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小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
安倍総裁は経済オンチなのか?
2012/11/08 (木) 13:57
はじめにお断りしておきます。安倍総裁のファンの皆様、安倍さんの悪口を言うようですいません。
でもね‥私は何も安倍さんのことが嫌いで、敢て悪口を言おうとしているのではないのです。
例えば安倍さんは、日本は憲法を改正すべきだと主張します。それはそうでしょう。そもそも国の憲法であるにもかかわらず、他国から押し付けられた憲法である上に、これだけ議論の多い憲法なのですから、国民が納得のいくように自らの手で創りなおす必要があると思うのです。
平和憲法の理念にしても、余りにも現実と遊離した内容となっているのは頂けない。つまり、我々国民が憲法の規定を厳格に解釈して、それを忠実に実行しているのならともかく、例えば、その平和憲法を押し付けたアメリカ自身が日本に対してもっと同盟国としての責任を果たせと迫るために、憲法の解釈を捻じ曲げるようなことがしばしば起きるからなのです。
誤解のないように言っときますが、私は、何もアメリカの要請に応えることが常に望ましいなんて思っている訳ではないのですが、仮にアメリカがそうした要請を日本に行い、日本もそれに応えたいと思っても、今の憲法の下ではそれができないことが多いのです。
えっ、協力しているじゃないかですって?
だから、それは憲法の解釈を捻じ曲げて、如何にも合憲という振りをしているからできるだけのことなのです。
早い話、私は、国際紛争の解決手段としての戦争を放棄すると憲法で謳っている日本が、どうして日米同盟を結ぶことができるのか不思議でならないのです。だって、アメリカは軍事力を行使して国際紛争を解決することが珍しくないからです。
もう一度言っておきます。私は、日本が米国と軍事同盟を結ぶのが怪しからんとか不必要だとかと言うのではないのです。そうではなく、あくまで憲法の解釈論としての意見を述べているのです。つまり、日本が日米同盟を結んでアメリカと軍事行動を共にしたら、それは少なくても憲法9条の精神に違反するであろう、と。
ということで、そのような憲法は改正した方がいい。もちろん、だからと言って武力の行使がしやすくなるように条文を改正せよと言っているのではありません。そこのところは国民がじっくりと話し合った上で決めればいいことなのです。
少なくても我が国には憲法9条の規定があり、その解釈が国会で問題になる姿を世界に見せつけている訳ですから、近隣の日本に対して好意を抱かない国が日本の足元を見るのは当然でしょう。
まあ、その意味で私は安倍さんの考えを支持してもいるのです。それに人間的にみても割と温厚そうであり‥
しかし、経済政策に関しては、どう考えてもプロとは思えない。
因みに安倍さんと言えば、その後に総理になった麻生さんを思い出しますが、あの人も経済に関しては一家言ある人でした。
彼はどんな考え方の持ち主かと言えば、積極財政派とでも呼ぶべき考え方で、消費税増税を推し進める自民党のなかで、一人増税に反対をしていたのです。
いずれにしても麻生さんの場合は、自分の長年の経験からくる信念みたいなものがあって、少なくても流行に流されて様子ではなかったのです。
一方、安倍さんの場合には、言っては何なのですが、なんか流行に惑わされているような雰囲気があるのです。
そう思いません?
もちろん、政治家の中にも流行の惑わされる人々は多いのです。つまり、とにかく世の中にお金をじゃぶじゃぶと流通させれば、デフレから脱却でき、バラ色の未来が開けてくる、と。もっと言えば、マイルドなインフレが実現できれば、税収が増大することになり、増税の必要性が小さくなる、と。
私思うのですが‥もし、日本がインフレになることによって税収が増大し、そしてその結果、消費税の引き上げ幅が小さくて済むようになるのであれば、私は断固安倍さんを支持したいと思います。
皆さんも、そう思うでしょう? だって、消費税の引き上げ幅が小さくて済むわけですから、国民にとってこんなにありがたいことはありません。
しかし、何故インフレになると増税の必要性が小さくなると言うのでしょう?
もちろん、それは景気がよくなるからだと言うのでしょうが、では何故インフレになると景気がよくなるのでしょうか?
逆ではないのでしょうか? 景気がよくなるからインフレになるのだ、と。それを物事の順序を変えてインフレにしたら何故景気がよくなると言えるのか?
