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[創論]米中2強時代の日本外交:前米大統領補佐官 ジェフリー・ベーダー氏&元中国大使 宮本雄二氏
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/173.html
投稿者 あっしら 日時 2012 年 12 月 31 日 17:46:53: Mo7ApAlflbQ6s
 


[創論] 米中2強時代の日本外交


アジア安定へ日米が軸 前米大統領補佐官 ジェフリー・ベーダー氏

 アジア・太平洋地域を巡る日米中の外交バランスが揺れている。日中のリーダーに加え米国でも一部の政権幹部が交代する。米中2強のはざまで日本外交はどんな針路を描くべきか。オバマ政権で対中政策のかじ取りを主導したベーダー前大統領補佐官と元中国大使の宮本雄二氏に聞いた。


 ――尖閣諸島を巡る対立で日中関係が悪化しています。

 「幅広い意味で、米国は主権(領土)問題には介入しない。ただ、日米安保条約第五条に基づき、米国が日本の施政下にある、すべての地域に防衛の責務を負っていることは明確にしている。人の住んでいない島々を紛争の源とすることが日米の利益になるとは思えないし、中国もそう考えていると期待している」

 「日本はアジア・太平洋地域における米国の筆頭同盟国だ。共通の課題に対して、日米両国が共同で対処する姿勢を見せれば、この地域の国々に与える印象は大きく違ってくる。逆に日米双方が共同で立ち上がらなければ、この地域は今よりも友好的ではなく、複雑さを増すだろう」

 ――日本外交はどう動けばいいのでしょうか。

 「日中双方、そして米国も、主権を巡る違いだけにとらわれないようにしなければ。目的は主権を巡る違いを管理するということにある。それは島々の周辺にあるエネルギー資源や漁業資源の取り扱いの方法を探すことだ。双方が面目を失うことなく、権利を放棄することなく、状況を管理できることを示す例にすべきだ。日中のナショナリストたちがこの問題を双方の関係を試す究極の案件としないようにすることだ」


「核武装」発言 歓迎されぬ

 ――安倍晋三首相の「国防軍」や、石原慎太郎前東京都知事による「核武装の研究」の発言など、日本の「右傾化」が話題になっています。

 「日本が安全保障面で自らの責任を重くし、米国に過剰な負担を求めずに軍事的な能力を高めるのであれば、誰かを脅かすような不健全なナショナリズムを示すことにはならない。だが、核の問題は事情が違う。日本は世界の核不拡散体制における要塞の一つだ。核拡散防止条約に対する姿勢を再検討するならば、世界に不安をもたらし、歓迎されることはない」

 ――従軍慰安婦など歴史問題も安倍新政権の課題です。

 「日本は近隣諸国との関係において歴史的な重荷を背負っており、それは不公正に思える。ただ、一部の国々は遠い過去のことに執着し、日本を色眼鏡で見ている。彼らは武装兵力に関する新しい語彙(国防軍)を見て『日本は変わっていない』と反応する」


 ――中国指導部の顔ぶれが大幅に変わります。米中関係に影響はありますか。

 「新指導部の多くは60歳代半ばか後半。共産党の規定によれば、彼らは常務委員を1期しか務めることができず、5年後には少なくとも5人のメンバーが退任する。米国では国務、財務長官が交代し、中国でも来年3月には王岐山氏らが政府部門の要職から外れる見通し。米中とも個人的な信頼を高める必要がある」


 ――米国にとって中国はどんな存在なのでしょう。

 「かつて2国間関係について『前向き、かつ建設的で包括的な関係』と表現した。協力の要素を最大化し、競争の要素を管理可能な範囲に抑えることが重要だ」


 ――軍事面では競争の要素が増しています。

 「中国は軍事力を驚くほど増進させている。対象は台湾海峡だが、(九州からフィリピンに及ぶ)第一列島線に及ぶ。米国は第一列島線内に位置する日本、韓国などの同盟国や台湾への防衛義務も負っており、中国軍の能力増強を傍観できない」


