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超インフレ・円暴落で日本は沈没する
伝説のディーラー・藤巻健史氏に聞く
2012年10月3日(水) 市村 孝二巳
円高が日本をダメにする。自称・伝説のディーラー、藤巻健史氏は長年そう言い続けてきた。しかしその意に反して一向に円高は終わらず、日本に何が起きたのか。円高が日本経済に何をもたらしたのか。藤巻氏が日本の病根をえぐり取る。
藤巻:景気対策としては財政政策、金融政策、為替政策があるが、金融政策と財政政策が限界に達しているにもかかわらず、それらが効かなかったのは為替政策が間違っていたからだ。為替を経済実態に合わせろ、というのが昔からの私の主張だ。
すべての元凶は円高にある
いま日本に存在するすべての問題の元凶は円高だと思っている。経済だけでなくて、自殺が多いのも仕事がないということに起因しているし、男性が草食化する原因も円高にあると思っている。商社マンが海外に行きたがらないとか、学生が留学したがらないとか、「国際」と名のつく学部に全く人が集まらないとか、そういう話も、哲学者や心理学者は日本人の性格が変わったとか言うが、そんなのはとんでもない。為替が円安になればコロッと変わる。
藤巻健史・フジマキ・ジャパン社長(元モルガン銀行東京支店長)
例えば、米国企業で5万ドルの年収をもらえるとする。今は1ドル=80円だから400万円にしかならないから、そのために海外に行って苦労する気にはならない。しかし極端な話だが、1ドル=1000円なら5000万円だ。これなら海外で1年働いて、日本に帰ってきてもいい。そうすれば留学したくなるだろうし、勉強もしたくなるだろう。商社マンもみんなドルベースで給料をもらいたいと言うに決まっている。性格まで含めてコロッと変わると思う。
いま日本を覆っている閉塞感の原因は何か。失業問題も、若者が就職できないのも、円が強いからだ。外国人の労働力が安く買えるから、みんな工場は海外に行ってしまうから仕事がなくなる。就職が心配になると、自殺者も増えるだろうし、工場用地などは値が下がってしまうし、工場の周りの商店だって廃業せざるを得ず、地方の商店街はシャッター通りになってしまう。企業は儲からなくなって株価はどんどん下がる。そうすると年金も心配になり、年金の未納率が上がってしまう。
バブルの時に年金を誰も心配していなかったのは運用利回りが高かったからだ。しかし日本企業は円高のせいで、米欧企業や韓国企業に比べて10分の1、100分の1しか利益がない。これが単にグローバルスタンダード並みに戻れば収益は10倍になる。それだけで、株価も上がって年金も大丈夫になる。利益が10倍になればいま8兆円程度の法人税収が80兆円になり、財政赤字問題も解決してしまう。
円安になれば問題はほとんど全部解決してしまう。為替が実体経済よりも強すぎたことが大問題だったのだ。円を実体経済に見合った水準に戻すというのが僕の戦術論だった。
なぜ、これほどの円高になってしまったのか。
円高は日本が「社会主義国家」だから
ひとことで言えば、それは日本が社会主義国家だからだ。戦略としては、社会主義国家を資本主義に直せ、というのが最大の主張。資本主義国家になれば、円がこんなに強いわけはない。国債バブルも起こっていたわけはない。円高になる仕組みがそこにあったのだ。
日本のどのようなところが社会主義国家なのか。
藤巻:例えばゆうちょ銀行という、世界最大の銀行が個人金融資産の17%を持ち、国営であることを社会主義と言わずしてなんと言おうか。日本はほとんど格差がないのに、格差の是正が国の仕事なのか。ものすごく貧乏な人と、ものすごく豊かな人がいた場合、貧乏な人たちを最低限の生活ができるようにするのは確かに国家の仕事だ。しかし、3年に1回海外旅行できる人と、1年に3回海外旅行をできる人の格差をなくすのは国の仕事ではない。それを埋めようとするのは社会主義国家の最たるものだ。
ジニ係数で見ればそうなのかもしれないが、実感は全くない。私の認識では日本は格差が全くない国だ。外国人の認識も全く同じだと思う。ジニ係数が日本を加速度的に悪くしたと思う。
