★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK134 > 708.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「愛国心」は理性を狂わせる  鈴木邦男
http://www.asyura2.com/12/senkyo134/msg/708.html
投稿者 ダイナモ 日時 2012 年 8 月 22 日 21:18:50: mY9T/8MdR98ug
 

 サミュエル・ジョンソンは、「愛国心は、ならず者の最後の避難場所である」と言った。これを初めて聞いた時は、ひどい言葉だと思った。「愛国心」をからかい、貶める言葉だと思った。だが、愛国心を持ってる人を全て「ならず者だ」と言った訳ではない。勿論、立派な愛国者はいる。ただ、時として、愛国心は利用される。悪用される。その危険性を説いたのだろう。

 又誰しも簡単に「愛国者」にはなれる。資格もないし、試験もない。届け出もいらない。「俺は愛国者だ」と言うだけでいい。サミュエル・ジョンソンが、どういう状況で、どういう時代背景でこの言葉を発したのか、よく分からない。私も調べているが、はっきりしない。この言葉だけが一人歩きしている。あるいは日本の右翼を思い起こす人もいるだろう。戦前の「国士」「壮士」と呼ばれる「愛国者たち」は、言論活動もしたが、かなり荒っぽいこともやった。

 さらに戦後、自民党政権や警察は、「共産革命」を阻止する為に、多くの人々、団体を集めた。特に60年安保の前だ。国会を取り巻く20万人のデモに対抗する為に、20万の「愛国者」を集めようとした。アイゼンハワー大統領の訪日を実現する為にも、警察の守りだけでは足りない。民間人の「愛国者」を集めようとした。アイク訪日は実現しなかったが、「愛国者」の結集は行われた。

 保守的な団体、保守的な宗教団体、さらに、ヤクザ、テキヤ…といった人々までが動員された。この時から、急激に「右翼団体」が増えた。街宣車も増えた。右翼の大親分たちが、ヤクザの親分たちに説いた。「小さなシマ(縄張り)を取った、取られたで命をかけるより、国のために命をかけようではないか」と。小さなシマではなく、大きなシマ(国家)に命をかけるのだ。それが愛国心だと説いたのだ。

 ヤクザから足を洗って、本当に右翼に専念した人たちもいた。又、二足のワラジの人もいた。それに、ヤクザは人数が多いし、結束力が強かった。だから、右翼運動史の中でも、いろんな事件を起こし、活動をしている。「ヤクザ右翼」「任侠右翼」と言われながらも、真面目に運動をしてきた人たちもいる。これは私も、長い運動体験の中で実感している。「ヤクザ右翼」と、白い目で見られることが多いから、かえって自制し、自ら厳しく律している団体も多い。

 それに今や、暴対法、暴排条例によってヤクザは徹底的に追い詰められている。右翼団体を作ることも出来ない。それに取って替わった、といっては表現が悪いが、ネトウヨ(ネット右翼)が増え、大問題になっている。『SAPIO』(8月22・29日号)では、特集が「ネトウヨ亡国論」だ。サミュエル・ジョンソンの言葉は、このネトウヨ現象にこそ、あてはまるだろう。もっとも、「ならず者」ではないかもしれないが、一人ひとりは、普通のよるべなき個人だ。それが「愛国心」でまとまると、何でも出来ると思い、暴走する。さらに、「よく言ってくれた!」とネットで絶賛する人も出る。テレビでも新聞でも紹介できない「差別的発言」をまき散らす。そして「抗議」し、自らネットで流す。

 右翼の黒い街宣車だって、車をとめて演説するとなれば、言葉を選び、自分達の「主張」を訴える。「こんなことは言うべきではない」という自制も働く。汚い言葉、差別的な言葉は使うまいとする。ところがネトウヨには、その自制がない。「主張」ではなく、「感情」の発露だ。聞くに堪えない言葉も口にする。

 『SAPIO』で、小林よしのりさんは、「お前たちは差別主義者だ」と断じていた。又、ネトウヨを取材して、『ネットと愛国』を書いた安田浩一さんは、こう言う。

 <ネトウヨとは何か? これは若者たちがのめり込む、「愛国」という名の階級闘争だ>

 つまり、愛国心を持った、善良な自分たちは、貧乏で、弱者だ。ところが、在日の人や、日本を危うくする連中は、いい思いをしている。これは許せない。「階級闘争だ」と、言うのだろう。