 ――中国との軍拡競争も辞さないのですか。

 「中国側には『近接拒否・領域否定(A2AD)』戦略というものがある。ただ、中国が米国を西太平洋に接近できないようにする能力を開発しているとは思わない。『近接妨害(Obstruction)』と呼んだほうがいい。目的は米国の行動計画を複雑にすることだ。この事態に対処するには以前と違う能力とドクトリンが必要だ」

 Jeffrey A.Bader オバマ政権で国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長として、アジア政策を統括。中国通で知られる。66歳。

新秩序作りに知恵絞れ 元中国大使 宮本雄二氏


 ――日米中のトライアングルの行方はどうなるのでしょうか。

 「中国の急速な台頭に伴い緊張が高まっている。このままでは日米と中国の対立に向かう。カギは中国がいまの国際秩序にどこまで挑戦するのか、にある。中国は、強い被害者意識と、米国を中心とする敵対的な国々による被包囲意識を抱いている」

 「日米は中国の冒険主義的な動きを抑制し、国際的な地位を認め、既存の国際秩序に必要な調整を加えながら、中国が建設的なプレーヤーとなるように誘導すべきだ」


 ――日本は対米外交をどう展開すればいいのでしょうか。

 「日本との関係が米国にとっていかに重要かを、米国民に分からせることができるかどうか。安全保障だけではなく、外交も経済も同じ価値観を共有する国として、協力関係を深化させる必要がある。口先だけでは信頼関係は回復しない。そのように説明できる現実を作りださなければならない」

 「普天間基地の問題もそうであり、環太平洋経済連携協定(TPP)もそうだ。地域や世界の新たな仕組みや秩序作りに、日本が知恵を出し、先頭に立つことが必要だ」


 ――タカ派イメージの安倍首相に中国は警戒感を募らせているのでしょうか。

 「靖国神社を訪れた小泉純一郎首相の後、首相になった安倍氏はこの問題について『あいまい戦略』で対応し、それを評価する声は中国にもある。『対共産主義の闘士』といわれ、対中強硬派とされながら、米中和解を演出したニクソン米大統領の姿を安倍氏の中に見る論理だ。期待しながら結果を見るという姿勢をとるだろう」


尖閣問題 先に手を出すな

 ――とはいえ、尖閣問題は「待ったなし」の感もあります。

 「口先だけで『領土・主権を守る』というのではなく、その言葉を支える態勢をきちんとしないと誰にも信用されない。具体的には海上保安庁の補強や防衛費の増額などだ。同時に、この問題については常に『正義』を日本の側に置いておくのが必要不可欠だ。尖閣諸島の国有化は石原慎太郎前東京都知事が仕掛けたものというイメージを国際社会に持たれ、誤解を受けている」


 ――自民党の選挙公約である「公務員常駐」は得策ではないと。

 「日本側から手を出すべきではない。現在の自民党の姿勢である『検討する』というのはいいが、国際社会の理解を得ないと日本の外交は成り立たない」


 ――日本の実効支配という「現状」を中国は変えようとしています。

 「国有化は国内法に基づく所有権の移転であり、国際社会における現状を変えているという意識は日本側にはない。ただ、中国はそれを認めていない。だから『将来に棚上げ』としたトウ小平氏の言葉はもうご破算という姿勢だ。中国の『新しい現状』は尖閣を自らの実効支配下に置くこと。そのために飛行機や船舶を盛んに送っている」

 「それを許さないということであれば、実力で排除するしかない。行き着く先は海上・航空自衛隊と中国海軍・空軍の対峙だ。それはとてもリスクが高く、危機管理の仕組みもない」


 ――事態改善の妙案はありますか。

 「話し合いの場を持ち、現状を凍結すればいい。事態を悪化させないことを双方が了解する。その上で、実際に危機が発生した際の管理のメカニズムについて話し合うべきだ。お互いに(尖閣の領有権を巡る)次の一手を取れば、間違いなく戦争に近くなる。じわり、じわりとこの問題を風化させていくべきだ。そのうちに文化交流、青少年交流などを回復し、気が付いたら元に戻っている、というのが理想だ」

 みやもと・ゆうじ 京大法学部を卒業後、外務省入省。中国課長、駐中国特命全権大使を歴任。現在は日中友好会館副会長。66歳。


[日経新聞12月30日朝刊P.9]

 

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