社長と新入社員の給料を比べてもそうだし、私は世界の大金持ちを知っているが、日本にはそれほどの金持ちはいない。社長と新入社員の格差は全然ないのだが、社長は社会保険料や所得税をたんまり取られる。2000万円ぐらいの所得に最高税率をかけて400万円の人に渡すのは必要なのか。それぐらい差があってしかるべきではないか。
小泉政権が格差を広げたという批判が定着して以来、格差に関する議論は半ばタブーのようになってしまった。
藤巻:だからそれがおかしい。中間層という言葉の使い方もダブルスタンダードだ。例えば中国で中間層が増えているとっても年収は5000ドル。40万円といえば日本では最貧困層だ。中間層といえば3万5000ドルだが、それでも280万円ぐらいだ。グローバルスタンダードで言うと、日本は中間層に生活保護費を配っていることになる。それぞれの国で生活に必要な物価水準が違うから一概には言えないが、ダブルスタンダードを使って、あちらでは中間層、こちらでは貧困層になってしまう。言葉の使い方を間違っている。
日本は世界でダントツに平等な国
日本は世界でダントツに平等な国だと思う。そんな国で格差是正と言ってお金をばらまいていると、財政破綻になってしまう。もともと国の仕事は何かというと、国民の生命と財産を守ることだ。もともと社会保障制度ができた原因は暴動を起こさないためだった。暴動が起こると生命の危険、財産の危険が起こるから、社会保障を、年金を手厚くした。それが過度に行き過ぎて悪平等になると、まず1番目にみんな働かなくなる。2番目に財政破綻のリスクがあって、国民が財産を失う。だから日本は社会主義から脱しなくてはならない。悪平等にするのが国の仕事か、というところから議論しなくてはならない。
そういうのがあるのが日本だと思っている。一番大きい問題は、格差がないにもかかわらず、みんな平等に豊かにならなければいけないという発想だ。その発想自体が社会主義国家のものだし、世界最大の銀行や、日本銀行という半官半民の中央銀行が、国債を買っているのも、市場原理が働いていないということの最たる例だ。
市場を通じて買ってはいるが、実質的には引き受けと同じだ。
藤巻:引き受けと全く同じ。社会主義国家を経済面から捉えると、市場原理が働いていないということだ。市場原理が働いていないから海外に行くべきお金が国内に滞留して、昔は株と土地のバブルになり、今は国債のバブルに行ってしまった。市場原理が発達していれば、より利益率の高い海外へ言っていたはず。米国株をダウ工業株30種平均でみれば、日本のバブル崩壊以降、4〜5倍になっているわけだ。
それでは、なぜ市場原理が発達しなかったのか。
政府機関であるゆうちょ銀行と日銀が国債を買い、市場原理が働かない仕組みを作ってしまっている。郵貯改革はお金がそこに集まりすぎている、財政投融資を含めた大きな問題を解決しようというのがもともとの目的だったのに、みんなそれを忘れてしまった。最近はサービスを平等にとか、議題をすり替えてしまっているが、本来はお金をゆうちょ銀行が集めたお金を非効率に使っていたから、問題が大きくなった。さらに最近は日銀がそこに加わって国債をどんどん買いまくっている。それで国債が低位安定してしまった。
欧州よりも日本の方がよほど危険
私に言わせれば、欧州の債務問題よりも日本の方がよほど危険だ。その理由の1つは、欧州の問題は世界から見つめられているからだ。欧州がこけると、欧州債を持っている世界中の投資家が大騒ぎになる。しかし日本の場合は92%弱を日本人が持っているので、他の国には大きな影響がない。勝手にこければ、ということになってしまう。もう1つは、欧州では多少市場原理が働いているから、財政状況が悪くなると長期金利が急騰する。政治もお尻をひっぱたかれて動く。しかし日本の場合は市場原理が働かない国を作ってしまったので、一時的に安心しているから、何があっても長期金利は上がらない。政治家がのんびりしてしまい、財政構造改革なんてしようとしない。
そうして財政のモラルハザード(倫理の欠如)を助長してしまい、ここまで来てしまった。
