間のやりくりが難しくなったことから9カ月間で放送を終えることになってしまう。それを受けて制作が始まったのがウルトラセブンだった。
ウルトラセブンは若者による番組だ。
メイン監督の満田かずほが29歳、メインライターの金城哲夫が28歳、脚本家の市川森一が26歳。美術デザイナーの池谷仙克は26歳、光学撮影の中野稔は27歳。劇中歌の作曲を担当した冬木透は32歳。キャストの側も、モロボシ・ダン役の森次晃嗣は24歳の新人、アンヌ隊員役のひし美ゆり子は20歳の新人だった。子ども向けの番組なのにアンヌ隊員の衣装が体にフィットしすぎていたのは、彼女が急遽決まった代役だったからだ。
モロボシ・ダンとアンヌ隊員、満田かずほ監督(c)円谷プロ
ご存じの方には常識だが、ウルトラセブンはそれまでのウルトラマンと、ちょっと違う。ウルトラマンは身長40メートルで固定だが、ウルトラセブンは40メートルの時もあれば、人間サイズの時もあり、手のひらに乗る大きさのこともあるという具合に可変だ。それに、敵も違う。
ファッション誌を参考に「次の段階」へ
金城は当時の企画書にこう書いている。
《我々は過去の仕事で怪獣ブームの先鞭を担いましたがブームに安住してはいられません。一歩でも次の段階に進みたい》
その次の段階が、宇宙だった。
人類初の宇宙飛行士ガガーリンが「地球は青かった」と言ったのは1961年、人類が初めて月面に立ったのは1969年。米ソ間で宇宙開発競争が繰り広げられていたことが、1967年10月に放送が始まったウルトラセブンにも強く影響を与えている。
それもあって、ウルトラ警備隊の敵は怪獣から、地球侵略を目論む知性ある宇宙人に変わったのだが、この地球外生命体がどんなルックスをしているか、台本には記述がなかった。ビジュアルは美術担当者にすべてお任せなのだ。
26歳の池谷は、任されたデザインをするにあたって「文明のあるところから来ている宇宙人が多い」ことを強く意識していた。
たとえば、第8話『狙われた街』に登場するメトロン星人は、人間の信頼関係を崩すことで侵略を進めようと目論むほどの知略派だ。
だから「この動物とこの動物の何かを組み合わせてみて、というのはグロテスクになるだけと思って、避けました」。
生き物図鑑ではなくファッション誌を参考にし、数々のユニークな宇宙人を生んでいった。
個性的な宇宙人を数々デザインした池谷仙克さん
宇宙開発競争が激しかったこの時代には、別の争いも繰り広げられていた。
ベトナム戦線は、1965年に米軍が上陸したことで拡大した。また60年代は、日本でも海外でも学生運動が盛んな時期だった。こういった人と人との争いには、どちらの立場にも大義名分がある。
では宇宙人の側には、地球を侵略する言い分はないのだろうか。
「本当の侵略者」は誰なのか
満田は金城の前でこんな話をしたことを覚えている。
「我々人間っていうのは、本当に最初から地球人だったのかね」
すると金城は「なんかおもろしそうなのができそうだ」という言葉を残して帰宅し、3日ほどして脚本を仕上げてきた。それが第42話『ノンマルトの使者』だった。
『ノンマルトの使者』では、ノンマルトなる者たちが海底開発の基地を攻撃する。そのノンマルトについて、アンヌ隊員が謎の少年にこんな風に問いかけるシーンがある。
「ノンマルトって何なの?」
「本当の地球人さ」
「地球人?」
「ずっとずっと大昔、人間より前に地球に住んでいたのさ。人間は今では自分たちが地球人だと思ってるけど、本当は侵略者なんだ」
「人間が地球の侵略者ですって? まさか・・・まさか・・・」
それを知ったダンは、怪獣と戦っていたウルトラマンにはなかった悩みを抱える。どちらの言い分が正当なのか、自分はウルトラセブンとなって、地球と人類を守るため、このノンマルトと戦うべきなのか?
ウルトラセブンは、目に見える敵とだけ戦っていたわけではなかった。その深みが、ウルトラマンシリーズを見て育ち、その後、さまざまな経験を積んだ大人に「シリーズで一番好きなのはウルトラセブン」と言わせるのではないだろうか。
ウルトラセブン49話中、最多の14話を手がけた満田かずほ監督
主役のモロボシ・ダンを演じた森次晃嗣さん
このコラムについて
時効スクープ 〜今だから、聞けた
「スクープ」とは誰よりも早く取材し、いち早く発信するもの…のはずですが、いわば「時効」を迎えたような過去の出来事からスクープが掘り起こされることがあります。当時は話せなかったことを、今なら話せる。いや、真実を話しておくべきだ。そんな思いも引き受けながら、「今だから、聞けた」話によって、知られざるストーリーが紡がれる――。NHKーBSプレミアム『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』はそんな番組です。当連載では、その番組の裏側にフォーカスします。「ニュース」ではなく「トゥルース」に、時を経たからこそ、たどり着けた。ダイアナ妃の事故死、ベルリンの壁崩壊、チェルノブイリ原発事故など、その題材をなぜ選んだのか、どんな準備をし、どんな取材をし、どのように難題をブレークスルーしたのか。制作を指揮するプロデューサーに「“アナザーストーリーズ”のアナザーストーリー」を聞きます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/070300016/070100026
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