安倍さんは昨日都内で講演して、インフレ目標政策を導入する考えを明らかにし、消費者物価の上昇率は3%がいいと言ったと言います。
私思うのですが、1%のインフレ率のメドさえ達成が覚束ないのに、どうしたらいきなり物価を3%も上げることができるようになるのか、その仕組みを知りたいと思うのです。
安倍さんは言います。「3%を達成するまでは、基本的には無制限で金融緩和していくと発表していただく必要がある」
この場合、彼が想定していることは、恐らく長期国債などを今よりも遥かに大量に日銀が購入することだと思うのですが、だったら、モノの順序として、日銀による国債の直接引き受けを禁止した財政法を改正するのが先決ではないのでしょうか?
財政法があるから、そして、財政法の精神を遵守する必要があるから日銀の国債購入も控えめなものになるのです。財政法の改正が必要だと何故言わないのか?
それに、もう一つ疑問なのは、日銀に多くを求めることを仮に是としても、では政府は何もしないでいいのか、ということなのです。つまり、日銀が長期国債を大量に購入すると言う前に、政府がもっと積極的に財政出動することがインフレを起こすために必要だと思うのですが、そこのところをどう考えているのでしょうか?
ただ、そもそも消費税の増税を行うべしと言っていたのは自民党であって、だとすれば、自民党の基本的な考え方は財政の健全化努力は怠ってはならないというものだと思うのですが、その考えとどう調和させることができるのでしょうか?
いずれにしても、安倍さんは流行に振り回されているように見えるのです。
他にもそんな政治家が与党のなかにもいるでしょう? そう、安倍さんとは党が違っても、意外と親しいのだとか。
あの前原国家戦略担当大臣です。どういう訳か、外交戦略と言い、日銀にアコードを押し付け、インフレターゲットを採用させる考えが二人とも同じなのです。
そして、二人とも、それほど経済について深く考えているようには思えない、と。
もし、物価が上がることによって景気がよくなるというのなら、何故失業率が未だに8%近くにあるアメリカはその考えを採用しないのでしょう? 税収が減って困っている南欧を抱えたユーロ圏は、何故インフレ容認の姿勢を示さないのでしょう?
百歩譲って、仮に3%のインフレ率が実現できたして、そのとき、賃金も3%以上上がり、税収も3%以上増えることが期待できるのでしょうか?
インフレ率が3%のときに、賃金が3%以上上がれば、確かに労働者にとっては有難い話で、そうなれば消費が刺激されることも期待できるのですが、その一方で、賃金が3%以上上がるということは、企業にとっては収益悪化の要因になるのではないでしょうか? それにあのケチな経団連の面々がそう簡単に賃上げに応じると思いますか?
仮に税収が少々増大したとしても、インフレのために政府の支出も増大せざるを得ない訳ですから、そうなれば財政赤字が減るとも言えないのです。
私、思うのですが、日本の経済を活性化させるためには人口減少にまず歯止めをかけ、そして、
子どもの真の学力向上に努めることが必要だと思うのです。
それに、政治家としてやるべきこととしては、日銀の尻を叩くことより、特例公債法を早期に成立させることが先でしょう。
以上
http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2012/11/08/017572.php
三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」
第179回 二つの選挙 前編
2012/11/06 (火) 13:13
今年の五月、ギリシャ総選挙とフランス大統領選挙という「二つの選挙」が行われた。結果は、ギリシャが、
「緊縮財政を推進していたND(新民主主義党)とPASOK(全ギリシャ社会主義運動)の与党系二党が、得票率では4割しか獲得できなかったが、第一党(ND)に50議席上乗せされるギリシャの選挙制度により、過半数を獲得することに成功」
であり、フランスが、
「新古典派的、グローバリズム的なサルコジ大統領が、社会党のフランソア・オランド第一書記に敗れた。現職の大統領がフランス大統領選挙で負けるのは、81年のジスカールデスタン氏以来31年ぶりの出来事」
であった。
