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2016年6月4日 dot.
「ゆとり世代」は失敗作?社会に蔓延する“ゆとり批判”の正体
ゆとり批判は差別なのか(写真はイメージです)
馳浩文科相が「脱ゆとり教育」を宣言したことに、ゆとり世代から反発の声が上がっている。
馳氏は5月10日の記者会見で「ゆとり教育を全否定するものではない」と前置きしつつ、「ゆとり教育が『緩み教育』と間違った解釈で浸透してしまったのではないかという危惧と現場の声」があると説明。どこかでゆとり教育との決別を宣言すべきだと考えていたと明かし、次期学習指導要領の“脱ゆとり教育”を宣言した。
一般的に「ゆとり世代」と呼ばれるのは1987年4月〜1996年3月生まれ。“実験台世代”ともいわれ、国策に翻弄された部分も大きい。それなのにいまさら国が「ゆとり教育は間違いでした」と判断したことに関し、ネット上では「自分たちは失敗作か」「ゆとり世代という言葉が余計に差別的に使われるようになる」といった反発の声が数多く上がっている。
実際、近年はゆとり世代という言葉が差別的に使われる場面が増えた。オウチーノ総研が今年4月に発表した調査(ゆとり世代の男女688名が対象)によると、その特徴としては「打たれ弱い」「仕事の付き合いよりもプライベートを優先」「スマホ・ケータイ依存」「出世にこだわらない」といった点が挙げられる。このイメージは世間一般でも同様だろう。
結果、ゆとり世代は「協調性がない」「すぐに仕事を辞める」「こらえ性がない」などの理由で、主に上の世代からバッシングの対象にされるようになった。ネット上でも「だからゆとりは……」といった書き込みが目立つ。「ゆとり」の一言で相手の人格を全否定する場面も見受けられる。
当のゆとり世代も敏感になっており、同調査では「“ゆとり”と呼ばれることについてどう思いますか?」という質問に半数以上(57.7%)が「嫌だ」「どちらかというと嫌だ」と答えている。
望んで「ゆとり世代」になったわけでもないのに、これでは本当に差別になってしまいそうだ。だが、本当に「ゆとり世代」は世間のイメージ通りのダメ世代なのだろうか。
「少なくとも日頃の振る舞いに関してはゆとり教育のせいではないでしょう。ゆとり世代の特徴とされる『協調性がない』『こらえ性がない』といった点は、昔から先輩世代が下の世代に『近ごろの若いモンは……』と嘆いてきた内容と変わらない。『出世を望まない』という特徴も、単に報酬と釣り合わない労働や責任を拒否しているという至極当然の理由。もし世代の傾向があるとすれば、社会や生活環境の変化が原因と考えるのが妥当ではないでしょうか」(教育ジャーナリスト)
そもそもゆとり世代は決して、ゆとりのある世代ではなかったとの指摘もある。
「物心がついた時点で日本は先の見えない不況。サブプライムローン問題を端に発した世界的な金融危機の影響などにより、大多数は就職氷河期に直面した。社会人になった途端に東日本大震災の混乱を経験するなど、むしろ彼らの上司に当たるバブル世代より苦労しているといってもいい。中には“ゆとりモンスター”といえるような若者もいるでしょうが、それは個人の問題であって世代でひとくくりにできるものではない。国策として大々的に喧伝したことで『ゆとり世代』という幻想が生まれ、それが新たな若者イジメに発展してしまったようにも感じられます」(同)
ゆとり世代を取り上げた放送中のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)でも「世代でひとくくりにはできない」というテーマが根本にある。劇中では87年生まれの「ゆとり第一世代」が自分よりも若いゆとり世代にジェネレーションギャップを感じるシーンがあるが、ゆとり批判の正体は昔から繰り返されている「最近の若いモンは……」の単なる派生形なのかもしれない。
(ライター・別所たけし)
※dot.より転載
http://diamond.jp/articles/-/92484
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