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http://biz-journal.jp/2013/01/post_1332_3.html
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」が始動した。経済財政諮問会議と日本経済再生本部を司令塔に、トップダウンで脱デフレの難関に挑むことになる。成長戦略をまとめるため再生本部のもとに産業競争力会議を設けた。諮問会議と競争力会議にメンバー入りした経済人が、さしずめ、経済界のニューリーダーということになる
【経済財政諮問会議の民間議員】
■伊藤元重:東京大学大学院教授
■小林喜光:三菱ケミカルホールディングス社長(経済同友会副代表幹事)
■佐々木則夫:東芝社長
■高橋進:日本総合研究所理事長
【産業競争力会議の民間議員】
■秋山咲恵:サキコーポレーション社長
■榊原定征:東レ会長
■坂根正弘:コマツ会長(経団連副会長)
■佐藤康博:みずほフィナンシャルグループ社長
■竹中平蔵:慶應大学教授(元経済財政相)
■新浪剛史:ローソン社長(経済同友会副代表幹事)
■橋本和仁:東京大学大学院工学系研究科教授(応用化学)
■長谷川閑史:武田薬品工業社長(経済同友会代表幹事)
■三木谷浩史:楽天会長兼社長(新経済連盟代表理事)
経済財政諮問会議は財政政策などのマクロ政策を、日本経済再生本部は産業競争力会議を中心に具体的な経済成長戦略や産業育成策を打ち出す。
「官から民へ」――。小泉純一郎内閣が推し進めた構造改革の両輪となったのは竹中平蔵・経済財政相が司令塔となった経済財政諮問会議と宮内義彦・オリックス会長が議長を務めた規制改革・民間開放推進会議だった。推進会議がまとめた規制緩和の重点項目を諮問会議で検討して、具体的な政策に練り上げられた。だから小泉政権は諮問会議政治といわれた。
民主党政権は諮問会議を封印した。安倍首相になり、3年5カ月ぶりに再起動する。
小泉政権時代には奥田碩・経団連会長(当時、トヨタ自動車会長)と牛尾治朗・前経済同友会代表幹事(ウシオ電機会長)がエンジン役を果たした。これ以降、経団連会長や同友会代表幹事、これと同格の経済人を充てるのが通例となったが、今回の人事では財界の両首脳は外された。
経団連の現会長である米倉弘昌氏(住友化学会長)は自民党の安倍総裁の経済政策について「無鉄砲」と批判し、消費税増税に慎重姿勢を示すと「自民党総裁としていかがなものか」と辛口の発言をしていた。ところが、安倍氏が首相に就任するやいなや謝罪するというお粗末ぶりを見せた。「財界総理にはふさわしくない」と経団連で副会長を務めた複数の有力財界人を呆れさせたほどだ。
安倍首相と姻戚関係にあり指南役を務めている牛尾治朗・ウシオ電機会長は、自分の財界活動の本拠地といえる経済同友会の長谷川閑史・代表幹事を諮問会議の民間議員に推した。しかし、長谷川氏を充てると米倉氏のメンツが丸潰れになるとの政治的な配慮が働き、長谷川氏は外れた。長谷川氏は産業競争力会議のメンバーに回った。
代わって経団連からは、東芝の佐々木則夫社長が起用された。経団連は5月末の定時総会でトヨタ自動車の渡辺捷昭相談役、東芝の西田厚聰会長、新日鐵住金の宗岡正二会長の3人の副会長が2期4年の任期満了を迎える。後任にはトヨタから内山田竹志副会長、東芝は佐々木則夫社長、新日鐵住金は友野宏社長の就任が有力視されている。佐々木氏は経団連の代表ということだ。なお、次期経団連会長の有力候補である東芝の西田氏は審議員会副議長に回り、来年5月末に任期満了を迎える米倉の後任として経団連会長になるか、渡文明(JXホールディングス相談役)の後釜として審議員会議長に就く可能性が高い。
佐々木氏は72年に東芝入社。若い頃に原発設計の技術者として活躍。常務時代の06年に米原発大手、ウェスチングハウス(WH)の買収で中心的役割を果たした。09年から東芝の社長である。
★ 小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長は経済同友会の副代表幹事なので、同友会の代表だ。安倍首相の財界人の応援団である「さくら会」は三菱グループの経営者が中心ということもあり、小林氏は三菱グループ代表という意味合いもある。