前記二つの選挙は、ある意味で「前哨戦」だったわけである。現在、今後の世界の行く末を大きく変えることになる二つの選挙の時期が迫っている。すなわち、アメリカ大統領選挙と日本総選挙だ。アメリカ大統領選挙は、本稿が掲載される頃に投票日を迎えるわけだが、日本の総選挙の日程はまだ決まっていない。それにしても、総理大臣自ら「近いうちに国民の信を問う」と約してしまった以上、それこそ「近いうち」に日本国において総選挙が実施されることは確実だ。
『2012年11月5日 テレビ朝日「アメリカ大統領選「総得票数はほぼ互角」大接戦」
http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/221105017.html
アメリカ大統領選挙まであと2日です。最新の世論調査では、オバマ大統領がわずかにリードしていますが、依然としてほぼ拮抗(きっこう)する大接戦が続いています。
民主党・オバマ大統領:「盛り上がってるかい?準備は良いかい?」
ハリケーンの後、遊説を再開してから、オバマ大統領がホワイトハウスに戻ってくることはほとんどありません。最後の2日間も、5つの激戦州をオハイオ州を重点に回っています。ロムニー候補も、バージニア州を重点に2日間で5つの州を回る予定です。激戦とされる8つの州のうち、フロリダ州、バージニア州などではわずかにロムニー候補がリードしています。4日付のワシントン・ポスト紙は、当選を決める選挙人数ではオバマ大統領がやや優勢としながらも、総得票数ではほぼ互角の戦いだと解説しています。』
ノーベル経済学者のポール・クルーグマン教授は、
「オバマが勝てば、雇用創出に向けたケインズ的な動きに出る。ロムニーが勝てば共和党の正統教義に従い、新自由主義的な動きとなり、雇用創出とか財政出動はミニマイズされる。」
と書いている。クルーグマンのソリューションは、要するに、
「バブルが崩壊してデフレに突入しかけている以上、FRBが量的緩和をするのは当然として、政府は雇用創出のための財政出動をしろ。しかも『十分な規模で』」
という話であり、筆者が本連載で繰り返し訴えてきた政策とほぼ同じである。
クルーグマンは、新著「さっさと不況を終わらせろ」において、オバマ政権の過去の景気対策について、
「通常は、不景気に対する防御の第一陣はFRBで、経済がつまづいたら金利を下げるのが通例だ。でもFRBが通常コントロールする短期金利はすでにゼロで、それ以上は下げられなかった。
すると残るは当然ながら、財政刺激策だ−一時的に政府支出を増やすか減税し、全体的な支出を支援して雇用創出するのだ。そしてオバマ政権は、確かに景気刺激法案を設計して施行した。それがアメリカ回復再投資法だ。残念ながら、総額7870億ドルのこの財政刺激は、必要な規模よりはるかに小さすぎた。それが不景気を緩和したのはまちがいない。でも完全雇用回復に必要な額に比べればずっと小さく、不景気を脱出しつつあるという印象をつくるにも不十分だった。もっとひどいことだが、刺激策が明らかな成功をもたらさなかったために、有権者から見ると、政府支出を使って雇用創出という発想自体が眉唾に思えてしまった。だからオバマ政権はやり直す機会がもらえなかった。」
と、書いている。
すなわち、現在のオバマ大統領の立場は、麻生政権末期に近いのだ。「正しいデフレ対策」をやろうとし、実際にやっていたわけだが、野党(日本は民主党、アメリカは共和党)の妨害を受け、不十分な規模でしか実施できず、結果が出る前に選挙の時期を迎えてしまった、という話である。
クルーグマンの言う「オバマ政権はやり直す機会がもらえなかった」というのは、あくまで一期目の景気対策の話だ。今回の大統領選挙で勝利することになれば、オバマ大統領派「やり直しの機会」をもらえることになる。
もっとも、オバマ大統領が勝っても、即座に雇用創出、需要創出のための政策が打たれ、年末に迫った「財政の崖」を回避できるかといえば、残念ながらそう簡単にはいかない。何しろ、アメリカ議会では共和党が優勢なのだ。オバマ大統領が勝った場合、大統領は民主党、議会は共和党という「ねじれ現象」が続くことになる。まさに、衆参がねじれ、政治的混乱が発生している、どこかの国とそっくりだ。
