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(回答先: 原発問題の本質は国家理性にある 2012年4月 (uedam.com) 投稿者 五月晴郎 日時 2012 年 7 月 16 日 05:06:28)
http://www.uedam.com/zizi.html
下記を転載投稿します。
=転載開始=
2011.4
福島原発事故―この期に及んで、なぜ原発是非の国民投票がないのか?
まず、この二つのまったく異なる反応を御覧なっていただきたい。福島第1原発事故を受けての反応である。
4月4日、東電は放射能に汚染された水を海に放出したが、コウナゴ(イカナゴの稚魚)に暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたため、そこを漁場にしている漁師たちがたちまち悲鳴を上げた。
* 「茨城沿海地地区漁連によると、同県北茨城市の平潟漁港から、漁を禁止されていない底引き網漁船が6日早朝に出漁したが、東京・築地市場で茨城産の魚に値段が付かなかったことが伝わると、あきらめて戻ってきた。同漁連の男性は『(操業自粛が決まった)コウナゴ以外の魚も風評被害で売れない。東電は、生活できなくなった漁師の悲鳴をもっと聞いてほしい』と訴えた。」『スポニチ』2011.4.8
放射能に汚染された水が海に放出されたことで被害を受けたのは、東北太平洋岸だけではない。即刻、東海太平洋岸の漁港にも「風評被害」が及んだ。静岡県の伊東漁港のブリ、焼津漁港の「生もの」が売れなくなっている。福島原発の事故は、福島県内外近隣の農家だけではなく、太平洋岸の漁で生計を立てている漁師たちの生活をも直撃した。
その一方、原発事故などなかったかのような発言を展開する人がいる。
* 「日立製作所の中西弘明社長は6日、報道各社のインタビューに応じ、東京電力の福島第1原発事故を受け『(原発建設への)住民の理解を得るのは従来以上に厳しくなった』と述べ、原発設備の受注計画を見直す考えを明らかにした。
同社は2030年までに全世界で38基以上の受注を計画。事業規模については、現在の1800億円から20年度に3800億円に引き上げるとしていた。今回の事故の影響を見極めた上で、具体的な見直し作業に着手するとみられる。一方で、中西社長は『日本で原発を一切使わないことはあり得ない』と語り、耐震基準など安全対策を強化した上で、建設を継続する方針を強調した。」『時事ドットコム』2011.4.6
日立製作所は東芝、IHI(石川島播磨重工業)などと福島原発の設計、建設を受け負ったメーカーだが、今回の事故を受けても、原発推進事業の計画は続けると明言する。まるで茨城県の漁師たちの悲鳴が聞こえないかのようだ。
もちろん、人には、それぞれの立場がある。漁師には漁師の立場があり、魚場が放射能に汚染されれば、仕事が不可能になる。だから、漁師たちが東電なり、政府なりに生活の補償を訴えても当然だろう。一方、原発建設を主たる事業の1つにしているメーカーにとっては、ここで原発事業が停止となれば、こちらはこちらで、仕事がなくなる。当然、企業の死活問題になる。だから、中西社長が言うように「原発事業はこれからも続く」、との発言が出てくることになるわけだが、これも無理はない。こんな具合に、人にはそれぞれの立場があり、そこから各自の主張が出てくる。ここに不思議はない。
しかし、原発事故からほぼ1カ月になろうとする現時点で、私(筆者)にはどうしても理解できないことが一つある。今後の原発事業の是非について、国民世論の調査が行われないことだ。東北大地震・大津波があり、その直後に水素爆発を起こした1号機(3月12日)と3号機(同14日)の事故以来、私はいつ国民世論の調査が行われるのかとずっと注目しているのだが、4月8日の現在、政府はおろか、民間のどのメディアからも原発事業の是非についての世論調査が出てこない。今や原発がひとたび大事故を起こせば、事は、原発を所有する東電や、原発施設がある地元住民だけの問題では済まないことが、すべての日本人に実体験された。それなのに、どこからも国民全体の意見を反映させる世論調査が行われない。これは何なのか?そこで私は、急きょ、原発事業の歴史と現在を調べてみた。これまでの原発事業の推進のされ方のなかに、何か問題があったのではないのか。
ここでは紙面の都合で、結論だけを紹介させてもらうことにするが、判明したことは、戦後の日本で展開された原発事業は、まさに「官僚主導」の典型だったことだ。2009年の夏に行われた衆院選挙で民主党が勝利したことで政権交代が起きたが、それまで野党だった民主党が選挙のスローガンに掲げたのは「脱官僚」だった。だとすれば、原発事業こそは、官僚主導の典型だったと言える。そのことを証言するのが、1988年から2006年まで福島県知事を勤めた佐藤栄佐久氏だ。
佐藤氏といえば、2006年にやむなく知事を任期途中に辞めると、東京地検特捜部に逮捕された人物だ。当時、メディアでも大々的に報じられたから、覚えているかたもおられることだろう。自分の無実を知る佐藤氏は、すぐにその体験を本にしたが、その著書の題名が『知事抹殺』という。見るも恐ろしい題名だが、これは東京地検特捜部の現役の検事が口にした生(ナマ)の言葉という。その意味は、原発推進事業に反対する知事などは簡単に抹殺してやる、というものだ。つまり、福島県には原発推進に反対する知事などは不要である、と国が決めれば、実際にそうなる、と。栄佐久氏のあとに福島県知事になったのが民主党の長老・渡辺恒三氏の甥にあたる佐藤雄平氏。この新知事のもとで、栄佐久氏が知事の権限で止めたプルサーマル原発の推進が再発した。これが3月14日に水素爆発を起こした3号機だ。ちなみに福島第1原発の他の原発はウラン原子炉なのだが、3号機だけはプルサーマル原子炉であり、これはウランとプルトニウムを混合した「MOX燃料」を核分裂させる。今や放射能騒ぎですっかり有名になったプルトニウムだが、ご存じのように、これは有毒物質だ。
行政としての原発推進の事情を佐藤栄佐久氏が暴露したとすれば、技術問題としての福島第1原発の欠陥を、東芝の元エンジニアたちが暴露した。1号機の熱交換機を設計した小倉志郎氏によれば、福島原発の1号機の技術はすべてGE(ジェネラル・エレクトリック)のコピーであり、地震対策はなかった。アメリカ国内向けの設計のために、日本の地震が想定されていなかったと告白した。それから、格納容器を設計した後藤政志氏が暴露した「ベント/ガス排出」事件。経産省保安院は、原子炉から毒ガスを大気中に放出する「ベント」のことを、いとも簡単に、何の警告もなしに、記者会見で発表してしまったという。
本稿では述べきれなかったが、調査の結論を要約してみよう。戦後日本の原発事業の歴史を調べると、事故の多発史でもある。それを隠すために「安全神話」が構築された。しかし、その「安全神話」は福島第1原発の水素爆発とともに崩壊した。一方、現在の私たちの生活水準を維持するためには、電力も必要だ。したがって今、私たちに必要なのは、個別的な事業者たちの是非ではなく、全国民的な原発推進への是非の世論調査だ。原発は、これからも必要なのか、否か。アメリカではスリーマイル島事故のあと、30年間、新規の原発が中止された。
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