http://www.asyura2.com/12/senkyo136/msg/878.html
Tweet |
(回答先: 日本の将来をめぐる2人のタカ派の争い 投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 10 日 00:34:18)
安倍総裁、政権奪還へ「茨の道」
2012年10月10日(水) 安藤 毅
決選投票の末の逆転勝利で安倍晋三・元首相が自民党総裁に返り咲いた。「次期首相」に近づいたが、“民意”と異なる結果に党内外から厳しい声も上がる。「決める政治」と対決姿勢をどう両立するのか。前途に茨の道が待ち受ける。
「だいぶ元気になったよ。また頑張っていくから」
2007年10月初旬。東京・渋谷の私邸を訪れた旧知の官僚やマスコミ関係者らに、この家の主はやつれた表情に作り笑いを浮かべながら応対していた。
安倍晋三氏――。その3週間ほど前、持病の潰瘍性大腸炎の悪化などを理由に突然、首相を辞任。見舞い客の訪問を受け入れるまでに体調が回復したものの、わずか1年で政権を手放したことによる虚脱感が全身を覆っていた。この政治家が再び政界の中心に舞い戻るには、よほどの時間と追い風が必要だろう。この時期に安倍氏と面会した関係者の多くが、そう感じていた。
それから5年。自民党総裁選を制し、安倍氏が政治の表舞台に帰ってきた。総裁への返り咲きは1955年の自民党結党以来、初めてのことだ。
勝算なき出馬
実は、総裁選の火ぶたが切られる直前まで、安倍陣営は出馬の是非を巡って揺れ動いていた。
「いくら体調が万全とアピールしても政権を1年で投げ出したマイナスイメージは国民の間に色濃く残っている。ここで大敗すれば政治生命が絶たれかねないと、出馬見送りを進言する議員が少なくなかった」。安倍氏に近い城内実・衆院議員はこう振り返る。
安倍氏も今春までは、自身の総裁再登板という展開をあまり想定していなかった。谷垣禎一・前総裁体制での衆院解散・総選挙が予想される中、むしろ橋下徹・大阪市長ら「大阪維新の会」幹部と距離を縮め、将来の政界再編への布石を打ち、一定の影響力の確保を狙う戦略に軸足を置いていたのだ。関係者によると、維新の国政進出を巡り、橋下氏らが安倍氏に新党の党首就任を打診する場面もあったという。
そんな「次」狙いの安倍氏らが総裁選出馬へと動き出したのは、谷垣氏が社会保障と税の一体改革に関する民主、自民、公明3党の協力路線の継続を選択し、先の通常国会での解散見送りが確実になってからのことだった。
「谷垣執行部や党内のベテランの多くは次期衆院選後も3党協力を維持する路線だった。官公労や日教組が支持基盤の民主と組むと、憲法改正や教育改革などは進まない。それでは、安倍さんや党内の保守系議員が干上がってしまうとの危機感が強まっていた」。安倍氏に近い議員はこう振り返る。
最終的には党内の世代交代の加速も懸念する安倍氏が「影響力を残し、次につなげる戦いができればいい」と出馬を決断した。だが、同じ派閥から町村信孝・元官房長官も出馬に踏み切ったため、当初は、安倍陣営内からも「勝算はほとんどない」との声が漏れた。
しかし、程なく安倍氏にフォローの風が吹き始める。その1つが尖閣諸島を巡る中国との対立など領土に関する摩擦の激化だ。最も強硬な姿勢が党員やお茶の間へのアピール材料となった。
当初は有力視された石原伸晃・前幹事長の失速も大きかった。谷垣氏を再選断念に追い込んだ経緯への批判が高まったことに加え、「テレビ番組で失言を連発するたびに地方票が逃げた」と石原氏に近い議員は唇をかむ。
最終盤で無派閥や谷垣氏周辺の支持も獲得し、石原氏との2位争いを制した安倍氏。国会議員による決選投票では、想定通り、1回目の投票で党員・党友による地方票の過半数を獲得して1位だった石破茂・現幹事長を逆転した。「派閥政治を批判する石破さんが総裁になると、どんな人事をするか分からないぞ、というネガティブキャンペーンが効いた」。自民党のある秘書は舞台裏の一端をこう明かす。