藤巻:市場原理を発揮しないように、発揮しないようにしているからモラルハザードは起きるし、みんなのんびりして、債券市場からも警戒警報が発令されない。資本主義というのはたくさんの人間が市場に参加して資源の最適配分をする。しかし社会主義は少数の人間がうまく行くだろうと経済をコントロールしている。
戦術論として、為替を円安にするためにどうすべきかについて聞きたい。最近は岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)が日銀は外債を買うべきだと主張している。藤巻さんの年来、主張してきたことだ。
藤巻:私は10年前から言ってきた。外債購入というのは戦術の1つに過ぎない。円高の根本にあるのは日本国内に経常黒字がたまっていて、市場原理が発達していないから海外へ戻っていかない。要するに戻さない仕組みができてしまっているからで、本来はそれを直さないと戻っていかない。日本企業が本当の株主資本主義になれば、海外へ出て行かないと経営者はクビになってしまう。日本の銀行も会社も株主資本主義ではない。
会社はだれのものか。米国では間違いなく株主のものだ。しかし日本にはずっと、経営者のものか、メーンバンクのものか、従業員のものか、株主のものか、という議論があり、株主はワン・オブ・ゼムだ。株主のものであれば、利益率が悪い経営者はすぐ首が飛ぶ。
今の邦銀が上げているような利回りでは経営陣全員クビになってしまう。日本国内だけではやっていられない。私がモルガン銀行にいた時でも、トップがぎりぎりの意思決定をしていた。いまはユーロを調達してドルにもっていけとか、円を調達してユーロにもっていけとか、そういう意志決定をトップがして、ものすごい勝負をしている。皆さん知らないが。モルガンは3兆、4兆、この間シティだって1兆数千億だが、メガはいま数千億ですから、ぜんぜん利益の額が違う。儲けないと経営陣が生き残れないから。資本主義国家だったら、GDPが20年間低迷するような国には投資しない。最終的には市場原理が働いて、もうかるところへ持っていく。みんなが円を売ってドルを買う。それで日本が強くなったら逆にドルを売って円に戻ってくる。そういう変動相場制が動くような仕組みを作れればいい。
日本には1500兆円のエネルギーがある
普通の国なら介入というのは機能しない。だが、日本には1500兆円の個人金融資産がある。それが動き出せば、武器になり、エネルギーになる。1500兆円の30〜40%は海外に行っていたはずなのに、そうならなかった。国内に滞留しているものを海外に戻すには、そういう仕組みが必要だ。
そのために、いままで財務省だけだった介入を日銀が行うのも1つの手だろう。しかし、それだけではなく、いろいろな手がある。一番簡単なのは税金だ。例えば外貨預金のキャピタルゲイン課税をゼロにする。1ドル=80円で買ったドルが300円になったら儲けは220円なのに、その半分を持っていかれたら外貨預金などしない。
それから、例えば「マル外」。昔のマル優(少額貯蓄非課税制度)みたいに外貨預金は300万円まで非課税とすれば、それだけでみんな円売り・ドル買いになる。
ドル建ての日本国債を発行せよ
さらには、ドル建て日本国債を発行すればいい。
ドル建ての日本国債でドルを調達して、どう使うのか。
藤巻:これは個人向けの債券。個人が国債を買うためにドルを買って円を売る。政府はドル建てで発行するから円建てよりも金利が高いし、集めたドルで公務員の給料を払うわけにはいかないから、ドルを売って円を買う。そうすると円の需要とドルの需要が見合って、円高・円安の効果はチャラになるが、財務省はそれだけではない。
財務省は調達金利の水準を確定させるために、先物の円売り・ドル買いをする。調達したドルを直物でドルを売る一方、先物のドル買いをせざるを得ない。そうすることによってドル金利で発行してもプレミアムがついて、円で発行したのと同じ利回りになる。財務省が直物のドル買いを先物のドル売りでヘッジすれば、為替の持ち高は帳消しになって、残るのは個人の円売り・ドル買いだけ。ヘッジをしているから、財務省は円と同じ利回りで国債を発行できる。これは学者に話したらヘッジをするからコストがかかって大変だろうと、全然分かってくれなくて嫌になっちゃった。そういうことをやればドル買い圧力が一気に高まる。