 普通のサラリーマンやOL、フリーターといった「弱者」が、「愛国」という言葉を手に入れると、巨大ロボットに変身したようになる。自分が「日本」そのものになる。中国、ロシア、韓国、北朝鮮を許すな! そんな国は攻めちゃえ! と言う。自分は一人の弱い人間なのに、巨大なロボットになったと錯覚するのだ。愛国心は、そう錯覚させる力がある。魔力がある。

 安田浩一さんは、ネトウヨの代表「在特会(在日特権を許さない市民の会)」を取材した。「在特会とは何ですか」と聞かれて、「それはあなたの隣人です」と答えている。どこにでもいる普通の人だ。それと共に、この隣人は、我々一人ひとりの心の中にもいる。何かあると「許せん!」と思い、(腹の中では)排外主義的な言葉を発してしまう。又、酒の席では、ついポロリと出てしまう。特に、今年の夏は、それを刺激する<事件>が多かった。ロシア大統領が北方領土に上陸した。韓国大統領が竹島に上陸し、さらに天皇陛下の謝罪を要求した。さらには香港の活動家が尖閣に上陸した。「ふざけるな!」「許せない!」「政府は何をしてるんだ!」という声が充満している。日本中がネトウヨ化している。日本中が「最後の避難場所」を求めて、ならず者化しているのかもしれない。

 他人のことは言えない。私自身もそうだ。愛国心の素晴らしさと同時に、その怖さも知ってるはずの自分でも、熱い感情に流される。野田総理は竹島に行け! 尖閣に行け! と思う。そこで闘え。談判しろ。話し合いはその次だ、と思ってしまう。「総理は命をかけろ!」と言う石原慎太郎知事の方が頼もしく思える。だから愛国心は怖い。理性を狂わせる。政治家の理性をも狂わせる。

 だって、韓国の李明博大統領は、元々は、理知的で、過去よりは将来を見つめる大統領だと思っていた。李大統領は2008年の就任前から、「(日本に過去をめぐる)謝罪や反省は求めない」と言明。08年4月の訪日の際に、天皇、皇后両陛下と会見し、韓国訪問を直接招請した。

 多分、この頃は、未来志向だったし、それだけ自信もあったのだろう。近い将来、韓国は経済的にも、文化的にも日本を追い越す。今度は、日本が韓国をうらやむ番だ。そんな自信があったのだろう。そんな時、日本の過去をいつまでも言ってられない。そんな時間はない。そういう明るい前向きの闘志がみなぎっていたのだろう。

 ところが、うまくいかない。さらに、実兄は逮捕されるし、大統領の基盤はガタガタだ。もう、「死に体」だ。そこで一発、博打を打った。「愛国パフォーマンス」だ。竹島に上陸し、さらに、天皇陛下への謝罪要求だ。テレビや新聞によると、韓国国内でも「捨て身のパフォーマンスだ」「愛国心に訴えかけた賭けだ」と冷静に見てる人もいる。そう発言する自由もある。しかし、このパフォーマンスで、支持率が一挙に上がったという。この事実の方が恐ろしい。愛国心は、「ならず者の最後の避難場所」ではなく、今や、「死に体」大統領の最後の避難場所になってしまった。又、他の国でも、民衆の不満を外に逸らす手段として、「愛国心」は使われている。

 でも、本当に国を愛しているのか。違うだろう。「国を愛する」と言いながら、本当は、自分の地位、あるいは自分の家族、仲間を守ろうとしているだけではないのか。自分を愛し、自分がかわいいだけではないのか。

 民間人や、あるいは活動家という人々が愛国心を煽るのは、まだ分かる。しかし、一国の責任者たる大統領や首相は、それを抑制し、国と国との外交、世界の平和を考えるべきではないか。それが、将来的にはその国の国益にもつながる。