逆に、ロムニー氏が大統領職を射止めた場合、共和党が主導する議会が、財政の崖回避に同意すると主張する人もいる。確かに、財政の崖の「二つの衝撃」のうち、減税停止については法改正が行われるかも知れない。とはいえ、政府支出の強制削減の方は、何しろ共和党が主導して成立させた法律であるわけだから、いきなり態度を翻すとは到底思えないわけだ。
第179回 二つの選挙 前編(2/3)
2012/11/07 (水) 13:40
いずれにせよ、現在のアメリカが「需要創出派」と「新古典派経済学派」に候補がきれいに分かれた選挙戦になっているのは、ある意味で非常に分かりやすい。
アメリカは07年(厳密には06年後半)からの不動産バブル崩壊とサブプライム危機、そして08年9月15日のリーマンショックを経て、経済がデフレの「縁」を際どく歩き続けている状態にある。少しでも政策を誤ると、アメリカは間違いなく98年以降の日本同様に、本格的なデフレーションに突っ込んでしまう。
アメリカ経済のそもそもの問題は、90年以降の日本と同様に、民間が負債を拡大し過ぎ、バブルを膨張させ、それが崩壊した結果、マインドが「債務返済(負債縮小)」となってしまったことである。もっとも、日本のバブルの主役が民間企業だったのに対し、アメリカの場合は家計になる。
アメリカ経済は、家計の消費がGDPの七割を占める消費中心の経済モデルになっている。しかも、個人消費の規模が絶対額でも極端に大きい。アメリカの個人消費は、文句なしで世界最大の需要項目なのだ。この「世界最大の需要」がバブル崩壊で痛めつけられたことこそが、現在の世界経済の混乱の根っこにあるわけである。
図179−1は、アメリカの家計の金融負債について、住宅ローンと「それ以外の金融負債」についてグラフ化したものだ。最新データ(12年6月末時点)に至っても、未だにアメリカの家計が住宅ローンを「返済」していっていることが分かる。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/20121105.PNG
【図179−1 アメリカの家計の金融負債の推移(単位:十億ドル)】
出典:FRB
当たり前の話だが、住宅ローンの返済は消費にも投資にも該当しない。経済学的には、住宅ローンなどの借金返済は「貯蓄」としてカウントされるのである。
アメリカの家計がバブル崩壊を受け、住宅ローンを返済していくのは、これはまことに合理的な行動だ。ところが、ミクロ(家計)レベルの合理的な行動がマクロ(国民経済)に合成されると、国民所得の減少という非合理な結果をもたらしてしまう。いわゆる、合成の誤謬が、現在のアメリカでも発生しているわけだ。
合成の誤謬に苦しめられたのは日本も同様だが、我が国の場合は主役が企業、アメリカは家計である。当たり前の話だが、家計はあらゆる経済主体の中で最も脆弱な存在だ。01年のITバブル崩壊以降、アメリカは家計の負債拡大に、経済成長の大部分を依存せざるを得なかったわけである。
これがユーロの盟主ドイツの場合は、ITバブル崩壊後、ECBが政策金利を引き下げ、ユーロ加盟国のバブルを膨張させた。ドイツは近隣諸国に輸出ドライブをかけ、経常収支を黒字化し、さらに黒字分を南欧諸国のバブルや国債に投じることで、一時は10%を超えていた失業率を押し下げていった。ドイツの成長を支えてくれたのは、南欧諸国という「外国」の借金だった。
それに対し、アメリカはやはりITバブル崩壊後にFRBが断続的に政策金利を引き下げ、「国内」に不動産バブルを醸成していったのである。金利の引き下げに加え、金融工学の発展により、住宅ローン会社がローン債権を証券化し、他者に売り飛ばすことが可能になった。結果的に、本来は住宅ローンを組めないサブプライム層にまで市場が広がり、アメリカの不動産バブルは「限度」を超えて拡大してしまったわけである。
アメリカの代表的な住宅価格指数であるケースシラー指数(2000年1月=100)は、06年下半期には220を超えた(十大都市圏指数)。七年間で住宅価格指数が2.2倍になったということは、毎年10%以上の比率で住宅価格が上昇していたということになる。
最新のケースシラー指数(12年7月)は157.3と、ピーク期と比べ31%の下落となっている。ここ数カ月、ケースシラー指数で見たアメリカ住宅価格は底打ちの気配を見せているが、このまま上昇に転じるかどうかは不明である。