来年4月には日銀総裁が交代する。次期総裁が円安論者であれば20円、30円はすぐ円安になる。円安になれば日本人がついていく。ほかの国は介入しかできないが、日本人には1500兆円のエネルギーがあるから、それを動かせばいくらでも動かせると。外貨投資優遇税制とか、マイナス金利とか、日銀の外債購入とか、ドル建て日本国債発行とか、みんなが英知を結集してやればいくらでも方法はある。後は個人はどう動くか。政策は単なるきっかけづくりだから。
しかし、もうどうしようもない
10年間こういう話をしてきたが、この10数年間で何が起こったか。
結局、資金は海外に出て行かず、国債をどんどん買ってしまったから、政治家はバラマキ放題になった。故・橋本龍太郎首相が財政構造改革法を作ったころから考えれば、政府債務は約3倍、1000兆円になってしまった。こうなるともう、円安政策は取ろうと思ってもとれない。
なぜか。いま「明日から円安政策を始めます」と言ったら、1500兆円のお金がみんな外に行ってしまう。円預金を引っぺがしてドルを買う。そうすると、ギリギリのところでパンパンに国債を買っているから、もう国債の入札に応じるお金はなくなるどころか、逆に銀行は円預金を払い戻すために国債を売らなければいけなくなる。そうなったら一発で明日、財政破綻だ。ここまで来ると。もう手がない。残念ながら。
国債が暴落した時に、日銀が引き受ければいいという人がよくいるが、中央銀行が国債を引き受けて、過去にハイパーインフレを起こさなかったことがない。50階建てのビルで火事が起きた時に、下にいる消防士に「助けてくれ」といったら「飛び降りろ」と言われるようなものだ。そんなのは救助でも何でもない。50階で焼け死ぬのか、飛び降りて墜落死するか、どちらかの選択だ。飛び降りろというのは政策でも何でもない。でも私が50階で火事にあったら、熱くてたまらなくて飛び降りると思う。どっちも悪夢だ。
財政破綻は国にお金がなくなり、国家機能がマヒする。入札でお金が集まらなくなる。それは火事で焼け死ぬこと。お金が集まらないから、仕方がないのでお金を作ってしまう。それが国債引き受けだ。そうすると間違いなくハイパーインフレになり、円は大暴落する。
円を穏やかに安くする政策はない。ここまで累積赤字がたまってしまうと、ハイパーインフレと円暴落という経済敗戦が起きて、日本が破綻した時に国際通貨基金(IMF)の管理下に置かれ、今度は日本を本当の意味で資本主義国家にしてくれるのだろうと期待している。若い人にとっても一度敗戦があった方がいいんじゃないかと思いますね。
1997年のアジア通貨危機後の韓国と同じような道筋だが、明治維新や第2次世界大戦の後と同じように日本を根本的に変えていくしかない。財政が破綻してハイパーインフレになって日本はぐちゃぐちゃになるけれども、その時にIMFが入って資本主義国家に戻って、大きなショックにならざるを得ないが、その後はまともな国として立ち直る。もうそれしか残されていないのではないか。
自分の資産は自分で守れ
この段階になって何とかなるというのは楽観論もいいところだし、政策を考えるのはムリだから、個人レベルで何とかして数年間、日本が立ち直るまで、自分の資産を守ることを考えた方がいい。政府はつぶれてしまうのだから、政府が助けてくれるわけはない。自分の財産は自分で守る。海外へお金を流しておくのが一番簡単だ。
3年前にお会いした時は、そこまで言ってなかった。
藤巻:この間も、政府債務はどんどん増えてしまった。特に民主党政権になってどんどん財政資金をばらまいてきたからだ。政策として残されているのは、大増税、もしくはインフレ税だ。私の言う大増税とは、明日から50%の消費税だが。インフレというのは債権者から債務者への富の移転、国民から国への富の移転だから、税金と同じだ。消費税を50%にするか、インフレ。これしかない。みんなが納得できるようなものではなく、ガラガラポンだ。