 そうした大局的な見地がないならば、その国の責任者とはいえない。安易に「愛国心」を利用して、自分を守ろうとするのならば、それは大きな間違いだ。そんな気がする。


http://www.magazine9.jp/kunio/120822/
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年8月22日 21:59:32 : lt1VBLPbms
「ヤクザから足を洗って、本当に右翼に専念した人たちもいた」
そんなことは有り得ないだろうが、鈴木君。
暴力団と右翼はイコールだよ、君も八九三とは繋がりがあるだろう。
あるブログの書き手が「この社会は無知と軽薄から成り立っている」そうだ。
俺も同感だ、無知と軽薄から愛国心が生まれる。
このグータラ国に限らずどの国も愛国者で溢れている、本質は売国奴にも拘わらずだ。
S.ジョンソンの「愛国心は、ならず者の最後の避難場所」は至言だ。

02. 2012年8月22日 22:23:38 : 8hk0duzcU2
>「愛国心は、ならず者の最後の避難場所である」と言った。これを初めて聞いた時は、ひどい言葉だと思った。

どこかで読んだのだが、これはどうかな!

「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす。」
「正義を売り物にするのは恥ずべきことであるが、多くの政治家が売り歩いている。愛国と言う正義である。」

こういう事なのでしょうか。


03. 2012年8月23日 08:13:19 : E0adwmAwy2
鈴木邦男氏の主張にも一理ある。
ただ、わたしはちょっと違う。
「愛国」という時のこの「国」とはなんだ?
さまざまな司法、行政機構や天皇制、受験制度などを含めたシステムとしての「国家」だろうか?
わたしはこのような「国家」を愛するつもりは毛頭ない。そのために徴兵されて死ぬのもごめんだ。
わたしの考える「国」とは。つまり「愛国心」のもとになるものとは、民主党代表選で小沢一郎氏が演説したなつかしい「郷土」(ふるさと)であり友人たちだ。
これを守るためにひとはあえて戦争に赴くのだろう。

>でも、本当に国を愛しているのか。違うだろう。「国を愛する」と言いながら、本当は、自分の地位、あるいは自分の家族、仲間を守ろうとしているだけではないのか。自分を愛し、自分がかわいいだけではないのか。

いや、自分の家族や仲間を守ること=環境も守らねばならないし、長く続いた伝統、風俗、文化も守らねばならない。
それにくらべれば日本の国体なんか糞くらえだと思いますが、どうなんでしょうね、鈴木さん。


04. 2012年8月23日 12:06:30 : Op2sM8LHZQ
 ブッシュ大統領は「愛国法=告口法」を成立させ、アメリカ国民に、国策に反対する人々を告げ口させる事を法的に薦めた。
 つまり、「愛国」を声高らかに叫ぶ人物は「愛国者ではない」と言うこと。
石原慎太郎、橋下しかり。

05. 2012年8月23日 21:48:56 : AOne8kmHmY
いっそのこと国を捨てたらどうですか?。
クルド人やユダヤ人ロマの人々のように
世界に散って生活すれば良い。
ありがたいことに憲法は国籍の離脱を遮っていない。
その代わり何があっても完璧な自己責任。
何かの拍子にすぐ迫害の対象にされる。
でも国がどうのこうのなどの面倒くさい事なし。
その代わり属する集団の厳しい規律に逆らえば生きていかれない。
人間の社会に住む以上何らかの束縛からは逃げられない。
愛国心をそんなに難しく考える事ないではないですか。
ただ自分たちの縄張りを守るだけの事ではないですか。
国同士の争いの原因が何でもあろうと
自分達の縄張りに対する悪意の侵入は許さない。
ただそれだけでしょう?。
人様がどのような愛国心を持とうと良いではないですか。
それをして縄張りを守る必要はないと言う論理は変ですよ。
縄張り不要
切り取りご自由にと言うことを事何でしょうか?。
日本は生活レベルも低くて
言論の自由もない
こんな国はどうでも良いと言うことを事何でしょうか?。

06. 2012年8月23日 22:22:36 : ELO9jsPmJE
民族派鈴木さんはご健在でしたか。しかし寄る年波には勝てませんか。何だか評論家みたいで迫力ないなー。残念。03氏にほぼ同意ですが、国体=天皇制と思っているのでその部分は違うかな。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK134掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK134掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