小林氏は74年に三菱化成工業(現・三菱ケミカルホールディングス)に入社。光ディスク子会社の立て直しで頭角を現し、07年から社長。ライバル企業という関係から住友化学会長の米倉経団連会長と犬猿の仲なのは知る人ぞ知る話だ。
★ 安倍首相は諮問会議の民間議員の学識経験者枠に、小泉政権で構造改革を主導した竹中平蔵氏を据える考えだったといわれる。しかし、麻生太郎・財務相をはじめ安倍政権には小泉路線と対立した閣僚が多く、竹中氏とは水と油の関係。竹中氏の就任には麻生・財務相が反対し、甘利明・経済再生相も難色を示したとの情報もある。結局、竹中氏を産業競争力会議のメンバーに加えるという妥協案で落ち着いた。
産業競争力会議には東レ(繊維)、コマツ(建設機械)、みずほフィナンシャルグループ(金融)、ローソン(コンビニエンスストア)と、それぞれの業界を代表する企業経営者が選ばれた。
経済団体別の星取表(?)だと経済同友会が長谷川閑史・代表幹事と新浪剛史・副代表幹事の2人。これに対して経団連は坂根正弘・副会長1人。三木谷浩史・代表理事が選ばれた新経済連盟と同じ扱いだ。
いつもそうだが、重厚長大産業に偏重しているとの批判が出ることから、新しい分野を開拓した起業家が加わることが多い。今回は楽天の三木谷会長兼社長とサキコーポレーションの秋山咲恵社長がこれに該当する。
小泉構造改革の時代には宮内氏が議長である規制改革会議で委員を務めた人材総合プロデュース会社、ザ・アールの奥谷禮子社長がスポットライトを浴びた。安倍政権では、秋山咲恵氏が新しい産業の創出を提言する起業家として脚光を浴びることは間違いなさそうだが、これまで書いてきたように業績はかなり厳しい。
安倍首相は小泉首相を模倣して諮問会議と競争力会議を立ち上げたが、似て非なるところがある。
00年代前半、小泉首相は経済財政諮問会議に権限を集中して郵政民営化などを次々と進めた。仕切ったのは経済財政担当相だった竹中平蔵・慶應大学教授。竹中氏の諮問会議と、宮内義彦・オリックス会長が議長を務めた規制改革・民間開放推進会議が両輪となり小泉構造改革を声高にぶち上げ、議長の小泉首相が裁定を下す、首相官邸主導の政治を演出した。
小泉首相の諮問会議は命令系統が一本化されており、メンバーも規制改革派を揃えた。まさに抵抗勢力、反対勢力をぶち壊す作戦本部だった。
★ 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の司令塔は、諮問会議と再生本部の2本立て。しかもメンバーの考えはバラバラ。閣僚人事や再生本部のプランは「大きな政府」そのものだが、竹中平蔵氏は「小さな政府」の信奉者だ。2本立ての組織と意思統一されていないメンバーで、安倍首相は何をやろうとしているのだろうか。その方向性が、はっきり見えてこない。
●期待される業種と会社はどこか
13年の注目業種は何か。中国経済の減速懸念が尾を引く中、景気変動に左右されにくい事業基盤を持ち、アジアをはじめとする海外で収益を伸ばす企業群に関心が集まるだろう。
代表格が味の素(伊藤雅俊社長)だ。13年3月期の連結最終利益を従来予想の440億円から470億円に上方修正し、8期ぶりに過去最高益を更新する。主力のうま味調味料は東南アジアで高いシェアとブランド力を誇る。17年3月期に連結営業利益の75%を海外で稼ぐという高い目標を掲げ、アフリカ市場にも積極的に進出する。
仏食品大手、ダノンは、ヤクルト本社(堀澄也会長兼最高経営責任者=CEO)の買収に意欲的だ。既にヤクルト株式の20%を保有しているダノンは、出資比率を35%程度に引き上げることを求めている。しかし、ヤクルトは経営の自主独立を主張して、交渉は難航している。交渉が決裂すれば、ダノンが敵対的TOB(株式公開買い付け)を実施するとの観測が強まる。堀会長は「防衛に自信がある」と述べるが、一触即発の緊迫した状況が続く。ヤクルトも注目企業だ。
伊藤忠商事(岡藤正広社長)は12年9月、米食品大手のドール・フード・カンパニーから世界の缶詰・果汁飲料事業とパイナップルなどアジアでの青果物生産・販売事業を買収する契約を締結した。買収金額は1330億円。ドールの世界的なブランド力をテコに、アジアを中心とした新興国市場を開拓する。14年3月期にはドール効果で年間80億円の利益の上乗せを見込む。世界一の繊維商社、伊藤忠は、食品との両輪経営を進める。
★ 成長のキーワードはアジアと食品である。
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