この3年で藤巻さんが日本を諦めたように、日銀もかつてはゼロ金利を考えても見なかった。この10年間、20年間で日本経済がどんどん悪くなったことによって、かつては馬鹿にしたような政策でも実際に取らざるを得ないような状態に追い込まれているということではないか。
藤巻:というより、ゼロ金利政策以降の量的緩和なんて、日銀は全く効果を信じていなかったと思う。誰かのスケープゴートになって日銀にやれやれ、やれやれと言われ、やむを得ずやっていたにすぎない。確かに当時は資金が実体経済に染み出していくから、効果があると言っていたが、本当はみんな信じていなかった。
いま日銀のバランスシートが膨れ上がっていて、63%が国債だから、日本の財政が破綻したら日銀も間違いなくつぶれてしまう。そうなったら円は大暴落だ。国と運命共同体になってしまっている。日銀の独立性とは、金融政策が独立しているということが1つだが、もう1つは国が破綻しても日銀が生き残ることを考えておかなければならなかった。
国会議員で日銀に興味がある人たちは、FRBや欧州中央銀行(ECB)に比べて日銀はバランスシートの膨らませ方が少ない、だからもっと国債を買わなきゃダメだという議論をしている。
藤巻:バブル崩壊以降、日銀のバランスシートは滅茶苦茶に大きくなった。考えても見てほしい。米国とベトナムのGDP(国内総生産)の伸び率を比べたら、ベトナムの方が高いに決まっている。米国のGDPが10%伸びるなんてありえない。それは米国のGDPが元々大きいからだ。それと同じように、日銀も過去にバランスシートを大きくしてしまったのだから、もうそれほど大きくはできない。
昔からこんなたとえ話をしている。息子の音楽の成績が8点から12点に上がった。でもクラス平均は80点。8点から12点で5割も上がったからといって、クラス平均の80点を5割上げるのはムリだ。満点まであと20点しかないんだし。日本はすでに不健全なまでにバランスシートを拡大したのだから、それ以上さらにやったら大変なことになる。日米の中央銀行のバランスシートをGDP比で見たら、日本の方が大きい。血圧が90だった人が110になるのはいいかもしれないが、200あった人が220にするのは大変なことだ。
FRBは間違っている
もう1つ言うと、今のFRBの政策は間違っていると思う。日本と同じような間違いをしている。国債のツイストオペ(長期国債の買いと短期国債の組み合わせ)をしているが、なんであんなことするのか。
長期金利を下げてイールドカーブ(利回り曲線)を寝かせようとしているが、FRBは1990年代後半に金融システム不安があった時に何をやったかを思い出してほしい。むしろ長期金利を上げて、短期金利を下げて、イールドカーブを立てた。それで銀行に儲けさせて、不良債権を償却させた。
しかし2000年代以降の日銀の金融政策が典型的だが、長期金利を下げてイールドカーブをフラットにしてしまった。その時、公的資金を入れた大手銀行の首脳は、儲けて返済しないとクビだと言い渡されていた。クビにならないようにするには、国債の保有残高を3倍にしなくてはならなかった。そうして国債の需要を増やして相場を操作してきたからこそ、ここまで膿がたまってしまったのだ。
あの時、長期金利が上がることに日本経済が耐えられたかどうか。
藤巻:一番重要なのは1998年12月の運用部ショックだった。運用部が買えないということになって、長期金利が0.8%から2.4%に吹っ飛んだ。その後は、やっぱり運用部が買うと前言を翻して、短期債ばかり発行し、日銀の買いオペを増やした。需要を増やして供給を減らせば値段は上がって金利が下がるに決まっているが、思い起こせば、あれから始まったのだ。
「横断歩道みんなで渡れば怖くない」と同じで、みんなで渡ればいいが、一人だけわたって梯子を外されるのが嫌だから、そのまんまみんな残って円高になったということですね。
藤巻:そういうこと。
国債を大量に買っている銀行は…
藤巻さんは海外に移住する日は近い?
藤巻:移住しない。日本大好きだから。
資産は外貨で運用するけれども?
