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(回答先: 「安倍緩和」に議論百出! 金融緩和に関する6つの疑問に答える 投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 29 日 01:57:25)
[核心]アベノミクス いま再び 金融緩和だけが売り物か
編集委員 滝田洋一
安倍晋三氏が前回首相だった2007年に、上映されたコメディーがある。1990年のバブル崩壊が財政危機の元凶とみて、タイムマシンを使い崩壊を食い止めようとする。タイトルは「バブルへGO!!」。
小泉政権の構造改革に伴う景気回復と株高を安倍政権も引き継いだ。市場は首相の名字になぞらえ、ABE(アセット・バブル・エコノミー)を期待した。
だが、07年の参院選で自民党は大敗、安倍首相はほどなく辞任した。衆参ねじれ国会が今日まで続いている。参院選直前の日経平均株価が1万8000円台だったのを想起すれば、その後の政治と経済の停滞のほどがうかがえよう。
あの選挙から5年余り。今回の総選挙で安倍氏が再チャレンジを試みる。一層の金融緩和を金看板にした選挙公約は今度こそ掛け値なしの「ABE(アベ)ノミクス」となるのだろうか。
日銀に3%の消費者物価上昇率の達成を求め、それまで無制限に金融を緩和。目標が達成できなければ日銀法改正を求める――。
安倍氏ひとりの主張ではない。安倍総裁の誕生など人々の想像外だった8月末に自民党が発表した「日本経済再生プラン」をみよう。
そこには「政府・日銀の物価目標(2%程度)協定の締結、日銀による外債購入など、日銀法の改正を視野に大規模な金融緩和措置を講ずる」とある。再生プランのこの部分は、今回の自民党の選挙公約にもおおむね取り入れられた。
知恵袋が同じなのだろうか。民主党の前原誠司経済財政担当相が財務相とともに日銀総裁と結んだ合意文書は、自民党のいう物価目標協定を先取りするかのようだ。
前原氏は安倍氏の主張を「日銀の独立性を脅かす」と批判する。だが安倍自民党と前原氏の主張内容は親和性が高いのである。
もうひとつ、第三極といわれる日本維新の会の存在がある。政策の柱である維新八策を素直に読めば、小泉・竹中改革を引き継ぐ成長志向が浮かび上がる。とはいえ、個別には実現が難しい政策が多い。
手っ取り早い成長促進策として金融政策が前面に押し出されている。配分に力点を置いた民主党路線が失速した後で、まずは成長を唱える保守勢力の結節点は金融緩和のようにみえる。
金解禁を巡る1931年(昭和6年)の政変を思い出す人もいるだろう。当時の民政党が実施した金解禁とは円と金の交換を認める固定相場制のことで、円高と財政緊縮、金融引き締めを意味した。世界恐慌下で日本は大不況に陥り、31年12月に政権が民政党から政友会に交代した。
民政党は民主党、政友会は自民党の役回りとなる。
犬養毅新政権の初仕事は金解禁の放棄だった。円安が進み、株価は急騰した。犬養内閣の高橋是清蔵相は積極財政と国債の日銀引き受け、円安容認の3点セットを実施した。高橋財政である。アベノミクスに株式市場が期待するのはこんな局面打開だろう。
この政変の前史としては31年9月の満州事変がある。再び日中間に高まる緊張と重ね合わせ、財政破綻の未来図を描くエコノミストもいる。彼らが懸念するのは、国土強靱(きょうじん)化計画の名の下に公共投資のアクセルが踏まれ、日銀が財政赤字の一手引き受け役になる事態だ。
閉塞を破るショック療法か、それとも財政と金融への信認喪失の引き金か。安倍氏の主張への評価は真っ二つに割れるが、日本経済は成長どころか縮小中だ。
今年7〜9月期の名目国内総生産(GDP)の年換算額は470兆円と、直近のピークである07年4〜6月期に比べ実に45兆円も少ない。何もせずにデフレ不況を嘆いていては、じり貧になるばかりだろう。
むろん、金融緩和は魔法のつえではない。直近の企業の総資産営業利益率は、平均支払金利を2%近く上回っている。金利は十分低いのに投資が起きない。
高橋財政の時代を振り返れば、日産、日窒など新興財閥が当時の最先端の技術革新を試行した。「いま必要なのは、そうした投資のフロンティアを刺激する施策だ」とDIAMアセットマネジメントの小出晃三チーフエコノミスト。
自民党の公約は、市場拡大が見込まれる分野への集中支援、国際的に説明できない制度的障害の3年以内の撤廃、国際標準に合わせた法人税減税などをうたう。アベノミクスが早急に補強すべき成長戦略だ。
緩和一本ヤリには伏兵が潜む。高齢化の進行だ。
世の中にインフレ期待が起きれば、人々は手元に現金を抱え込むのをやめて、消費や投資に向かうだろう――。金融緩和によるショック療法の狙いは分かるが、今の日本では60歳以上の人が全体の人口の3割を占め、個人金融資産の7割近くを保有している。
職場を退いた人たちの生活の糧は、年金と利子・配当。物価目標の引き上げは実際の経済成長率を高める前に、青年将校ならぬ高齢者の反乱を誘発すまいか。
そういえば「バブル」で軽いホステス役だった広末涼子さんは、最新作「鍵泥棒のメソッド」では婚活に励む30歳代半ばの雑誌編集者を演じる。高齢層の貯蓄をミドル層にどうバトンタッチして、全体の消費を支えるか。経済社会の年相応もわきまえた戦略も問われる。
[日経新聞11月26日朝刊P.4]
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