何しろ、住宅価格は底打ちの「気配」こそあるものの、図170−1の通り家計の住宅ローン返済は未だに継続しているわけだ。アメリカの家計が住宅ローンの返済をやめなければ、同国の不動産ビジネスの本格的な回復はない。
第179回 二つの選挙 前編(3/3)
2012/11/08 (木) 13:27
ところで、バブルが崩壊した国の政府は「税収減」に見舞われ、かつ銀行への資金注入や景気対策を強いられる。結果的に、バブル崩壊国の政府は財政赤字が拡大し、政府負債(財務省の言う「国の借金」)の残高が積み上がっていくことになる。
ご多分に漏れず、アメリカ連邦政府も06年以降、恐るべきペースで負債残高を増やし続けている。連邦政府の負債残高は、06年末時点では4.9兆ドルだったのが、12年6月末には11.1兆ドルに膨れ上がった。アメリカ連邦政府の負債拡大ペースは、バブル崩壊後の日本政府の二倍を超えているのである。
無論、07年以降のアメリカ連邦政府が「超」ハイペースで負債残高を拡大しなければ、世界は冗談でも何でもなく「第二次大恐慌」に突入していただろう。前代未聞の規模で不動産バブルが崩壊を始めた以上、連邦政府の負債拡大は「仕方がない」話なのだ。
ところが、これは日本のバブル崩壊後も同じだが、特に民主主義国家にでは、政府の負債拡大はマスコミや野党から必ず攻撃をされる。政府側としては、
「バブルが崩壊し、民間の家計や企業が消費や投資を増やさず、借金返済ばかりをしている。こんな時期に中央政府までもが負債と支出(消費、投資)を拡大しなければ、国民経済の規模(GDP)が激減してしまうではないか。一体他に、どうすればいいというのか」
という話なのだが、残念ながら民主主義国家には「野党」というものが存在する。たとえ野党側がバブル崩壊後の政府負債拡大の正しい意味を認識していたとしても、立場上、必ず政権サイドを攻撃してくる。しかも、政府の財政赤字や負債残高の拡大が続くと、
「政府はムダ使いばかりを増やし、国の借金(正しくは政府の負債だが)を膨らませまくっている。このままでは将来世代に国の借金のツケが押し付けられることになる。政府の財政赤字拡大を許すな!」
といったレトリックが通用しやすくなってしまうのだ。
実際、アメリカの共和党は2011年夏に政府の負債拡大を責めたて、連邦政府の債務残高上限を引き上げる法律に対し、猛烈に反対をした。しかも、格付け会社であるS&Pが歴史上初めて、米国債を格下げしたものだから、共和党は傘にかかって、
「オバマ政権は国の借金を増やしすぎだ!」
と責めたてることができたわけである。
S&Pの米国債格下げは、株式市場を混乱に陥らせ、「米国債が買われ、長期金利が却って下がる」という間抜けなオチになったわけだが、共和党の攻勢は続いた。結果的に、オバマ政権は2013年1月からの「強制的な歳出削減」を強いられることになったのである。具体的には国防費を中心に、十年間で最大1兆2千億ドルの歳出が強制的に削減されることになる。
しかも、タイミングが悪いことに、2012年末にブッシュ政権による減税措置が期限切れを迎える。減税の終了とは、つまりは増税である。アメリカ経済は2012年末から翌月にかけ、
「バブル崩壊後のデフレに片足を突っ込んでいる状況で、増税と支出削減という緊縮財政を実施する」
という、無謀なチャレンジに乗り出すことになるのだ。まさに、97年の橋本政権によるデフレ下の緊縮財政政策そのままである。というよりも、日本のデフレが深刻化したのは、97年の橋本緊縮財政の翌年からになる。
バブル崩壊後の国がデフレに陥るのは、「バブル崩壊そのもの」よりも、「政策的な失敗」の影響の方が大きいのだ。政策的な失敗とは、もちろん民間の家計や企業が消費や投資を減らし続けている環境下での「政府の節約」あるいは「増税」である。
民間が支出を切り詰めているところに、政府までもが節約をした日には、国内で消費や投資を拡大する人が誰もいなくなってしまう。結果的に、国民の所得が縮小し、税収が減り、財政はますます悪化していくことになる。
次週も「二つの選挙」に関する話を続ける。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2012/11/08/017543.php
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