藤巻:こんな危ない国にいるなら、せめて資産ぐらいは逃がしておかないとヤバいよ、という話だ。
いま、資産を逃がせと言うと物理的に海外へ持っていってしまう人が多いが、そこまでする必要はないと言っている。預金封鎖を心配している人はすごく多いが、預金封鎖はインフレかつ国が財産を没収する時の手段だ。北朝鮮の時もそうだった。しかし日本はいまはデフレであってインフレではない。いずれハイパーインフレになったら預金封鎖しなくてはいけなくなるが、まだデフレだから心配する必要はない。
国が財産を持っていく方法としてはインフレが一番簡単ですから、預金封鎖のように、いまの憲法に違反するような怪しいことをするかどうか。確かに昭和2年の金融恐慌時には預金封鎖をしているが、あの時は明治憲法下だった。そんなことをしなくても、政府には、インフレという堂々と憲法に認められた方法で、財産を没収してしまう方法がある。僕は預金封鎖は心配していないので、財産を逃がすには外貨建て資産を買えばいい。
それでも預ける銀行の信用リスクもある。
藤巻:それはある。私は国債を大量に買っているところはやめた方がいいと言っている。危なくて仕方がない。
市村 孝二巳(いちむら・たかふみ)
日経ビジネス副編集長 兼 編集委員。
ニッポン改造計画〜この人に迫る
日経ビジネス本誌10月1日号でお送りする特集「ニッポン改造計画100」で政策提言をいただいた識者へのロングインタビューシリーズ。誌面では語りきれなかった政策提言の深層を聞く。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121002/237512/?ST=print
#市村・・
【第196回】 2012年10月3日 週刊ダイヤモンド編集部
加工用米高騰で苦悶する食品業界 農業政策の失敗が震災で露呈
せんべいや味噌、和菓子、日本酒などの主原料となる加工用米の価格が高騰し、食品業界が苦悶している。同じうるち米にもかかわらず、用途別に交付金で生産調整を図る農業政策の無理が、震災による米不足で露呈した。家畜が新米を食べ、人間が古米を食べる歪みを生み、伝統食の存続を危うくしている。
「このままでは値上げをしないとやっていけないが、顧客が受け入れてくれるか不安だ」
せんべいが特産の千葉県野田市で70年近く営業する老舗米菓店、藤井本店の4代目社長の藤井浩一氏は、主原料の加工用米(うるち米)の値上げを前に困惑する。
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せんべいの原料である加工用米が今秋、1キログラム当たり約160円から約220円へ約38%も値上がりする見通しなのだ。
野田地区のせんべい店の多くは30年以上、値段は据え置きだったが、製造原価の約半分を占める米の高騰に耐え切れず、今春から10%程度値上げする店が出始めた。
しかし、「デフレが続き、製品の値上げは簡単に受け入れられるものではない」(大手スーパー経営幹部)というのが小売市場の現実だ。
品質がよくて手頃な価格の国産原料米が入手困難になっていることへの対応策として、亀田製菓や天乃屋など全国展開する米菓メーカーは、安価なMA(最低輸入量)米の使用を増やしている。
日本は米生産者を守るため、安い外国産米が大量に入らないように778%の高関税をかけているが、その代償としてWTO(世界貿易機関)で課せられたMAだ。
「国産米でも外国産米でも、せんべいの味はそれほど変わらない」と大手米菓メーカー経営者は言うが、「国産米が安心というお客がいる以上、できるだけ変更したくない」(藤井氏)とこだわりを持つ老舗は多い。
加工用米を原料として使う日本酒や味噌業界なども苦悩している。「日本酒は国産米しか使えないことになっているので、MA米使用などの対策は打てない」(日本酒造組合中央会)、「地元の国産米を使うことで特徴を出している中小企業が多い。米だけでなく、もう一つの主原料の大豆も値上がりし、経営はどこも厳しい」(全国味噌工業協同組合連合会)。
原発事故で米不足
全農の集荷量激減
6〜7月が涼しく、8〜9月に猛暑日が続いた今年は、米粒のばらつきが少ないとみられる。くず米比率が減り、原料等に回る量がさらに少なくなる可能性が出ている
Photo:EPA=JIJI
なぜ、加工用米は高騰しているのか。原因は複数ある。
まず、米全体の生産減少がある。米菓等の原料は、加工用米のほか、特定米穀(くず米、ふるい下米)が使われている。特定米穀は、主食米として作られたうるち米の中で粒が小さく、消費市場で受け入れられないものだ。2ミリメートル未満のものが通称くず米として米菓等の原料に回される。米の総生産量が30年間で30%減少しているのに比例してくず米も減り、その分、加工用米の需要が高まる基調が続く。