異例の復活劇で首相への返り咲きも視野に入った安倍氏。早期の政権奪還と首相時代に着手した保守色の強い政策の実現に意欲を示すが、前途は平坦なものではない。
まず、過半数を上回る地方票を集めた石破氏ではなく安倍氏が総裁に選ばれたことが、“民意”を反映していないとの空気が党内外に充満していることだ。日本経済新聞社とテレビ東京が9月末に実施した世論調査では、安倍氏の総裁就任を「評価する」との回答は38%にとどまり、「評価しない」が49%に上った。
これは、次期衆院選の苦戦が予想される民主党にとって、“干天の慈雨”とでも言うべき状況。野田佳彦首相に近い議員は「国民人気の高い石破さんが選挙の顔になる方が怖かった」と語る。
こうした中、安倍氏も石破氏を重用する姿勢を示し、党運営の要の幹事長に指名。新執行部は、国会対策委員長に石破氏に近い浜田靖一氏を起用するなど、総裁選で安倍氏と石破氏を支持した議員への論功行賞の色合いが濃いものとなった。
「安倍さんはまた人事で失敗しつつある」。主要ポストを獲得できなかった派閥の幹部が2006年9月発足の安倍内閣が党幹部や重要閣僚を親しい議員で固めたことを引き合いに不満を口にするなど、早くも党内抗争の火種がくすぶり出している。
「対決」と「決める政治」どう両立?
安倍氏が直面するより重要な課題が、10月末にも召集される臨時国会の対応。先の通常国会で参院で首相問責決議が可決し、現状では自民など野党が国会審議に応じる環境は整っていない。
安倍氏は社会保障と税の一体改革では民自公3党の協調路線を維持しつつ、赤字国債発行法案や「1票の格差」是正を含む選挙制度改革関連法案などの懸案処理への協力と引き換えに、野田首相に「近いうちの解散」の履行を求める構えだ。
しかし、対決一辺倒の姿勢を貫けば世論から批判を浴びかねない。かといって、解散時期が遅れるほど安倍氏への党内の求心力が低下するのは必至だ。対決と「決める政治」の両にらみの対応をどう両立するのか。それに苦悩し続けた谷垣氏同様の茨の道が安倍氏を待ち受ける。
10月1日に内閣改造に踏み切った野田首相はより崖っぷちだ。衆院の過半数割れが目前に迫り内閣不信任案可決も現実味を増す中、早期解散に慎重な輿石東幹事長を続投させ、党内融和を重視する姿勢を強調。内閣改造で各グループのバランスに配慮したものの、党勢の大幅な回復につながるとの見方はほとんどない。「このまま民主党で選挙するよりはまし」と、離党の検討に入った若手議員も相次いでいる。
関係者によると、民主党内では過半数割れ対策として小沢一郎氏が率いる「国民の生活が第一」との連携を模索する動きが浮上。赤字国債法案などの成立と引き換えに野田内閣が総辞職し、党内で待望論が強い細野豪志・政調会長を後継に据え、解散に打って出るとの構想もささやかれる。こうした奇策の検討に時間を浪費するよりも、解散も含め政治を前に進める環境整備を急ぐべきではないか。
国内政治が混迷する間に外交は危機的状況に陥り、景気の先行きの不透明感は増すばかり。既成政党批判を背景に橋下氏らの国政進出への動きも加速している。機能する国会を形作り、政党政治への信頼を取り戻せるのか。2大政党のトップの真価が問われる秋の陣が迫る。
安藤 毅(あんどう・たけし)
日経ビジネス編集委員。
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121005/237695/?ST=print
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK136掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。