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子供や部下の情緒不安定、原因はあなたに 第63回 意外と知られていない「感情が伝染する」事
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 17 日 13:40:00: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


ライフ 経営 生活・生き方
子供や部下の情緒不安定、原因はあなたに
第63回 意外と知られていない「感情が伝染する」事実
2016.6.17(金) 藤田 耕司
French Prime Minister Manuel Valls (L) recieves a "Hongi", or touching of the noses, after the Wreath Laying Ceremony at the Auckland War Memorial Museum in Auckland on May 2, 2016. (c)AFP/MICHAEL BRADLEY
 相手の感情が荒れている時、自分の感情を観察し、安定させると、相手の感情も落ち着いてきた。

 チームのメンバーの状況が不安定な時、自分の感情を観察し、安定させると、メンバーの状況も落ち着いてきた。

 不思議な話に聞こえるかもしれないが、こういった話は少なくない。ある保育士の方からこんな話を聞いたことがある。

落ち着かない園児の原因

 「自分の感情の状態と園児の態度はかなりリンクしています。園児がばたばたして落ち着きがなかったり、走り回って言うことを聞かなかったりする時は、自分の感情が安定していないことが多いんです」

 「例えば、前の日につらいことや嫌なことがあったりして、気持ちが落ち込んだり、むしゃくしゃしたりした状態で園児の前に立つと、いくら表面的には平静を装っていても、園児たちは騒いだり、落ち着きがなかったりするんです」

 「なので、園児たちがそういう状態の時はまず自分の感情が乱れてないか観察して、乱れていれば安定させるようにします。すると、園児たちの態度も徐々に落ち着いてくるんです」

 この話を聞いた後、私は保育士や小学校教員といった幼少期の子供の教育に携わる人にお会いする機会があるたびに、この話をしてみた。

 これまで計6人の方に話したところ、すべての方が「まさに自分もそう感じている」と言う。

 園児や生徒は先生の感情の状態を感じ取り、それに反応する。そのため、自らの感情を落ち着かせることなく、園児や生徒を落ち着かせようとしても、それはなかなか難しい。

 園児たちや生徒を落ち着かせようとするならば、まず自らの感情を落ち着かせる必要がある。異口同音にそう話された。

 また、ある企業の営業チームのリーダーの方からはこんな話を聞いた。

 「チームの数字が悪い時は、リーダーである自分の感情が荒れていることが多いんです。以前はチームの数字が悪いから自分の感情が荒れるんだと思っていました」

 「でも、よくよく分析してみると、実はそれが逆で、自分の感情が荒れているからチームの業績も安定しないんじゃないかと思うようになってきたんです。それからは自分の感情の状態を観察して、荒れていないか、浮き沈みがないかどうかをチェックし、良い状態を保つことも仕事だと心掛けるようにしています」

 ちなみにこのリーダーのチームは毎年、非常に高い業績を残している。そして、このリーダーは人間の感情や心に対する洞察力が非常に高く、心理学の素養はないものの、自らのこれまでの経験を基に人間の心や感情についての持論をもたれている。

情動伝染

 情動伝染という社会心理学の言葉がある。

 これは、感情は人から人へ伝染するということを表す言葉である。情動伝染は意識的に行う共感とは異なり、無意識のうちに生じる現象である。

 相手の感情は自分に伝染し、自分の感情も相手に伝染する。そのため、一方が感情を変化させると、相手に対してもその影響が及ぶ。

 相手の感情が不安定な場合、その感情に敏感に反応して相手に意識を向けがちになる。その不安定な感情を落ち着かせようと、相手に「落ち着け!」と言う前に、自分の感情を観察し、乱れていないかを確認する。

 これは会話で双方の感情の状態を整え、よい結論を導くうえで、効果的な方法である。自分の感情を観察し、管理することは、相手の感情の状態に巻き込まれることを防ぎ、かつ、相手の感情も落ち着かせる作用を持つ。

 このように相手の感情を敏感に感じ取るとともに、自分の感情を観察し、管理する力を表す言葉としてEQ(Emotional Intelligence Quotient)がある。

 EQは1989年に米イェール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士によって提唱され、日本では「こころの知能指数」と言われている。

 いわゆる「頭のよさ」を指し示すIQ(Intelligence Quotient:知能指数)はおもに知能の発達速度を示すのに対して、EQは仕事への取り組み姿勢や人間関係への関心の度合いなどを感情という視点から測定する指数である。

 IQ が高い人間がビジネスで必ず成功するかと言われると、決してそんなことはない。IQが高くともビジネスで成功していない人はたくさんいる。

 そこで、IQ以外にビジネスで成功するために必要な能力は何かということについて、先の両博士がビジネスマンを対象にした調査研究を行なった結果、明らかになったのが、ビジネスで成功した人は優れた対人関係能力を有しているということであり、そのために欠かせないのが、自分の感情の状態を把握し、それを上手に管理調整する能力、そして他者の感情の状態を感じ取る能力だった。

 このEQを高めるうえで、感情の性質に対する理解を深めることは有効である。

 感情の性質に関する理解は、これまでの経験から感覚的に持っている場合がほとんどであるが、理論的に学ぶことでそういった性質に意識を向けることができるようになり、実際の体験を通してその性質について納得できると、感情の性質に対する理解は一段と深まる。

頭に血が上った部下への対処

 その性質の1つが感情は伝染するということである。

 私は経営コンサルタントとして、経営者の方からご相談を受ける仕事をしている。そういったご相談の中でも、感情のもつれに関するご相談は多い。

 例えば、こういったご相談である。

 「すぐに頭に血がのぼって感情的になる部下がいるんです。相手が感情的に言ってくると、こっちも腹が立って感情的になってしまう。そうなると、もうお互い引くに引けない言い合いになってしまうんです。こういう感情的な部下はどう扱えばいいんでしょうか」

 相手が感情的になると自分もついつい感情的になってしまう。これはまさに情動伝染が生じている状況である。

 そのため相手が感情的になっている場合は、「自分にも相手の感情が伝染してくるぞ。気をつけろ」と意識することで、自分が感情的になることを防ぐ効果が得られる。

 もしそこで自分が感情的になると、自分の怒りが相手にも伝染し、情動伝染の相乗効果でお互いの怒りの感情は一気に増幅され、引くに引けない状況となる。

 そういった感情の構図をまずは頭で理解することは、感情を管理するための基礎となる。双方の感情の構図を理解したうえで、相手と会話しながらも、自らの感情の状態を観察し、管理する。

 このような実践を繰り返していくうちに、EQは高まっていく。

 そして、自らの感情を管理できるようになることは、冒頭の園児の例のように、相手の感情に対しても影響をもたらすことができるようになることを意味する。

 上記のようなご相談を受けた際には、こういった話をさせていただく。すると、興味を持たれ、現場で繰り返し実践するうちに感覚を掴まれていく方も少なくない。

意外と理解できていない感情

 相手の感情は自分に伝染する。

 そのため、相手の感情がネガティブな場合は、その感情が自分に伝染しないように意識することで、自分の感情がネガティブな状態に巻き込まれることを防げる。

 一方で、自分の感情も相手に伝染する。

 相手の感情が不安定なのは、もしかすると自分の感情が乱れているからかもしれない。そのような場合は自分の感情を観察し、自分の感情を整えることで、相手の感情も安定するようになる。

 いろいろな人とのコミュニケーションの中で、こういった感情の性質を意識してみると、きっと何らかの発見があると思う。

 とても身近なものなのに、意外と理解できていない感情。その感情に関する理解は、人生の知恵と呼べるものになるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47116  

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