そこに、東日本大震災と原子力発電所事故によって、主食米自体が品不足となり、一部の外食などがくず米も使うようになって、主食米もくず米も値上がりしている。
このため昨年、今年と、加工用米から、より高く売れる主食米などにシフトする生産者が増えた。
この流れの中で、加工用米価格の高騰が、全国農業協同組合連合会(全農)によって具現された。
全農は数年前まで加工用米を生産者からほぼ独占購入してきたが、神明や木徳神量など民間米卸の実質的新規参入により、集荷量が急減。昨年は前年比で半減した。そこで今年3月、生産者への前払い金を前年比26%増へ、大幅アップに踏み切った。
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全農は「この件については何も話せない」と言うが、「大幅値上げしなければ相当量が集荷できないとの判断だったのだろう。それも、買い入れた加工用米に精米手数料等を加算して、高く販売できる酒造業界だけを念頭に入れた仕入れだ」(米卸経営幹部)というのが市場全般の捉え方だ。だが、これだけ高い値付けでも、目標の数量は集荷できないといわれている。
こうした生産者の加工用米離れを促したのが、農業政策の失敗だ。
農林水産省は、農業者戸別所得補償制度で、食料自給率向上を目指して、主食米以外の供給と需要を高める政策を進めている。
特に米粉用米や飼料用米などの生産に対して厚めの交付金を出す。米粉用米はパンやケーキなどの原料となる米で、飼料用米は家畜のエサとなる米。パンの原料を輸入小麦から国産米粉用米に、家畜飼料を輸入トウモロコシや小麦から飼料用米に代替させることで、食料自給率を上げるという考えだ。
これらを戦略作物と称して、その生産に対して作付面積10アール当たり8万円を交付している。
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この政策によって、2008年度から11年度にかけて、米粉用米は566トンから4万0311トンへ、飼料用米は8020トンから18万3033トンへ生産は急伸した。
一方、加工用米は1年遅れの10年度から交付の対象となったが、08年度の14万9048トンから11年度は15万4973トンへと生産は微増にとどまっている。加工用米の生産への交付金は10アール当たり2万円と、米粉用米や飼料用米の4分の1だからだ。「家畜が食べる飼料用米のほうが、人間が口にする加工用米よりも、品質管理面で生産が簡単な上に、交付金が高いとなれば飼料用米を選ぶのは当然だ」(山形県の農業生産者)。
交付金を得るためには、自ら需要者を見つけて契約し、6月末までに申請しなければならない規則になっているが、今日、トウモロコシが世界的に高騰しており、需要者を見つけるのは比較的容易な状況にあることも、飼料用米生産には強い追い風だ。
需要が増えない
米粉用米は余剰
高価な原料米は採算面で使えない米菓メーカーでは、前述の通り、MA米を使ったり、古いくず米を求めたりしている。
また、全農を通しての仕入れが難しくなったという現実を踏まえ、生産者組合との直接契約による安定的な仕入れルートの確立を図っている。全国米菓工業組合は2年前から秋田県大潟村の生産者協議会との取引を始めた。
さらに、米菓や味噌、酒造など加工用米を使う業界の8組合は共同で、農水省に政府備蓄米の売却を昨年、今年と要請。これに対して政府は、06年産の古米を今年4月に3000トン、6月に1500トン売却。9月24日には、8万トンを競争入札にかけることを決めた。
加工用米の需要者がその入手に四苦八苦する一方で、もう一つの戦略作物の米粉用米は余っている。政府がさまざまな助成を施しているが、需要が増えないのだ。「米粉パンはモチモチした食感など特徴があるが、既存の小麦パンに比べて割高であることを克服しないと需要は伸びない」(大手小売店)。
いずれも同じうるち米の主食米、飼料用米、米粉用米、加工用米は、人為的に区分しているだけで転用は可能だが、法律で禁じている。
制度で一物多価の状態を作り、用途別に生産調整する狙いだが、流通の多様化や震災ショックで、その無理が露呈した。
「家畜が新米を食べ、人間が古米を食べる」歪みを生み、米菓や味噌など伝統食を維持してきた食品会社の存続を危うくしている。
また、現状では米全体の品薄感から価格は高止まりしているが、生産者や流通業者による売り惜しみで在庫が偏在している可能性もある。制度の微調整ではなく、市場機能に則った抜本的改革が必要である。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪 亮)
http://diamond.jp/articles/print/25730
【第1回】 2012年10月3日 週刊ダイヤモンド編集部 保険商品特別取材班
「医療保険」や「特約」の実情は分の悪いばくち!
安心という幻想にムダなお金を払うのはやめなさい
転ばぬ先のつえ。それが本来の保険のあり方だ。だが、「医療保険」や「医療特約」の実情は分の悪いばくちに近い。消化できない1入院限度日数に、期待薄の先進医療特約……。「安心」という幻想にムダなお金を払っている人が多いのではないか。新刊の『だまされない保険〜安心できるおトクな商品はこれだ!』より、現状の医療保険について抜粋して紹介する。
民間の医療保険の加入率は約93%
手厚い「公的」保険制度は知られていない
「医療保険は“幻想”を買っていると思ったほうがいい」──。
そう切って捨てるのは『生命保険はこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)などの著作があるファイナンシャルプランナー(FP)の内藤眞弓氏だ。だが、大半の人々がこの幻想を追い求めているのは間違いない。
民間保険会社(かんぽを除く)の医療保険・医療特約への加入世帯率は約93%。同様に、がん保険・がん特約も約60%に上る(生命保険文化センター調べ)。
日本には手厚い公的医療保険の制度が完備されている。高額療養費制度のほか、重度のがんになり、所定の要件を満たせば障害年金が給付されることを知っている人は少ない。本来は、民間保険を知るより、公的な保険制度を知り尽くすことのほうが先決だが、人々は民間保険を盲目的に信じている。
入院日数は減少傾向に!実態に合わない
「医療」「がん」保険は、払い込み損になる
その幻想の正体を見てみよう。
医療保険は、まず、高額だが保障が一生続く「終身タイプ」と、一定期間ごとに更新する「定期タイプ」に分かれる。保険料は、掛け捨ての定期のほうが低く設定されているが、現在の売れ行きの主流は断然、終身。
定期保険は、年齢が上がるごとに、病気になる確率も高くなるため保険料が高くなっていき、保障はたいてい80〜90歳で終了し、その後更新はない。一方、終身はその名の通り、死ぬまで保障が続き、保険料が一定のため、保険料の安い間に早めに備えたいという人が多いからだ。
医療保険の標準保障内容は、入院日数に応じて支払われる入院給付金、手術ごとに所定の金額が支払われる手術給付金、手術に伴う通院日数に応じて支払われる通院給付金などで構成される。
だが、これら代表的な給付金でさえ、契約者のもくろみ通りに給付されることはまれ。入院給付金の落とし穴は、入院日数そのものが現在、急激な減少傾向にあることだ。
厚生労働省の調査によれば、病院の退院患者の平均在院日数は1990年が47.4日。しかし、2008年は37.4日と、20年弱で10日も減少した。しかも、平均50日を超える年代は70代以上。15〜34歳で13日、働き盛りを含めた35〜64歳でも29.5日と1カ月に満たないのだ。
入院日数がかさむのは高齢になってから
それまでにいくら医療保険を払い込むのか?
働き盛りを含めた35〜64歳でも入院日数は29.5日。しかし、医療保険は相も変わらず、1入院限度日数60日型、120日型、そして180日型の3タイプが主流のままだ。
「入院日数が加速度的に減っている昨今、入院給付金ベースの医療保険は実態に合わなくなりつつある」と指摘するのは、FPライフWVの西村和敏代表。
「大半の人には60日型でさえ、元を取ることが難しい」という。
一方、手術給付金は、たとえまったく同じ診断書を提出しても、保険各社の判断によって、給付額が大きく異なるのが実情。
また、入院給付金も入院すべてに給付されるわけではない。
通常のお産入院や介護施設への入院などは給付されず、保険各社所定の対象となる入院をした後に受け取れるという条件がついていることが多い。
このように、医療保険には標準の保障内容であってもさまざまな制約がかけられ、しかも、契約者はその制約に直面して初めて知るケースが後を絶たないのだ。
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http://diamond.jp/articles/print/25546
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